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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十一話 二人への疑念

              第四十一話 二人への疑念
    
バルマー軍との戦いを終えたロンド=ベルはまたゼダンに入った。そこでこれからのことについて状況を見極めていたのであった。
だがそこで。怪しい動きも見られた。
「またか」
「どうやらな」
アスランとレイが怪訝な顔で話をしていた。
「あの二人がまたいない」
「昨日も少しいなかったな」
「そうだ。そしてすぐに出て来る」
そう言いながらさらに怪訝な顔を見せるのであった。
「その前からな」
「バルマーの時は大人しかったがな」
「ああ」
それはレイも感じていた。だからこそアスランの言葉に頷くのだ。
「となると。問題は」
「どの勢力と関わっているかだな」
「関わっているか、やっぱり」
「俺はそう見ている」
レイは見抜いていると言えた。アスランも大体同じだが彼はあえて確信することを避けているのだ。
「どの勢力かまではわからないがな」
「ゲストかインスペクターか?」
アスランはその二つの組織を出した。
「バルマーではないのは間違いないな」
「少なくともそれは考えられないわね」
ルナマリアが話に入って来た。
「だってバルマーに対しては二人の動きは変わらないじゃない」
「そうだな。それはな」
アスランはルナマリアのその言葉に頷いた。
「全く変わらないな、本当に」
「そういうこと。それを考えたら」
「ゲストでもインスペクターでもない」
レイは言う。
「そうなるとだ」
「シャドウミラーか!?」
ハイネが気付いた。
「あの連中のことはまだよくわかっていないが」
「そうね」
ルナマリアがそれに頷く。
「敵の組織の中でも一番ね」
「アインストでもないだろうしな」
アスランは彼等についても考えを向ける。
「じゃあ一番怪しいのはやっぱり」
「それもおそらく今度のシャドウミラーとの戦いでわかる」
レイの言葉はかなり思い切りのいいものであった。
「彼等の動き次第でな」
「そうなるか。じゃあ今は待つしかないんだな」
「そういうことだ。用心をしながらな」
「まどろっこしいわね、それって」
ルナマリアの性分ではない、少なくとも。
「早いところ白黒わからないと」
「だが下手に動いても何にもなりはしない」
ハイネが言ってきた。
「慎重に動くのも大事だ」
「ハイネの言う通りだな。正直シンやカガリは今にも二人に飛び掛りそうだが」
「あんたもそれ止めるの大変ね」
「大変なんてものじゃないっ」
ルナマリアに返すアスランの言葉は少し泣きが入っていた。
「最近それで疲れが余計に溜まっているんだ」
「他にはイザークもだしな」
レイがイザークの名前を出す。彼もまたかなりの直情家だからこれは充分考えられることであったし実際にそうなっていたのだ。
「あの連中は。どうにもこうにも」
「他にも大勢いるしな」
ロンド=ベルは直情的な性格の人間が多い。だから二人に対する目も自然とそうなる。だからこそ問題になってもいるのである。
「どうなるかな、本当に」
「それももうすぐわかる」
レイはまたそれを言う。
「もうすぐな」
「その時だな。どうするか」
ハイネがクールに呟く。
「二人も俺達もな」
彼等はゼダン周辺をパトロールしながらそんな話になっていた。それを終えゼダンに帰ると丁度昼食の時間であった。皆派手に食べていた。
「ああ、おかえり」
リュウセイが彼等を出迎える。
「悪いがもう皆はじめてるぜ」
「お握りなのね」
ルナマリアはリュウセイが手に持っているものを見て言った。
「今日のお昼は」
「あとサンドイッチとソーセージとか色々だな」
他にも結構あるようだ。
「ユンがチヂミ焼いたしな」
「ああ、あれも」
韓国系らしいユンの手料理であった。
「あの娘の料理ってそんなに辛くないしいいわよね」
「私のは日本仕込みなのよ」
その本人が出て来て答える。
「日本風の味付けをかなり入れてるのよ」
「そうだったの」
「ええ。私日本に昔から憧れていたのよ」
にこりと笑って述べる。
「それでね。お料理もそうして」
「へえ、それでか」
リュウセイは手に持っている御握りを食べながらユンに言う。
「このキムチもあまり辛くないんだな」
「辛いばかりが韓国料理じゃないのよ」
