スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第十九話 シャピロの敗北
第十九話 シャピロの敗北
一旦はシャピロを退けたロンド=ベル。だが彼等はまたシャピロが来るであろうと予測していたのであった。
ゼダン。彼等はここに戻りまた戦闘準備に取り掛かっていた。その中でアキトが言うのであった。
「もうすぐかな」
「そういうところだろうな」
サブロウタがそのアキトに答える。二人はトレーニングの後で風呂からあがって爽やかにフルーツ牛乳を飲んでくつろいでいるのであった。
「タイミング的にはな」
「バルマーは一旦仕掛けたら続くからね」
「そうだよね」
一緒にいるジュンもその言葉に頷く
「そういう傾向はあるね、確かに」
「まあ、それならそれさ」
サブロウタは腰に手を置いてコーヒー牛乳を一気飲みした。見れば彼等はトランクス一枚で元気に話をしていた。
「その時はまた蹴散らしてやるぜ」
「上手くいくかな」
「上手くいかせるんだよ」
サブロウタは笑ってアキトに言葉を返す。
「いつもみたいにな」
「その通りだ!」
そこにダイゴウジも来た。
「何があろうとも!勝つぞ!」
「旦那もそう言ってることだしな」
サブロウタはダイゴウジのその言葉を自分の意見の根拠にするのであった。
「まっ、お気楽に派手にいこうぜ」
「何かうちはそのノリですね」
ジュンはサブロウタの言葉を聞いて述べた。
「それか熱くか」
「ドモンとかね」
アキトはロンド=ベルにおいてとりわけ熱い男の名前を出した。
「そういう傾向が確かにあるね」
「ドモンは最高だ」
ダイゴウジは何故かドモンを絶賛するのであった。
「ああでなくては!男は!」
「まあそうだけれどさ」
サブロウタはその言葉にはどうにも完全に賛成していないようであった・
「それでもね」
「何だ?何かあるのか?」
「ドモン辺りになると熱過ぎるんだよ」
彼はドモンをこう評するのであった。
「あの燃え方がな」
「そうか?」
「イザークといい旦那といいな。トウジはそうでもないけれどよ」
「皆いい奴だ」
ダイゴウジと彼等の仲はかなりいい。何故か馬が合うのだ。
「違うか?」
「俺もまあナンガとかリュウセイとかは好きだぜ」
サブロウタにもそうした相手がいるのであった。
「特にリュウセイなんてな。旦那並に熱いのにな」
「仲いいよね」
アキトもそこに突っ込みを入れる。
「サブロウタ達って」
「心の友ってやつだな」
サブロウタが言うと何かが違う感じであった。
「やっぱりな」
「そういうものですか」
「そうだ!」
ジュンの言葉にまたダイゴウジが叫ぶ。
「やはりそれは有り難いものだぞ」
「そうは言われましても」
「ねえ」
ジュンもアキトもこれには顔を暗くさせる。
「僕はいませんし」
「俺も」
「まあこれは運ってやつだな」
サブロウタは満面の笑顔で述べる。
「悪いけれど諦めるべきかな」
「そうですか」
「まあそれでだ」
サブロウタはもう一本飲んだところでまた言うのだった。
「あいつは今度もああして攻めるかな」
「それはないと思います」
ジュンはサブロウタのその言葉には首を横に振った。
「きっと今度は」
「いつもみたいに冷静にか」
「はい。今度の敗戦で彼も後がないでしょうし」
彼はそこまで読んでいた。
「冷静に来ると思います。ただ」
「ただ?何かあるんだな」
「それが何時崩れるか、ですね」
ジュンは探る目で述べた。
「彼はああ見えてもプライドが高いですし」
「そうだな」
そこにナガレが来た。そうしてジュンの言葉に頷くのであった。彼はもう自分の服を着ていた。そのうえで彼等の話に入るのであった。
「あの男はそれで破滅するタイプだ」
「破滅、か」
ナガレ以外の四人はその言葉に目を動かす。
「そうだ。案外それを待てばいいのかもな」
「俺達はそれでいいだろうけれどな」
サブロウタはナガレの言葉を聞いたうえでまた言葉を出した。
「藤原の旦那達はそれでどうかね」
「それならそれでいい」
