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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第二十五話 マーグ再襲来

               第二十五話 マーグ再襲来
ネビーイーム司令部。そこに二人はいた。
マーグはロゼと共にいる。そこで彼女に語っていた。
「まずはこのネビーイームは持って来た」
「はい」
ロゼはマーグのその言葉に頷いてみせた。
「我々の切り札を」
「これで戦力的には彼等を圧倒していると思う」
「それはロンド=ベルに対してですね」
「うん。けれど」
だがここで彼は言うのだった。
「ゲストやインスペクターも来ている。しかもその主力が」
「それについてですが」
ここでロゼは言う。
「どうやら彼等も来ているようです」
「四天王や三将軍だけではなくて」
「はい、あの二人もまた」
「ゼゼーナン卿は別に構わない」
マーグはその名は軽く見ていた。
「彼はね」
「そうですね。所詮は閥族主義であそこまでなっただけの男」
ロゼもゼゼーナンという名に対してはその程度の評価であった。
「所詮は」
「けれど。彼は違う」
マーグはそのうえでまた述べた。
「ウェンドロ監察官はね」
「確かに。警戒すべきは彼かと」
マーグはロゼの言葉にあらためて頷いた。
「彼は。恐ろしい相手だ」
「その通りです。あの若さで」
ロゼもまた応えて言う。
「あれだけの能力を持っているのですから」
「天才なのだろうね」6
マーグはそのウェンドロという者をこう評する。
「多分」
「そうですね。間違いなく」
ロゼもその言葉に頷く。
「しかしそれ以上に」
「彼の資質か」
「あれだけ冷徹な者は知りません」
ロゼの評価はこうであった。
「私は、ですが」
「それは私も同じことだ」
マーグもそれは同じであった。
「だからこそ彼は相手にはしたくない」
「はい」
「仕方ない場合はあってもね」
「そうです。それでですね」
「うん」
話は移った。
「我々はこのネビーイームを拠点にまずはロンド=ベルを攻めましょう」
「彼等をか」
「そうです、目的はあくまで地球圏の掌握です」
それをマーグに述べる。
「ならばその第一の障壁である彼等を」
「攻めるというのだね」
「その通りです。それで如何でしょうか」
「どのみちロンド=ベルとは戦わないといけない」
マーグは言った。
「それなら。当然だね」
「そういうことです。それでは」
「まずはゼダンに向かおう」
彼は決断を下した。
「そうしてロンド=ベルに攻勢を仕掛ける。それでいいね」
「はっ」
「全軍に伝えてくれ」
マーグの動きは早かった。
「攻撃目標ゼダン。いいね」
「わかりました。それでは」
ロゼはバルマーの敬礼でマーグに応えた。
「指揮は私が」
「いや、私が行く」
だがマーグはここで自ら名乗り出た。
「あの男もいるからこそ」
「明神タケルですか」
「あの男、何故私を兄と呼ぶ」
「それは」
ロゼには言えなかった。それがどうしてなのか知っているからこそ。だからこそ言うことができなかったのだ。
「知っているのかい?ロゼ」
「い、いえ」
慌ててそれを否定する。
「私にもそれがどうしてなのかは」
「そうなのか。しかしあの男」
マーグはロゼの言葉を受けながらもまた呟く。
「かなりの力を持っているね」
「それは確かに」
これにはロゼも隠すことなく頷くことができた。
「司令に匹敵する程の」
「むしろ私より上かも知れない」
マーグはこうまで言う。
「あれだけの力の持ち主が地球にいるとは」
「地球人は何分にも異質な存在ですので」
やはりタケルのことをここでも隠す。
「そうした者もいるでしょう」
「そうなのか。しかしそんな男が相手だからこそ」
