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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三十九話 選ばれし者、選びし者

               第三十九話 選ばれし者、選びし者
大河の言葉で全員エリシオン基地の大会議室に集められていた。そこで彼は皆に対して話していた。
「現在当基地内の民間人や非戦闘要員を安全圏へ収容中だ」
「まずはですか」
「そうだ。それが終わるのはマーグが指定した制限時間ギリギリとなる」
つまり時間もないということであった。
「よって我々は彼等の退避が終わるまで基地の防衛ラインを死守しなければならん」
「まさに不退転の決意でバルマーに挑まなければならないのか」
竜馬はそこまで聞いて呟いた。
「今回もまた」
「奴等のことだ」
神宮寺が言う。
「仮に俺達が降伏しても生命が保証されるかどうかはわからねえな」
「そうだな」
それに京四郎も頷く。
「ゼ=バルマリィ帝国監察軍は」
「少なくともだ」
凱も言う。
「全体の体質としてはそうだな」
「人間の命なんざ何とも思っちゃいないだろうな」
ジュドーも言う。皆それはもうわかっているのだ。
「ところでですけれど」
ラクスがここで問う。
前のバルマー艦隊はどんな目的で地球圏へやって来たのでしょうか」
「彼等は地球人の特殊能力や特殊エネルギーに着目してそれを自分達のものにしようとした」
「地球人のですか」
「そうだ」
ミリアルドが彼女に説明する。
「特殊能力に特殊エネルギーを。例えば」
「例えば?」
「ニュータイプ能力や超能力、念動力」
ミリアルドの説明は続く。
「そしてゲッター線や光子力エネルギー等だ」
「彼等の言葉を借りれば」
続いてノインも言う。
「それ等の能力やエネルギーを兵器に転用する地球人は特異な戦闘集団と言えるそうだ」
「そしてだ」
またゼクスが言う。
「やがて地球人が銀河の秩序を乱す存在になるとも言っていた」
「おいおい、冗談きついぜ」
それを聞いたディアッカが言ってきた。
「銀河系の秩序を乱してるのはどっちだってんだよ」
「そうですよね」
ディアッカの言葉にニコルも頷く。
「データから判断すれば彼等の方が戦闘集団と呼ぶに相応しいと思えるんですが」
「その通りだな」
イザークも彼と同じ考えであった。
「自己を客観的に見てみろ」
「あんたがそれを言うのね」
アスカがそのイザークに突っ込みを入れる。
「何っ!?」
「何かねえ」
「何が言いたい!しかし」
話が元に戻る。
「自分達は正しいことをやってると思っているんだな」
「何かあんたとそこも」
「何!言わせておけば!」
「本当のこと言ってるだけじゃない!」
売り言葉に買い言葉で口喧嘩になった。
「この銀河童!」
「何ィ!?河童!?」
イザークの血管が切れた。
「貴様ァ!!今度こそ許さん!」
「何よ、やろうっての!?」
「やってやる!今日こそは!」
「受けてやろうじゃないの!」
「とにかくだ」
喧嘩をはじめた二人を放置して竜馬が言った。
「まずは戦わないとな」
「そうだな」
隼人もそれに頷く。
「どちらにしろ。戦いは避けられないぞ」
「だよな」
弁慶もそれに頷いた。
「あの連中のことを考えららやっぱりな」
「それで長官」
アムロが大河に問うた。
「彼等に対しては徹底抗戦ということでよろしいのですね」
「うむ」
大河もアムロのその問いに応えて頷くのであった。
「先程神宮寺君が言った通り彼等に降伏して我々の生命が保証される可能性は低い」
「そうですね」
「また、我々の降伏は地球圏へ大きな影響を与えることになるだろう」
「でしょうね」
大河の言葉にコウも同意するのだった。
「最悪の場合我々が人質に、いえ」
ここで言葉を変える。
「地球侵略の手段として使われるかも知れません」
「ああ、そうそう」
トッドがここであることを思い出した。
「精神操作の類はお手の物だからな、あの連中」
「滅茶苦茶厄介じゃない、それって」
ミレーヌがそこまで聞いて言った。
「じゃあどっちにしろ」
「やるっきゃないわね」
レミーが言った。
「やっぱりここは」
「ドカンとやるっていうのかい?」
「おやおや、レディーにしてははしたないことで」
そのレミーに真吾とキリーがまた突っ込みを入れた。
「そうじゃないわよ。けれどどちらにしろ」
「潰すだけよ!」
ケルナグールがここで叫ぶ。
「徹底抗戦ならばな!」
「ふむ。戦うのならば華麗にだな」
ブンドルもまた同じ考えであった。
「逆境においてあえて背を見せずに戦う」
「ふむ、悪くはないのう」
「確かにな」
カットナルもケルナグールもそれに頷く。
「ではそれでな」
「やるとするか」
「そしてそれこそが」
ブンドルはいつもの構えに入った。赤い薔薇を掲げて。
「美しい・・・・・・」
「まあ戦いっていうかな」
バサラも出て来た。
「どっちにしろ人の命が関わってるんだ。やるしかねえな」
「そうよね。けれどあんた」
ミレーヌがバサラに声をかけてきた。
「珍しいじゃない。集まりに出るなんて」
「俺は気が向いたら出るだけだ」
バサラの態度はいつもと変わらないのであった。
「何よ、それ」
ミレーヌもその言葉に顔を顰めさせる。
「あんた何処まで唯我独尊なのよ」
「どうもこうもねえ」
しかしそれでもバサラの態度は変わらない。
「俺は俺の歌をバルマーの奴等に聴かせてえだけだ」
「それであいつ等が戦いをやめると思ってんのかよ?」
「止めさせてやるさ」
シンにもはっきりと答える。
「絶対にな」
「そうか」
何故かシンもバサラにはあまり強く言わないのであった。
「じゃあまあ。やってみればいいさ」
「何だ、いつもと態度が違うな」
カガリがそのシンに突っ込みを入れた。
「どういう風の吹き回しだ、それは」
「いや、何かな」
シンは首を捻りながらカガリに応えた。
「バサラさんだけはできるんじゃねえかって思ってな」
「そうなのか」
「だってよ。こんな人他にいねえぞ」
シンですら認めるバサラの強烈な個性であった。
「ギター持って敵の真っ只中に飛び込むなんてよ」
「普通じゃないな、確かに」
カガリもそれには文句を言えないのであった。
「私も最初見て驚いたぞ」
「まあバサラ君はバサラ君だからね」
ユウナはバサラをこう表現した。
