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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第五十五話 迫り来る惨事

               第五十五話 迫り来る惨事
パリでの戦いの後。ロンド=ベルはまずは無事ゼダンに入ることができた。ゼダンまで敵は出ず彼等はここで無事修理及び補給を受けていた。
「とりあえずはよしとすべきだな」
「そうですね」
ブライトの言葉にトーレスが頷く。
「ゼダンに無事入られてこうして補給を受けられるのだからな」
「修理も」
「これが終わったならばだ」
ブライトはまた言う。
「いよいよ日本に向かう」
「日本に」
「そうだ。しかし」
だがここでブライトの顔が曇った。
「おそらくそれまでにまた」
「出て来ますね。彼等が」
「そうだ」
今度はサエグサに答える。
「また異世界からの来訪者か」
「やはり。何かあるか」
ブライトはそれを察していた。
「こうまで異世界からの訪問者が出て来るからな」
「それですか」
「それだ」
サエグサのその言葉に応える。
「偶然にしては重なり過ぎているしな」
「バルマーだけでも厄介なのに」
「そのバルマーにしろだ」
ブライトはまた言った。
「このところグラドス以外は動きがない。彼等にも何かがあるのか」
「火星での敗戦が響いた?」
そう予想立てられた。
「そうではないでしょうか」
「確かにあの敗北は彼等には大きかっただろう」
ブライトはそれはわかっていた。
「しかしだ。それでおいそれと勢力を衰えさせる程度か」
「バルマーがですか」
「そうだ」
ブライトはバルマーの勢力の強さがわかっていた。
「あの程度で。衰えるか」
「それは。言われると」
「そうだな。そんな容易な奴等じゃない」
そこにいたアムロが応えた。
「アムロ」
「火星での戦いは大きかったが。それでもあれ位で衰える程度じゃない」
「バルマーでも何かがあるのか」
ブライトの次の予想はそれだった。
「彼等の中で」
「バルマーについてはわからないからな」
アムロはこう述べてその顔を曇らせた。
「しかも全くな」
「少なくともだ」
ブライトはさらに言った。
「彼等は今二つの方面軍をこちらに向けている」
「確かあれですよね」
トーレスが言ってきた。
「外銀河方面軍と銀河辺境方面軍」
「それだな」
アムロが応えた。
「その二つだ」
「その彼等が同時に来るというのは有り得るのか」
「普通はないわ」
答えたのはヴィレッタだった。
「バルマーの勢力の大きさは知ってるわよね」
「ああ」
今度はアムロがヴィレッタの言葉に頷いた。
「五つの方面軍があって普通はそれだけで一つの敵に向かうのよ」
「そうだったのか」
「前の戦いもそうだったわね」
バルマー戦役の話だった。
「あの時か」
「そうだ。あの時だ」
また告げた。
「あの時は銀河辺境方面軍だけだったな」
「そうだったな」
ブライトも言われてふと気付いた。
「一個艦隊でも相当なものだったが」
「一つの星系に向けるのは最悪で一個艦隊だ」
「一個艦隊か」
「そうだ。星系一つにだ」
またそれを述べた。
「普通はそれが基準だ。しかし今回は全く違う」
「よりによって二個方面軍」
「つまり十四個艦隊だ」
こうまで言い切った。
「それだけの数で一気に攻めて来る。有り得ないのだ」
「有り得ないことを仕掛けて来た」
アムロはそこを指摘した。
「そして今は休止だ。一見すれば支離滅裂だ」
「バルマーの中で混乱がある。それとも」
ブライトはまた述べた。
「内部対立か」
「私はそれはわからない」
ヴィレッタはそれには首を横に振った。
