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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第六十話 魂、久遠に

              第六十話 魂、久遠に
クスハは深い眠りの中にいた。その彼女に誰かが声をかけていた。
「汝」
まずはクスハを呼ぶ。
「汝、人界の救済を望むか。答えよ」
「!?貴方は」
「答えよ」
クスハの言葉には答えずにまた問うてきた。
「どうなのだ、それは。答えよ」
「私は」
「どうなのだ、それは」
「私にその資格があるのなら」
「資格か」
「はい」
まずはこう声に答えるのだった。
「私は先の戦いで怒りのままに念動力を使ってしまいました」
「うむ」
これはその言葉に頷く。どうやらそのことを知っているようだ。
「その私に誰かを救う資格があるのですか?」
「それは我が決めることではない」
「えっ・・・・・・」
これはクスハにとっては意外な言葉であった。驚いていると声がまた言ってきた。
「決めるのは汝だ」
「私・・・・・・」
「そうだ、それを決めるのは汝なのだ」
「私が、すべてを決める」
「そうだ。汝が人界の救済を望めば」
「その時は」
「我は神体を以って汝の意を遂げん」
「私の意志を」
「そうだ」
これはこう言う。
「それだけだ」
「待って下さい」
クスハはその声に問う。
「貴方は一体。誰なのですか?」
「我は・・・・・・」
「貴方は・・・・・・」
ここで目が覚めるのだった。目覚めるとそこには誰もいない。ただ闇があるだけだった。
補給を終えたロンド=ベルは再び日本に戻る。彼等は中国に入っていた。
「何か地球横断ばかりだな」
「そうね」
美和が宙の言葉に頷く。
「それも北半球が多いわね」
「ジャブローとかギアナとかアフリカも行ったけれどな」
「ええ」
「それでもお決まりになってきたな」
「北半球に人工が集まっているから」
美和は言う。
「やっぱりそうなるのね」
「ああ、ところでミッチー」
「何、宙さん」
「邪魔大王国の奴等はどうしているんだ?」
彼は自らの宿敵のことを問うた。
「やっぱり暴れ回っているのか?」
「連邦軍とは膠着状態よ」
「そうか」
「ええ。ミスマル司令達が頑張ってくれて」
こう宙に語る。
「何とかね、もっているわ」
「そうか。それで俺達がそこには入る」
「そうなるわ」
「よし、じゃあ今からすぐにだな」
彼はこう考えていた。
「鬼もハニワも纏めてぶっ潰してやるぜ」
「そうなれば理想だな」
「ああ」
隼人の言葉に竜馬が頷いた。
「宙、わかっていると思うが」
「あの男が出て来た」
「ああ、わかってるさ」
宙はその二人に答えた。
「孫光龍だな。また出て来るって言いたいんだろ」
「あの連中の今までのパターンだったからな」
武蔵も彼に言ってきた。
「それは考えておいた方がいいぜ」
「そうだな、やっぱりな」
「連中がどう来るかだけれどな」
弁慶も言う。
「あいつはどうも曲者だからな。油断できないぜ」
「特にクスハが警戒しているな」
宙は言う。
「ブリットの奴も大丈夫なのか?」
「今度の戦闘には参加できないそうだ」
隼人が答える。
「傷が深い。今は安静だ」
「そうか」
「俺達だけでやるしかないってことだ」
「あいつ一人とは言えないわ」
宙は竜馬の言葉に応えて述べた。
「今はな。とてもな」
「だよな。敵が多いし」
「こっちの戦力も正直ギリギリだぜ」
武蔵と弁慶がまた言う。
「そんな状況でブリットがいないってのは」
「やっぱり辛いものがあるよな」
「けれどやるしかないからな」
「そうね」
宙の今の言葉に今度はミチルが頷く。
「今の状況はね」
「そういうことだな。じゃあ待ち構えておくか」
「よっし、じゃあミーも」
ジャックも出て来た。
「頑張りマーーーース!」
「兄さん、偵察の話が来てるわよ」
ここで意気上がるジャックにメリーが声をかけてきた。
「どうするの?」
「オフコーーーース!出マーーース!!」
答えは一つしかなかった。
「少し行って来ます。シーユーアゲイン!」
「何かそれを言うとレミーみたいだな」
「今はゴーショーグンが偵察に出ているわ、そういえば」
宙に美和が言う。
「今のところ敵は出ていないようだけれど」
「そうだったのか」
「ええ。それでね」
美和はさらに言う。136
「これから中国だけれど」
「中国か」
隼人にはすぐにわかった。
「警戒が必要だな」
「ああ、そうだな」
宙がそれに頷く。彼等にはもうわかっていたのだった。
クスハは格納庫に向かう。その彼女ブリットが声をかけてきた。
「クスハ」
「ブリット君、どうして」
「俺なら心配はいらない」