「それでいいと思うよ」
「誰に何を言われようと」
バサラも言う。
「俺は俺の歌を歌う。それだけだ」
「多分その先にも何かあるでしょうね」
アズラエルもまたバサラに対しては認めていた。
「きっと。そこに」
「そうですね。ところで」
ここでブリットが言ってきた」
「あの孫光龍ですけれど」
「あいつかよ」
「ああ。何を考えているんだ?」
甲児に応えて顔を顰めるのであった。
「あそこまで開き直って敵側につかれると」
「かえって潔さまで感じるよな」
「そうだよな。全く」
「でも」
だがここでクスハは顔を曇らせて言うのだった。
「一つだけわからないことがあるの」
「何ですか、それは」
恵子が彼女に問うた。
「超機人はそれ自体が意思を持っている」
「ああ、そういえばそうか」
勝平はそれを言われてふと思い出した。
「そうしたマシンだったよな」
「それ位覚えていろ」
宇宙太がそう突っ込みを入れる。
「ロンド=ベルじゃ基本だぞ」
「悪い悪い」
「だからよ」
クスハはまた言う。
「孫光龍が帝国監察軍につこうとしてもあの龍王機が拒否する筈なのに」
「そうだな」
ブリットもクスハのその考えに頷いた。
「奴の行動は人界、そして地球に害をなすこと以外の何ものでもない」
「そうよね」
「なのに何故だ?」
「超機人に乗ってるってことはだ」
鉄也が二人に問うてきた。
「あの男も念動力者なんだな」
「はい、そうです」
ブリットが答えた。
「だとしたらその力で龍王機をねじ伏せているということは」
「それもあるかも知れないですけれど」
「だとしたら彼はかなりの力の持ち主になるな」
大介も言う。
「それこそ想像できない程の」
「それもあるかも知れないけど」
「そしてだ」
またカミーユが言ってきた。
「認めたくはないが孫光龍の考えや行動は地球を護ることにつながっている」
「まさか」
「だから龍王機は奴に力を貸す」
カミーユはそう仮定するのだった。
「そうとも考えられるぞ」
「そんな馬鹿な」
だがブリットはそれを必死に否定しようとする。
「じゃあ虎龍王や龍虎王は何なんだ!?」
「ブリット」
カミーユはそのブリットに声をかける。
「嫌なことを聞くが」
「何だ!?」
「それは御前ならわかるんじゃないのか?」
「えっ!?」
「それはその超機人それぞれの考えだ」
カミーユの仮定はまだ続いていた。
「だからそれは」
「どういうことなんだ、それは」
「ガンエデンを考えてみるんだ」
「ガンエデンを!?」
「ああ、そうだ」
カミーユは今度はクスハに答えた。
「ガンエデンは自分の考えで地球を閉じようとしたな」
「え、ええ」
「龍王機も虎王機も自分の心を持っている」
これはもう誰もが知っていることであった。
「だからだ。あの孫光龍とその超機人もまた」
「それぞれの正義なのね」
「正義は一つじゃない」
カミーユもこれまでの戦いでそれを理解していた。
「だからあの男にはあの男の正義があるんだ」
「正義が」
「当然バルマーにはバルマーの正義がある」
カミーユはそれも認めた。
「例えとしては忌々しいがグラドスにもグラドスの正義がある」
「そうだね」
大介がそのグラドスの正義に対して頷く。
「それはあるね。確かに」
「そうだ。だから」
「じゃああれか」
甲児がここで言う。」
「ゼ=バルマリィ帝国につくことが地球を守ることに繋がるってことか?」
「あの男の正義ではそうなのだろうな」
「いや、待てよ」
甲児の直感が動いた。
「っていうかよ」
「どうしたんだ、甲児君」
「いや、ひょっとしたらだけれどね」
鉄也に応えて言うのだった。
「あいつ。地球とはまた別なんじゃねえのか?」
「地球とは?」
「ああ。イルイを全然無視してるとしか思えねえしな」
甲児はそこに気付いたのだ。
「若し地球のことを考えてるんならあの時みたいにすぐにイルイのところに馳せ参じるじゃねえか」
「そういえばそうだな」
カミーユもそれに気付いた。
「地球の為なら」
「まあどちらにしろよ」
甲児はまた言う。
「あの龍王機が孫光龍に従っている理由は気になるよな」
「それは」
クスハは甲児の言葉を受けて難しい顔になって述べた。
「あの人に聞いてみなければわからないわ」
「そうだな」
それにブリットが頷く。
「そして」
「そして?」
クスハはさらに言う。
「その答えの中に超機人とガンエデンの本当の関係。ガンエデンの秘密が隠されてると思うの」
「ガンエデンのか」
「ええ」
クスハは今度は頷いた。
「それが何かまではまだわからないけれど」
謎がまた起こった。しかし今はそれと共に戦うにも向かわなければならなかった。
その頃バルマー帝国側では。ヘルモーズの艦橋で孫がマーグに声をかけていた。
「いやいや」
孫は調子のいい感じでマーグに声をかけている。
「司令も御人が悪い」
「何がだい?」
「あの勧告じゃあ彼等は降伏などしませんよ」
「それはわかっている」
マーグもそれは承知のうえである。だからこそこう答えるのであった。
「彼等が降伏をしないということは」
「ほう」
「ではあれですな」
エペソがそれを聞いてマーグに問うてきた。
「ここで降伏するようでは我が帝国監察軍の兵器としてこれからの戦場を生き抜くことは出来ぬ。そういうことですな」
「・・・・・・・・・」
マーグはそれには答えはしない。しかしそのかわりに孫が言うのであった。
「貴方達はよくよく手の込んだやり方がお好きなようですね」
「そう考えてもいい」
「感心感心。けれどね」
「けれど。何だ」
「植物だって水をやり過ぎると枯れることがあるんです」
孫はこう例えてきた。
「気をつけた方がいいかも知れませんよ」
「それでだ」
マーグのかわりにエペソがその孫に問うてきた。
「余に何の用だ?孫光龍よ」
「実はですね」
「うむ」
「次の戦いでもご協力させていただこうと思いまして」
「協力だと?」
「ええ。ああ、そうそう」
孫は話の流れに合わせるかのように言ってきた。
「下心なんてありませんよ。司令やエペソ士師に僕の忠誠心をお見せしたいんです」
「下心か」
エペソは今の孫の言葉を聞いてまた言う。
「そんなものを出してきた時点でそれがあるとしか思えぬが?」
「ははは、確かに」
孫は悪びれずにまた応えるのだった。
「そりゃごもっとも。あはははは!」
「ふん」
エペソはそこまで聞いてさらに不審なものを見る目で孫を見る。それからまた言ってきた。「まあよかろう」