「バルマー帝国は封建制だ」
「ああ、それはわかっている」
これはもう皆知っていることだった。
「既にな。階級社会だということもな」
「階級社会だからだ。階級が上になればなる程情報が手に入る」
「言い換えれば下の者には情報は手に入らない」
「その通りだ」
アムロに応えた。
「私も一応爵位のある貴族だったが。それでも」
「バルマーはあまりにも大きいということか」
クワトロはあえてこう表現した。
「全てを知るには」
「十二支族でもなければかなりの情報は得られない」
ヴィレッタはまた告げた。
「何もかもな」
「そうだな。そしてその中心にいる霊帝は」
「拝謁することすらままならない」
一言だった。
「艦隊司令ですらな。そうおいそれとは」
「全てが謎か」
「そう、謎だ。だがあのユーゼス=ゴッツォはかなりのことを知っていた筈だ」
「ユーゼス=ゴッツォか」
「あのバルマーを掌握しようとしていた」
アムロとクワトロは彼のことを思い出した。
「あの男は知っていた」
「だが死んだ」
そうなのだった。バルマー戦役の最後においてオリジナルのラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォによって粛清されている。これでロンド=ベルに何かを伝えられる者はいなくなった。
「完全にな」
「クローンもなくか」
「クローン・・・・・・そういえばだ」
ヴィレッタはあることに気付いた。
「あのユーゼスもまたクローンの可能性がある」
「クローンの!?」
「そうだ。若しかするとだ」
その話になった。
「そういう話を聞いたことがあるのだ」
「謎が余計にわからないな」
「どうなっているのか」
彼等の周りの謎はさらに深まっていっていた。しかもそれを知る術もなかった。しかし彼等はその中であくまで戦うしかなかったのだ。
ゼダンでの補給及び修理を終えて。彼等は日本に向かう。その途中のプラハにおいてだった。
「この街も奇麗なのよね」
レオナが言った。
「立ち寄ることもできないけれど、今回は」
「それが残念ね」
リオも首を捻るのだった。
「折角目の前にあんな奇麗な街があるのに」
「レーツェルさんはどう思われますか?」
「プラハか」
レーツェルはそれを聞いて述べた。
「あそこには思い出が多い」
「思い出がですか」
「そうだ」
リオに対して答える。
「あの街には新婚旅行で来たことがある」
「新婚旅行で」
「今では懐かしい思い出だ。しかし」
「しかし?」
「思い出は思い出だ。だが」
レーツェルの顔が曇る。
「それはもうな。私にとっては」
「そうですか」
「過去はいいものもあれば悪いものもある」
表情はサングラスの奥に消した。曇ったものを見せたのは一瞬だった。
「そしてその二つが混ざってもいるのだ」
「レーツェルさん・・・・・・」
「そしてだ」
「そして?」
「戦いからは逃れられない」
そう言ったその時だった。
「レーダーに反応です!」
「あの敵です!」
ミリアリアとサイが報告した。
「前方に敵が展開してるよ!」
「もうなのかよ!」
カズイとトールは半分悲鳴になっていた。
「補給と修理を受けられたのが正解だったわね」
「そうですね」
マリューの言葉にノイマンが頷く。
「それが不幸中の幸いでした」
「ええ。ですが」
ノイマンは言う。
「ええ。今度の敵は」
「前のものとは違いますね」
連邦軍の兵器ではなかった。ロンド=ベルの面々が見たこともないような兵器ばかりだった。その兵器が前方に展開していたのである。
「あれは無人機ではありません」
ナタルがそれを見抜いた。
「今回の相手は」
「有人というのだな」
「そうです。あの動きは」
空中にいてまだ前に出て来ないがそれでも細かい動きを見て見抜いたのだ。