それがユンの言葉であった。
「だから。あえてそうしているのよ」
「そうか。それはそうとな」
「ええ」
「チヂミあるよな」
「勿論」
またにこりと笑ってみせてきた。
「たっぷり焼いたから。皆で食べて」
「有り難う。じゃあ私はそれを」
ルナマリアは素早くそのチヂミの方へ向かう。
「頂くわ」
「俺はまずはコーヒーをもらうか」
レイはそちらに向かう。
「クライマックスなコーヒーをな」
「いいな、レイは」
アスランは何故かここでレイをうらやましがる。不思議なことに。
「俺は何か最近蝿にたかられるしな。どうなっているんだ」
「ニキニキしていないからじゃねえのか?」
リュウセイがそうアスランに突っ込んだ。
「よくわからねえけれどよ」
「ニキニキどころか」
アスランの顔が暗くなる。
「カメレオンにも好かれるしな。どうなっているんだ」
「俺は最近何か変に降臨したいんだよな」
「ああ、それわかるぜ」
シンが出て来て言う。彼はサンドイッチを食べている。見ればソーセージサンドだ。
「俺も答え聞きたくない時あるしな」
「だよなあ。何でだろ」
「電車に乗ってるんじゃないの?」
ルナマリアはそう二人に突っ込みを入れた。
「それって」
「電車か」
「頼りない自信のない男の子と一緒に」
「そうかねえ」
「何かそういう気もするな」
「俺もだ」
リュウセイもシンもレイも何故かルナマリアのその言葉を否定できなかった。
「そういえばヤザンさんの声でな」
「なあ」
「ああ、わかったぜ」
そのヤザンも出て来た。
「どうも俺も電車の話を聞くとな。不思議と世話を焼きたくなるんだよ」
「なるんだよって言われても」
「あの、ヤザンさん」
ルナマリアとユンは今のヤザンの姿を見て目が点になる。
「どうしてエプロンなんか」
「まさか最近クッキングに」
「ん!?和食メインだけれどな」
何と緑色でカラスのアップリケのエプロンをしている。かなり目立つ。
「最近料理が楽しくて仕方ないんだよ」
「絶対何か取り憑いてるわよね」
「そうね」
二人はそんなヤザンを見てヒソヒソと言い合う。
「何が取り憑いたのかしら」
「ヂボデーさんもねえ」
「まあ飴でも食うか?」
ヤザンは今度は飴玉を出してきた。
「名付けてヤザンキャンデーだ」
「絶対に何かあるわね」
「そうね」
「おい、ヤザン」
そのヤザンにジェリドが声をかけてきた。
「んっ!?どうした?」
「とりあえずおかか握りくれ」
「ああ、それか」
どうやら御握りはヤザンの手作りが多いらしい。
「まだまだあるぜ。そっちにな」
「わかった。じゃあ頂くぜ」
「それにしてもあんた最近料理が上手くなったわね」
「ははは、まあな」
ライラにもそう言葉を返す。ヤザンも明らかにティターンズにいた頃とは別人になっていた。誰もが大きく変わっていた。あの二人を除いては。
「大次郎さん」
「どげんしたと、キラどん」
「やっぱり男は熱くないと駄目ですよね」
キラは素面でヤザンにそう語っている。
「そして何処までも一直線で」
「その通りでごわす。キラどんも男祭りに目覚めただすな」
「はい!」
キラもまた変わってきていた。
「力と力、技と技ですよね」
「その通りでごわす、そして力」
「ですよね」
大次郎の言葉に大きく頷いている。
「そうしたものがあってはじめて何かができます」
「軍神に勝つこともできるでごわすよ」
「何か今の言葉はちょっと」
カナンは二人の言葉に少し苦笑いになっていた。
「聞き捨てならないものがあるわね」
「またそれはどうしてだ?」
「何となくだけれどね」
何故かここで舞うカナンであった。宝塚の様に。
「あの二人が揃うとどうしても」
「バサラな気分になるの?」
「そういうこと」
そうアヤに答える。
「何故かね」
「じゃあフラガ少佐もそうなのね」
「三人揃えば余計に」
何かと複雑な立場のカナンである。
「そうなるわね。最近お酒も好きになったし」
「日本酒ね」
「ええ。何か幾らでも飲めるわ」
見ればここでもその手に盃を持っている。
「お塩と梅干で」
「そうなの」
「ところで」
「ええ」
ここで話が少し動いた。
「あの二人は何処かしら」
「一応はいるわ」
そう言って部屋の端を左の親指で背中越しに指差すアヤであった。
「あそこにね」
「そう。いるのね」
「今度はわからないけれど」
「相変わらずなのね」
「まあね。相変わらず動きがわからないのが問題ね」
「これからも見ておく必要はあるのね」