「いいのですね」
「帝国は強大だ」
エペソは祖国に絶対の自信と信仰があった。
「何を企もうとも我が帝国は微動だにせん」
「企むなんて滅相もない」
孫はここでもおどけて言葉を返すのだった。
「僕はただ貴方達に興味があるだけですよ」
「司令」
エペソはマーグに上申した。
「宜しいでしょうか」
「私としては異存はない」
それがマーグの言葉であった。
「特に構わない」
「わかりました。それでは」
エペソは彼の言葉を受けてまた孫に顔を向ける。そうして彼に対して告げた。
「孫光龍よ」
「はい」
「汝の出撃を許可する。我等への忠誠心を見せよ」
「有り難うございます。それでは」
「ただしだ」
エペソは念を押してきた。
「我等を侮れば。わかるな」
「わかっていますよ」
孫は相変わらず平然として言葉を返す。
「何しろ貴方達のことは全てわかっていますし」
「ふん」
「そう」
ここで一瞬だが顔が変わった。そのおどけた笑みではなく冷酷さと残忍ささえ含んだ酷薄な笑みを浮かべた。しかしそれは一瞬なので誰にも気付かれなかった。
「全てね」
「では司令」
ロゼがマーグに声をかける。
「今より」
「うん。それじゃあ」
「全軍出撃せよ」
副司令として指示を出してきた。
「そうしてこの星を占拠する。よいな」
「はっ、それでは」
「今すぐに」
こうしてバルマー軍も出撃態勢に入った。今両軍の戦いがまたはじまろうとしていた。
戦いが迫ろうとしている。スワンが大河に告げる。
「時間五分前デス」
「うむ」
大河はまず彼女のその報告に頷いてから呟く。
「いよいよ、か」
「民間人と非戦闘要員の避難は?」
「あと四分です」
今度は命が報告する。
「そうか」
「何とか間に合いましたな」
「ええ。ですが」
グローバルに応えてまた言う。
「大変なのはこれからですな」
「ええ」
「市民達の退路を確保する為にも我々はここを死守しなければなりません」
「そうです。ですから」
グローバルも言う。
「戦いましょう」
「はい」
「でじゃ全軍出撃だ」
グローバルが指示を出した。
「すぐに戦闘配置につく」
「よっし!」
「じゃあ行くぜ!」
勢いよくマシンが飛び出た。そうして配置につく。
「皆!」
凱が仲間達に声をかける。
「わかっているな?」
「勿論だ!」
勝平が彼に答える。
「何時でも覚悟は出来てるぜ」
「ここで負けたらどうにもならねえからな!」
「特攻してでもやってやるわ!」
宇宙太も恵子も腹をくくっていた。それは他のメンバーも同じであった。
「まだまだ戦いは続くんだ!」
「そうよ!」
「そうですわ」
光、海、風の言葉が重なる。
「だからここでやられるわけには!」
「最後までやるのよ、いいわね!」
「はいっ!」
「そう簡単に!」
シーブックも当然ながらいる。
「やらせはしない!」
「そういうことよ!」
今度はアスカが叫んだ。
「あたし達地球人の力をもう一度思い知らせてやるわよ!!」
「皆の為に」
キラもまた同じだった。
「ここで・・・・・・戦う必要があるから!」
「ユウナ様!」
キサカが報告してきた。
「帝国監察軍が最終警戒ラインを突破しました!」
「来たね。それじゃあ」
「総員戦闘配置完了!」
今度はトダカが報告する。
「ユウナ様、御指示を!」
「あっ、僕なんだ」
ここで少しとぼけたのがユウナらしかった。
「カガリじゃなくて」
「当然です」
キサカはそんな彼にとうぜんとまで言い切る。
「宜しいですか、ユウナ様」
「うん」
「カガリ様ですぞ」
実に身も蓋もない言葉であった。
「それでどうして御指示なぞ御願いできますか」
「その通りです」
トダカまで言う。
「カガリ様にそのようなことを」10
「おい、待て」
あまりもの言われようにカガリが話に入って来た。
「随分と言ってくれるな」
「いえ、まあ」
「御気になさらずに」
「それでは私が馬鹿みたいじゃないか」
「自覚しろってんだ」
「何だと!」
いつも通り話に入って来たシンに反論する。
「今何と言った!」
「だから君もだね」
ユウナは彼に対して言う。
「そう喧嘩を売らない」
「その通りだ」
キサカもシンに対して言った。
「余計に話がややこしくなるというのに」
「とにかくですな」
トダカがカガリに説明する。
「カガリ様は前線に出ておられますし」
「ああ」
「それで御指示を御願いできることは無理なのです」
「そういうことなのか」
「はい」
多分に方便であった。
「その通りです」
「ですから」
「わかった」
とりあえず納得したカガリであった。
「それならな」
「わかって頂き何よりです」
トダカの言葉は実に白々しい。
「それではユウナ様」
「うん」
ユウナはここで頷いて指示を出す用意に入るのであった。
「それじゃあ。皆」
「ええ」
「いよいよですね」
「うん。戦闘開始!」
はじめてその指示を出すユウナであった。
「今から人類をかけた戦いだ。健闘を祈るよ!」
「勿論ですよ!」
「来やがれバルマーの奴等!」
苦労を知られているせいか結構人望のあるユウナであった。
「ギッタンギッタンにしてやるぜ!」
「ここでな!」
「うむ、やはりか」
マーグはそんな彼等を見て呟いた。
「こうなってしまったね」
「はい、ですが」
それにエペソが答える。
「全て。想定の範囲内です」
「そうだね。それじゃあこちらも」
「ああ、司令」
孫も出て来た。
「僕も出撃しますんで」
「君もかい」
「さっきお話した通りで」
マーグに対してもいつもの飄々とした態度を崩してはいない。
「そういうことで。宜しいですね」
「うん。今は戦力が少しでも必要だしね」
それは言うまでもないことであった。
「是非頼むよ」
「それじゃあそういうことで」
「ただしさ」
しかし彼の前にロゼが出て来た。
「何か?」
「わかっていると思うが」
剣呑な目で孫を見据えての言葉であった。
「変な真似をしたらその時は」
「おやおや、物騒なことで」
「司令が御許しになられても私が許さんっ」
ロゼの口調は変わらない。
「それをよく覚えておくことだ」
「はいはい、わかってますって」
そのロゼに対しても態度を変えない。
「まあそういうことで。それじゃあ」
「くっ、全く聞いていないというのかっ」
ロゼはそんな孫の態度を見て顔を苦いものにさせる。
「どういうつもりだ、あの男」
「まあロゼ」
