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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第二十二話 生きていた男

                第二十二話 生きていた男
ロンド=ベルはそのままアクシズで補給と整備を受ける。そうしてそれが終わってからゼダンに戻る予定だった。
それはすぐに終わりゼダンに戻る。出発してすぐであった。
「レーダーに反応です」
ミドリが告げた。
「前方に。数は一千」
「何だ?ムゲかよ」
サンシローはすぐにそう考えた。
「また随分早いな」
「そうですね」
サンシローの今の言葉にブンタが頷く。
「前にあれだけの損害を出しているというのに」
「それだけの力があるということか」
リーはそう考えた。
「奴等には。あれだけの敗北でもすぐに軍事行動を移せる」
「しかしよ、今回は随分数が少ないじゃねえか」
ヤマガタケはそこをかなり楽観視していた。
「楽勝だぜ、それってよ」
「いや、それはわからないぞ」
それにピートが異議を呈する。
「策があるかも知れない」
「そうだな。何があるかわからない」
サコンもピートと同じことを警戒していた。
「何があってもいいようにしておくか」
「では諸君、まずは出撃だ」
大文字は出撃命令を下した。
「いいな」
「了解っ」
「じゃあすぐに」
まずは全員出撃した。もう目の前にはムゲの軍勢が展開していた。
「何だよ、やっぱりムゲ軍かよ」
今度は忍が言った。
「へっ、予想通りだな」
「予想通りか」
向こうから声がした。
「地球人達よ」
「手前は誰だ?」
「ギルドローム」
彼はそう名乗ってきた。
「それが私の名だ」
「ギルドロームか。その手前が何の用だ?」
「言うまでもないと思うが」
ギルドロームはそう言葉を返してきた。
「違うか」
「俺達を倒すっていうんだな」
「そうだ」
はっきりと言い切ってきた。
「そのつもりだ。では覚悟はいいな」
「生憎だがやられるつもりはないんだよ」
忍は持ち前の闘争心を早速剥き出しにさせていた。
「来い、やってやるぜ!」
「ふむ、ではやってみせよう」
ギルドロームはここで何かを仕掛けてきた。すると。
「ムッ!?」
「ウウッ!?」
ロンド=ベルのうちの何人かに異変が起こった。甲児に勝平、カチーナといった感情的な面々に異変が起こったのである。
「どうした、おい」
宇宙太が勝平に声をかける。
「何があった!?」
「うう・・・・・・」
だが勝平は答えない。それどころかザンボットを勝手に分離させて宇宙太と恵子に攻撃を仕掛けてきたのだった。
「ちょっと勝平!」
恵子が慌てて彼に声をかける。
「何考えてるのよ。ちょっと!」
「甲児君、どうしたんだ!」
「一体何を!」
甲児もそれは同じだった。鉄也と大介に攻撃を仕掛けていたのであった。
「うるせえ!覚悟しやがれムゲ=ゾルバトス帝国!」
甲児はそう叫んで二人に攻撃を浴びせ続ける。二人はそれをかわすので手一杯であった。
「ここが会ったが百年目だ!今度こそよ!」
「くっ、これは」
大文字は突如としてこちらに攻撃を仕掛けてきた彼等を見てすぐにわかった。
「マインド=コントロールか」
「そうだ」
ギルドロームが答えてきた。
「何も力や数だけで戦うだけではない。こうした戦い方もある」
「おのれ、小癪な!」
ケルナグールがそれを聞いて激昂する。
「貴様、せこい真似を!」
「何とでも言うがいい」
ギルドロームはケルナグールのその言葉を聞き流した。
「戦いは勝てばいいのだからな」
「くっ!」
「一理ある」
ブンドルはそれは認めた。
「ブンドル、御主」
「聞け」
抗議しようとするカットナルに対して言う。
「だが。美しくない。だからこそ私はこのやり方に賛成はしない」
「そうか。ならばよい」
「ギルドロームとやら」
ブンドルはカットナルに答えたうえでギルドロームに声をかけた。
「何だ」
「それで貴殿は我々に勝てるというのだな」
「その通りだ」
胸を張ったような声で答えてきた。
「だからこそのこの策だ」
「果たしてそう上手くいくかな」
ブンドルは余裕の笑みを浮かべて彼に言うのであった。
「何!?」