「多分。もうそろそろまた敵が出て来る頃だし」
「今度の敵は何かしら」
「わからないわ。ただ」
アヤの目に剣呑なものが宿る。
「シャドウミラーだったら」
「そうね。その時は」
「リー艦長が一番警戒しているわ」
ここでアヤはリーの名を出す。
「今にも身柄を拘束しかねない感じね」
「そこまでなのね」
「けれど。間違いじゃないし」
それがわからないアヤでもない。確かにリーはいささか強硬だがそれも正しいと言えるものなのは事実なのだ。何しろスパイの疑惑なのだから。
「警戒はしておきましょう」
「わかったわ。これからは一層ね」
「ええ。それじゃあまた食べましょう」
「実は私もチヂミ好きだしね」
「あら、そうなの」
これはアヤにとっては意外な言葉だった。
「ニコル君も時々食べたりするけれどね」
「ニコル君も何処か他人とは思えないし」
何故かニコルについてそんな感情を抱くカナンであった。
「一緒に食べることにするわ」
「それじゃあ私はセシリー達と一緒に」
「貴女も似ている人が多いわね」
「そうね。だから寂しくないし」
にこりと笑ってもみせる。
「ここにいたらね」
「そうね。そういう意味でもいい舞台ね」
「ええ」
昼食は和気藹々としたムードであった。しかしそれも終わる時が来た。地球に向けてシャドウミラーの軍が動き出したとの報告が届いたのである。
「シャドウミラーか」
リーはその報告を聞いてまずはその目をさらに鋭くさせた。
「好都合と言うべきか」
「何よ、まだ二人のこと疑ってるの?」
「疑っているのではない
こうアカネに言葉を返す。
「確信しているのだ」
「やれやれ。艦長さんも相変わらずね」
「けれど御二人は今ヒリュウにおられますので」
シホミがリーににこりとした笑みで告げてきた。
「私達にできることはありませんね」
「なければ作るだけだ」
それで諦めるリーでもない。
「下手な動きをすれば構わん」
「どうするっていうの?」
「撃つ」
アカネに対して言う。
「容赦なくな。わかったな」
「何かすっごい物騒な話になってるわよね」
艦橋にいたミヒロがリーの言葉を聞いて呟く。
「これから大丈夫なのかしら」
「さあな。かなりやばいだろ」
カズマが妹に対して応える。
「この艦長さんもお堅いからねえ」
「堅くて結構だ」
それでめげるリーではない。
「何かあってからでは遅いのだからな」
「しかし何かあってからでないと動けない」
ブレスフィールドがここで口を開く。
「相手が相手だしな」
「ふん、私の目を誤魔化すことはできん」
リーもリーで己の自信を見せる。
「下手な素振りを見せればその時でハガネの主砲で地獄に送ってやるだけだ」
「それはわかったから。艦長」
またアカネがリーに声をかけてきた。
「何だ?」
「それで今地球に向かっている敵はどうするのよ」
「知れたこと。追う」
それはもう決まっていることであった。
「すぐに全軍出撃する。いいな」
「ゼダンはどうするの?」
「それはこれからの作戦次第だ」
その辺りはロンド=ベルらしく臨機応変であった。
「奴等が地球に入ればその時は」
「地球に向かうってことね」
「そういうことだ。わかったな」
「わかったわよ。まあ今はとにかく」
「出撃する」
あらためて全軍に指示を出す。
「すぐにだ。いいな」
「了解」
「じゃあ若しかしたら暫くお別れになるゼダンに挨拶をしましょう」
シホミはこの時でもシホミだった。
「また来る日まで」
「思えば結構ここにいましたしね」
ホリスの顔にも感慨がある。
「今までお疲れ様でした、本当に」
「また会う日まで」
ゼダンに別れを告げてから出撃する。大気圏に近付いたところでシャドウミラーの軍勢は布陣を整えていた。リーはその布陣を見てまずは違和感を抱いた。
「おかしいな」
「どうかしたのか?」
「何故こんなに早く布陣を整えているかだ」
テツヤに対して答える。
「我々の出撃を知っていたのか」
「ロンド=ベルもそれなり以上の大所帯だ」
次々と参戦者が相次いでそうなっている。今ではちょっとした艦隊規模の数がある程だ。
「だから動きを気付かれたんだろ」
「だといいがな」
しかしリーはそれで納得はしなかった。
「やはりこれは」
「おい」
言おうとするリーをテツヤが制止する。
「聞こえるぞ。止めろ」
「そうか。私としたことが」
「それより今は前の敵だ」
リーの目をそちらに向かわせることにした。
「もう布陣しているのなら。ここは」
「わかっている。全軍に告ぐ」