「司令御自らですか」
「私でなければおそらく無理だ」
これがマーグの考えであった。
「だからこそだ」
「ですが司令」
ロゼはそんなマーグに対して言う。焦った調子で。
「御一人では」
「では君も行くつもりなのか」
「無論です」
それは最初から決めていた。そのつもりであった。
「司令御一人では行かせません」
「済まない、ロゼ」
「いえ」
ここで顔が赤くなる。だがそれでも言うのだった。
「それが私の務めですから」
「副官としてかい?」
「は、はい」
ここでも心を隠す。だが今心を隠す理由はそれまでとは違っていた。
「その通りです」
「そうか。なら頼むよ」
「わかりました。それでは」
心を隠したままマーグに応える。
「ゼダンへ」
「うん、行こう」
こうしてネビーイームからゼダンに兵を出した。ロンド=ベルもすぐに出撃してゼダンの手前で両軍は対峙するのであった。
「やいやいやい!」
ジャーダが彼等に対して叫ぶ。
「また来やがったっていうのかよ!」
「何度やられても懲りないわけね」
ガーネットも言う。
「それだけは見事ね」
「何とでも言うがいい」
ロゼはその彼等に言葉を返す。彼女とマーグはヘルモーズに乗っている。
「このヘルモーズを持って来た理由はわかる筈だ」
「つまり本気だっていうのかよ」
タスクはそれを聞いて顔を青くさせる。
「奴等、まさか」
「まさかも何も本気でなかったら何だというの?」
その彼にレオナがクールに告げる。
「戦争なのよ、これは」
「いや、それでも本気の中の本気ってわけで」
「だったらそれで上等じゃねえか」
カチーナは既に戦闘意欲を表に出してきていた。
「一匹残らずギッタンギッタンにしてやるぜ」
「言葉は悪いがその通りだ」
カイがカチーナのその言葉に頷く。
「攻めて来たのなら返り討ちにするまでだ」
「じゃあ決まりね」
オウカは落ち着いた声で言う。
「皆、わかっているわね」
「はい」
ラトゥーニがそれに頷く。
「積極的防衛ですね」
「そうよ。相手が相手だし」
「タケルさん」
その中でシャインがタケルに声をかけてきた。
「お兄さんは多分」
「知っていたんだ」
タケルはシャインのこの言葉を受けて言う。
「俺と兄さんのことは」
「ええ」
タケルのその言葉に頷く。
「もう。申し訳ないですが」
「いや、隠すつもりもなかったし」
タケルもシャインにそう言葉を返す。
「それは別にいいよ」
「そうですか」
「うん、それに」
「それに」
「今度こそって気持ちがあるから」
ヘルモーズを見ての言葉だった。
「兄さんを。ここで」
「説得されるのですね」
「俺は絶対に諦めたりはしない」
タケルの決意は固かった。
「例え何があっても俺は兄さんを」
「その意気です」
それを聞いたユンが彼に言った。
「タケルさんがそうやって貫かれるならきっとお兄さんも」
「有り難う。それじゃあ」
「全機ゴッドマーズの援護も御願いします」
レフィーナが指示を出す。
「それと共に全軍バルマーを攻撃して下さい」
「随分と無茶な要求だな」
それを聞いてリーが呟く。
「それがロンド=ベルなのか」
「楽しくていいものだな」
「そうですね」
ブレスフィールドの言葉にシホミが笑顔で頷く。
「こうでなくちゃね」
「じゃあやりますか」
「それがいいというのか
リーはアカネとホリスの言葉を聞いてまた言う。
「わからん。これは」
「わからないけれど命令ですよ」
ホリスが明るくリーに言葉を返す。
「それならやっぱり」
「ふん、私も軍人だ」
それをあえて前置きして言うのがリーらしかった。
「それには従おう」
「その通りだ。では行くぞ!」
「了解!」
ブレスフィールドの言葉に頷くアーディアン一家であった。リーも何だかんだでそれについていっていた。