「この様な美とかけ離れたやり方で」
彼は言う。
「我々を倒せるとは思わないことだ」
「では見せてみよ」
売り言葉に買い言葉の調子であった。ギルドロームも言う。
「我々を退けることができるのならな!」
「こちらに攻撃を仕掛けている友軍には攻撃はしないように!」
大文字はそう指示を出した。
「まずは敵のあの母艦を狙うのだ。いいな!」
「了解!サンシロー!」
ピートはすぐにサンシローに声をかけた。
「ヤマガタケの足止めを頼む!」
「わかってるぜ!」
見れば彼とリー、ブンタで彼の足止めをしていた。
「ったく。予想通りだな」
「そうだな。だが」
「ヤマガタケさん、すぐですから」
リーとブンタはヤマガタケの攻撃をかわしながら言う。
「それまで我慢だな」
彼等はヤマガタケを止めている。その間に他の面々でムゲ軍に攻撃を浴びせるのであった。
「汚い手を使って!」
ロザミアがファンネルを放つ。
「許さないから!」
「ロザミィ!」
その彼女にカミーユが声をかける。
「マインドコントロールは受けなかったんだな」
「ええ、何とか」
見れば彼女は無事なようであった。
「頭が痛んだけれど」
「そうか。ならいいんだが」
「どうやら感情の起伏が極端に激しい人が反応するみたいね」
フォウがここで言う。
「私達強化人間へ行われたマインドコントロールとは違うみたい」
「そうなのか。それにしても」
それでもカミーユのギルドロームへの嫌悪は変わらなかった。
「卑怯なことを」
「何が卑怯か」
やはりギルドロームは平気な様子であった。
「戦争だ。勝てばいいのだ」
「その考え方が!」
カミーユはそのギルドロームの言葉に反発する。
「より一層事態を悪化させているんだよ!」
「そうよ!」
フォウも言う。
「こんなやり方で私達は!」
「ならば止めて見せよ」
ギルドロームはまた挑発する。
「この私をな」
「そうかよ。じゃあ今からそこに行ってやるぜ!」
ダンクーガが突進する。
「覚悟しやがれ!」
「ふむ、やはりここに来たか」
「!?今のは」
「その声は」
忍とアランが最初に気付いた。
「やっぱり手前か!」
「生きていたか!やはり!」
「シャピロ、手前!」
「暫くぶりだな、藤原」
それは間違いなくシャピロの声だった。それはムゲ軍から聞こえてきていた。
「元気そうだな、相変わらず」
「何故ムゲにいやがる」
忍はそう彼に問うた。
「答えやがれ!」
「何、簡単なことだ」
あの余裕に満ちた笑みで述べる。
「私はあの敗北の時大破した艦の中で気を失っていた」
「さしづめあれですか」
ここでアズラエルは気付いた。
「そこを丁度侵攻していたムゲ軍に救われた」
「そうだ、そして私はムゲ軍に入った」
アズラエルに答える。
「そういうことだ。これでわかったか」
「わかりましたが尊敬はできませんね」
アズラエルの言葉は冷笑混じりであった。
「またこうして人間と戦うというのは」
「ふん。人間だと」
今度はシャピロが冷笑を浮かべる番であった。
「私は人を超越して神になる。その私が人なぞと一緒に」
「超人論ですか」
アズラエルはそれをこう捉えた。
「ニーチェですね。ですが」
「何が言いたい」
「それにも器が必要なのですよ」
そう彼に告げる。
「器だと!?」
「そうです。僕の見たところどうやら貴方は」
「何が言いたい」
「いえ、止めておきましょう」
あえてここで話を止めてみせた。
「戦闘中ですし。皆さん」
仲間達に対して言うのだった。
「攻撃目標は彼ではありません」
「どういうことだ、そりゃ」
忍がその闘争心を込めたまま彼に問う。
「あいつを殺さなくていいのかよ」
「それは後です。何時でもどうとでもなる話です」
「おい、どういうことだそりゃ」
「ですから。人の話は御聞き下さい」
知ってはいたが流石のアズラエルも忍のこの闘争心には内心驚いていた。
(まさかこれ程までとは)
「それでですね」
「ああ」
「まずはあの敵の将軍の乗っている戦艦です」
ギルドロームの艦を指し示す。
「それをどうにかしないと今こっちに攻撃してきている人達が大変ですよ」
「そうね」
アズラエルの今の言葉にレイが頷く。
「さもないと。味方を撃ってしまうわ」
「甲児なら半殺しでも大丈夫じゃない」