「ですから今回は」
「手強いな」
「しかしだ」
それでもヘンケンは退く気はなかった。敵がいるその前方を見据えながら指示を出すのだった。
「全軍攻撃だ」
「わかりました」
ナタルがそれに頷く。
「それでは今から」
「進撃だ」
「了解」
皆それぞれヘンケンの指示に応え前進する。その中で彼等は兵を進めていく。その途中でコウタはあることに気付いたのだった。
「んっ、あいつはいないな」
「そうみたいね」
ショウコもそれに気付いたのだった。
「そのかわりに何だか」
「ああ、あいつか」
漆黒の立ち上がった竜を思わせるマシンに気付いたのだ。
「あいつ。やっぱり」
「あのフォルカって人の」
「ほう、フォルカを知っているのか」
そのマシンに乗る紫の髪の男が二人の言葉を聞いて笑みを浮かべた。
「そういえば前の戦いはあいつが受け持っていた戦いだったな」
「あいつっていうことは」
「貴方、あの人を知ってるのね」
「そうさ」
男は二人の言葉に応え不敵ナ笑みを浮かべてきた。
「フォルカ=アルバークだな」
「ああ、そうだよ」
「その人よ」
二人は彼に言葉に応えて頷く。
「あいつのことを知ってるんだな」
「あの人は一体」
「修羅だ」
「修羅!?」
「そう、修羅だ」
また修羅という言葉を出す。
「あいつは、いや俺達は」
「俺達!?まさか」
「貴方も」
「その通りさ」
軽い笑顔で二人に応える。
「俺もまた修羅だ」
「修羅ってそもそも何なんだよ」
「そうよね、一体何なのよ」
「まあ簡単に言うとあんた達とは違う世界から来たんだ」
この言葉はロンド=ベルの面々の予想した通りだった。
「ちょっとな。色々あってな」
「色々」
「とにかく。ここでも戦うってことだ」
彼は今度は戦うと言うのだった。
「戦って相手を倒すのが俺達修羅の宿命だからな」
「宿命。そうか」
クワトロはそれを聞いて何かを悟った。
「どうやら君達はその名の通り戦うことがその目的らしいな」
「その通りだと言ったら?」
「そうか、わかった」
クワトロはそこまで話を聞いて納得した顔で頷いた。
「そういうことか」
「まっ、こっちの世界を修羅界にするってことだ」
「修羅界。修羅の世界か」
「言葉でわかるってのはいいことだな」
またクワトロに軽く言葉を返す。
「あと俺の名前だけれどな」
「何だ?」
「アリオンっていうんだよ」
そう名乗った。
「アリオン=ルカダ」
「アリオン=ルカダか!」
「そうさ。フォルカ共々憶えておいてくれよ」
名乗りながら構える。
「このアガレス共々な」
「アガレスか」
「ハマーン、どうしたの?」
ミネバはアガレスという名前を聞いて顔を顰めさせたハマーンに問うた。
「アガレスという名前が」
「あれは。魔神の名前です」
「魔神!?」
「はい、ソロモン王が封じ込めたと言われている古の七十二柱の魔神」
ミネバにそのことを教える。
「そのうちの一柱の名です」
「そうだったの」
「不吉な。その様な名をマシンにつけるとは」
「俺は別に不吉だとは思っていないがね」
「そして」
ハマーンは今度は今回もいる三体の異形のマシンに気付いた。
「そこにいる三体のマシンもまた」
「あたし達のことかしら」
「そうだ」
ティスに対して応える。
「貴様等。一体何者だ」
「悪いけれど答えるつもりはないわよ」
ティスはハマーンに対してややふざけた調子で言葉を返した。
「あたし達にも事情があるからね」
「どっちにしろ碌なものじゃねえな」
「そうね」
フィオナがラウルの言葉に頷く。
「何かこっちの方が悪魔みたいよ」
「しかも三体共」
「悪魔ではありません」
ラリアーがそれを否定する。
「僕達は」
「少なくとも修羅ではありませんね」
「そうね」
