【完結】剣製の魔法少女戦記
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第一章 無印編
第十一話 『海鳴温泉(後編)』
前書き
今回は後半で戦闘パートです。
もしかしたら少し短いかもしれません。
Side シホ・E・シュバインオーグ
それから夜になると宴会が開かれた。
なにやら士郎さんと恭也さんが隠し芸を披露しては皆を騒がしていたのが印象に残る。
そういえば四日間の世界で夜に衛宮の武家屋敷で人や魔術師、サーヴァント関係なしにどんちゃん騒ぎをする事が何度かあった。
もちろん現実にはサーヴァントは全員この世に存在していなくて死人もいた。
でも、それでも私にとってはとても楽しい思い出の一つだ。
それを思い出すとつい私も笑みを浮かべてしまう。
そう思いながら宴会場に置かれているジュースを口にする。
…それが悪かったのかどうか分からないけどどうやらお酒だったらしくすぐに酔いが回ってきた。
おかしいな…? イリヤってよくワインとか飲んでたよね?
しかし鋼の精神力でそんなものはすぐに跳ね返した。
だけどやはりまだこの体には早かったらしいので少し外の風にあたって来ることにした。
するとフィアが一緒についてきてくれた。
それで二人で夜空の月を眺めながら、
《…今日、夜に抜け出す準備をしておこうか?》
《はいです。兄さん達も昼間の女性について感づいているみたいでしたから…》
《そう。…フィア、武器の準備をしておきなさい》
《はい…?》
《あなたの実力がどの程度上がったか見て上げるわ》
《あ、はい!》
そして夜もふける頃、
―――キイィンッ!
「「「「!」」」」
感じた…!
私達四人はジュエルシードの反応にとっさに起き上がり旅館を飛び出した。
だが到着した時にはもう事は終わっていた。
「あら、昼間の忠告も聞かずによく来たねぇ?」
「ッ!」
なのはが一瞬怯んだけど、
「お話を聞かせてくれないかな!?」
「…なにも話すことはありません」
なのはは必死に言葉を続けようとするが何度か話してみて埒が明かなかったので、
「いいかげん人の話を聞く癖くらいはつけた方がいいわよ? フェイト…それにアルフも」
「シホ…それでも、話してもきっとわからない」
「そう…。それじゃ力ずくで聞き出さないといけない訳ね? あなた達がジュエルシードを集めている訳を…」
私の言葉に二人は身構える。
どうやら前回の戦闘で私が一番相手にしたくない対象になってしまっているらしい。
それなので開始する前に一言言わせてもらうことにした。
「公園でもいったけど、私はもしもの時の保険よ。
なのはとフェイトとの戦闘には極力介入はしないわ。
さ、なのは。特訓の成果を発揮しなさい」
「うん!」
ちなみになのはが私とフェイトの会話で口を挟んでこないのには理由がある。
まぁぶっちゃけると公園でフェイト達と遭遇したことを事前に話していたからである。
その時になのはは「それなら今度は私も名乗り合いたい!」という事で今回私は静観することになっている。
「それと、アルフの相手はフィアがするわ」
「え…?」
それは誰の声だっただろうか…?
張り詰めた空気が一瞬だけど霧散した。
「…えっと、フィアちゃんなの?」
「ええ、そうよ? さて、フィア。あなたの本当の姿を見せなさい!」
「はい。お姉様!」
そしてフィアは人間形態に戻った。
ついでにその手にはゲイ・ボルクのように矛先はついていないが身長より少し長い程度の槍…というより棒が握られていた。
それになのはは酷く驚いて、ユーノはもう普通に戻れるほど魔力が回復したの!? といった表情を浮かべていたが今まさに戦闘が起こる前だと言う事で落ち着かせる。
「…もう、いいですか?
それじゃジュエルシードを集めているもの同士、お互いに一つずつ賭けて負けたら相手に譲るのでいいですか?」
「いいんじゃないかしら? 別にいずれは取り返すつもりだから痛くはない条件だわ」
「それじゃ…いっちょやりますか!」
アルフの一言でなのははフェイトと、フィアはアルフと戦闘を開始した。
私とユーノはお互いの戦いを見物することになった。
◆◇―――――――――◇◆
フィアットが本当は人間だったって事になのははひどく驚いた。
それだとユーノ君も…、という疑問も浮かんだらしいが今はどうやら保留にするらしい。
今はフェイトとの勝負になのはは集中した…!