こうクスハに告げてきた。
「あの程度の傷ならな」
「そんな、あれだけの傷だと」
医学を学んでいる彼女にはわかる。彼の傷がどれだけのものか。しかしそれでも彼は言うのだった。その強い決意を胸に持って。
「そう簡単には」
「いい。それよりも俺は見たんだ」
「えっ、何を」
「夢をだ。俺は見たんだ」
彼は夢のことを言う。
「不思議な夢だった。心があれば力を貸そうってな」
「ひょっとして人界を救うっていうの!?」
「あ、ああ」
クスハに対して答える。
「そうだけれどひょっとしてクスハもなのか!?」
「ええ、私もよ」
こくりと頷いて答えた。
「私も声に問われて。それで」
「そこまで同じなのか」
ブリットもクスハも驚きを隠せなかった。
「俺達は。それじゃあ」
「そうね。ブリット君」
あらためて彼に声をかける。
「行く?やっぱり」
「その為にここに来たんだ」
彼の返答はもう決まっていた。
「ここにな。だから」
「そうね。行きましょう」
クスハもブリットのその言葉に頷く。これで決まりだった。
「きっと先にはあの人がいるけれど」
「孫光龍」
ブリットが険しい顔になってその名を呼んだ。
「あの男が・・・・・・!」
「それでも私は行くわ」
クスハの顔は強い決意の顔だった。
「何があっても」
「そうだな。あいつはきっと来る」
「ええ」
「俺達に止めを刺す為に」
それはもうわかっていたのだ。
「それでも俺は」
「そうね。ねえブリット君」
ここでクスハは彼に声をかける。
「どうしたんだい、クスハ」
「これ、受け取って」
あるものを差し出してきた。それは。
「これは・・・・・・指輪」
「プラハで買ったの」
あの時のものだった。
「同じのを私も持ってるわ」
「えっ、それって」
「あっ、そんなに重く考えないで」
答えながら顔を赤くさせる。
「同じのをブリット君と二人で身に着けるのっていいなって思って」
「そうだったんだ。俺と一緒に」
「ええ。だから」
「うん、有り難う」
ブリットはその指輪を受け取った。誓いの指輪を。そして。
「行きましょう」
そのうえでクスハはまたブリットに声をかけた。
「私達を呼ぶ魂に会う為に」
「ああ」
クスハのその言葉に頷く。そして言った。
「俺達が。この世界を救う為に」
二人はすぐに大文字に偵察の為の出撃を申し出た。それはすぐに認められた。
「いいだろう」
「そうですね」
それにサコンが頷いて同意する。
「だが二人共」
「ええ」
「何だ、サコン」
「くれぐれも気をつけてくれ」8
二人を気遣っての言葉だった。
「特にブリット、君はな」
「傷のことか」
「それだけじゃない。それは君が一番わかっている筈だ」
「・・・・・・ああ」
サコンのその言葉に頷いた。頷くしかなかった。
「そうだな」
「そういうことだ。クスハもな」
「わかっています、私は」
クスハもまた何時になく真摯な顔になっていた。まさに運命に立ち向かう顔だった。
「私達は」
「俺達、行って来ます」
「何かあったらすぐに連絡して」
ミドリも心配する顔で二人に声をかける。
「私達が向かうから」
「そうだ、だから安心して出撃してくれ」
ピートも言う。
「後ろは大丈夫だからな」
「有り難うございます、ピートさん」
「大空魔竜だけじゃねえしな」
ヤマガタケもそこにいた。
「俺達もいるぜ」
「クスハさん、ブリット君」
ブンタが微笑みを向けてきた。
「何かあればすぐに来ますので」
「何も心配することはない」
リーもまたここにいた。
「仲間がいるからな」
「仲間が」
「そうじゃないかよ」
サンシローが笑顔でクスハに応える。
「俺達は仲間だぜ。そうだろ?」
「そうね。ずっと一緒に戦ってきた仲間」
「かけがえのない仲間だよな」
「そういうことさ。仲間を見捨てる奴なんてロンド=ベルにはいないさ」
だから大丈夫だというのだ。今の二人には何よりも有り難い言葉だった。
「だから。行ってきな」
「ええ」
「行って来るな」
二人は笑顔で微笑み出撃した。行く場所はもう決まっていた。
蚩尤塚。まずはそこに来た。クスハはまず声をかけた。
「ねえ龍王機」
「・・・・・・・・・」
己の乗るマシンに対して。
「何か感じるかしら」
「虎王機、御前はどうなんだ?」
ブリットもまた己のマシンに問う。
「感じないか?何かを」
「駄目みたいね」
「そうだな。まだか」
反応はなかった。それでまず時間を置くことにした。二人はお互いで話をはじめた。
「しかしクスハ」
「ええ、ブリット君」
クスハはブリットが何を言うのかわかっていた。だからそのまま応えたのだ。
「夢の中で俺達に語り掛けてきたのは誰なんだ」
「ここに来るようにも言葉の中には込められていたわね」
「ああ」
だからこそここに来たのだ。
「この蚩尤塚にな」