ロンド=ベルはオウカの言葉通り積極的にバルマー軍に攻撃を浴びせる。数では圧倒的に劣ってはいるがそれでも果敢に向かうのであった。
「いいか!」
カチーナがその中で指示を出す。
「出来るだけ敵を引き付けろ!」
「敵をですか」
「ああ、そうだ」
そうラッセルにも応える。
「引き付けて。そして」
「一気にやる」
「近付いてきてるだろ」
その敵達を見ながらの言葉であった。
「だからだ。来い来い」
「ふん、引き付けるのもいいが」
リーがそのカチーナに対して言う。
「油断して撃墜されんようにな!」
「うるせえ!あたしは絶対に撃墜されねえんだよ!」
「またそれはどうしてでございますの?」
「あたしだからだ!」
ラミアの問いに全く答えになっていない返事を返した。
「それだけだ!わかったな!」
「全くわかりましたでございます」
「ああ。しかしラミアよ」
「はい」
「御前その喋り何とかならねえのか?」
「何とかでございますか」
ラミアはその調子でカチーナに言葉を返す。
「それは全く至りもって」
「これがラミアの癖だ」
何故かアクセルが彼女をフォローする。
「だから大目に見てやってくれ」
「まあ慣れてきたがな」
カチーナもアクセルのその言葉を受けて言う。
「それはそれでいいけれどよ」
「申し訳ありませんでございます」
「しかしそれでも」
そのうえでまた言う。
「その顔とスタイルなのによ。勿体ねえな」
「勿体ない」
「だってもてるぜ、ラミアは」
女のカチーナの言葉であった。
「全部揃ってるんだからよ」
「全部なんですか」
「顔にスタイルに声」
ラッセルに声まで言う。
「これで何が他にねえんだよ」
「そう言われますと」
ラッセルも返す言葉がない。
「ないですよね」
「そういうことだ。おまけに乗ってる機体もな」
カチーナは今度はそれについても指摘してきた。10
「天使みてえじゃねえか。いいぜ、それはよ」
「そういえばそう見えるな」
ライはカチーナのその言葉に同意して頷いた。
「あれは確か」
「アンジュルグでございますのことよ」
「アンジュルグか、いい名前だよな」
「名前だけ?気に入っているのは」
アヤはリュウセイに対して突っ込みを入れる。
「そのシルエットもでしょ」
「そうそう、それそれ」
自分から笑顔でそれも認める。
「何ていうか最高だよな、アンジュルグも」
「そういえばリュウセイの最高のロボットって」
ラトゥーニはここでふと思った。
「一体幾つあるのかしら」
「そういえばそうですわね」
シャインもそれにふと気付く。
「リュウセイさんって結構移り気なのでは?」
「移り気ではないぞ」
だがそれはレビがフォローを入れる。
「ロボット以外はな」
「そういえばそうかしら」
ラトゥーニもこれには納得した。
「言われてみれば」
「気にすることではない」
レビはこうまで言う。
「リュウセイはロボットだけだ」
「ロボットだけ」
「それがどうかしたか?」
「人は関係ないのね」
ラトゥーニの言うのはそこであった。
「それじゃあ」
「そうだ。だから気にするな」
「わかったわ」
「一体何の話なんだよ」
何もわかっていないリュウセイが二人の話に入って来た。
「訳わかんねえぞ」
「わからなくてもいいわよ」
ここでガーネットがさりげなく言葉を遮った。
「別にね」
「そうなのか。じゃあよ」
「こいつ何でこんなに鈍感なんだ?」
カズマが密かに呆れていた。
「俺でもわかったぞ、今のは」
「どうも子供みたいね」
カルディナはこう評した。
「まだまだ」
「大きいのは身体だけか」
カズマはまた言う。
「何て奴なんだ」
「お兄ちゃんよりも凄いわ」
「凄いわっておい」
カズマは今度は妹のミヒロに目を向ける。
「全然褒め言葉になってないぞ、それは」
「だって褒めるつもり最初からないし」
「何っ!?」
「喧嘩はいいけれど二人共」