「いくよ!」
《divine shooter.》
なのはは掛け声とともにディバインシューターを四つ展開した。
それにフェイトも一瞬驚いたけどすぐに同種のフォトンランサーを同じ数形成して。
「シュートーッ!」
「ファイアッ!」
放たれたスフィアが同時にぶつかり合って視界が悪くなったところにフェイトはすぐに『ブリッツアクション』でなのはの死角に移動するが、なのはは予想していたかのように背後からの攻撃を杖で防ぎシールドを展開しその場から離脱を図り、またスフィアを展開し牽制でフェイトに放った後、なのはの編み出した移動系魔法『フラッシュムーブ』である程度移動した後、
《Shooting Mode. Set up.》
《divine buster.》
「ディバイーン…バスター!」
「ッ…サンダースマッシャー!」
お互い同時に放たれた光はまた打ち消しあっていた。
だがなのはは攻め手を緩めない。
さらにシューターで牽制し、フェイトからの攻撃を意識的に展開し防ぎフェイトを近寄らせない。
(前の時より強くなっている!)
(絶対にお話を聞かせてもらうの!)
二人の攻防、それは傍から見ればまさに人外の戦いのように見えただろう。サーヴァント達の戦闘を知っているシホにとってはランクは低いだろうが…。
そしてフィアットとアルフの戦いはというと、
「はっ!」
「ぐあっ!?」
フィアットのゼロレンジからの鉄山靠がアルフのお腹に炸裂する。
アルフはお腹の痛みを堪えながらも突撃して鉄拳を決めようとするが、フィアットは最近やっと習得した『瞬動術』で二段瞬動をしてアルフの背後を取り魔力を流し込み強化した棒を構えた。
「突ッ!」
ドスッ! という重たい音がアルフの腹を浸透し、吹き飛ばされたアルフは勢いで木々を数本かぶち抜いた。
それでもフィアットは油断などせずに棒を片手で回転させながら隙を出さない構えを取っていた。
アルフの野性ゆえの直情的な動きがあるためにフィアットはなんなくそれを対処してカウンターで跳ね返したのだ。
カウンターという所がシホが教えているだけあり様になっている。
当然戦場の心得として最後まで油断は禁物と自身を戒めている。
「人間形態で挑んだのが失策ね…。獣形態ならああうまくは決まらないわ」
「というよりフィアの動きがすごい…。あれ、本当に魔法使っていないの…?」
「瞬動を使う時と武器や拳に魔力を瞬間的にこめる以外はほぼ自身の力ね。
フィアはもともと武術家としての地盤は出来ていたからとても教えやすかったわ。
…さて、フィアの成長も十分見られたことだし、そろそろなのは達の方も決着が着きそうね?」
「えっ…?」
傍観者と化していたシホとユーノは四人の戦いを見ながら色々と会話をしていたが、シホが動き出した。
◆◇―――――――――◇◆
Side フェイト・テスタロッサ
確かに強い…!
前の倍、いやそれ以上のものになっている。
シホが戦い方を享受したっていうけど、これはもうすごいを通り越して異常…。
成長速度が半端じゃない。
「バルディッシュ!」
《yes, sir. scythe form. set up.》
「あっ!? レイジングハート!」
《flash move.》
接近戦で攻めようとサイスフォームに移行したのを見た白の少女は移動系の魔法ですぐに私から距離をとり砲撃の構えをする。
そしてスフィアをまた形成して今度は一転集中させて放ってきた。
「バルディッシュ!」
《defenser.》
それをとっさに防御魔法で防いだ。
「接近戦の対策もしているんだね…」
「うん。全部シホちゃんやユーノ君達が考えてくれたんだよ」
「そう、やっぱり…」
シホは今のところ魔導師ではないけれど実力はおそらく私や目の前の少女とは比べ物にならないものだと思う。
見ればアルフもシホが使う体術の動きが似ている少女に少し…いや、かなり押されているように見える。
シホに学ぶ事が出来れば私も強くなれるかな…?