「龍王機じゃないのかしら」
「虎王機でも」
二人は最初そう思った。だがそれが違うようなのだ。二人はそれも感じていた。
「だとすれば一体」
「誰が」
それを考える。しかし答えが出ず話は次に移った。
「それに孫光龍」
「彼だな」
「あの人はどうして地球の為に戦わないの?」
「あの時は確かに戦っていた」
ガンエデンの時だ。彼はそこではガンエデンの側にいた。しかし今は。
「けれど今はバルマー軍と関係があるわ」
「間違いないな、あれは」
「ええ」
それは確信だった。しかしその確信が話をさらに困難なものにさせていたのだ。
「どうしてバルマーに」
「超機人と共にいるのに」
「地球の人々の敵になったの?」
「おやおや、心外な言葉だねそれは」
その時だった。声が聞こえてきた。
「!?」
「この力は!」
力を感じた。すると二人の前にあの真・龍王機が姿を現わしたのだった。
「孫光龍!」
「出て来たか!」
二人は孫の姿を見てすぐに身構えた。そのうえで問うのだった。
「御前に聞きたいことがある」
「何かな、ブルックリン君」
「御前は何の目的でバルマー軍に協力している」
「ああ、あれだね」
「認めるのだな」
「僕は隠し事はするけれど嘘は言わない主義なんだよ」
いつもの余裕のある笑みでの言葉だった。
「だからそうさ。確かに彼等と一緒にいるよ」
「何故です!」
今度問うたのはクスハだった。
「何故超機人に選ばれながら貴方は人類の敵となるのです!?」
「ははははは、またこの問答かい」
孫は二人の言葉を聞いてまずは笑った。
「二度あることは三度あるっていうけれど本当だね」
「何っ!?」
「では君達に聞くよ」
逆に二人に問うてきた。
「四神だね」
「あ、ああ」
「そうです」
これは二人も知っていた。
「龍王機と虎王機」
「それに雀王機と武王機だったな」
四霊獣に対しているのである。だからこうなる。
「その残る二体がどうして失われているのかな」
「!?」
二人はそれを聞いてまずは言葉を止めた。
「そして真・龍王機が君達を敵視しているか」
「それは」
「少なくとも後の答えはわかる!」
ブリットが答えた。
「それは御前達が人々の平和を脅かす存在だからだ!」
「はははははは!」
だが孫はブリットのその言葉を聞いてまた笑いだした。
「やっぱりそう答えてきてくれたね!」
「何がおかしいんですか!」
「僕達が人界を脅かす存在だって!?こりゃ傑作だ」
ブリットの言葉を明らかに嘲笑していた。
「予想はしていたけれど数百年振りに腹の底から笑わせてもらったよ」
「貴様・・・・・・」
「君達は知らなくて当然だけれどね」
まずはこう前置きしてきた。
「かつてこの星を滅亡の危機から救ったのは」
「救ったのは!?」
「何だというんだ?」
「他でもないバラルの神と僕達なんだよ」
「えっ!?」
「嘘だ!出鱈目を言うな!」
「だから僕は嘘は言わないと言っただろう」
軽くブリットに言葉を返す。
「間違ってもね」
「くっ、それじゃあ」
「そうさ。遥か昔この地球には恐るべき魔神や妖怪達が存在していた」
「魔神が妖怪達が」
「各地の神話や伝承に残っているだろう?」
孫は今度はその話を出してきた。
「邪神だの魔王だの。神々や人と敵対する存在さ」
「!?じゃあ神話や伝承に出て来るあれは」
「かつて地球にいた」
「彼等は百邪と呼ばれていた」
これは二人の全く知らないことだった。
「彼等は人間の存在を脅かしこの星を蝕んでいた」
「そうだったの」
「そんな奴等がいたのか」
「君達が知らなくて当然さ」
孫はまた言う。
「気の遠くなるような昔の話だからね」
「そんな昔の話なの」
「それは」
「そして百邪に対抗する為に古代人が造り出したのが超機人なのさ」
「ライディーンと同じ!?」
「そういえば」
ここで二人はふとそのことに気付いた。
「それじゃあ」
「このマシンもまた」
「あれは悪魔帝国と戦う為だけれどまあそうだね」
孫もそれは認める。
「大体同じさ。面識はなかったけれどね」
「そうだったんですか」
「僕達と彼等の戦いは何時果てるともなく続いていた」
孫は話を戻してきた。172
「けれど」
「ある日」
「ある日!?」
「僕達を束ねる存在が姿を現わした」
「まさかそれが」
「そう」
クスハの言葉に答える。
「それがバラルの神だった」
「バラルの神・・・・・・」
「超機人の主にして地球の守護神アウグストスと呼ばれる僕達の神」
孫はこう言う。
「君達には人造神ガンエデンと言った方がわかりやすいだろう」
「た、確かにイルイちゃんも」
クスハはイルイのことを思い出して言う。
「龍王機と虎王機はガンエデンを裏切った超機人だと言ったけど」
「だが」
ブリットも言う。
「そのガンエデンはもう存在しない!俺達が倒した!」