今度は統夜が話に入って来た。
「来てるよ、敵が」
「んっ!?」
「あっ、射程圏に入ったわ」
ミヒロが思い出したように報告する。
「お兄ちゃん、後は御願いね」
「御願いって御前な」
カズマはまたミヒロに対して突っ込みを入れる。
「まあいいか。来てるしな」
「だから後は御願い」
「仕方ない。やるか」
そうは言いながらも動き自体は素早い。照準を合わせ攻撃を放つ。
それで忽ちのうちに数機撃墜する。彼の攻撃が合図となった。
「よし、まずは正面だ!」
ダイテツが早速指示を出す。
「正面から敵を突破する。いいな」
「正面からか」
「そうです」
そうテツヤにも答える。
「正面から攻撃を仕掛け敵がそれを受け止めたところで」
「どうされますか?」
「予備兵力を投入する」
彼はそう告げた。
「後方にある戦力をな。いいな」
「わかりました。それでは」
「予備兵力はだ」
彼はまた指示を出す。
「戦艦とその周辺で護衛に当たっているエステバリス達だ。いいな」
「わかりました」
それにユリカが応える。
「では攻撃力の高いマシンはそのまま」
「うむ」
ダイテツはユリカのその言葉に頷く。答えはもう決まっていた。
「正面に進んでいく。いいな」
「よし!」
「やってやるぜ!」
それに甲児と忍が頷く。こうして攻撃力の高いマシンが果敢に突っ込む。そのまま忽ちのうちに襲い掛かって来るバルマーのマシンを蹴散らしていく。
「どけってんだよ!」
その中にはアクセルもいる。彼は目の前の敵を次々と薙ぎ倒していく。その攻撃はさながら獣のようであった。
「バルマーも我々の敵だ!」
彼はバルマーのマシンを次々と倒しながら叫ぶ。
「だからここで。倒しておく!少しでもな」
「むっ!?」
そのアクセルの戦いを見てロゼはふと気付いた。
「あれは一体」
「どうしたんだい、ロゼ」
そのロゼにマーグが声をかけてきた。
「あのマシンに」
「あのマシンは確か」
ロゼはここで頭の中でデータを探る。そうしてその中でデータに照合するものを出したのであった。
「ソウルゲイン、第一遊撃隊の」
「確かその部隊は」
マーグモそれを受けて言う。それは彼も知っていた。
「ロンド=ベルに合流していたね」
「はい。あの中でもソウルゲインはかなりの強さです」
ロゼは彼等とは直接戦った経験はない。しかしそれでも知っているのであった。
「しかしそれは」
「それは?」
「どうも地球の技術ではないようです」
「地球の!?」
「はい、それはあの赤いマシンにも言えますが」
ここでロゼはラミアのアンジュルグも見た。
「あれもまた」
「そうだね。第一遊撃隊のどのマシンとも違うね」
マーグモそれを指摘する。
「あれはどうにも」
「他のマシンは間違いなく地球の技術です」
ロゼはまたソウルゲインとアンジュルグを見た。
「ですがあの二体のマシンだけは」
「しかしだ」
ここでマーグはまた言うのだった。
「あれは当然バルマーてもなければ」
「ゲストのものでもインスペクターのものでもありません」
ロゼはそれがはっきりとわかっていた。そのうえで目を鋭くさせる。
「あれは一体」
「他の世界のものかな」
マーグはふと探るのだった。
「ひょっとしたら」
「まさか」
だがロゼはそれを聞いて怪訝な目になるのだった。
「そんな筈は」
「しかしロゼ」
そのロゼに対して告げる。
「彼等にはオーラバトラーもあればレイアースもある」
「それは存じています」
言うまでもなかった。ロゼもそれははっきりとわかっていた。
「ですが」
「第一遊撃隊は違うと」
「はい、あの二機は何かいきなり合流したようですが」
彼女はそこを指摘するのであった。
「それがどうにも引っ掛かります」
「いきなりなのか」
「これはあのクォヴレー=ゴードンが参加した時とほぼ同時期でした」
「彼と!?」