ミズホがラージの言葉に賛同して応える。
「修羅とはまた別系統のマシンです」
「修羅のマシンはあのアガレスと」
ミズホはすぐに分析をはじめた。その結果。
「周りにいる多くのマシンがそうね」
「あれが修羅のマシンなの」
「ええ」
フィオナに対して答える。
「間違いないわ。あれは」
「そう。じゃあ戦力はかなりのものね」
「多分」
「言っておくがな。修羅の名は伊達じゃないぜ」
アリオンが言う。
「それは覚悟しておけよ」
「覚悟とかな。そんなのどうだっていいんだよ」
「何っ!?」
コウタの言葉に顔を向ける。
「どういうことだ、そりゃ」
「今言った通りだ!」
「そうよ!」
ショウコも兄に続く。
「覚悟なしで戦場に出るか!」
「私達だってね!」
『俺達もだ』
ロアも出て来た。
『幾多の世界を彷徨いながらも戦ってきた』
『だからここでも』
「そうかい。じゃあ面白くなりそうだ」
アリオンはこう言われても平気なようだった。
「俺もやらせてもらうぜ。遠慮なくな」
「それはこっちの台詞だ!」
「負けないわよ!」
二人はアリオンに対して突き進みながら叫ぶ。
「じゃあ俺もな」
アリオンは二人のその動きを見て身構えた。拳法のそれだった。
「思う存分やらせてもらう。行くぞ!」
「くっ!」
「来た!」
「受けろこのアリオンの拳」
言いながら全身に込めたオーラを見せつつ技に入った。
「魔龍双破輪転!」
「よけて、兄さん!」
「あ、ああ!」
妹の言葉を受けて咄嗟に上に跳んでかわす。まさに紙一重だった。
「な、何てスピード」
「こいつも。強さが伊達じゃねえ」
「言ったよな、修羅は戦うことが宿命だって」
攻撃をかわされてもまだどうということはないといったふうに二人に言葉を返すのだった。
「しかし。俺の風をかわすとはかなりのものだな」
「風!?」
「そうさ」
不敵な笑みでコウタに応える。
「俺は風。風の修羅だ」
「格好つけてんじゃねえぞ!」
「格好つけじゃねえさ」
それは否定するのだった。
「俺とこのアリオンは風を司っているんだよ」
「風の戦士か」
ヘンケンはそれを聞いて呟く。
「そうか、わかった」
「艦長、それでわかるのかよ」
「今の段階では充分だ」
こうコウタに言葉を返した。
「誰かがわかったのだからな」
「そうなのか」
「それより兄さん」
またショウコが兄に声をかける。
「何だ?」
「目の前に敵がいるのよ」
少し怒った顔で兄に告げる。
「わかってるの、それ」
「わかってるさ、そんなのはよ」
少しむっとした顔で妹に言葉を返した。
「このアリオンって奴を倒せばいいんだろ、要はよ」
「別にそんなこと言ってはいないけれど」
「けれど戦うんだよな」
また言い返す。
「違うのか!?」
「まあそうね」
兄の言葉にいい加減うんざりしてきて答えた。
「わかったら。前を向いて」
「ああ」
「何だ、御前」
アリオンは今の二人のやり取りを見てあることに気付いた。
「妹の尻にしかれてるのか?」
「うるせえ!」
ムキになってそれを否定する。
「誰がだ!」
「だから御前だろ」
またコウタに言う。
「御前の他に誰がいるんだ」
「この野郎、言わせておけば」
「おいおい、八つ当たりはするなよ」
また軽い調子でコウタに言う。
「風に八つ当たりはな」
「何か知らねえけれど御前みたいにむかつく奴ははじめてだぜ」
完全に彼の主観である。コウタの。
「許せねえ!」
「また八つ当たりかよ。まあいい」
しかしアリオンはコウタのその激情をあえて受けるのだった。
「こっちもそれでやりがいがあるしな!」
「喰らえっ!」
コンパチブルカイザーの攻撃がアリオンを襲う。両者の闘いが本格的にはじまった。
その周りではロンド=ベルの他の面々が修羅のマシンと戦っている。彼等は戦っているうちにあることに気付いた。