アスカは何気に物騒なことを言う。
「ここはいっちょ容赦せずに」
「アスカ、そうなったら修理費は自分持ちだよ」
「何ですって!?」
今の言葉には流石のアスカも動きを止めた。
「マジンカイザーを!?」
「高いよ、それもとても」
「そうね。止めておくわ」
「やい、そこの猿女!」
ここでその甲児の声がした。
「覚悟しやがれ!今日こそはお山に返してやるぜ!」
「何ですってえ!!」
早速頭に血が上るアスカであった。
「甲児!あんた本当に操られてるの!」
「バルマーに味方するドイツ猿!この俺が成敗してやるぜ!」
「いい度胸よ!ここで倒してやるから!」
「彼女をまず何とかして下さい」
「わかりました」
シンジがアズラエルに答える。
「とにかく。まずはあの戦艦です」
「そうやな」
トウジがアズラエルのその言葉に頷く。
「それを何とかせんとな。話にならへんわ」
「そういうことです。それでは」
「よし、一気に行こう」
ユウナが言った。
「幸い敵は随分減っているし。正面から攻めていけるね」
「それなら俺が」
「シーブック君がかい」
「はい」
名乗り出たのはシーブックであった。
「このヴェスパーならこの射程でも」
「いけるんだね」
「決めてみせます」
その言葉には絶対の自信があった。ユウナもそれを受けるのだった。
「わかった、じゃあ頼むよ」
「はい」
「援護は私がするわ」
セシリーがシーブックの側に来た。
「だから安心して攻撃に専念して」
「わかったよ。じゃあ頼むよ」
「ええ」
「これで準備はできましたね」
アズラエルはここまで見たうえで安心した笑みを浮かべた。
「こうして見れば実にハッピーエンドです」
「随分楽観的なんだな」
宙が彼に言った。
「どういうわけなんだ」
「何、全て見たうえでのことです」
アズラエルはそう彼に答える。
「シーブック君なら。いけます」
「それだけじゃない」
宙はまた言う。
「シャピロのこともだ」
「彼ですか」
何でもないといった口調を露骨に出していた。
「彼のことは何時でもどうとでもなります」
「さっきもそれを言ったな」
「言葉を取り消すつもりもありません」
また言うのだった。
「別にね」
「何でだ、そこまでまた余裕を」
「所詮。彼は小者です」
シャピロをこう評するのだった。
「そうした意味ではドルチェノフ総統やオルバン大元帥と変わりません」
「また随分と酷評ですね」
今度はルリが問うてきた。
「妥当な評価だと思いますが?」
「だからか。今放置していいのは」
「ダンクーガが向かっていますがそれはそれでいいです」
やはり放置であった。
「後で。どうとでもしますので」
「それよりも今は味方のか」
「幾ら何でも同士討ちは洒落にならないでしょう?」
理性的な返答であった。
「だからです。まあそれでもすぐに終わります」
「すぐにか」
「気にすることはありません。さあ」
ここでまた言う。
「いよいよですね」
シーブックは攻撃態勢に入っていた。今ヴェスパーをギルドロームの乗艦に向かって放つのだった。白い光が今矢となって放たれた。
「このヴェスパーなら!」
「いかん、回避せよ!」
ギルドロームをそれを見てすぐに指示を下す。
「急げ!」
「駄目です、間に合いません!」
部下達がそう彼に告げる。
「このままでは!」
「くっ、まさか!」
彼はその報告を聞いて苦悶の声をあげる。
「このわしをあの距離から狙うとは!」
「直撃、来ます!」
そう言った瞬間だった。ギルドロームの乗艦をヴェスパーが貫いた。それで終わりであった。
明らかに大破であった。もう動くことは適わなかった。これで終わりであった。
「敵の精神操作解けました」
「この艦もまた」
「くっ、失敗だというのか」
ギルドロームは部下の報告を聞いて顔を歪めさせる。
「人間め、思ったよりも」
「将軍、こうなっては」
「ここは」
「わかっておる」
部下達にそう答える。
「こうなっては。致し方ない」
「はい」
「それでは全軍」
「撤退だ」
そう指示を下した。
「いいな」
「わかりました」
「それでは」
「全軍撤退だ!」
ギルドロームが指示を下した。
「残る者の命は保障せぬぞ!」
「馬鹿な」
シャピロがその命令に異議を呈した。彼の艦はダンクーガと戦っていた。