ナガレはそれもよしとする。
「だがはっきり言える。あの男は神にはなれない」
「器じゃないってことだね」
「そうだ。所詮は小悪党だ」
またサブロウタに応えて述べる。
「恐れることもない男だ」
「しかし随分な言われようなことで」
サブロウタは少し茶化して言う。
「あの男も」
「だがその通りだ」
ダイゴウジもそれに頷いてみせる。
「所詮は器が小さい」
「けれど今度の戦いは激しくなりますよ」
ジュンはその中でも慎重な意見を述べるのであった。
「何しろ後ろがありませんから。彼は」
「背水の陣だな」
ダイゴウジはその言葉を口にした。
「ということは」
「だから。油断はできません」
「それはここではいつものことじゃねえの」
サブロウタは相変わらず軽い調子であった。
「そんなに心配することもねえさ。いつも通りだよ」
「何かそれも凄い話だけれどね」
アキトはあらためてそれを思う。
「けれどそれが普通になってきたような」
「慣れたよな、本当に」
サブロウタはそれを実感した。
「色々と戦ってきているからな」
「それでも皆さん健在ですし」
ジュンの顔が笑みになった。
「それは何よりですね」
「全くだ」
ナガレはジュンのその言葉に頷いた。
「何事もなくな」
「これからもそうだといいんだがね」
サブロウタの言葉は希望的観測ではあった。願望でもある。
「どうかね、そこは」
「そこまではとても言えない」
これにはナガレも何も言えなかった。
「戦争だからな」
「そうだよね」
これにはアキトも暗い顔だが頷くしかなかった。
「やっぱりそこは」
「そういうことだ。誰が死んでもおかしくはない」
ナガレはまた言う。
「俺達の誰かさせもな」
「そうだな」
ダイゴウジはその言葉を認めて頷いた。
「だが。出来る限りはな」
「ああ」
サブロウタがそれに応える。
「生きていたいものさ」
「そうだな」
彼等はそんな話をしていた。そうしてその中で次の戦いに備えるのであった。そしてそれは見事に当たるのであった。戦いの時が来たのだ。
「ゼダンに来ています」
「ここにですね」
ユリカはルリの言葉に応えた。
「はい。やっぱりバルマーです」
「何てお約束」
ハルカは結構楽しそうに言う。
「こうまでお約束だとねえ」
「そうですね。わかりやすくて」
メグミも言う。
「対処し易いですね」
「それじゃあ皆さん出撃です」
ユリカも全く悩んではいなかった。6
「それでいいですね」
「了解」
「それじゃあ全軍で」
「はい。それでは」
こうして何でもないといった様子で出撃する。ナデシコだけでなく全員で出撃する。そうしてゼダンの前で軍を展開させるのであった。
そこには当然ながら魔装機神もあった。クロとシロはサイバスターのコクピットの中であれこれと話し込んでいた。
「そういえばここで戦うのって久し振りでニャいかい?」
「そういえばそうだニャ」
クロがシロの言葉に頷く。
「ニャんか最近宇宙でばかり戦っているんで気付かニャかったけれど」
「そうだろ?メール=シュトローム以来ニャぞ」
「そういえばそうですね」
それにランシャオが頷いてきた。
「このゼダンを拠点にしていたのでわかりませんが」
「そうですね」
「言われてみれば」
フレキとゲリもそれに応える。
「どうも宇宙にいるとわかりにくいですが」
「場所は一つではありません」
「思えば私達もあちこちを転戦しています」
ランシャオはまた言う。
「かなりハードな戦いですが」
「何、それが私達の務めです」
「気にすることではありません」
フレキとゲリはランシャオに述べた後でクロとシロにも声をかけるのであった。
「そうですね」
「確かにそうニャ」
「おいら達は何かいつもの倍走ってる感じがするだけれど」
「それは御主人のせいでは?」
ランシャオはそう二匹に突っ込みを入れた。
「マサキ様はやはり」
「相変わらずニャ」
「ゼダンの道も全然覚えないニャ」
二匹はそうランシャオに言葉を返した。
「困ったことニャ」
「もうどうしようもないのかねえ」
「おい、こら」