そんな彼女をマーグが宥める。
「司令、ですが」
「気にしないことだ」
「気にしないと言われるのですか」
「そうだ。彼は彼だ」
こうも言って彼女を落ち着かせる。
「それでいいね」
「つまり好きにさせろということですか」
「彼については陛下からもお声がかかっている」
「陛下からですか」
「それは前に出たね」
「ええ」
ロゼもそれはわかっている。わかってはいても納得はできないが。
「だからだよ。それなら」
「わかりました。それでは」
「ただしだ」
「ただし?」
ここでマーグは言葉の色を微妙に変えてきたのである。
「陛下も彼についてはあまり御存知でないところもあるようだ」
「陛下もですか」
「これは宰相様からの御言葉だが」
「シヴァー様からの」
「宰相様も彼についてはわかっていないらしい」
つまり謎だらけというわけである。そうした男なのだ。
「無論私もだ」
「氏素性も。そういえば」
「気をつけるにはつけておいて欲しい」
あらためてロゼに告げる。
「それはいいね」
「はい、それは」
ロゼはマーグの言葉を受けた。そうしてまた頷くのであった。
「そのように」
「頼むよ。それじゃあ我々も」
「では司令」
またエペソが出て来た。
「先陣は私が」
「いいのかい?」
「是非共」
こうまで言ってきた。
「御願いします。ここは武人として」
「武人としてかい」
「そうです。それで宜しいでしょうか」
「うん、そこまで言うのならね」
ここはエペソの言葉を受けることにした。その気概を買ったのである。
「是非共。御願いするよ」
「はい、それでは」
「では我々も攻撃に移ろう」
既にロンド=ベルは動きだしている。ならば当然の流れであった。
「それでいいね」
「はい。では全軍攻撃開始!」
ロゼがマーグにかわり指示を出した。
「攻撃目標敵軍。一気に粉砕せよ!」
「了解!」
こうしてロンド=ベルとバルマー軍の地球においての戦いがはじまった。ロンド=ベルは迫る敵軍を見てあることに気付いたのであった。
「おいおい、やっぱりと思っていたけれどよ」
イサムが言う。
「ヘルモーズまであるぜ!」
「本気だということだ」
ガルドも言う。
「連中もな」
「まあ俺達もそうだしな」
イサムは一旦軽口を出してみせてきた。ここであえて。
「じゃあ。やってやるか」
「地球人達よ」
エペソが彼等に言う。彼がヘルモーズに乗っているのだ。
「それが汝等の返事なのだな」
「ああ、そうさ!」
イサムが彼に答えた。
「見りゃわかるだろうがよ!」
「愚かな」
エペソはそれを受けて呟く。
「そうだとは思っていたが」
「けれどまあ」
真吾が言う。
「ここであっさり降伏しちゃ物足りないから」
「そういうことで」
キリーが続く。
「派手な見せ場はやっぱり」
「仮にも正義の味方だし」
そしてレミーが。
「必要だからね」
「恐怖に負けて御前達に未来を渡す位なら!」
「ここで最後まで戦わせてもらうよ」
宙と万丈も言う。
「いいか!」
凱が宣言した。
「俺達は御前達と戦う!」
「ほう」
「勇気ある限り!」
エペソに対して、バルマー軍に対しての宣言であった。
「守るべきものがある限り!」
「やってやるぜ!」
竜馬と忍も叫んだ。
「絶対に手前等をよ!」
「打ち破る!」
豹馬と健一も宣言した。
「今までと同じようにな!」
「退けてみせる!」
「よかろう」
エペソもその言葉を受けた。
「ではこのまま。滅びるがいい」
「長官」
スワンがここで大河に言う。
「市民の避難準備が整いまシタ」
「よし!」
大河はそれを受けて言った。
「直ちに後退!戦闘区域から離脱せよ!」
「ではメルビ閣下」
グローバルがメルビに告げた。
「後を御願いします」
「お任せ下さい」
メルビもそれに応えて頷く。彼にも自信があった。
「それでは」
「一矢!」
その中にはエリカもいる。彼女は一矢に声をかけてきた。
「どうか無事で」
「ああ!」
和也もそれに応える。
「君達が脱出するまで俺達が帝国監察軍を食い止める!」
「そして。生き残って」
エリカが一矢に言うのはそれもあった。
「絶対に」
「わかっている」
一矢はその言葉にも頷いた。
「何があっても。俺は生きる!」
「ええ、そして平和になったら」
「そうだ!俺は君と一緒になるんだ!」
その心は変わらない。今でも。
「だから!何があっても死なない!」
「その御心です」
ルリが一矢に言った。
「一矢さん、勝ちましょう」
「ああ、絶対に」
「人類の。そして」
「そして?」
「一矢さん達の未来の為に」
「ルリちゃん・・・・・・」
一矢はルリの心を受けた。彼女の一矢への敬意はここでも強いものであった。
「必ず。そうですね」
「有り難う。それじゃあ」
「敵第一陣、来ました!」
ハーリーがここで報告する。
「敵の数五千!波状攻撃を仕掛けて来ます!」
「受け止めろ!」
「非戦闘要員に用はない」
この点ではマーグもエペソも同じであった。実際にエペソは一般市民達には一切兵を向けようとはしない。マーグモまた同じである。
「余が欲するのは優れた戦闘能力や特殊能力を持った者のみ」
「というわけさ」
「孫光龍!!」
「貴方もやっぱり!!」
「ブリット君、クスハ君」
孫は二人に声をかけてきた。
「今降伏すれば生命だけは助かるよ」
「誰が命乞いなんか!」
「うんうん、この場じゃそういう反応しかないよねぇ」
孫はそれはもうわかっていた。
「でないと空気が読めない奴って言われるからねぇ。あはははは!」
「それはこっちの台詞だ!!」
ブリットがふざけた様子の彼に叫ぶ。
「誰がそんなことを!」
「そうかい?」
しかし彼は言うのであった。
「若し気が変わったら何時でも言ってくれ給えよ」
「何っ!?」
「僕としても君達の命の灯火を消したくないからねぇ」
「何処までもなめた態度を!」
「行こう、ブリット君」
クスハは激昂する一方のブリットに声をかけてきた。
「あの龍王機の意志を知る為にはあの人と戦わなきゃ」
「そうだったな」
「ええ、だから」
クスハは言うのだった。
「ここは心を抑えて」
「わかった。それじゃあ」
「全軍迎撃用意です!」
ユリカが言った。
「波状攻撃に備えて。いいですね!」
「了解!」
「まずは守れ!」
総員既に動いていた。
「来るぞ!」
「防げ!」
「このまま押し潰せ!」
エペソもエペソで攻撃を命じていた。
「よいな!」
「はっ!」