「まさか」
クスハはここでまた気付いた。
「貴方はその敵討ちをするつもりなのですか!?」
「残念だけれどそんな義理はないさ」
孫はそれは否定する。そのうえでまた言う。
「ガンエデンは元々超機人とは別の系譜で造られたもの」
「そういえば」
「確かに」
「それが失われようが僕と真・龍王機は本来の役目を果たすだけさ。即ち人界の救済をね」
「言っていることが滅茶苦茶じゃないか!」
ブリットは思わず激昂して叫んだ。
「ならば何故俺達と戦う!?」
彼は孫に問う。
「帝国監察軍について地球を奴等の野望の駒とすることが何故人類を救うことになる!」
「人間という種を死と再生の輪廻から解脱させる為にはこの宇宙の理を解く必要がある」
これが孫の答えだった。ブリットに対する。
「ガンエデンは、その鍵になりえる存在だったのだよ」
「ど、どういうこと!?」
「さてね」
それには答えない。
「その為にバルマーに手を貸すのか!?」
「まあそれだけじゃないけれどね」
「それだけじゃない。じゃあ」
「これ以上は答えないよ。さて」
話を一方的に打ち切ったうえでまた言う。
「では。死んでもらおうか」
「死にはしません。それに」
「あれっ、まだ質問かい?」
「貴方はまだガンエデンに仕えているのですか」
「ああ、そうだよ」
孫はあっさりとした調子で今のクスハの言葉に答えた。
「それがどうかしたのかい?」
「ガンエデンに仕えている。けれどガンエデンは」8
「あの子だけがガンエデンじゃないしね」
「えっ!?」
「さて、クスハ君」
これ以上は話さず自分のペースに持って行こうとしてきた。
「この前みたいに怒りの強念でも呼ぶかい?」
「そんなことはしません」
だがクスハの言葉は強い否定だった。
「私は怒りでは戦いません」
「へえ」
「私はこの地球と人々を守る為に戦います」
「俺もだ」
ブリットもそれは同じだった。
「俺もこの地球と。そこにいる人達を守る為に戦う!」
「まあ小さな正義でしかないね」
「小さな正義だと!」
「そうだよ、所詮ね」
何でもないといった調子だった。
「そんな小さな正義で真理を見つけられない君達は」
「私達は」
「ここで死ぬ運命なのだね、僕によってね」
「孫光龍!」
ブリットが孫を呼んだ。
「その言葉そっくり御前に返してやる。覚悟!」
「行きます!」
龍王機だった。それで前に出る。
「貴方に・・・・・・勝ちます!」
「前は不覚を取ったけれど今回はそうはいかないよ」
「それはこちらも同じです!」
「ここで決着をつけてやる!」
二人はそれぞれ叫ぶ。
「二度と怒りの力で念を使いはしません!」
「だが!」
二人はさらに叫ぶ。
「孫光龍、貴方だけは」
「許さん!」
「結構なことだよ」
二人の決意を前にしても孫の余裕は変わらない。
「僕に勝てる唯一の方法を自ら封印するとはね」
「ならこれはどうですかっ!」
クスハは早速棒を放ってきた。それが龍の身体を撃つ。
「おっと、結構効くね」
「私だって。やられるわけには」
「俺もだ!」
今度は虎王機に変形し拳を繰り出す。
「やられるわけにはいかないんだ!」
「へえ、やるねえ」
孫はその攻撃を受ける中で言う。
「燃え尽きる前の蝋燭みたいだ」
「黙れ!!」
ブリットは攻撃を繰り出しながら叫ぶ。
「燃えているのは俺達の中の正義の炎だ!」
「ブリット君!」
「クスハ、このまま一気にいくぞ!」
「ええ!」
二人はこのまま戦いを決めるつもりだった。さらに攻撃を浴びせる。しかしその中でも孫の余裕は変わらずその顔で言うのだった。
「さあ、そろそろ止めというこうかな」
「!?」
「ショータイムのはじまりだよ!」
真・龍王機が咆哮すると天高く舞い上がった。そしてその口から雷を放ってきた。
「これを受けてそうは耐えられない筈さ!」
「くっ!」
「うわああっ!」
二人をその雷が撃つ。虎王機もその衝撃を受けて大きく揺れる。だがそれでも彼等は戦場に立っているのだった。まだ生きていた。
「あれれ、本当にタフだねえ」
攻撃を終えた孫は二人がまだ立っているのを見て言った。
「これで終わりだと思ったんだけれどね」
「まだだ!」
そのブリットが言う。
「俺達はこの程度でやられはしない!」
「私達はまだ」
クスハも言う。
「やられるわけには」
「孫殿!」
その時だった。バランガ戦場に来た。
「バラン=ドバン」
「くっ、こんな時に!」
「安心せよ!」
しかしバランは二人に対して叫んできた。
「わしは一騎打ちには入らぬ。下らぬ邪推は不要だ」
「そうか」
「けれど」
だがもう二機姿を現わしていた。それは」
「キャリコにスペクトラか」
「はい、バラン様」
「任務で来ました」
二人はそれぞれバランに対して答える。
「任務だと」