マサキはその二匹にクレームをつけてきた。
「随分また好き勝手言ってくれるな」
「けれど本当のことニャ」
「おいら達の苦労もわかって欲しいニャ」
「ちぇっ」
こう言われてはマサキも黙るしかない。憮然としてコクピットに座っていた。
「全くよお。ファミリア同士好き勝手言ってくれるぜ」
「まあそういうもんでっしゃろ」
「ファミリアは御主人の無意識の産物なんやし」
「そうそう」
今度はミオの三匹のファミリアが言う。
「そやから自分やと思えば」
「そんなに気になることやおまへんで」
「大将はやっぱりどんと構えてこそ」
「だったらよ」
マサキはその三匹に突っ込みを入れるのだった。
「御前等はあれか?ミオの無意識なんだな」
「その通りですわ」
三匹はマサキにもそう答えた。
「それが何か?」
「おかしいでっか?」
「いや、全然そうは思わねえな」
これはマサキの本音であった。
「何か御前等だけは誰のファミリアかわかるからな」
「えっへん」
ミオはそれを聞いて誇らしげに胸を張る。
「それがミオちゃんの魅力なのよ」
「俺は別にそんなの言ってねえぞ」
マサキはミオにも言う。
「何か訳わかんねえことになってるけれどよ」
「そうかしら」
だがミオはそれに対する自覚はない。
「私は全然そんなのないけれど」
「おめえはそもそもそんなのねえだろ」
こうもミオに言う。
「何かよお。緊張感がねえっていうか」
「変に緊張しても何にもならないじゃない」
ミオの言葉は今回やけに説得力があった。
「そうじゃない?カチコチになっても」
「そうだけれどな。とにかくあれだ」
彼はまた言う。
「今度の戦いも激しくなるのだけはわかっておけよ」
「了解」
「来ました」
ここでハーリーの声が伝わる。
「前方にその数二千」
「二千かよ」
マサキはその数を聞いて気を一気に引き締めた。
「まずはそれだけだな」
「他にも千機確認されています」
ハーリーはそうも報告してきた。
「かなりの数です、注意して下さい」
「ああ、わかった」
マサキはそれに頷く。そうすると前を見据えた。
「来るなら来い、今度こそ引導を渡してやるぜ」
「ねえねえ忍さん」
ミオはその中で忍達に声をあげた。
「シャピロも来てるみたいよ」
「わかってるぜ、それはよ」
忍はその敵を見据えながらもう戦いに心を向けていた。
「シャピロ、今度こそぶっ潰してやる。覚悟しやがれ!」
「全軍前方へ」
その中でユリカが指示を出す。
「迎撃に向かいます。いいですね」
「おう!」
忍が応えた。
「一気にいくぜ。やあああああってやるぜ!」
そうして叫ぶ。これが合図となった。
ロンド=ベルはバルマー軍に一気に進む。そうしてまずは無人機を次々に屠っていく。所詮無人機では彼等の相手はとても務まらなかった。
「ふむ」
シャピロはそれを後方から見ていた。彼は艦橋から敵を見ている。顔は冷静だがそれでも目の色が違っていた。やはり冷静ではないものもまだ残っていた。
「所詮は無人機か」
「想定の範囲内でしょう」
参謀の一人が彼にそう述べる。
「これは」
「確かにな」
シャピロもそれは認める。
「しかし」
「しかし?」
「第二陣を向かわせろ」
無人機の後ろにいる有人機達を動かすように指示を出した。
「わかったな」
「もうですか」
「そうだ。見ろ」
そう言って参謀達に敵を見るように指し示した。
「今彼等は動きを止めている。そこを後ろから衝く」
「後ろからですか」
「挟み撃ちにする。わかるな」
シャピロのその戦術自体は間違ってはいなかった。参謀達もその戦術自体はよしとしていた。決して悪くはない、そうも感じていた。
しかし。それでも不安なものも感じていたのであった。
「挟み撃ちですか」
「何かあるか?」
「いえ」
それ自体は問題を感じないので頷くのであった。
「それではそれで」
「そうだ。ではいいな」
また参謀達に言う。
「第二陣を動かすのだ」
「はっ」
シャピロの指示に応える。
「そうして一気に包み込め。わかったな」
「了解!」