両軍ここでぶつかり合った。こうして両軍の火星での決戦が本格的にはじまったのであった。
まず前に出たのはティターンズの面々であった。
「ラムサス!ダンケル!」
三機のハンブラビが舞う。ヤザンはラムサスとダンケルに声をかけた。
「いいな!いつものだ!」
「はい!」
「あれですね!」
二人もそれに応える。そうして攻撃に入った。
海蛇を放つ。敵の小隊を三機で囲んでの電撃攻撃だ。所謂蜘蛛の巣攻撃であった。
「やっぱりこいつ等にもこれは効くみてえだな!」
ヤザンは電撃の中で崩壊していく敵を見て言う。
「いいことを知ったぜ!」
「けれどね、ヤザン」
その彼にライラが声をかける。彼女は何時の間にかパラス=アテネに乗っている。カクリコンはガーベラテトラ、マウアーはメッサーラであった。
「油断大敵だよ。敵は多いんだしね」
「わかってるぜ。けれどよ」
「何だい?」
「御前何でパラス=アテネに乗っているんだ?」
ヤザンもそこが気になったのである。
「何処にあったんだ、そんなもん」
「火星の基地にあったのさ」
ライラはこう答えた。
「正直バウンド=ドッグやガブスレイより性能はずっといいだろ?」
「まあそうだな。このハンブラビだって随分強化した奴だけれどな」
「そんなにかい」
「ああ。少なくとも普通のハンブラビじゃねえぜ」
不敵に笑ってライラに言うのだった。
「そう簡単にはやられねえぜ」
「期待させてもらうよ、それじゃあ」
「そうしてくれていいぜ。しかしよ」
ここでヤザンはあらためて前を見る。そこにいるのは。
「桁外れの数だな、おい」
「月でもさっきでもそうじゃないかい」
ライラはこうヤザンに言葉を返した。
「それにあたしはそれをあんたに言いたかったんだしね」
「今から無理はするなってか」
「そういうことさ。程々で頼むよ」
「程々でやって生き残れるんならば」
ヤザンはそう言葉を返した。
「そうさせてもらうぜ。ただ」
「ただ?何だい?」
「こいつ等見ていると無性に戦いたくなってくるぜ」
バルマー軍を見ての言葉であった。
「どういうわけかな」
「相変わらず戦うのは好きなんだね」
「戦うのはな」
何故か戦うことを限定してきた。
「それは好きさ。しかしよ」
「まだ何かあるのかい?」
「やっぱり武器を持っていない奴を狙うのは俺の流儀じゃねえな」
「安心するんだね、あたしもそうさ」
ライラもそれは好まない。
「ジェリドもそうだしね」
「あいつもか」
「あたし達はパイロットだろう?」
ライラの言葉はそこにあった。
「敵と戦うのが仕事さ。ティターンズにいた時からね」
「だよな。そういえばおめえもジェリドも」
「ああ、そうさ」
「その通りだ」
ジェリドも話に入って来た。
「あたしが狙うのは敵だけさ」
「俺は一般市民には何の興味もない。それだけだ」
「そういうのだからここに入れられたんだろうな」
確かに彼等もティターンズの一般市民への無差別攻撃の指揮にあたっていたが実際のところ彼等はあくまで現場の指揮官でありそこでの指揮はジャマイカン=ダニンガンが執ることが殆どだった。彼等も将校として責任があるのは事実だがそれでもそうした作戦に賛成していなかったことが彼等を無実とするのに貢献していたのである。
「ロンド=ベルによ」
「あの坊やと顔を合わせるなんてね」
ライラの苦笑の先はカミーユであった。
「人生はわからないものだね」
「全くだな」
その言葉にジェリドが頷く。
「サラもハンバーガーショップから引っ張って来られたしな」
「そうだね。あの娘的にはどうなのかわからないけれどね」
「結構混乱しているところもあるみたいだな」
「混乱?」
「ああ、俺もだがな」
「それは俺もだ」
ヤザンも言ってきた。
「あいつの声とエクセレン=ブロウニングの声が似ているからな」
「似ている!?ああ」
ライラもここで気付いた。
「そういえばそうだね。時々そっくりだ」
「俺もな。あのタップっていうのとな」
「御前はまたそっくりだな」
「おめえもだろ、ジェリド」
ヤザンはジェリドに言い返した。
「あのヤンロンっていうのとな」
「ああ。前から気になっていたがな」
「何か声が似ている同士って多いんだね」
ライラは二人の話を聞いてあらためて思うのであった。
「この部隊は」
「そうだな」
「面白いって言えば面白いことだがな」
「じゃあその面白さをもっと味わう為にもね」
ライラは前の敵を見据えた。
「生き残るよ!いいね!」
「ああ、わかった!」
「どいつもこいつも薙ぎ倒してやるぜ!」
彼等はまた敵に向かう。その後ろからエドが攻撃を放っていた。
「これでどうだっ!」
ソードカラミティの一斉射撃だ。それで前の敵をまとめて粉砕していた。
「数がいるってのは。やっぱり脅威だけれどな」
「そうね」
それにレナが頷く。
「けれど正念場だから」
「やるしかないってわけだな」
「まとまって来てくれるから相手は楽よ」
それがレナの見方であった。
「そうじゃない?」
「まあそうだな」
エドも少し考えてそれに頷いた。
「じゃあどんどん倒していくか」
「そういうことね。第二陣も来たしね」
「また正面からだな」
「そうね」
見ればその通りであった。数を頼みにやって来る。
「じゃあ今まで通り」
「正面攻撃だな」
「そういうことね!」
彼等も攻撃を再開する。戦いは第二陣の参戦でさらに激化していた。
ブライトはこの戦いにおいて陣頭指揮にあたっていた。ラー=カイラムの周りにも多くの敵が展開しておりそれへの相手にも追われていた。
「対空射撃を強化しろ!」
「は、はい!」
攻撃に耐えながら指示を出していた。
「さもなければ撃沈されるぞ!」
「撃沈ですか!?」
「そうだ」
そうトーレス達に答える。
「ここまで激しい攻撃はなかった」
ブライトですら経験したことのないものであったのだ。
「だからだ。対空射撃は最高のものにしておけ」
「今で九十パーセントですが」
「ならば一〇〇パーセントだ!」
ブライトはこう言葉を返した。
「さもなければ生き残れはしない。わかったな!」
「りょ、了解!」
「しかし。それでも」
ここで自軍を見た。
「撃墜された機も撃沈された艦もないな」
「皆何とか生き残っています」
サエグサがこう答えた。
「ギリギリのところで」
「ギリギリか」
「はい、ギリギリです」
また答える。
「どうにかこうにかですけれど」
「では。このまま最後までギリギリで生きるぞ」