「んっ、こいつ等」
「そうだな」
デュオの言葉にウーヒェイが頷く。
「接近戦がやけに強いな」
「しかも格闘だ」
それを見抜いたのだ。
「なら方法がありますね」
「そうだな」
カトルの言葉にトロワが頷く。
「一方が接近戦で引き付けて」
「もう一方が遠距離から狙い撃つ」
「それが一番だな」
ヒイロも応える。
「なら・・・・・・!」
「よっし!後ろは任せたぜ!」
「俺達が行く!」
「御願いします!」
デュオ、ウーヒェイ、カトルがまず突っ込む。まずはデスサイズヘルカスタムとアルトロンカスタムが敵の攻撃をかわしつつその中に切り込む。
「ちょっとばかり痛いが我慢しな!」
「一撃で終わらせる!」
それぞれサイズとトライデントを縦横に振り回し周りの敵を薙ぎ払っていく。カトルはマグアナック隊を呼び彼等と共に切り込んだ。
「頼みましたよ!」
「お任せ下さいカトル様!」
「一緒に行きましょうぜ!」
マグアナック隊の強さはかなりのものだった。彼等とカトルの一斉攻撃で敵陣に穴が開いた。そこにトロワが一斉射撃を加える。
「修羅であろうとも。敗れることもある」
そう呟きつつ攻撃を放つ。続いてヒイロが敵に照準を合わせる。
「ゼロが見せた未来に」
照準を合わせつつ彼も言葉を呟く。
「御前達はいない」
そのツインバスターライフルでの攻撃は決定的だった。敵陣に大きな穴をさらに開け勝敗さえ決してしまった。大きく開いた敵陣にロンド=ベルの主力が入り込んだのだ。
「今よ!」
ゼオラが叫ぶ。
「アラド、ついて来て!」
「ああ、クォヴレーはどうした!?」
「もう先に言ってるわ」
「何っ、あいつ何時の間に」
「修羅か」
クォヴレーは修羅達と戦いながら呟いていた。
「御前達は一体」
「ミッチー、いいな!」
「ええ、宙さん」
美和は宙の後ろにしっかりとついていた。
「後ろは任せて!」
「よし!」
彼等もまた敵陣に突入する。これで勝敗が完全に決した。ティス達はそれを見て言うのだった。
「こうなったらもうどうしようもないわね」
「負けるの?私達」
「負けてもどうってことないじゃない」
怯えたように言うデスピニスに対しても言う。
「撤退して態勢立て直せばそれでいいだけだし」
「けれど」
「けれどもどうしたもじゃなくて」
「アリオンさん」
ラリアーがアリオンに声をかける。彼は相変わらずコウタ、ショウコと激しい一騎打ちを繰り広げている。
「ちょっといいですか?」
「撤退か?」
「はい。戦局は僕達にとってかなり危険な状況です」
「だから。ここは」
「そうだな。それもありだな」
彼等の言葉に頷くのだった。
「ここはな」
「じゃあ撤退ですね」
「ああ、御前等先に言ってろ」
こう三人に言う。
「俺は後から行くからな」
「えっ、まさか」
「おいおい、お嬢ちゃん」
不安げな顔になったデスピニスに笑顔で告げる。
「何不安になってるんだよ。俺は絶対に帰るからな」
「そう・・・・・・ですか」
「安心してくれよ。風の赴くまま帰って来るさ」
「何かそれって不安になる言い方なんだけれど」
ティスは醒めた感じで彼に言い返す。
「どうなの、それって」
「まあいいだろ。帰って来るんだからな」
「それはね。そうだけれど」
こう言われてはティスも返す言葉がない。
「じゃあ後はあんたに任せてあたし達は修羅の人達と一緒に撤退すればいいのね」
「そういうことだ」
「わかったわ。それじゃあ」
「アリオンさん、後は」
「お任せします」
三人と修羅の主力がまず姿を消した。そしてアリオンも。
「おい坊主、お嬢ちゃん」
「何だ!?」
「もう貴女だけよ!」
二人は今もアリオンに対して凄まじいまでの闘志を見せていた。
「まだやるっていうんなら!」