そんな希望的思考をしたがすぐに振り払ってバルディッシュを構える。
「私の名前はなのは。高町なのは! あなたのお名前は!?」
「シホに聞いているんじゃないんですか…?」
「あなたの言葉から聞きたいの!」
「…フェイト。フェイト・テスタロッサ」
突然の事だったから私は気づけば白い魔導師…なのはに名前を名乗っていた。
でもこれは、彼女も私と同じ土俵に上がってきたという意思表示でもある名前の交換。
それならもう手加減は一切しない。
「アーク…ッ!?」
私がアークセイバーを放とうとした。
だけど私となのはとの間をすごい速さでなにかが通過したのを見た。
戦闘も忘れて私はそれを見た。気づけばなのはも見ている。
通過した先に見たのは大樹に一本の黒い十字架のような剣が突き刺さっている。
それだけならまだよかった…でも、それで大樹はぽっきりと折れてちょうど私達の中間に倒れた。
あんな細腕のどこにあんな腕力があるのだろうと、唖然としている中、
「今日はもうこれくらいにしておきましょう。これ以上続けるなら私が参加するわよ?」
シホがそう言ってきた。
どうしてかと思ったけど…、
「二人とも思うところはあるでしょうけどこれでもう二人は対等の場に立ったわ。
今日はそれが目的の一つでもあったんだからもうこれ以上無意味な争いは避けなさい」
…そうか。
これもシホの計画のうちという訳だったんだね。
本当に、不思議な娘。
でもつい私は笑みを零した。
「アルフ…今日はもう帰ろう。目的のモノは手に入れた。これ以上は高望みだよ。それにシホにも怒られたくないし…」
「はぁい…それはあたしも思っていたところだよ。ところでそこの小娘! 名は!?」
「フィアットよ」
「フィアットね…その名前、覚えたからね! 次は覚悟しておくんだね!?」
「ええ。油断しないで待っているわ」
それでアルフは「ふんっ!」と鼻を鳴らせながらもどこか嬉しそうにしていた。
「それじゃ、またね。シホ、なのは…」
私達はそれで転移魔法を使い撤退した。
◆◇―――――――――◇◆
Side 高町なのは
フェイトちゃんは「またね」と言ってその場から消えていった。
結局ジュエルシードは先を越されちゃったけど…でも今は嬉しい気分。
だってやっとフェイトちゃんと名前で名乗りあえるんだから。
だから今度は理由も聞き出したいと思っていたら、
「なのは…二回目の戦闘にしては上出来だったじゃない」
そう、私をフェイトちゃんと戦えるように鍛えてくれたシホちゃんが褒めてくれた。
それでますます嬉しくなって、
「ありがとう、シホちゃん! シホちゃんのおかげでフェイトちゃんとお話できたよ!」
「何言っているのよ。それは全部なのはの努力の成果じゃない? 私はただ背中を押してあげただけ…。
それとフィアも強くなったわね。あの動きをさらに良くしてデバイスを使えるようになれば基準はわからないけど高みを目指せると思うわよ」
「ありがとうございます、お姉様!」
フィアちゃんはそう言ってシホちゃんに抱きついていた。
あれ? そういえば冷静になって考えてみると、
「そういえば、なんでフィアちゃんは人間の姿をしているの…?」
「え…? これが私の本当の姿だからですよ。前に夢で見せたと兄さんが言っていたんですけど…」
「………え?」
「なのは、覚えていないの?」
そう言いながら今度はユーノ君の体も光りだしてフィアちゃんと瓜二つだけど、少し男の子よりな容姿の少年が立っていた。
「え…? ふえぇぇぇーーー!?」
私は盛大に大声を上げていた。
そういえば夢で見たような気もしたけどまさか本当に人間だったなんて…。
そこにシホちゃんがなにやらどこにしまっていたのか分からないけどメモ帳を取り出した。
フィアちゃんもフェレットの姿に戻りシホちゃんの肩の上に乗って、
「…えっと、何しているの?」
「え? ユーノの罪状をメモしているだけよ?」
「そうです。兄さんは変態さんですから」
「っえ!? 僕がなにをしたっていうの!?」
「だって、女性のお風呂場に入ってきたじゃない?」
「だからあれは恭也さんのせいだって言ったでしょ!? それに最初は僕も男湯にいたじゃないか!」
そんな会話が繰り広げている最中、
(だとすると私達全員裸を見られちゃったって事…?)
その答えを得た途端、すごい恥ずかしくなり思わず「にゃああああッ!」と叫びながらレイジングハートでユーノ君を殴ってしまいました。
「…気絶しているわ。当然の報いね」
「…そうですね。いい薬です」
二人が無表情でフェレットに戻ったユーノ君を見下ろしながら会話をしていたところがとても怖かったです…。
でも暗くなるよりはいいよね? シホちゃんも今はそんな感じじゃないから。
そして夜もふける中、シホちゃんが人避けの魔術…(?)というものを使ってくれたのでうまく皆のところに戻る事が出来ました。
今日はもう日が変わっちゃっているけど、安心して眠れそうです。
後書き
書いていて思いました。木々への被害がすごいと…。
それと原作より早くユーノ達の正体を明かしました。別にこれといって意味はありませんが。
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