そこまで聞いたうえでの言葉であった。
「それでいいな」
「ですね。このまま」
「前方には主砲を放て!」
対空射撃をそのままに主砲での攻撃も命じる。
「照準は特に合わせる必要はない!」
「合わせずにですか!」
「そうだ!あれだけの数ならば撃つだけで当たる!」
かなり大雑把なようで的確な言葉であった。これはブライトの読みであった。
「わかったな!ならば!」
「了解!それでは!」
「メガ粒子砲。撃てーーーーーーーっ!」
周囲に火球を作りつつ攻撃を放つ。それにより正面にも無数の火球を作るラー=カイラムであった。戦いはロンド=ベルにとって本当にギリギリであった。
しかしそれはバルマーも同じであった。マーグは数で攻勢を仕掛けながらも攻めきれていない自身の軍に対して苛立ちを感じだしていたのだ。
「やはり。手強いか」
「司令・・・・・・」
隣にいるロゼが彼を気遣って顔を向けてきた。
「まだ予備戦力があります。それを投入しましょう」
「最後の予備戦力だったね」
「それは・・・・・・」
「ならそれを投入しよう」
しかしマーグはロゼのその言葉を受けた。
「どうやらそれしかないようだからね」
「今はですか」
「そう。そうじゃないと勝てない」
マーグはこう読んでいた。
「彼等には。だから」
「はい、それでは」
「予備戦力を投入せよ!」
マーグは指示を出した。
「それで決着をつける。いいな!」
「はい!」
ロゼが応える。応えてからモニターを見る。そこには戦局がはっきりと映し出されている。バルマーは確かに数で攻めているがそれでも攻めきれてはいなかった。いたずらに数だけが減っていく形になっていた。
「司令、その予備戦力ですが」
「何か考えがあるのかい?」
「はい」
ロゼは答える。
「私に預けて頂けるでしょうか」
「君に?」
「私に策があります」
意を決した顔でマーグに言ってきた。
「ですから」
「策があるのかい」
「そうです。これで敵を破ります」
ロゼは言うのであった。
「必ずや」
「わかった。それじゃあ」
マーグもその言葉を受けるのであった。
「ここは君に任せる。それでいいね」
「有り難うございます。それでは」
「おそらく」
マーグの顔が曇った。
「この予備戦力の投入の結果が戦局を決めることになる」
「そうです。ですから」
ロゼは行くというのであった。
「お任せ下さい」
こうしてロゼはその戦力を率いて前線に出た。乗っているのはゼーロンであった。
「いいか」
その兵達に対してゼーロンから告げる。
「正面からは攻めはしない」
「!?それではどうやって」
「攻め方は幾らでもある」
ロゼは部下達にこう答えた。
「いいか」
「はい」
「今敵は正面の我が軍に集中している」
見ればそうであった。正面からぶつかり合っている。
「だからだ。その横を突く」
「横をですか」
「そうだ。わかったな」
「ええ」
「それでは」
部下達もそれに頷いた。
「まずは正面に向かう!」
「陽動ですね」
「その通りだ。そこから一気に迂回して」
機動戦もまた仕掛けるということであった。
「攻める。いいな」
「了解!」
「では全軍進軍開始!」
こうしてロゼは兵を進める。まずは動きを悟られずに正面に兵を進める。しかしそれを見ていたダイテツがすぐに指示を出した。
「艦首、左へ!」
「えっ!?」
「左にですか!?」
それを聞いたテツヤとエイタが思わず声をあげた。
「どういうことですか!?」
「敵の援軍は正面から来ていますが」
「すぐにわかる」
ダイテツは二人にそう答えた。
「すぐにだ。だからだ」
「すぐにですか」
「では艦長」
ダイテツを心から信頼し尊敬している二人である。後の話は早かった。
こうしてクロガネは艦首を左に向ける。そこにロゼの率いる一軍が来ていた。
「よし、上手くいっているな」
「そうですね」
彼等はクロガネの動きに気付いていない。既に艦首をこちらに向けているということに。
「ここで側面を突けばだ」
「ロンド=ベルは総崩れになりますな」
「成程、こうしたやり方がありますか」
「敵と戦うには何も正面から攻めるだけではない」
ロゼはこう部下達に述べた。
「何処からでも攻めていいのだからな」
「そうですな」
「それでは副司令」
「このまま敵の側面に斬り込む!」
斬り込むと表現した。
「そこから両断する。いいな!」
「了解!」
「それにより我等の勝利を!」
バルマー軍は勝利を確信してロンド=ベルに向かって突撃する。だがその時であった。
「むっ!?」
「あれは!?」
突如としてロンド=ベルの側面からマシン達が退いた。その後ろにはクロガネが艦首を向けてこちらに攻撃態勢を整えていた。
「なっ、どうして!?」
「読まれていた!?」
「ま、まさか!」
部下達もロゼもこれには言葉を失った。だが突撃を止めることは最早不可能であった。
「よし、読みが当たったな」
「そうですね」
テツヤがダイテツの言葉に応えていた。
「まさか。ここで側面攻撃を仕掛けて来るとは」
「敵の動きがおかしいと思ったのだ」
ダイテツは直感でそれを悟っていたのである。
「怪しいと思っていたが案の定だったな」
「そういうことですか」
「そうだ。では今から総攻撃を仕掛ける」
「はい」
「それでは艦長」
「連装衝撃砲発射!」
「了解!!」
既にその準備は整えていた。だからこそ艦首を向けていたのである。
「続いてミサイルの一斉発射だ。いいな!」
「わかりました!!では連装衝撃砲発射!!」
「撃てーーーーーーーーーーーっ!!」
こうしてクロガネの一斉攻撃が叩き付けられる。光の帯が放たれそれがバルマー軍を正面から撃ち据えたのであった。
それによりバルマー軍は動きを止めてしまった。だがロゼはそれでも必死に指示を出す。
「まだだ!」
彼女は叫ぶ。
「まだ敗れたわけではない!だから!」
「突撃ですか」
「そうだ、それしかない」
例え動きを止められてもであった。それしかなかった。
「このまま側面から攻撃するしかない。いいな」
「わかりました」
「ここはやはり」
確かにそれしかなかった。彼等もそのまま突っ込む。だが既にロンド=ベルは迎撃態勢を整えていた。しかもロンド=ベルの誇る精鋭達であった。
「ショウ、来たわ!」
「わかってる!」
ショウがいた。ビルバインの剣が煌く。
「やっちゃえええーーーーーーっ!」
「ここから先は行かせない!」