リーが司令官になる。
「正面に布陣しているシャドウミラー軍を叩く。いいな」
「了解。けど艦長」
「何だ?」
カズマの言葉に顔を向ける。
「敵に何かあるのか?」
「何か妙な敵がいるぜ」
カズマが最初にその敵に気付いたのだった。
「奇妙な敵だと」
「ほら、あれ」
指差したのは二機のマシンだった。見ればそれはかつてのDCのマシンであった。
「シャドウミラーはDCのマシンも持っているのか?」
「その可能性もあるが」
実際に様々なマシンを持っているDシャドウミラーだ。その可能性は否定できない。
「しかしあの二機のマシンは」
「指揮官機だよな」
「それどころではない」
ゼンガーが二人に言ってきた。
「!?じゃあ何なんだ?」
「あれはヴァルシオンだ」
彼は言う。
「ビアン=ゾルターク博士の開発した対異星人勢力用の切り札だ。そのマシンが何故ここに」
「ああ、それは簡単なことでして」
ここでその二機のマシンのうちの一機から声がした。
「むっ!?」
「私達がDCからシャドウミラーに鞍替えしただけです」
「貴様は・・・・・・!」
「お久し振りです、ゼンガー=ゾンボルト少佐」
青緑の髪に丸眼鏡の男がゼンガーに慇懃な言葉をかけてきた。
「貴様、生きていたというのか」
「死んだという話はなかった筈ですがね」
男は嫌味のある笑みをゼンガーに向けながら述べてきた。
「私とてそう簡単に死ぬつもりはありませんしね」
「!?何だあいつ」
アラドは二人のやり取りを見て首を傾げる。
「少佐と知り合いみたいだけれどよ」
「アーチボルト=グリムズ」
レーツェルがアラドに答えてきた。
「それがあの男の名だ」
「アーチボルト!?まさか」
「そう、そのまさかだ」
レーツェルは今度はユウキに答えた。
「代々イギリスの裏の世界で暗躍してきたグリムズ家の現当主にして稀代のテロリスト」
「まさかそいつが」
「生きていたとはな、まだ」
レーツェルもゼンガーと同じ言葉を出す。普段通りの冷静さを保ってはいるがその声にはどういうわけか苦さも宿っていた。
「そして。ここで会うとは」
「もうDCには見切りをつけまして」
アーチボルトはその慇懃な態度のまま言葉を続けていた。
「何をするかと思えば戦うのでもなし」
「少なくともビアン=ゾルターク総帥にはそんなつもりはない」
ユウキがアーチボルトに言葉を出した。
「無闇な戦闘はあの人の理想ではないからな」
「理想。それがいけないのですよ」
アーチボルトはそれを否定してみせた。
「そんなものが人の中にあるから腐るのですよ。ただ戦いと殺戮さえあれば」
「ほざけ!!」
ゼンガーはその彼を一喝した。
「理想なくして何が人か!何が生きているのか!」
「おやおや。相変わらずの熱さですねえ」
ゼンガーの一喝を受けても動じない。
「まあ貴方とお話をする為にここにいるわけではありませんしね」
「じゃあ何の為よ」
「愚問ですね」
カーラにも言葉を返す。
「戦う為ですよ。貴方達とね」
「そうだ」
ここでもう一機のマシンに乗る男も出て来た。
「連邦政府とな」
「テンペストか」
レーツェルはそこにいる中年の男を認めてその表情を微妙なものにさせた。
「また。戦うのか」
「エルザムか」
そのテンペストの方もレーツェルの姿を認めて複雑な顔を見せるのだった。
「悪いが俺には他に方法がない」
「そして。何を見る」
テンペストに対して問う。
「その先にあるものは何だ」
「わかる筈もない。だが」
テンペストも言う。
「俺は全てをなくしている。もう何もないのだから」
「話す言葉もか」
「済まない」
その問いにも答えられないようだった。言葉が濁っていた。
「御前と戦うのは不本意だが」
「それでも。だな」
「そうだ。カイ、ギリアム」
まずは二人の名を呼んだ。
「ゼンガー、そしてエルザムよ」
「うむ」
カイが彼等を代表して応えた。
「御前達を。倒させてもらう」
「よかろう」
今度はゼンガーが彼の言葉を受ける。
「このゼンガー=ゾンボルト。その言葉しかと受けた!」
「ではこれではじまりですね」
彼等のやり取りを黙って聞いていたアーチボルトが言ってきた。
「ではロンド=ベルの皆さん。はじめてですが」
言葉と共に口元に笑みが宿っていく。冷酷で残忍な笑みが。
「さようなら」
「何か嫌味な奴だな」
「そうね」
アラドとゼオラはそんな彼の言葉を受けて言う。
「慇懃だけれど何か」
「無礼でもあるし」
「あの男はそれだけではない」