「そうです。ゲートと関係あるのではないかとも思えますが」
「いや、それは」
マーグはそれにも懐疑的な顔を見せて言うのだった。
「それもおかしい。あれはハザル=ゴッツォのものだが」
「あの方はああしたマシンを持ってはおられませんね」
「そもそもバルマーにはないものだ」
マーグはそこをまた指摘する。
「それなのにどうして」
「そうです。全てが謎です」
ロゼはそれをまた言う。
「彼等は一体」
「何者なのか」
前線で暴れ回る二機を見て警戒の色を深める。既にロンド=ベルの正面からの攻撃はかなりの戦果をあげておりそれに予備戦力が続く。そこには当然ながらリーのハガネもある。
「アンジュルグとソウルゲインはどうか」
「はい」
リーの問いにホリスが応える。
「大活躍です」
「私が聞いているのはそれではない」
だがリーは戦果については聞こうとはしないのであった。
「私が聞いているのは彼等自身だ」
「彼等ですか」
「そうだ。一体何者か」
露骨に警戒する顔での言葉であった。
「それはまだわからないのか」
「一体どうしたんだ、また」
モニターにテツヤが出て来てリーに問う。
「あの二人が怪しいとでも言うのか?」
「その通りだ」
リーはそうテツヤに言葉を返した。
「御前は何も思わないのか、あの二人は」
「そんなことを言ったらロンド=ベルにはかなり怪しいのがいるぜ」
「私は決してそこまでは思わん」
それだけの目はあるリーであった。
「少なくともダバ=マイロードやエイジ=アスカに対しては疑いはない」
「明神タケルもだな」
「彼には彼の事情がある」
だからいいのだと言う。
「こちら側で戦っている分にはな」
「そうなのか。じゃああの二人は」
「全く何もわかっていないな」
リーが言うのはそこであった。
「正体も何もかもがだ」
「一応少尉扱いだが。二人共」
「だからこちらの身分ではない」
またテツヤの言葉を否定する。
「クォヴレー=ゴードンも同じだが。マシンも含めて全く素性が知れないのはどういことだ」
「それは」
「おかしいな、明らかに」
そこを指摘してみせた。
「何故だ。素性が全く知られていないのは」
「だから信用できないのか」
「特にラミア=ラヴアスとアクセル=アイマーはだ」
リーはその二人を特に警戒していた。
「あの二人に関してはあまりにも」
「そうやって警戒するのもいいが」
「むっ!?」
「そろそろそっちの周りにも敵が来ているだろう。そっちは大丈夫か?」
「安心しろ」
それを忘れるリーではなかった。
「既に迎撃態勢を整えてある」
「そうか。ならそちらのフォローはいいか?」
「ハガネの守りは万全だ。それよりだ」
「それより?」
「クロガネの方を気にするのだな。御前の方をな」
「また露骨な嫌味だな、おい」
リーの顔もそうしたふうになっているのを見ての言葉であった。
「そう来るか」
「私が艦長でいる限り沈むことはない」
彼にはそれだけの自信があった。
「このハガネはな」
「ではそちらは任せていいな」
「そうだ。そちらはそちらでやれ、いいな」
「わかってるさ。では艦長」
「うむ」
ダイテツが応える。リーはダイテツの顔を見て微妙な目の色になったがそれは一瞬のことだったので誰にも気付かれることはなかったのであった。
「このまま前進だ」
「はい」
「ふむ。ではハガネも前進だ」
リーはハガネを前に出してきた。そうして攻撃に入らせる。
「対空攻撃を増やせ。いいな」
「わかりました」
ハガネもまた攻撃に入る。ハガネも無難に敵を倒していた。
正面から攻めている部隊はそのまま果敢に攻め続けている。その中にはゴッドマーズもいる。タケルはコスモクラッシャーの援護を受けながら前に進んでいた。
「いい?タケル」
ミカが彼等に声をかけてきた。
「もうすぐヘルモーズよ」