ビルバインのハイパーオーラ斬りが横薙ぎに放たれた。それで突っ込むバルマー軍のマシンを纏めて斬り捨てた。一撃でであった。
彼だけではなかった。アムロはフィンファンネルを広範囲に放つ。それで纏めて敵を倒していく。
フィンファンネルは乱れ飛び戸惑うバルマー軍に襲い掛かる。そうして彼等を次々に撃墜していくのであった。その動きは彼等に見切れるものではなかった。
「よっし!上手くいっているぜ!」
ハッターがそれを見てガッツポーズをしてみせる。
「それじゃあ次はこハッター様が!」
「あっハッちゃん」
そのハッターにフェイが声をかけてきた。
「むっ、どうした!?」
「もうライデンさんが行っちゃったわよ」
「何と!!もうか!」
「あれこれ言っている間に行っちゃったわよ」
「むうーーーーーーっ!!何ということだ!」
ハッターは既にそのパワーで敵を倒していっているライデンを見て叫ぶのであった。
「切り込み隊長を差し置いて!」
「切り込み隊長だったら早く行かないと」
フェイはそんな彼に対して言う。
「さあ、さっさと」
「言われなくてもわかっている!では!」
「あっ、そうそう」
「今度は何だ?」
フェイの言葉はまだ続くのであった。
「テムジンさんも言ったわよ」
「兄弟、何時の間に!?」
「だから。ハッちゃんが騒いでいる間によ」
「水臭いぞ兄弟!!」
「だったら早く来い」
テムジンの言葉は素っ気無い。
「今は戦闘中だぞ」
「それはそうだ」
ハッターもテムジンのその言葉に頷く。
「では行くか」
「ハッター」
今度はライデンがハッターに声をかけてきた。
「俺が援護に回る。御前は前を頼む」
「よし来た!」
前に出るのが好きな彼である。だから喜んで応えるのであった。
「ではこのハッター軍曹の派手な活躍を見せてやるとするか!」
「焦ってこけないでね」
「だから何で御前はそう!」
また言うフェイに言い返す。
「口が減らないんだ!!」
「だってもう敵がうじゃうじゃ来ているし」
「ムッ!?」
見ればそうであった。既に敵は目の前まで来ていた。
「パッパッとやっつけちゃうわよ」
「わかった。それでは!!」
ライデンの願い通り突っ込むハッターであった。
「ハッター様の勇姿、今ここで!!」
「頼むぞ」
そのハッターにライデンが声をかける。フェイも攻撃に入り側面から来ていたバルマー軍を抑えるのであった。その間にも正面での戦いは続き次第にロンド=ベルにとって次第に優勢になってきていた。
「側面からの攻撃も失敗したか」
「申し訳ありません」
モニターからロゼがマーグに応えてきた。
「私の失敗です」
「いや、いい」
だがそれもよしとするマーグであった。
「勝敗は常のこと。けれどこのままでは」
「どうされますか?」
「全軍の損害状況は」
マーグはここでそれを問うのであった。
「どの位だい?」
「間も無く七割に達します」
アタッドが答えてきた。
「ロンド=ベルの攻勢により」
「そうか。それではそろそろ」
「いえ、司令」
しかしここでエペソがモニターに出て来た。
「エペソ」
「私が引き受けさせて頂きます」
「君がかい」
「そうです。ヘルモーズにはまだ無数のメギロートがあります」
「メギロートが」
「まずはそれを出し」
さらに言う。
「そのうえで私が最後の攻撃に入ります。ですから」
「君が後詰に回るというのか」
「その通りです」
それが彼の考えであったのだ。
「切り札もありますので」
「切り札がかい」
「そうです、あれを使えば」
彼は言う。
「必ず勝てます。ですから」
「しかしそれはあまりにも」
「いえ」
しかしエペソはマーグに対して言うのであった。
「御安心下さい、私はまだいますので」
「まだ・・・・・・そうか」
「はい、そういうことです」
何故かここで納得し合うマーグとエペソであった。見れば周りの者達もであった。
「ですから」
「わかった。それでは」
マーグもここにきて遂に頷くのであった。
「君に任せよう。それでいいね」
「はい、それではお任せ下さい」
こうして彼等は次の作戦に入った。マーグは主力を退けていきエペソは自分の乗っているヘルモーズからメギロートを全て出すのであった。
「敵が退いていく!?」
「諦めたか!?」
「いや」
だがロンド=ベルの面々はすぐにそうではないとわかった。ヘルモーズが残ったのだ。
「ヘルモーズで攻撃を仕掛けるつもりか」
「ここで」
「さあ来るがいい」
エペソは周りに何千機ものメギロートを従えてロンド=ベルの者達に対して言ってきた。目マーグもまた残りのメギロートを全て出しておいたのである。
「ここで汝等を滅ぼしてくれる」
「へっ、何かありきたりの流れだけれどよ!」
甲児が言う。
「それで勝った奴はいねえってことを教えてやるぜ!」
「では余からも言おう」
エペソは甲児のその言葉に対して返してきた。
「余がこの戦い方で敗れたことはないとな」
「へっ、負け惜しみじゃねえか!」
「ほう、負け惜しみとな」
甲児の言葉を聞いても怯む様子はなかった。
「では確かめてみるがいい」
「おやおや、エペソ卿が本気になったようで」
孫はそんなエペソを見てまたいつもの調子で声をあげる。
「それでは。僕もそろそろ」
「待て!」
しかしその彼をブリットが呼び止める。
「まだだ!行かせるか!」
「おやおや、君も諦めが悪いねえ」
そんなブリットに対して言う。
「しつこい男は嫌われるよ」
「私も!」
しかしそれはブリットだけではなかった。クスハもそうであったのだ。
「まだ貴方を行かせるわけには!」
「悪いけれど気が変わったんだよ」
しかし孫はそんな二人に取り合おうとはしない。
「だからね。じゃあこれで」
「くっ!」
「一体どういうつもりなの」
二人は姿を消した孫に対して言う。
「全く考えが読めないわ」
「ああ。しかし」
だがこれだけはわかっていた。
「あの男は間違いなく。俺達の敵だ」
「そうね。それだけは確かね」
「それで御二人さん」
その二人にタスクが声をかけてきた。
「どうしたの?タスク君」
「まだ敵もいるしさ」
「あっ、そうだったな」
「そうだったねっておい」
思わずブリットに突っ込みを入れる。
「しっかりしてくれよ」
「メギロートがまた来たわよ」
レオナも言ってきた。
「多分ホワイトスターから送られて来ているのね」
「ここぞとばかり出て来るわね」
カーラは思わず呟いた。
「やっぱり本気は続いているのね」