「私はまだ戦える。それで何故」
「貴様のことなぞ関係ない」
ギルドロームは冷たくそう言い捨てた。
「旗艦も沈み戦力もかなりやられた。作戦も失敗している」
「だからか」
「貴様が戦いたいのなら勝手にするがいい」
こうも言うのだった。
「だがわしは兵を退かせる。それだけだ」
「・・・・・・わかった」
こうまで言われては頷くしかなかった。
「では退こう。それでいいのだな」
「そうだ。それでは下がるぞ」
「わかった。ではダンクーガよ」
その激情を必死に押し殺して忍達に言う。
「また会おう」
そう言い残して姿を消した。それでこの戦いは終わりであった。
ムゲ軍は退き甲児達も元に戻った。だがそれはそれで騒動のはじまりであった。
「だから覚えてねえつってんだろ!」
「覚えているいないの問題じゃないわよ!」
アスカがさっきの言葉で甲児につっかかっていた。
「よくも猿って言ってくれたわね!」
「実際猿じゃねえか!」
「おい、甲児君」
「今言ったら何にも」
これには鉄也と大介も呆れた。
「ならないじゃないか」
「幾ら何でもそれは」
「このドイツ猿!」
だが彼はまだ言うのだった。
「他に何て言えっつんだよ!」
「言えないようにしてやるわよ!」
アスカもまたアスカであった。
「ここでね!覚悟しなさい!」
「面白え!今回何か戦いがいがないと思っていたところだ!」
敵になっていたから当然であった。
「容赦しねえぜ!」
「それはこっちの台詞よ!」
二人は喧嘩をはじめた。アズラエルはそんな二人を見て言う。
「とりあえず鎮静剤が欲しいところですね」
「そういえばあの三人は平気だったようで」
ユウナはオルガ、クロト、シャニについて言及した。
「またどうして」
「マインドコントロールの類には耐性があるんですよ」
「そうなのですか」
「元々そういう体質でして」
それはそれで凄いことであった。
「全く平気なのです」
「それは凄いことですね」
「ええ。おかげで結構得をしています」
そのことには笑うアズラエルであった。
「何しろ。丈夫なのがパイロットの第一条件ですからね」
「左様ですか」
「いや、最初は確かに兵器扱いでしたが」
もうかなり昔のことに思える話であった。
「こうして実際にいると。ついつい頼りにしてしまうようになります」
「人間としてですか」
「そういうことです。使いにくくはありますが」
「ですが貴重な戦力ですな」
トダカが言う。
「あの三人の桁外れの破壊力で随分救われています」
「あれでなくてはならないようですねえ」
アズラエルは何故か楽しそうであった。
「敵としては随分苦しめられたんですが」
「そもそも貴方がジブリール副理事に彼等を奪われたのが原因では?」
「まあそれは言わないで下さい」
ユウナの言葉にバツの悪い顔をする。
「よく考えれば死刑囚を強化するよりもそのまま使えばよかったですし」
「死刑囚だったんですか、彼等は」
「ええ。ティターンズの基地に殴り込みをかけまして」
それはそれで凄い話である。
「そのせいで死刑判決を受けたのです。丁度連邦が彼等に殆ど牛耳られていた時で」
「ではレジスタンスだったのですか?」
「いえ、酒に酔って」
「酒に!?」
これにはユウナも言葉がない。
「それは幾ら何でも」
「しかし彼等は」
キサカが顔を顰めさせながら述べる。
「どれだけ飲んでも倒れることを知りませんが」
「この前はウォッカをストレートでボトル三本ずつ飲んでいましたぞ」
トダカが言ってきた。
「それで酔うなどと」
「何でもメチレンを相当飲んだそうで」
悪名高き粗悪酒だ。これを飲んで失明どころか命を落とした者も多い。昔から物資不足になれば出回る悪質な酒だ。
「それで悪酔いしたのだとか」
「よく生きていましたね」
ユウナもメチレンのことは知っている。飲んだことはないがその危険性については知っているのだ。
「そんなものを飲んで」
「あの頑丈さですから」
「いや、それでも」
それでも限度があるものだと思った。
「それで済んだのは」
「まあそういう事情でこっちで引き取って強化したんです。孤児だったこともあり」
「そうだったのですか」
「っただ。人をそうして強化するのは随分コストがかかるものなのです」