ライが二人に言ってきた。
「あの男が」
「ライ」
その彼にレーツェルが声をかけてきた。
「それ以上は言う必要はない」
「けれど兄さん」
「いいな」
有無を言わせない口調だった。
「これ以上は言わない」
「・・・・・・くっ」
「さて、名門ライディースの方々もおられますし」
アーチボルトの態度は相変わらず慇懃無礼なものであった。
「ここは存分に戦わせてもらいますか」
「気をつけて」
レオナが一同に告げてきた。
「あのヴァルシオンはかなりのパワーを持っているわ」
「知ってるのかよ、レオナ」
「ええ」
タスクの言葉にも頷いてみせた。
「以前改造型に乗ったことがあるから。それに」
「それに?」
「あたしのヴァルシオーネはあれを参考にしているんだ」
リューネが言ってきた。
「それでわかるだろ?クロスマッシャーとかディバインアームなんかもそうさ」
「そうか。それでわかった」
ヤンロンはそれだけで全てを察した。
「それならば。用心が必要だな」
「そうさ、気をつけてね」
「それにあの野郎」
マサキはアーチボルトを見据えていた。
「とんでもねえ邪悪なプラーナがあるみたいだな」
「ええ」
テュッティも同じものを感じて顔を顰めさせていた。
「この雰囲気。あの男に」
「ルビッカね」
セニアにはそれが誰かすぐにわかった。
「けれどもうあの男は」
「わかっているわ。私がこの手で」
「おや、ルビッカさんですか」
何故かアーチボルトは彼の名を知っているようであった。
「あの方も暫く見ないと思ったらお亡くなりになられているんですか」
「知っているの!?まさか」
「いえいえ、同じことをしていましたので」
「じゃあ貴方はまさか」
「楽しいことです。テロ行為というのは」
「何て奴だ」
ユウキはその言葉を聞いて唾棄する顔を見せた。
「テロや殺戮を楽しんでいるのか」
「最悪ね」
リオも同じ顔になっている。
「今まで色々な相手を見てきたけれどこの男は」
「許せないわね。やい!」
カーラが彼に声をかける。
「覚悟しなさい。容赦はしないわよ!」
「このヴァルシオンと戦うというのですね」
「その為にここにいるのよ!」
カーラの言葉に澱みはない。
「こうなったら。あたしの手で」
「よせ、カーラ」
しかしその彼をユウキが制止する。
「ユウキ、どうして」
「熱くなるな。熱くなれば向こうの思う壺だ」
「けれど!」
「いや、ユウキの言う通りだよ」
リョウトも彼女を制止する。
「あの人はわかってやっているんだ。それに乗ったら駄目だよ」
「くっ・・・・・・」
「他にも敵はいる」
ユウキは彼等に目を向けさせた。
「わかったな。今は冷静になれ」
「わかったわよ。それじゃあ」
「二機のヴァルシオンは足止めをしておけ」
リーは冷静だった。ラミア達を見てはいたが。
「シュタインメッカー少佐」
「うむ」
まずはレーツェルに声をかける。
「ゾンボルト少佐、二人でな」
「承知した!」
「では行くぞ友よ」
「うむ!」
二人がヴァルシオンに向かう。他の面々でシャドウミラーの全軍に向かう。リーはその動きを見ながらラミア達を見るのであった。
「やはりな」
見れば二人は動きの端にいる。攻撃しにくいような場所にだ。
「あの二人。おかしい」
「艦長さんよ」
しかしその彼にカズマが声をかけてきた。
「どうした?」
「このまま敵を倒していけばいいんだよな」
「そうだ」
すぐに彼に答える。
「容赦はするな。いいな」
「最初からそのつもりだぜ。それに」
「それに。どうした?」
「何か降下していく敵もいるしな」
「何っ!?」
リーはそれを聞いて思わず声をあげた。
「もう降下に入っているのか」
「その通りですよ」
アーチボルトが彼の言葉に答えてきた。
「それが作戦の目的ですしね」
「地球を。狙うというのか」
「勿論ですよ」
相変わらず悪びれない様子で言葉を続ける。
「既に貴方達の動きはわかっていましたしね」
「わかっていたのか」
「はい」
思わせぶりに笑ったうえでの言葉であった。
「それもよくね」
「・・・・・・そうか、わかった」
リーはその言葉を聞いて頷いた。
「そこまで聞けば充分だ。全軍に告ぐ!」
彼はアーチボルトと二人を見据えながら指示を出す。
「このままシャドウミラーの軍勢を一機でも多く撃墜しろ。敵に混ざるのならその機体ごとだ!」
「っておいおい」
それを聞いたタスクが思わず突っ込みを入れる。
「味方ごとやれってことかよ」
「そうだ」
ラミア達の動きを見ながらの言葉だった。