バルマー軍は積極的に動きだした。無人機は足止めに専念しその後ろに有人機が回り込もうとする。その姿はロンド=ベルからも確認された。
「挟み撃ちです」
ルリがユリカに告げる。
「そう来ていますが」
「はい」
ユリかもそれに頷く。
「そのようですね」
「それで。どうされますか?」
ルリはそのうえでユリカに作戦を問うた。
「このままでは包囲されてしまいますけれど」
「下がります」
ユリカはすぐに決断を下した。
「このままではゼダンにも入られかねませんし。それでいいですね」
「ええ。それが妥当ですね」
参謀の立場からユリカの言葉に頷く。
「それではそれで」
「御願いします」
ロンド=ベルはユリカの指示を受けてすぐに下がった。シャピロが包み込むその一歩手前でその罠から潜り抜けたのであった。
「むっ」
シャピロはそれを見て思わず声をあげた。
「退いたか」
「司令」
参謀達はそれを見てまたシャピロに対して問うた。
「どうされますか?」
「このまま進まれますか?」
「決まっている」
シャピロは彼等の問いに苛立ちを感じながら述べた。
「それならそれでやり方はある。前に出させろ」
「はっ」
「それでは」
「そしてだ」
彼の指示はさらに続く。
「控えさせていた予備戦力を出せ」
こう言うのであった。
「わかったな」
「今ですか」
「そうだ、今だ」
参謀の一人に答える。
「早いのでは、少し」
「何っ!?」
異議を申し立てた参謀の一人を見据えた。剣呑な目であった。
「私に意見するつもりか」
「いえ、それは」
そう言われると彼もそれを否定するしかない。シャピロは上官であり爵位も彼よりも遥かに上であるからだ。
「ないな」
「は、はい」
止むを得なく頷く。そうするしかなかった。
「申し訳ありませんでした」
「わかったらすぐに出せ」
口調は何とか冷静さを保っているがその指示は違っていた。
「そうして全軍で押さえつける。わかったな」
「了解!」
作戦が先の月面での戦いと同じになっていた。だがシャピロはそれに気付いてはいない。ただ闇雲に押し切ろうとするだけであった。そしてそれは相手にも読まれていた。
「敵の新手が出現しました」
ハーリーが述べる。
「その数千です」
「早いですね」
ルリがそれを聞いて言う。
「私達がもう少し疲れてからだと思ったのですが」
「おそらくまた焦っています」
ルリは冷静さそのものの声で答える。
「そうでなければここで投入しません」
「そうですか。それでは」
ユリカはそれを聞いて判断を下した。
「そこに入りましょう」
「具体的には?」
「まずは広範囲に攻撃可能なマシンを前に出します」
こう告げる。
「そしてそのうえで突撃タイプのマシンを突入させ」
「一気に勝負を決めるのですか」
「それでどうでしょうか」
ここまで話したうえで問う。
「そうですね」
ルリは一呼吸置いてからユリカの問いに対して答える。
「私もそれでいいと思います」
「それでは」
「広範囲攻撃可能なマシンは前に出て下さい」
ルリはユリカの言葉をそのまま全軍に伝えた。それを受けてロンド=ベルは動く。
バスターガンダムやダブルゼータ、サイバスター等がそうであった。彼等は軍の前方に展開してそこから照準を定めだした。
そこにシャピロのバルマー軍が迫る。彼等は数を頼んで一塊になっていた。
「また随分と乱暴だな」
ヤンロンがその彼等を見て言う。
「撃って下さいと言わんばかりだ」
「そうね」
リューネが彼に答える。
「こんな無茶苦茶な戦法取ってくれるとは思わなかったよ」
「だから私達の出番になったわけだけれど」
ミオもいる。魔装機神とヴァルシオーネも当然ここにいた。
「何かもうすぐ攻めるって感じかしら」
「こっちの準備はいいわよ」
テュッティが述べる。
「何時でもね」
「じゃあまずはだ」
マサキはジュドー達を見て声をかける。
「最初に派手なのを頼むぜ」
「おう、わかってるぜ」
ジュドーは明るい声で彼等に答える。
「期待していてくれよ」
「そっから三人が出て後で俺達だ」