「クスハ=ミズハ及びブルックリン=ブレスフィールドの抹殺」
「それが私達の任務です」
「止めておけ」
だがバランは二人を止めた。
「今は孫殿との勝負の時ぞ。手出しはするな」
「残念ですがそうはいきません」
「その通りです」
「わしの命令が聞けぬというのか」
バランは二人が引かないのを見て顔を顰めさせた。
「近衛軍司令官であるわしの命令が」
「我々は外銀河方面軍所属です」
「即ちハザル様の」
「ハザル坊か」
バランはハザルの名を聞いて顔を顰めさせた。
「ハザル様です」
「お間違えなきよう」
「ふん、とにかくわしの命令は聞けぬというのだな」
「はい」
「その通りです」
二人は微笑みつつバランに対して答えた。
「我々に命令を下すことが出来るのはハザル様ただ御一人」
「ですから」
「僕は別に入ってきても構わないよ」
「孫殿、それは」
「バラン殿、僕は別に自分を武人と思っちゃいないですよ」
軽い調子でバランに言葉を返す。
「ましてやこの二人とは様々な因縁がありますしね。ただ死んでもらうのはどうも」
「嬲り殺しにするつもりか」
「それがバルマーじゃないですか」
孫はあっさりと言葉を返す。
「違いますか?」
「所詮は地球人です」
「その通り」
キャリコとスペクトラも言う。
「では何をしても構いませぬ」
「だからこそ」
「・・・・・・死ね」
三人は動きを合わせて攻撃を浴びせる。それが二人を撃つ。
「きゃあっ!」
「クスハ、ここは!」
虎王機だけが分離した。そのうえで龍王機の前に出る。
「ブリット君、何を!」
「俺が引き受ける。君は逃げろ」
「逃げろって、そんな」
「俺の使命は君を守ること」
ブリットは意を決した顔で孫達がいる正面を見据えて言う。その周りには攻撃が浴びせられかけ続けている。
「だから」
「そんな言葉聞きたくない!」
しかしクスハはその言葉を拒絶する。
「えっ!?」
「二人で笑って二人で苦しんで」
クスハは言うのだった。
「二人で一つになりたい!」
「二人で一つ・・・・・・」
「そうよ!」
クスハはさらに言った。
「そして二人でこの地球と人達を守りたいのよ!」
「クスハ・・・・・・」
「だからブリット君」
クスハもまた前に出た。
「私も残るわ」
「・・・・・・そうか」
「ええ」
「また随分と感動させるねえ」
孫はそんな二人を見て言う。バランはもう攻撃を止めさせようとするがそれは適わない。
「だがそれももう終わりさ。その願いは天国で叶えるんだね」
「来るわ!」
また雷を吐こうとする。しかしその時だった。何かが起こった。
「!?」
「これは」
『集え、幾多の剣よ』
何処からか声がした。
『あまねく世界を守護する為に』
「イルイ=ガンエデン」
孫はその声を聞いて言った。
「まさか・・・・・・こんなところで」
「ブリット君、力が!」
「ああ、何かが来る!」
二人を何かが包んでいた。そしてまた声がした。
『四神の超機人に。ガンエデンの加護を」
四つの光が沸き起こり二人を包み込む。それが五色の光になり全てを照らし終えたその時。新たな神がそこにいた。
「これは・・・・・・龍虎王」
「それだけじゃない」
二人はわかっていた。感じていた。
「私達に語りかけるこの念。これは」
一つ咆哮が聞こえた。
「貴方は雀王機!」
そしてもう一つ咆哮が。
「貴方は武王機!」
「まさか」
孫はここで呟いていた。
「あの時と同じように四神の超機人の魂が一つになった」
彼は言う。
「いや」
「いや!?」
「違う!」
バランに対して言う。
「この合体は四つの魂が重なり合ったもの」
「それは何なのだ?」
「合体ではなく合身、いや合神だ」
「合神!?」
「何故だ、イルイ=ガンエデン」
孫の普段のあの余裕が完全に消えていた。その顔でガンエデンに問うていた。
「何故四神の超機人に器を。彼等こそが貴方の選んだ真の守護者の剣だというのか!」
「むう、威風堂々天魔降伏」
バランはその新たな守護者の姿を見て言う。
「あの者の力、侮れん!」
「ブリット君と私の想い」
クスハは孫達に向かいながら言っていた。
「そして、正義と平和を愛する四神の想いが呼んだ真の超機人。
「その名も」
そしてブリットも。
「真・龍虎王!!」
「真・龍虎王だと!馬鹿な!」
また孫が叫んだ。
「ふざけた真似を!真の名を冠するのは四霊の超機人である僕の龍王機だけだ!」
彼は珍しく本気になっていた。
「クスハ=ミズハそして四神の合神超機人!」
彼等に対して言う、
「貴様達の存在を消す!」
「来なさい孫光龍!」
クスハもまた孫のその言葉を受ける。
「四神の超機人に託された想い、貴方にも見せてあげます!」
そしてその時に。ロンド=ベルの艦隊が戦場に到着した。
「来たか」
「くっ、ここで」
