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あの頃に戻れるのなら 

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第四章

「拾ったのはいいけれど」
「そっちのアパートペット駄目だったんだな」
「ばれるのも嫌だから最初に大家さんとお話したら」
「結局許してもらえなくてか」
「私が出て行くことになったの。このアパートペットいいわよね」
「ああ、しょっちゅう犬や猫の声聞いただろ」
「それ思い出してね」
 それでと言ってくる。
「ここに来たの。せめてね」
「その子を何とかして欲しいってか」
「駄目?」
 申し訳なさそうに俺に頼んできた。
「そうしてくれる?」
「詳しく話してくれるか?」
 とりあえず話を聞くことにした、そしてだった。
 俺はこいつにこう言った。
「まずは中に入れよ」
「ええ」
「それで詳しい話聞くからな」
「聞いてくれるのね」
「話を聞かないとどうしようもないだろ」
「そうね。それはね」
「ほら、入れよ」
 自分で鍵を開けて扉を開いて告げた。
「紅茶煎れるからな」
「久し振りね、あんたのお茶飲むのも」
「そうだな、俺がいつもお茶は俺が淹れてたな」
「あんたのお茶美味しいのよね」
「じゃあ久し振りに飲みながらな」
「ええ、お話聞いてね」 
 こうしてこいつと久し振りに話をした、子猫は俺が引き取ることになった。そして。
「あの娘ともか」
「ああ、それが縁でな」
 またツレと話をする、今度は駅前の居酒屋で楽しく飲みながら話す。
「あいつアパート追い出されたからな」
(御前のところに転がり込んでか」
「大変だぜ、家具が一気に増えたからな」
 俺は焼酎を飲みながら少し苦笑いになった。
「倍にな」
「重なってるのは処分しないとな」
「今その話をしてるよ、とにかくな」
「よりは戻ったんだな」
「そうだよ、成り行きでな」
「それもいいんじゃないのか?御前もそうなりたかったしな」
「ああ、よかったよ」
 酒のせいもあって俺は本音を言った、そして今度は焼き鳥を食ってから言った。
「向こうも未練あったしな、話を聞けば」
「猫に助けられたな」
「そうだな」
 このことは言うまでもなかった、若しあの子猫が来なかったら。
「本当にそうだよ」
「犬と猫は神様の使いだからな」
 こいつは動物が好きなのでいつもこう言っている。
「だから縁も戻してくれるんだよ」
「ハムスターもだよな」
「当たり前だよ、生き物は何でもそうさ」
「普通だったら俺達まだ別れたままだったな」
 俺はここで遠い目にもなった。
「そうなってたな」
「絶対にな。けれど戻れたからな」
「ああ、もう絶対に別れないさ」
 俺は飲みながら決意も言った、カウンターで一緒に飲みながら話す。
「何があってもな」
「もうお互い気を遣い過ぎるなよ」
「そうだな」
 別れる原因のことも話をした。
「それも気を付けないとな」
「お互いに気を遣うより猫に気を遣えよ」
「可愛がれっていうんだな」
「猫はそうしていいんだよ」
 こいつはとにかく動物が好きだ、家ではフェレットを可愛がっている。
「甘やかしてもいいからな」
「猫は甘やかしたら際限なく悪くなるんじゃなかったか?」
「それがまたいいんだよ、犬はそうはいかないがな」
「猫はいいんだな」
「存分に甘やかしていいからな」
 俺に強い声で話す。
「二人と一匹で仲良くやれよ」
「ああ、じゃあな」
 俺もその言葉に頷いた、そうしてだった。
 猫が引き戻してくれた幸せに心から感謝した、そのうえでもう二度と幸せは手離さないでおこうと決意した。


あの頃に戻れるなら   完


                     2013・1・26 
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