これは事実だった。これが軍ならともかく実業家であるアズラエルにとっては洒落にならない話だ。だから彼はこの計画をすぐに打ち切ったのである。
「ですから。彼等だけで止めました」
「あとはステラちゃん達だけですね」
「どうやらジブリール君は違ったようですが」
原理主義者というものは採算を無視して己の目的に突き進む。ジブリールはそうした意味で実に典型的な原理主義者であったのだ。
「困ったことに」
「はあ」
「人道的な問題も内部で出ましたし。色々な事情があって彼等はああなりました」
「そうでしたか」
「しかし。本当に元も戻っても変わりませんね」
この場合は性格もであった。
「能力も何もかもが」
「つまり最初からある意味超人だったのですな」
トダカはそう結論付ける。
「あの三人は」
「そういうことになりますね。まあこれから戦いは激しくなりますし」
これははっきりとしていた。
「彼等にも頑張ってもらいましょう」
「是非貴方にも」
ユウナは不意打ちに出た。
「最近カガリがさらに凶暴になってきましたので」
「いえいえ、それは」
そんな仕事を笑顔で引き受けるアズラエルではなかった。
「是非首相閣下に」
「何を仰いますか、経済復興に協力して頂いていますし」
「それとこれとは別で」
「それはなりませんぞ」
キサカも参戦する。当然ユウナ側に。
「アズラエルさんには是非共その能力を生かして頂きたく」
「オーブ国家元首にお近付きになれるとは。滅多にないこと」
予定調和でトダカまでもが。
「ここは是非共」
そんなことを話しながら戦場を去って行く。ラーディッシュの中でその三人が勇達と話をしていた。
「頭がガンガン来たぜ」
オルガが勇に語っていた。
「あのギルド何とかの精神攻撃でよ」
「ギルドロームだったか」
「そうだったか。陰険な野郎だぜ」
オルガは忌々しげに言う。
「今度出て来たら派手にぶっ飛ばしてやるからよ」
「期待しておいてよ」
クロトも言う。
「あいつを艦橋ごと抹殺してやるから」
「頼りにはしてるわ」
それに対するカナンの言葉は少し微妙であった。
「けれど。貴方達は」
「どうした?」
それにシャニが問う。
「何かあるのか」
「戦い方が滅茶苦茶なんだよ」
「そうだな」
ラッセとナンガがそうクレームをつける。
「味方を巻き込みかねないしな」
「それもいつもだ。注意してくれ」
「何だよ、実際に巻き込んだことはねえあろうが」
オルガがそれに反論する。
「皆よけてくれてるしよ」
「必死でよけているんだよ」
ジョナサンがそれに文句をつける。
「さっきだっていきなり後ろから派手に砲撃かましたよな」
「一言言ったぜ」
オルガも負けてはいない。
「撃つってな」
「一言だけだったな」
「本当にな」
クインシィとシラーは憮然としていた。
「味方ごと撃つとは」
「何を考えている」
「援護射撃」
シャニがそれに対してポツリと述べる。
「それだけ」
「あれが援護射撃で済むんでしょうか」
「そんなわけねえだろ」
カントとナッキィが文句をつける。
「確かに敵は随分減りましたけれど」
「俺達まで減るところだっただろうが」
「何だよ、皆随分と了見が狭いね」
クロトが実に手前勝手なコメントを出してきた。
「折角僕達の絶好の援護攻撃だったのにさ」
「援護攻撃で味方が死んだら本末転倒だ」
ヒギンズも言う。
「全く。どうしてこう」
「それでも。君達がコントロールされなくてよかった」
ヒメはそれを喜んでいた。『派手』な援護射撃は置いておいて。
「それは嬉しい」
「そうだな。それはよかった」
勇もそれには頷く。
「さもないと余計に大変だったな」
「やっぱり俺達いてのロンド=ベルだからな」
「そういうこと。この天才ゲーマーがいてね」
「完璧だ」
「じゃあもっとまともな攻撃しろ」
今度もジョナサンが言う。
「全く。今度やったら承知しねえからな」
「とにかくこれでこの戦いも終わったし」
勇は話を終わらせにかかってきた。
「それはよしとしようか」
「うん。けれど」
だがここでヒメが言ってきた。
「気になる」
「気になる!?」
「うん、ムゲのことだよ」
そう勇達に告げるのだった。
「シャピロもいる。やっぱりこれから」
「彼等の攻撃も激しくなるでしょうね」
それにカナンが答えた。
「当然のようにね」