「奴等が」
バラン達はそのロンド=ベルの艦隊を見て言った。既に出撃がはじまっている。
「クスハ、ブリット!」
「リュウセイ君」
「そのマシンは何なんだ?」
彼はそれを問うた。するとクスハはこう答える。
「私達の新しい力」
「それがか」
「ええ。その名も真・龍虎王!」
彼に対してもその名を告げる。
「それがこのマシンの名よ!」
「ふむ」
ヴィレッタはそのマシンを見て心の中で呟いていた。
(遥かな時を経てあらたに誕生した力。この戦いの行方を左右するかもな」
「各機展開せよ!」
大文字が指示を出す。
「クスハ君達を援護しろ!」
「了解!」
「それに奴等だってな!」
「くっ、出ろ!」
キャリコが言うとそれと同時にバルマーの軍勢が姿を現わした。
「予定変更だ。ロンド=ベル自体を叩く」
「キャリコ、また会ったな」
「クォブレーか」
「貴様と会ったからには俺は」
「来い」
口元に酷薄な笑みを浮かべつつクォヴレーに言う。
「ここで倒してやる」
「それであんたもいるね」
「貴様、まだ生きていたか」
セレーナはスペクトラと向かい合っていた。
「何としぶとい女だ」
「皆の仇、ここで取らせてもらうわよ」
「クスハ」
レーツェルはもうクスハの横に来ていた。そのうえで彼女に声をかけてきたのだ。
「レーツェルさん」
「君の想いが奇跡を呼んだ」
「いえ、それは違います」
だがクスハは今のレーツェルの言葉は否定した。
「違うのか」
「はい、二人の想いです」
「二人のか」
「私とブリット君の」
クスハの答えはこうだった。
「二人の想いです」
「ブルックリン」
ゼンガーはブリットに声をかけてきていた。
「・・・・・・はい」
「よくやった」
「有り難うございます」
「よし、共に戦おう」
レーツェルがその二人に声をかける。
「それでいいな」
「はい!」
クスハがそれに応える。クスハはあらためて孫に対して言う。
「孫光龍!」
「くっ!」
「私達には四神と仲間達がいてくれています」
「そんなもので僕に勝てるというのか!」
「そうです!」
はっきりと言い切った。
「その皆の力を受けて私は」
「俺は!」
ブリットも言ってきた。
「私達の正義を貫きます!」
「御前の言う正義も人界を救う方法もわからない」
ブリットの言葉が続く。
「しかし俺達は!俺達の正義を突き進むだけだ!」
「面白い、ならば」
孫も完全に本気だった。
「その想い僕とこの真・龍王機が力という現実で砕いてあげよう!」
「来たよ!」
リョウトが叫ぶ。
「敵が。正面から!」
「面白いわ。それなら!」
リオが最初に攻撃を浴びせる。ヒュッケバインが唸る。
「こっちだって正面からやってあげるわ!」
「バラン、何処だ!」
「ここぞトウマ!」
バランはまたしても堂々と名乗りをあげてきた。
「また貴様と闘えるとは武人冥利に尽きるわ!」
「こっちこそな!」
二人は笑みさえ浮かべて向かい合う。
「あんた程の男がどうしてあんな孫みたいなのと一緒にいるのかわからねえけれどな」
「付き合いというものだ」
「バルマーだからかい」
「左様。だがこれ以上は言わぬ」
早速鉄球を振り回してきた。
「このバラン=ドバン!味方のことは言わぬ!」
「そうかい!じゃあこの話は止めだ!」
「むっ、止めるのか」
「って言いたくないんだろう?」
ここでバランに対して問い返す。
「だったらよ、やっぱり」
「むむむ、ここで拳で聞いてやると言うと思っていたのだが」
バランはそれを期待していたのだ。
「残念だな。そうはならんか」
「ならんかって俺だってそこまでは」
言うつもりはなかったのだった。
「あんた、ちょっとそりゃ極端だろ」
「左様か」
「そうだよ。それにな」
トウマはさらに言う。
「付き合いがあるって位俺にだってわかるぜ」
「そうか」
「何であいつがあんた達と一緒にいるかまではわからねえがな。さて」
「そうだな」
二人はあらためて向かい合う。そして。
「やるぜ!」
「参る!」
本格的に闘いに入る。強敵同士の闘いだった。
そしてクスハ達と孫もまた。激しい戦いの中にあった。クスハは攻撃を繰り出しつつ孫に対して問う。
「孫光龍!」
「今度は何だい?」
「貴方は言いましたね」
また同じ問い掛け方だったがそれが指すものは違っていた。
「超機人は人界を守る存在だと」
「そうさ」
孫もそれに答える。
「そしてその宿命は百邪の駆滅だと」
「確かにそう言ったよ」
「では何故!」
クスハはさらに問う。
「龍虎王はあなたを見限ったのです!?」
「おいおい」
孫はクスハの言葉に肩を竦めつつ答えてきた。
「人の話を聞いてないのかい?龍虎王は百邪に惹かれそして
「だったらどうして今!」
今度はブリットが問う。
「雀王機と武王機も俺達に力を貸す!」