「構わん。撃たれたくなければそんな動きはしないことだ」
「無茶言うんじゃねえぞ」
その彼にカチーナが言う。
「味方ごと撃てなんてな。幾ら何でも」
「味方であればいいのだがな」
リーの言葉は冷徹であった。
「敵であれば」
「!?」
「そうですか、わかりました」
わからない顔をするカチーナに対してラッセルは納得した顔になった。
「そういうことでしたら」
「おい、ラッセル」
カチーナはそのラッセルに問うた。
「一体どういう意味だ」
「とにかく敵の方に攻撃を仕掛けましょう」
ラッセルはそうカチーナに言うだけであった。
「そういうことで。いいですね」
「何かわからねえけれど敵を攻撃すればいいんだな」
「はい、そうです」
「さあ、もう来たわよ」
ラーダの声がした。
「前から次々と」
「こいつ等の相手ならよ」
彼女も異存はないようであった。
「思いきりしてやるぜ。覚悟しやがれ!」
早速目の前の敵をコールドメタルソードで真っ二つにした。それで敵が炎に消える。
「どんどん来な。あたしがまとめて消し飛ばしてやるからよ!」
「それでいい」
リーはそんなカチーナをよしとした。
「戦うのだ。いいな」
「言われなくてもやってやるさ!」
既に彼女はそのつもりだった。
「敵ならな!」
「広範囲に攻撃を仕掛けよ」
リーはまた指示を出す。
「それで敵の数を減らしていけ。いいな」
「了解」
ライがそれに頷きビームチャクラムを放ち振り回す。
「それならば・・・・・・!」
「ライ、その調子よ」
後ろからアヤが声をかける。彼女はストライクシールドを放っている。
「前から次々に来るわ。だから」
「わかっています、隊長」
「ええ、冷静にね」
先程の彼を見ての言葉であった。
「冷静にしてけば問題はないから」
「わかりました」
「俺も行くぜ!」
リュウセイも前に出る。
「喰らえ、マックリボルバー!」
拳銃を撃ちそれで敵を屠る。彼はあくまで一機一機にこだわる。
「地球にはこれ以上行かせねえからな!」
「ふん、地球なぞ」
テンペストはその彼の言葉を聞いて忌々しげに呟く。
「最早。連邦軍に支配されている地球なぞは」
「テンペスト」
その彼と対峙しているレーツェルが言う。
「まだあのことを引き摺っているのか」
「そうだ」
テンペストの方でもそれを認める。
「俺にとっては。それが」
「言うな。傷は触れるものではない」
「エルザム・・・・・・」
「だが御前が戦うというのなら相手をしよう」
己の感情を押し殺しての言葉だった。
「私はそれだけだ。いいな」
「済まない。だが俺は」
「うむ」
二人は多くは語り合わない。しかし絆は感じられる。そうしたやり取りであった、
「では。参る」
「来い」
ディバインアームを構えてきた。
「このヴァルシオンの力、見せようぞ」
「ふふふ、私も運がいい」
その横でアーチボルトはゼンガーを前にして笑っていた。
「DCの剣豪をこうして倒せるのですから」
「俺を倒すというのか」
「はい」
慇懃な笑みで応える。
「それも血に塗れた姿にして差し上げますよ」
「戯言を。俺の剣は悪を断つ剣」
斬艦刀を構えての言葉だった。
「それを妨げることは誰にもできはせぬ!」
「正義なんてないのですよ」
アーチボルトはゼンガーのその言葉を嘲笑してみせた。
「あるのは生きているか死んでいるか。そして」
「そして?」
「力のない者は力の在る者のおもちゃとして死んでいく。それだけです」
「貴様!」
語るアーチボルトのその邪悪なものに激昂した。
「ここで断ち切ってやる。その邪悪なものを!」
「できればいいのですがね」
しかしアーチボルトの余裕は変わらない。
「私もこのヴァルシオンもそう簡単にはいきませんよ」
「それは承知のこと!」
その巨大な斬艦刀を構えつつ言う。
「だからこそ!受けてみよ!」
「むっ!?」
「我が名はゼンガー」
まずは名乗りからであった。
「ゼンガー=ゾンボルト!悪を断つ剣なり!」
「まだ言いますか」
そんなゼンガーを嘲笑する。しかし彼はそれを意に介さない。
「推して参る!」
構えから一気に突き進む。その背には日輪がある。それを後ろに今アーチボルトに突っ込むのであった。
「でえええええええええいっ!」
「来ましたか」
アーチボルトはそんなゼンガーの動きを冷静に見ている。そのうえでディバインアームを抜いた。
「ならば私も・・・・・・むっ!?」
「チェストーーーーーーーーーッ!」