「あの男も伊達に残っているわけじゃない」
ユウキはエペソのヘルモーズを見ながら述べた。
「だからだ。まだ正念場だ」
「まだっていうよりは」
リオがここで言う。
「クライマックスみたいよ」
「クライマックスって何か」
リョウトがまた応える。
「漫画じゃないんだから」
「漫画じゃなくてもクライマックスはクライマックスよ」
リオはこうリョウトに言葉を返す。
「この戦いのね」
「そういうことだよな」
その言葉にタスクが頷いた。
「それじゃあ最後の締めに」
「あの戦艦鎮めてやりましょうよ」
「それしかないな」
カーラとユウキが続いた。
「火星を守る為には」
「さあ、来るのだ」
またエペソが言ってきた。
「今こそ汝等をねじ伏せてくれよう」
「言われなくてもねえ!」
早速リオが攻撃を繰り出してきた。
「やってやるわよ。覚悟しなさい!」
「さあて、最後は派手に行くぜ!」
甲児も出る。マジンカイザーの剣がメギロートたちを次々に切り裂いていく。
「全軍攻撃だよな!」
「うむ!」
大河が甲児のその言葉に頷いた。
「その通りだ!全軍総攻撃だ!」
「よし来た!じゃあよ!」
「ちょっと待て甲児君」
「そうだ」
そこに鉄也と大介も来た。
「俺達も一緒だぞ」
「置いていくとは酷いな」
「あっ、いけね」
甲児は二人の姿を見て思わず苦笑いを浮かべた。
「そうだったそうだった」
「全く。しっかりしてくれよ」
「マジンガーチームは皆揃ってこそなんだからな」
「そうだよな。それじゃあ三機でな!」
三人は動きを合わせてヘルモーズに突っ込む。大介がまず二人に合図する。
「甲児君、鉄也君!」
「大介さん!」
「あれですね!」
「そうだ、一気に行くぞ!」
そう二人に応える。それと共に三機のマジンガーの手にそれぞれ剣と斧が握られる。
「僕に続け!」
「わかりました大介さん!」
「久し振りのあえってやつだな!」
「マジンガーチームの真の力」
大介は二機のマジンガーを後ろに従えながら言う。
「今ここで見せてやる!」
「では甲児君!」
「ああ、鉄也さん!」
二人の動きが重なる。そうしてヘルモーズの攻撃をかわしながら突撃する。
その手に持つ剣をヘルモーズに突き刺す。そのうえからグレンダイザーが斧で切りつける。しかしそれでもまだヘルモーズは沈まない。
「ふん、無駄なことを」
エペソの顔にも余裕がある。
「余のヘルモーズはこの程度では沈みはせぬ」
「ああ、そうだろうよ!」
甲児が彼に言い返す。
「そんなのはわかってるんだよ!」
「何っ!?」
「次だ!」
鉄也が叫ぶ。
「頼むぞ!」
そして大介も。三機のマジンガーが退くと今度はコンバトラー、ボルテス、ダイモスが来たのであった。
「さあて。止めってやつだな!」
「ああ!」
豹馬の言葉に健一が答える。
「じゃあ皆、行くぜ!」
「一矢!」
健一が一矢に声をかけた。
「いいな、あれだ!」
「わかった!」
一矢も健一に言葉を返す。
「では行くぞ!」
「ああ!」
「ファイヤァァァァァァァブリザァァァァァァァァドッ!」
まずはファイアーブリザードがダイモスから放たれた。続いて。
「次は俺だ!」
「頼むぜ健一!」
「よし、超電磁ボォォォォォォルッ!」
ボルテスの剣から超電磁ボールが放たれる。その二つがヘルモーズを撃つ。そこにさらにコンバトラーがグランライトウェーブを放った。それでヘルモーズの動きが完全に止まった。
「むっ、これは」
「よし、ここまでは上手くいったぜ!!」
「だがまだだ!」
健一が豹馬に言う。
「最後は」
「わかっている!!」
ここで一矢が出て来た。
「俺が!」
「そうだ!一矢!!」
「止めは任せたぞ!!」
豹馬と健一がそれぞれ一矢に声をかける。一矢もそれに応える。
「わかった。行くぞ!」
「よし!」
「頼んだぜ!!」
「必殺!!」
ダイモスが攻撃態勢に入った。
「烈風!!せぇぇぇけん突きぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」
拳を突き出しヘルモーズを撃ち抜く。その威力の前にはさしものヘルモーズも為す術もなく貫かれそのまま爆発するだけであった。
「どうだっ!!」
攻撃を終えた一矢がエペソに対して問う。
「これなら如何にヘルモーズといえど!」
「確かにな」
エペソもそれを認めてきた。声はそうであった。
「最早ヘルモーズは持ちはせぬ」
「よし、じゃあ俺達の勝ちだな!」
「火星はこれで!!」
「しかし」
だが彼はまだ倒れてはいなかった。不敵な笑みをまだ浮かべていた。
「何っ!?」
「まさか」
「そう、そのまさかだ」
そう彼等に答えるのであった。
「ヘルモーズ倒れし時創世神が姿を現わす」
「やはり」
それを見たレビが呟いた。
「あれが出るのか」
「総員戦闘配置を続けろ!」
グローバルがまた指示を出す。
「来るぞ」
「ですね」
ミサトが彼のその指示に頷いた。
「やはりここは」
「!?一体何が出て来るんだ?」
カガリが彼等の話を聞いて目をしばたかせる。
「化け物でも出て来るのか?」
「あの、カガリ」
キラがその彼女に声をかけてきた。
「何だ?十勇士でも出て来るのか?」
「何、それ」
「違うのか?」
キラにはわからない言葉であった。
「違うのならいいが」
「だから。ヘルモーズが沈んだんだよ」
「ああ」
それはわかっているカガリであった。
「それはわかっているが」
「だから。あれが出て来るんだよ」
「あれでわかるか」
「この馬鹿女!」
たまりかねたようにシンが出て来た。
「何で知らねえんだよ!ズフィルードが出て来るんだろうが!」
「ああ、そうか」
「そうかってカガリ」
キラとユウナが目を点にさせていた。
「あの、本当に知らないの?」
「誰でも知っているって思っていたけれど」
「ああ、知らなかったぞ」
やはりカガリはカガリであった。
「そうだったのか」
「そうだったかなって」
「ちょっとそれは」
二人もこれには言葉がなかった。
「何だかんだ言っている間に出て来ましたよ」
「うっ、遂に」
アズラエルの言葉に顔を向けるともうそこには。
「さあ、これで最後だ」
ズフィルードがいた。人型の巨大なマシンが。火星での戦いの最後の幕が開いた。

第三十九話完

2008・1・23 
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