「わかっている」
タケルはミカのその言葉に応える。
「今度こそ兄さんを」
「しかしだ」
ここでナオトが言ってきた。
「ヘルモーズの周りにもまだいるぞ」
「安心していい」
そこにマイヨが来た。
「それは私達が引き受ける」
「タケル君!」
プラクティーズもここに来た。
「私達がヘルモーズの護衛達を引き受ける!」
「君はその間に!」
「そうだよ、タケル兄ちゃん」
ナミダも言う。
「ここはおいら達がいるから兄ちゃんは」
「安心して行けばいいさ」
今度はアキラの言葉だった。
「その為に来たんだし」
「皆・・・・・・」
「じゃあプラート大尉」
「うむ」
マイヨはケンジの言葉に応えた。
「ここは任せておくのだ。いいな」
「そういうことだ。御前はヘルモーズに」
「わかった!」
タケルもその言葉を受けて頷いた。
「なら本当に今度こそ兄さんを」
「タケルさん!」
カガリも彼に声をかける。
「安心しろ。皆がいるからな!」
「カガリ・・・・・・」
「けれどカガリ様」
「あまり前に出ると」
「いけませんよ」
後ろからマユラ、アサギ、ジュリが何とか追いついてカガリに言う。
「無鉄砲だと本当に」
「ユウナ様が心配されますし」
「そんなことはどうでもいい!」
シュバルツと間違えかねない言葉になっていた。
「私はタケルさんの願いを適えさせる!その為には!」
「もう、いつもこうなんだから」
「困ったわねえ」
そうは言いながらも三人もカガリについて行く。彼女達もカガリの為に戦っていた。
「フェルナー、カール」
ダンが二人に声をかける。
「やるぞ!」
「わかった!」
「あれをだな!」
三人が動きを合わせて突き進む。そうして自分達に向かって来たヘルモーズの護衛達をその連携攻撃で倒していく。それで道を開けた。
「よし、今だ!」
「大尉!」
マイヨがその中に入りさらに血路を切り開く。その剣でヘルモーズまでの道が完全に開けたのだった。
「これでよしだな」
マイヨはタケルの方を見て言った。
「今のうちに行くのだ」
「はい!」
タケルはその言葉に頷く。そうして一直線にヘルモーズまで突き進むのだった。
それはヘルモーズにもわかっていた。ロゼがそれを見てマーグに声をかける。
「私が行きます」
マーグに顔を向けて言う。
「ここは」
「行くのかい?」
「はい、ゼーロンの用意はできています」
そのつもりだった。決意は固い。
「ですから」
「その気持ちは有り難い」
マーグはまずはロゼのその気持ちを受け取った。
「では今から」
「しかし」
だがここでまた言う。
「それには及ばないよ」
「何故ですか?」
ロゼはマーグの今の言葉に顔を顰めさせた。
「護衛は退けられこのままではヘルモーズまで」
「ヘルモーズはそう簡単には沈みはしない」
マーグの自信にはまずこれがあった。
「それに私もいる」
「司令も」
「彼の相手は私がしよう。ロゼ」
「は、はい」
少し戸惑ったような顔でマーグに応える。
「ヘルモーズを頼むよ」
「司令、まさかそれでは」
「六神合体・・・・・・!」
ロゼに応えるようにして叫んだ。
「行くぞ、明神タケル!」
「この気配は!?」
タケルもすぐにその気配がわかった。彼は来たことに。
その前にもう一機のゴッドマーズが現われた。マーグのものだった。
「兄さん!」
「何度も言うが」
マーグは目の前にいるタケルに対して言うのだった。
「私には弟はいない。何故それでも私をそう呼ぶのだ」
「兄さん、何故まだわからないんだ!」
タケルはまたマーグに対して叫んだ。
「俺にゴッドマーズを教えてくれたのは兄さんだ!その兄さんがどうして俺を弟じゃないなんて言うんだ!」
「ええい、黙れ!」
だがマーグはまだ言う。
「私は御前なぞ知りはしない。だが!」
「だが!?」
「私の敵は知っている!それが御前だ!」