ゼンガーの勢いが勝っていた。それに適うことができなかった。
対応が遅れた。ゼンガーの雷光斬りが袈裟懸けに迫る。その動き、その速さはアーチボルトとてまともにさけられるものではなかった。
「しまった。これは・・・・・・」
何とか後ろに動き致命傷は避けた。しかしその一撃により左腕を失ってしまったのだった。
「くっ、ヴァルシオンの左腕を一撃で」
「我が剣に断てぬものはなし!」
ゼンガーは構えを取り直して宣言する。
「それはわかっていた筈だ」
「いえいえ、どうやら」
アーチボルトは酷薄な笑みになっていた。その笑みで以ってゼンガーに応えるのだった。
「僕が侮っていたようですね。それは認めましょう」
「では。どうするのだ」
「何、このダメージでは満足な戦いはできません」
彼は自分の乗っているマシンのダメージを冷静に見極めていた。
「ですから。これで退かせてもらいますよ」
「帰るというのか」
「はい、そうです」
ゼンガーの問いにも答えてみせる。
「それでは。そういうことで」
「待て。撤退か」
レーツェルと戦っていたテンペストは彼が下がるのを見て声をかけた。
「ここでか」
「ええ。見たところ我が軍全体も結構なダメージを受けていますし」
やはりここでもロンド=ベルは強かった。シャドウミラーの軍勢をかなり減らしていた。
「ですから。これでね」
「そうか。撤退か」
「また戦う機会はありますよ」
テンペストがまだ戦い足りなさそうな様子なのでこう声をかけるのであった。
「ですから。また」
「わかった。それではな」
「そういうことです。ではロンド=ベルの皆さん」
その慇懃な態度でロンド=ベルの面々にまた声をかけてきた。
「また御会い出来る日を。それでは」
ここまで言って戦場から姿を消すのであった。後は大気圏近くに展開するロンド=ベルだけが残っていた。その中でカイが最初に言うのであった。
「テンペスト、どうしてもか」
「仕方のないことだ」
ギリアムが彼に応える。
「あの男にはあの男の考えがあるのだからな」
「それはわかっているつもりだが」
「わかっているのならそれでいい」
ギリアムはこれ以上は言おうとはしなかった。
「いいな、それで」
「うむ。そうしよう」
「しかも問題はそれだけじゃありませんよ」
今度はレオナが言ってきた。
「ヴァルシオンもなんて。しかも」
「アーチボルト・・・・・・」
ライが忌々しげにその名を口にした。
「生きていたとは」
「あの男はそう簡単には死なない」
レーツェルが弟に対して言う。
「それもわかっていたことだ」
「兄さん、けれど」
「ライ」
レーツェルは感情を見せる弟を窘める声を出してきた。
「落ち着くのだ。感情を剥き出しにすればあの男の思う壺だ」
「くっ・・・・・・」
「わかったな」
「・・・・・・了解」
何とか感情を押し殺した顔で応えるライだった。
「あの男を倒すのは私の仕事になる」
そのゴーグルの奥に己の心を隠しての言葉であった。
「いいな」
「・・・・・・わかった。それじゃあ」
「さて」
リーが言ってきた。
「戦いは終わった。しかしだ」
「今地球の連邦軍から連絡があった」
テツヤが彼に通信を入れてきた。
「シャドウミラーの軍が地球に降下してきているそうだ」
「数は?」
「数千を越える」
かなりの数であるのは言うまでもない。
「すぐに救援に向かうか。どうする?」
「宇宙の方は?」
リーはそちらにも考えをやるのだった。少なくとも戦略的視野は広かった。
「今はバルマー軍も大人しい。ゲストもインスペクターもな。それに」
「それに?」
「連邦軍宇宙軍もザフトもようやく復興してきた」
それは彼等にとって朗報であった。
「今は任せられるぞ」
「では。問題はないな」
「行くんだな、それじゃあ」
「うむ。全軍に告ぐ」
リーはそこまでテツヤに聞いたうえであらためて全軍に指示を出した。
「地球に降下する。いいな」
「やっぱりそうなるか」
カチーナはリーのその指示を聞いて楽しげに笑ってみせた。
「じゃあ行くぜ。地球に殴りこみだ」
「まあまたゼダンには来るかもな」
タスクはふとゼダンの方に顔を向けた。
「そのまま終わりかも知れないけれどな」
「どっちでもいいぜ。とにかく敵を負い掛けて倒してやるぜ」
もうカチーナの考えはそこに向かっていた。
「行くぜ、いいな!」
「よし、それじゃあ」
「皆、それぞれの艦に戻るぞ」
それぞれ動きだす。そうして大気圏降下に備えてそれぞれの艦に入るのだった。