「覚悟しなさい!」
「といきたいところだがこっちにも事情があってな」
軽く笑って二人に言葉を返す。
「帰らせてもらう。じゃあな」
「待ちやがれ!」
「逃がさないわ!」
「風に追いつけたらな」
だがアリオンは二人を振り切った。風の中に消えそのまま姿を消す。彼が戦場から消えた時にはもう敵は誰も残ってはいなかった。ロンド=ベルの戦士達だけがいた。
「何ていうかよ」
「ああ」
タップがケーンの言葉に応える。
「今回あっという間に終わったな」
「騒ぎが大きくなると思ったんだけれどな」
「敵の数も少なかった感じだな」
ライトは敵の数を指摘した。
「あの修羅って連中も結構な戦力がありそうな気がするんだが」
「他で何かどえらいことしてんじゃねえか?」
「どえらいことって何だよ」
「例えば東京大侵攻とかよ」
ケーンはタップに答える。
「大阪大攻勢とかよ。そんなので」
「思いきり縁起が悪いな、それは」
「縁起が悪いのは戦争自体そうじゃねえか」
「まあそれはそうだけれどよ」
「どっちにしろ奴等の戦力もあの程度じゃないな」
ライトはそれだけははっきりわかっていた。
「さて、今後どうなるかだな」
「それも気になるけれど」
「おっ、リンダどうした?」
ケーンは通信から話に入って来たリンダに顔を向ける。
「あの三体のマシン」
「あいつ等か」
「修羅とは本当に違うわね」
「んっ、そういえばだ」
タップがここで気付いた。
「どうした、タップ」
「あの連中のやり取りだけれどよ」
「ああ」
「何かあのアリオンって奴とは結構他人行儀だな」
「そういえばそうだな」
ライトはタップのその言葉に頷いた。
「まるで別の組織同士みたいにな」
「何だ?じゃああの三人のガキとアリオンだのフォルカだっていうのは全然別の組織なのかよ」
「そうじゃないかしら」
リンダは考える顔になっていた。
「まだよくはわからないけれど」
「とりあえずはですな」
「軍曹」
ベンもモニターに出て来た。
「母艦に戻って下さい」
「おっとそうだな」
「ここにいても仕方ないもんな」
「その通りです。戦いは終わりました」
ベンらしい的確な正論だった。
「ですからもう」
「わかったよ、じゃあ軍曹」
「今からそっちで話ってことで」
「はい」
ベンは三人の言葉に頷いて応える。
「それで御願いします」
「了解」
「それじゃあ今から」
「帰還ってことで」
三人だけでなく他の面々も母艦に戻る。戦いは完全に終了しロンド=ベルはまた日本に向かうことを再開した。しかしその中でも。修羅について色々と話されていた。
「戦うことが宿命か」
「何ていうかあれだよな」
宇宙太とカイが話をしている。
「どっかで聞いた話ですよね」
「そうだよな。北と南みたいな感じでな」
「全くだよ」
それに沙羅が頷く。
「妙に血が騒ぐっていうか」
「その通り。美しいのだが」
ブンドルも出て来た。
「しかしそれでいて殺伐としている」
「妙な感触だね」
ジンも微妙な顔をしていた。
「どうにも」
「あんた達は何か南っぽいね」
横からシモーヌが五人に言った。
「それであんたは」
「俺は北か?」
「自分でわかってるじゃない」
竜馬の方を見て笑う。
「あんただけじゃないけれど」
「それは気のせいってやつだ」
フォッカーが右手を横に振ってシモーヌに応える。
「御前さんのな」
「そうかね」
「そう思っておきな。拳法の話はやけに複雑になるからな」
「どうしてかね、それはまた」
とりあえず拳法にまつわるような話の展開は一先中止となった。しかしそれでも修羅についての話は続けられるのだった。光が言う。
「あの人達、物凄い闘志だったよ」
「そうね」
光のその言葉に海が頷く。
「普通じゃない位ね」