そう言って攻撃を仕掛けてくる。マーズフラッシュだった。
「危ないっ!」
「かわしたか」
紙一重であった。タケルといえどそうならざるを得なかった。
「今のを」
「兄さん、やっぱりわかってくれないのか」
「わかるだと」
マーグの目の色が変わった。
「何がわかるというのだ、この私が」
「何度も言っていた!そして目覚めた時もあった!」
タケルはまた叫ぶ。
「けれどどうして!何故わからないんだ!」
「何故!?」
その言葉に不意にマーグの動きが止まった。
「何故だと。私が」
「兄さん!兄さんはバルマーの戦士じゃない!俺の兄さんなんだ!」
「まだ言うのか。どうしてそこまで」
「俺は誓った!兄さんを助けると!」
マーグを見据えてまた叫ぶ。
「何があっても!だから!」
「そこまで私に言う御前は一体・・・・・・」
「マーズと呼んでくれた!」
ここで己の本当の名を言ってみせた。
「俺の本当の名を!それこそが!」
「それこそが」
「俺の兄さんである証!俺は俺の本当の名前を教えてくれた兄さんを今度こそ!」
「私が・・・・・・御前の兄に」
「もうバルマーの為に戦う必要はないんだ!俺と一緒に!」
「御前と一緒に」
マーグの戦意が消えていく。そうして。
「行けばいいのか」
「だから!一緒に!」
「一緒に」
「俺と一緒に生きるんだ!だからもう!」
「私が一緒に・・・・・・御前と」
マーグの目の光が消えていた。そうしてその中で呟く。だがその時だった。
「いい加減にするのだ、地球の戦士!」
ロゼが来た。ゼーロンに乗ってマーグの前にやって来たのだ。
「ロゼ!?」
「司令、申し訳ありません!」
まずは己の命令違反を謝罪する。
「ですがここで司令を失うわけにはいかないのです」
「私を失うだと」
「はい」
マーグに対して答えてみせた。
「そうです。この者は司令をたぶらかそうとしているのです」
「私を・・・・・・しかしそれにしてはあまりに」
「私を信じて下さい!」
何故か。必死の顔でマーグに対して叫ぶロゼであった。
「この私を。是非共」
「ロゼ・・・・・・」
「司令は私が御守りします」
必死にタケルの前に立ちはだかって言う。
「ですから。この私を」
「信じていいんだね」
「えっ!?」
しかし。何故かマーグの言葉に顔を強張らせる。
「ロゼのその言葉を。信じていいんだね、私は」
「は、はい」
何故か言葉が戸惑っていた。
「そうです。是非」
「わかった。じゃあ信じよう」
マーグは微笑んでロゼに頷いたのだった。
「それじゃあ今は」
「戦線は既に我等に不利です」
しかし最早戦うことは無理だった。それにはあまりにも数を減らされていた。
「ですからここは」
「わかった、撤退だね」
「後詰は私が務めます」
ロゼは自らそれを名乗り出た。
「ですから」
「わかった。じゃあ頼むよ」
「はい。ゴッドマーズ!」
ロゼはマーグの言葉を受けてからタケルとゴッドマーズをキッと見据えた。
「マーグ司令には一歩も触れさせない。それだけは覚えておくのだ!」
「待て、まだ俺は!」
「ええい、黙れ!」
撤退するマーグに向かおうとするタケルに攻撃を仕掛ける。
「マーグ司令は知らないと言っておられる!それなのにまだ言うつもりか!」
「俺は知っている!兄さんは!」
「黙れと言っている!司令をたぶらかせるな!」
「嫌だ!兄さん!」
もう姿が見えなくなった兄に対して叫ぶ。
「俺はまだ!兄さんを諦めない!絶対に!」
「まだ言うのか!」
ロゼは最後までタケルを止めて戦場から離脱した。最後に残ったのはロンド=ベルであったがそこに勝利の喜びはなかった。タケルの慟哭だけがあった。

第二十五話完

2007・11・26  
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