これで降下準備は整った。リーは全機艦艇に入ったのを見届けてからあらためて指示を出した。
「降下!」
こうしてロンド=ベルは再び地球に入ることになった。その中でアスカは童夢の中において不意に何かを感じ取ったのであった。
「!?この感覚は」
「何かありましたか?アスカ様」
「不吉な予感がするのじゃ」
その幼いながらも整った顔を顰めさせてサンユンに応える。
「これは一体」
「邪なものでございますか?」
「うむ」
シャンアンにも応える。
「そうじゃ。まさか」
「そのまさかかもしれんで」
タータも言ってきた。
「うちも感じたで。あんたと同じ感触をな」
「わたくしも」
タトラも。普段の穏やかな笑みは消えて真剣な顔になっていた。
「地球で待っているものは」
「洒落にならないものっていうのか」
「何か。いつもだけれど」
ジェオとザズは降下に入っているNSXの中で言った。
「今度は。一体何なんでしょうね」
「わからぬ。だが」
クレフがイーグルに応えた。
「この感触。嫌な予感がする」
「シャドウミラーかな」
「多分そやな」
アスコットとカルディナも。同じものを感じていた。
「道師クレフ、これは」
「まさかとは思いますが」
ラファーガとプレセアはあの二人のことを脳裏に思い浮かべた。
「待て。確かに感じるが」
「今はまだですか」
「そうだ」
クレフは今度はアルシオーネの言葉に応えるのだった。
「動く時ではない。いいな」
「わかりました。それでは」
「しかも」
クレフはさらに感じるものがあった。
「何かが近付いて来ている」
「何かが」
「それが何かは。私にもわからぬ」
しかしそれでも感じているのであった。彼のその力故に。
「大きな力が。また」
「はい」
同じものを感じているのはシーラとエレも同じであった。二人もまた顔に不吉なものを見せていた。
「神に似た、いえ」
「神そのもののような意志を」
「また。何かが起ころうとしているのか」
クレフはまた言った。
「地球において。そして我々に対して」
「少なくともこれからも色々あるのね」
「そうなりますわね」
海と風は彼等の話からそれは感じ取っていた。
「不安になるわね」
「はい。それでも」
「戦うしかないんだよ、海ちゃん風ちゃん」
光はそれでもいつもの光だった。彼女は変わらない。
「私達は。今はそれしか」
「ええ、わかってるわよ光」
「光さん、それでは」
「うん、まずは地球に行こう」
彼女はあの二人は見ていなかった。そうした少女なのだ。
「何があるのか見てから。動こうよ」
「そうね」
「そうですわね」
二人も彼女のその考えに賛同するのだった。結局のところそれしかなかった。
「じゃあ光」
「いざ。地球へ」
「降下地点はフランスです」
エイタが報告する。
「丁度パリ近郊です」
「パリか」
テツヤはパリという地名にまず反応した。
「今は遊んでいる場合じゃないがな」
「ですがそれでも」
エイタはそれでも言うのだった。
「パリと来れば」
「いや、ここは」
しかしここでダイテツが話に入るのだった。
「一旦ニースに向かうぞ」
「ニースですか」
「そうだ」
彼は言うのだった。
「連戦だった」
「確かに」
これは誰もがわかっている。彼等は長い戦いを経てきていたのだ。
「だからだ。敵との一戦まで一旦」
「保養ですか」
「すぐに戦いははじまりそうか?」
「いえ」
エイタが彼に報告する。
「今のところは。その彼等ですが」
「何処にいる?」
「どうやら一時潜伏に入ったようです」
「潜伏だと」
「はい」
エイタはまたダイテツに述べた。
「地球に降下してすぐに姿を消しました」
「何か仕掛けてくるな」
「間違いありませんね」
テツヤも同じ読みだった。そして二人はそれが正しいと確信していたのだった。これはシャドウミラーのことを考えれば当然のことであった。
「問題は何処ですが」
「そうだ。だが」
ここまで話したうえでダイテツはまた言うのであった。
「しかし出て来るまでにはまだ時間があるだろう」
「それでは艦長、やはり」
「うむ」
彼の決意は変わらなかった。
「ニースに向かう。予定通りな」
「わかりました。それでは」
その予定は変更されることはなかった。こうして彼等の戦いの前の休息の時が訪れたのであった。彼等にとっては幸いなことに。

第四十一話完

2008・2・10


 
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