「そうです!」
またクスハがここで言う。
「その肉体を失ってもなお!」
「それは」
「孫光龍!」
今度はブリットの言葉だった。
「四神の超機人と」
「私達が!」
そしてクスハもまた。
「貴方を討ちます!」
「・・・・・・クスハ君」
孫の言葉がドス黒いものになった。闇の黒さだった。
「調子に乗りすぎは可愛いくないよ」
そしてまた告げる。
「どうやら君には罰を与える者が必要なようだね」
その横ではクォヴレーとセレーナがキャリコ、スペクトラと闘っている。互いに機動力を駆使して地上で激しい応酬を繰り広げている。
「素早さなら!」
セレーナが動いた。
「こっちだって負けないのよ!」
「ちっ!」
その鞭がスペクトラを撃つ。しかしそれでもまだ立っている。
「この程度で私を倒せると思わないことだ!」
「そうよね。それなら!」
さらに鞭を振るう。
「これならどうかしら!」
「何のっ!」
分身してかわす。そのうえで反撃に転じる。
「その程度で!」
「やるわね!」
二人の死闘もクォヴレー達の死闘も続く。ロンド=ベルとバルマー軍の戦いはここでも激しいものになってきていた。
その中で。クスハは攻撃を仕掛けていた。それは。
「ブリット君!」
「クスハ!」
「これで決めるわ」
クスハの心に何かが宿った。
「これで!」
「よし、行くんだクスハ!」
ブリットはクスハのその心を受けた。そのうえでの言葉だった。
「御前の力見せてやれ!」
「ええ、龍虎河車、雀武周天!」
「何っ!」
孫は叫んだ。何と真・龍虎王の下に八卦が出たのだ。
そしてさらに。そこから光が起こる。
「召還!兜率八卦炉!」
「八卦だと!」
龍虎王は飛ぶ。そしてさらに。
胸が光った。クスハもまた。今暗闇の中で黄金色に輝く。力が彼女を包んでいた。
「真・龍虎王奥義!四神真火八卦坤!!」
真・龍王機の周りに八卦の柱が立つ。そして龍虎王が印を結ぶと。その中で炎が沸き起こった。
「なっ、この僕と真・龍王機が!!」
「観念なさい孫光龍!」
「フフフ」
「!?」
炎を受け真・龍王機は致命傷を受けた。しかしその中で何と孫は笑っていたのだ。
「ハーーーーーーーーーーーハッハッハッハッハッハ!面白いよ」
「な、何だよこいつ」
「おかしくなったの!?」
タスクとレオナは二人が笑ったのを見てこう思った。
「クスハにやられて」
「まさか」
「面白い、面白いよ!」
「何が面白いのですか」
「聞こえるかいイルイ=ガンエデン!」
イルイに対する言葉だった。
「僕も決めたよ。君が四神に力を貸すのなら」
「力を貸すのなら何だ!」
ブリットが彼に問う。
「何だというんだ!」
「それなら僕は君を見限ろう!」
「見限る!?」
「そう。しかし」
ここでまたあの凄みのある笑みを見せてきた、
「僕と一族を裏切った報いは受けてもらうからね」
「まだそんなことを言っているのか!」
「けれど認めてあげるよ」
ブリットの言葉をよそに言ってきた。
「何っ!?」
「今日のところは僕の負けだよ」
「何だ!?」
「変にいさぎいいじゃねえか」
洸と甲児がそれを聞いて言う。
「けれどこれで決着と思わないことだ」
「ふん、そう言うと思ったよ」
アイビスはもうそれを読んでいた。
「あんたみたいな人間の言いそうなことだね」
「君達が戦い続ければ人類は。いや」
「いや!?」
「銀河は終焉への道を進むことになるだろうね」
「負け惜しみはみっともないぜ!」
リュウセイが彼にくってかかった。
「この蛇野郎!」
「アポカリュプシス」
「えっ!?」
孫はリュウセイを相手にしなかった。そのかわりこう言ったのだった。
「えっ!?」
「君達のやり方ではその日を乗り越えることは出来ない」
今度はこう言ってきたのだった。
「それを忘れないことだね」
「一体何を!?」
「ではクスハ君、ブルックリン君」
今の言葉に呆然とする二人に最後に言ってきた。
「ご機嫌よう」
「シーユーアゲインとは言わないのね」
「悪いけれど僕の流儀じゃないのでね」
レミーに答える余裕もあった。
「それじゃあ」
「これで今回は終わりか」
「二度と会いたくない奴だがね」
真吾とキリーが言う中で孫は姿を消した。洸がここで呟く。
「一体何を考えているんでしょうか」
「さてね。けれど間違いないことがあるよ」
「間違いないこと?」
「そう、それは」
万丈が答える。
「あの男も何かを知っているようだね」
「へっ!」
豹馬がそれを聞いて言う。
「あいつが何度来ようが返り討ちにしてやるだけだぜ」
「そうだな」
豹馬のその言葉に凱が頷く。
「こちらには新たな力も加わったからな」
「やったわね」
クスハはほっとした様子でブリットに声をかけた。
「私達勝ったのよ」
「そうだな。だが」
「えっ、どうしたの!?」
