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エレベーターガール

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第三章

「何かな」
「おいおい、前言撤回か」
「方向転換か」
「そうだよ」
 居直った返答だった。
「そうするよ、ここはな」
「また随分と居直ったな」
「それだけあの人がタイプだったんだな」
「意中だったか」
「意中も意中だよ」
 彼女のことを思い浮かべながら答える。
「美人だし声もいいしさ」
「制服似合ってたよね」
「モデルみたいだよな」
「しかもな」
 それに加えてだというのだ。
「あの人胸も大きいな」
「おい、そこまで見てるのかよ」
「というjか見たのかよ」
「あんな人いるんだな」
 完全の惚れている人間の言葉だった。
「それじゃあな」
「それじゃあ?」
「それじゃあっていうと?」
「いや、ちょっとな」
 ここで尻込みした晋太郎だった、そして言うことは。
「言えないな、それはな」
「告白出来ないってか」
「そこでへたれるんだな」
「あんな綺麗な人だとな」 
 今度は言い訳だった、とはいっても本人は気付いていないし必死でもある。
「言えるかよ」
「じゃあどうするんだよ、一体」
「惚れたんだろ?」
「惚れたのに告白しないのかよ」
「それじゃあどうするんだよ」
「そんなこと俺に聞くなよ」
 今度は居直りだった、少なくとも本人が言うにはあれな言葉だった。
 だがそれでも彼は言う。
「これから考えるからな」
「先送りかよ」
「御前ってへたれだったんだな」
「っていうかそこで逃げるか」
「しようがない奴だな」
「逃げはしないからな」
 一応こう言う、とはいってもへたれ込んでいるのは確かだ。 
 しかし選択肢は何かを選ばなくてはならない。告白か諦めるかそれとも別の道か、告白はとても勇気がない。
 かといって諦めることも論外だ、その彼の選択は。
「毎日な」
「毎日?」
「毎日どうするんだ?」
「百貨店休みは火曜だったよな」
 まずはこのことをチェックする為に周りに問うた。
「そうだよな」
「ああ、そうだよ」
「ここ火曜休みだよ」
「じゃあ火曜以外はな」
 週六日、その間ずっとだというのだ。
「ここに来るからな」
「そうするんだな」
「それであの人見るんだな」
「そうするさ。エレベーターにいるからな」
 それならだというのだ、そう決めて。
 彼はまた言ったのである。
「あの人見るさ」
「また随分とへたれたな」
「告白もしないし諦めもしない」
「ただ見るだけかよ」
「どれだけ恋愛弱者なんだよ」
「じゃあ御前等この場合どうするんだよ」
 半分逆キレになって周りに言い返す、晋太郎にしても必死だ。
「もうどんぴしゃの人が前に出たらな」
「そう言われるとな」
「ちょっとな」
「まあそれはな」
「どうするかっていうと」
 周りもそう問われると困る、それでだった。 
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