「ただの闘志ではありませんでしたわ」
風もそれを感じていた。
「まるで。戦うことだけが生きがいのような」
「丁度あれね」
キーンが言う。
「ハイパー化する直前みたいな」
「激しい闘志だ」
ニーが付け加える。
「少なくともあのフォルカやアリオンという男達からはそれを感じる」
「待ってよ、それだけのオーラ力を出したら」
チャムも話に加わってきた。
「身体がもたないよ、それこそ」
「その通りだ」
ショウはチャムのその言葉に頷く。
「あんな状況で戦い続ければ何時か身体だけじゃなく心も壊れてしまう」
「それ、よくわかるぜ」
トッドはショウのその言葉に賛同してみせた。
「というか実感したぜ」
「トッド」
「実感!?」
「ああ。バーンさん、あんたは俺よりもだろ」
「うむ」
バーンはトッドのその言葉に頷いた。
「その通りだ。私がハイパー化した時だ」
「ああ」
「確かに憎悪に心を満たされていた」
ハイパー化する時の条件だ。
「しかし。それと共に闘争心も暴走し」
「あの修羅達みたいに?」
「近い」
はっきりと皆の問いに答えた。
「あの闘志の高さだった。あの状態を続ければ」
「間違いなく崩壊します」
シーラが出て来て述べた。
「ハイパー化するよりも前に」
「ですが。一つそれから逃れる方法があります」
「エレ様」
「それは一体」
エレにショウとリムルが問う。
「それをエネルギーに変えるのです」
「闘志をエネルギーに変えるのですか」
「そうです。ですがそれもまた」
エレの顔が曇る。
「おそらく危険です。そうしたマシンは闘志を命に変えて吸収しますので」
「ではどのみち」
「はい。おそらく彼等は命を削って戦っています」
こうショウに答えた。
「ですから彼等の命は」
「私達のオーラ力とは全く違う使い方なのは確かだな」
「そうだな。そんな恐ろしいマシンがあるなんてな」
ショウは今度はガラリアの言葉に応えた。
「正直思いもしなかった」
「けれどさ。命を削ってるのならあれだけの強さもわかるよ」
チャムがショウに話す。
「だからあの連中は」
「ああ。かなり手強いのは間違いないな」
「それとだ。あのガキだけれどな」
今度はトッドがまた言ってきた。
「どうしたの?」
「あの連中のオーラ力も妙だよな」
「オーラ力が?」
「そうだ。作り物みたいな感じだ」
首を傾げながらの言葉だった。
「強いことは強いんだがな。けれどな」
「作り物みたいって」
「ノヴァっていただろ」
セフィーロの話になる。
「あんな感じだな。ボルフォッグ達とはまた違ってな」
「ノヴァ。そうね」
マーベルはトッドのその言葉に頷いた。
「確かに似てる雰囲気ね」
「御前さんもそう思うか。じゃあやっぱりそうなんだな」
トッドはマーベルの言葉を聞いて自分の考えが間違っていないことをあらためて認識した。
「あのガキ共もあれはあれで謎だぜ」
「謎が謎を呼んでいます」
シーラがまた言ってきた。
「その中で私達も」
「そうよね」
チャムがシーラの言葉に頷く。
「頑張らないと」
「頑張ってどうにかなかったらいいんだけれどな」
ショウはそんなチャムに言葉を返す。
「チャムの言う通りに」
「あっ、馬鹿にしてる」
「馬鹿にはしていないさ」
それは否定するのだった。
「ただ」
「ただ。何よ」
「チャムはいいよな、気楽で」
「それが馬鹿にしてるっていうのよ」
「悪い悪い」
最後は明るいやり取りで終わった。戦いはまた新たな局面を迎えようとしていた。日本に辿り着くまでに彼等を多くの戦いが待っていたのだった。それが何かはまだわからないが。

第五十五話完

2008・4・19  
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