「・・・・・・疲れた」
一気に力が抜けた声だった。
「今回は。ちょっとな」
「そう、疲れたの」
「ああ。かなりな」
「おい、疲れたのはいいけれどよ」
忍が彼に声をかける。
「そのままってのはなしだぜ」
「わかっています。けれど」
「ブリット君・・・・・・」
「今は・・・・・・少し」
「そう・・・・・・」
クスハはブリットのその言葉に微笑んで頷いた。
「それなら。今はね」
「済まない、クスハ」
「いいのよ」
そんな彼の言葉を笑って許す。
「今は。私を守ってくれる為に頑張ってくれたから」
「敵も皆撤退したぜ」
トウマが言ってきた。
「これでな」
「そうか。では我々も帰還するとしよう」
「うむ」
ゼンガーがレーツェルの言葉に頷く。
「これでな」
「そういうことだ。それではな」
「はい。それじゃあ」
ブリットは眠りロンド=ベルは帰還した。まず彼はベッドに寝かされた。
「それでブリットはどうなったの?」
「大丈夫よ」
クスハはステラの問いに微笑んで答えていた。
「何日か寝ていれば回復するって」
「そう」
「ならいいがな」
「一瞬どうなるかって思ったぜ」
スティングとアウルはそれを聞いてまずはほっとした顔を見せていた。
「ブリットに何かあったらやっぱりな」
「寂しいからな」
「ステラ、ブリットもクスハも大好き」
ステラが言う。
「だから。生きていてよかった」
「有り難う。そういえば私も」
「眠いのか」
「だったらそういう時は寝るんだよ」
「ぐっすりと」
オルガ、クロト、シャニもここで出て来た。
「俺なんかそれこそ気合入れたら三日は寝られるぜ」
「僕なんか一週間寝なくても平気さ」
「俺、逆さまで寝られる」
「・・・・・・貴方達本当に人間?」
医学を学んでいるクスハから見ても驚きだった。
「前から不思議だったけれど」
「彼等は特別なのですよ」
彼自身かなり特別なアズラエルが出て来た。
「だからこそ何を食べても何をしても平気なのですよ」
「そうだったのですか」
「あの三機のガンダムは彼等しか乗れませんし」
「そんなに凄いガンダムなんですか」
「はい」
こうクスハにも答える。
「流石にBF団や国際エキスパートの方々程ではありませんがね」
「まだ暮れなずむ幽鬼のことは」
「忘れられません」
急にその顔が曇る。
「あそこまで徹底的に工場を破壊してくれたのですからね」
「やっぱりそうですか」
「正直彼等のことなぞ大した問題ではないのです」
アズラエルは言い切る。
「君達の様な力もニュータイプもコーディネイターも」
「そうですよね、やっぱり」
「彼等に比べれば。どれ程のことが」
「ところであのビッグ=ファイアというのは」
「どうやら死亡したようです」
こう答える。
「はっきりとはわかりませんが」
「そうですか」
「大作君でしたね。詳しいことは知りませんが」
「ええ」
アズラエルは彼とは直接の面識はないのだ。
「彼は勝ったそうです」
「そうですか。よかった」
それを聞いたクスハの顔色が明るくなる。
「大作君もこれで」
「ですがそれでも」
「それでも?」
「BF団の彼等がどうしてあれだけの力を手に入れたのか私にはわかりません」
「そうなんですよね」
ここでユウナも出て来た。
「ユウナさん」
「オーブも白昼の残月に痛めつけられましたから」
「そうでしたね、オーブは彼等に」
オーブは残月の襲撃でその全施設のうち一割を失ったのである。たった一人の襲撃で。
「あの時は驚きました。もう何が何だか」
「そうだったんですか」
「それに比べれば本当に些細なことです」
アズラエルはまた言った。
「彼等の能力なぞ」
「そうですか」
「それよりもブリット君は復帰できるのですね」
彼の最大の関心はそれだった。
「三日程で」
「はい、そうです」
「それは何よりです。それでは」
アズラエルはそれを聞いて微笑み。さらに言うのだった。
「その三日の間に日本に向かいましょう」
「わかりました。それじゃあ」
「いよいよ百鬼帝国や邪魔大王国との決戦だな」
宙が言った。
「腕が鳴るぜ。遂にこの手で奴等を」
「鬼と魔か」
竜馬は言う。
「激しい戦いになるだろうな」
「それは最初からわかっていることだ」
隼人は既にそれを受け入れていた。
「なら。戦うまでだ」
「そうだな、それしかないよな」
弁慶は隼人のその言葉に頷いた。
「俺達はな」
「ああ、じゃあ日本に行こうぜ」
武蔵も言う。
「奴等との最後の戦いにな」
遂に日本に辿り着くことになった。激しい戦いがそこでも待っている。しかしそれに臆することはなかったのだった。戦士として。

第六十話完

2008・5・10  
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