「もっと戦争が激しくなるんだ」
ヒメはそのことを憂いていたのだった。顔にそれが出ていた。
「これから。もっと」
「仕方ない、それはな」
それにクインシィが応える。
「覚悟のうえだ」
「そうなるんだ」
「そうだ。しかも負ければ」
ここでクインシィの顔が険しくなる。
「地球は終わりだ」
「皆の地球が」
「折角オルファンと約束したんだろ?地球を大切にするって」
「うん」
それはよく覚えていた。忘れる筈がなかった。
「そうだよ、だから私達戦って」
「だから。あの連中にも負けちゃいけないんだよ」
クインシィの声がさらに険しくなった。
「わかったね」
「だったら俺達もよ」
「もっと派手に」
「やる」
「あんた達は自重しろ」
クインシィは三人には厳しかった。
「少しはな」
「何だよ、厳しいな」
「僕達だって真面目にやってるのに」
「全く」
「本当に全然自分のことに気付かないのね」
カナンはある意味感心していた。
「どうしたものかしら」
「まあいい。今度あんなことしたら電気鞭だ」
ジョナサンは半分本気だった。
「覚悟しやがれ」
「けれど」
勇がまた言った。
「これからも。バルマーは来るだろうし」
「そうね」
ヒメは彼の言葉にも頷く。
「それは間違いないよ」
「大変な戦いが続くな」
「息抜きも必要になるわ」
カナンがふと言ってきた。
「わかってるわね」
「けれどあれだぞ」
ヒギンズがクレームをつける。
「どうもここはそれに関しては」
「酒が多いな」
「そうだな」
ナンガとラッセが言う。
「それ以外にも」
「マニアックな趣味が多いというかな」
「そういえば君達」
ヒメはまた三人を見たのだった。
「最近本とかゲームとか音楽は?」
「おお、そういやよ」
「最近そっちの時間減ってるよね」
「そうだな」
三人は今それにはたと気付いた。
「酒に食い物が多いよな」
「この前のユリカ艦長の料理良かった世ね」
「あれなら幾らでもいける」
「あの戦略兵器がねえ」
ジョナサンはその言葉に首を捻る。
「どういう身体の構造しているんだ、こいつ等」
「まあいいんじゃないの?」
カナンはこう述べる。
「とりあえず平気なようだし」
「平気っていうかおかしいだろ」
ジョナサンはまだ言う。
「俺は死にかけたんだぞ、あれで」
「だから気にするな」
そんな彼にシラーが言うのだった。
「そういう人間もいるんだ」
「それにここはロンド=ベルだ」
クインシィはそれも言う。
「色々な人間がいる」
「サイボーグもニュータイプもいるよ」
ヒメはそこを指摘する。
「他にも一杯」
「それを考えれば気にすることはないか」
ジョナサンは半ば無理矢理そう考えることにした。
「別に」
「これからどうする?」
クロトは笑いながら他の二人に声をかけていた。
「何食べる?」
「菓子がいいな」
オルガの意見であった。
「それもとびきり甘いのが」
「マリューさんの手作りだ」
「おい」
皆今のシャニの言葉に顔を顰めさせる。
「あれがいい」
「確かマリュー艦長の料理も」
勇の顔が暗くなる。
「劇薬だったよな」
「戦略兵器ね」
カナンの評価はこうであった。
「あれも」
「何気にこの前は入られた」
「レオナさんのも凄いよな」
ナッキィはカントにそう述べる。
「あの人もな」
「家、あの人はかなり違うんですよ」
だがカントはこう言うのだった。
「違うのか?」
「ええ。あの人がまずくしたものが」
「美味くなるのか」
「そうです。わからないことに」
彼はそうナッキィに説明する。
「ですからあの人のお料理は美味しいんですよ」
「そうなのか」
「ですがミナキさんのは」
ミナキの名前を出したカントの顔が暗くなる。
「あれに関しては」
「あれも凄いな」
ナッキィは一言で済ませた。
「かなりな」
「はい。オルガさん達位です」
その三人が言われる。
「平気なのは」
「さて、食うぞ!」
「マリュー艦長のお菓子!」
「楽しみだ」
三人はそう言い合ってアークエンジェルに向かった。そうして彼女の傍目から見て完全に何か別の物体としか思えない菓子をほおばるのであった。

第二十二話完

2007・11・10
 
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