他の三機の魔装機神を指差しながら述べるマサキであった。
「あと肝心なのは」
「わかっているよ」
ゼオライマーに乗るマサトがマサキに答える。
「僕のゼオライマーもだね」
「あんたのメイオウ攻撃はまた特別だからな」
そうマサトに言う。
「派手に頼むぜ」
「うん。それでもね」
ここでマサトは微妙な顔を見せてきた。
「何かあるのかよ」
「このゼオライマーもパワー不足に思えてきたんだ」
「そうかしら」
美久はマサトのその言葉に応えてきた。
「ゼオライマーは今で充分過ぎる程力になっているわ」
「いや」
だがマサキは彼女の言葉に首を横に振る。
「敵が強くなればそれも限度があるよ。ゼオライマーでもね」
「ゼオライマーでも」
「パワーアップする必要があるかも」
マサキは冷静な顔で述べるのだった。
「何かいい方法があれば」
「それを実行に移すのね」
「そのつもりだよ」
「それだと」
ここでラーダが彼に声をかけてきた。
「ええと、貴女は」
「ラーダよ」
彼女は自分の名を名乗ってきた。
「宜しくね」
「う、うん。それにしても」
「何かしら」
「また随分色々な場所で聞いた声だと思って」
マサトはそうラーダに答えた。
「ロンド=ベルにも似た人が多いし」
「それって私のことかしら」
アルビオンに乗るニナがその言葉に突っ込みを入れてきた。
「ひょっとして」
「何かニナさんだけじゃなくて」
マサトはそれに応えてまた言う。
「他の人の場合も多いし。何でだろ」
「世の中お互い似ている人は多いわよ」
ニナはそう述べる。
「だから気にしてはいけないわよ」
「いや、それでもね」
マサトはそれでもまだ引っ掛かるものがあるのであった。
「何かラーダさんやニナさんの声の感じの人とは色々あるなあって」
「縁かしら」
ニナもそれは否定できないので眉を顰めさせた。
「そういえば私もそんな気がするわ」
「何ででしょうね」
「だからそれが縁なのよ」
ラーダがそうマサトに述べる。そのうえでまた言う。
「それでね」
「あ、はい」
「強化するのなら全部合わせてみたらどうかしら」
「合わせる」
「確かゼオライマーは八卦の天だったわね」
「そうですけれど」
八卦の中でもとりわけ強力なマシンとして知られている。
「だったらその力を全部合わせてみるとか」
「八卦の力を」
「天だけではなくてね」
ラーダはそう提案する。
「それでどうかしら」
「悪くないですね」
美久はラーダのその提案に賛成するのであった。
「それがゼオライマーにとっては一番感嘆ですし」
「そうでしょ。だから私も」
「どうかしら、マサト君」
美久は今度はマサトに問う。
「それで」
「そうだね」
マサトはそれを聞いて考える顔になった。そのうえで述べる。
「少し考えてみるよ」
「ええ、それじゃあ」
「おいマサト」
ここでマサキがマサトに声をかけてきた。
「あっ、僕の番だね」
「ああ、頼むぜ」
そうマサトに声をかける。
「いっちょ派手にな」
「うん、それじゃあ」
ゼオライマーはそれを受けて前に出た。そうして敵の攻撃をかわしつつメイオウ攻撃に入った。言わずと知れたゼオライマーの切り札である。
「これなら・・・・・・!」
ゼオライマーが拳を合わせるとそこから光が放たれる。そうして周りにいる全ての敵を滅したのであった。あまりにも強烈な一撃であった。
続いてまずはグランヴェール達が出て攻撃を浴びせる。そうしてサイバスターとヴァルシオーネが。彼等が攻撃を終えるともうバルマー軍は相当のダメージを受けていた。
「敵の損害三割を超えました」
ルリが報告する。
「どうされますか、艦長」
「予定通りです」
ユリカはそう返事をした。
「突撃に入ります」
「わかりました。それでは」
ルリはそれを受けてまた言う。
「全軍突撃して下さい」
「よし!」
それを受けて真っ先に出たのは甲児であった。
「いっちょ派手に暴れてやるぜ!」
「よし、甲児君!」
彼の後ろにいる鉄也が声をかけてきた。
「俺は右に行く!」
「僕は左だ!」
大介もいた。マジンガーチームはここでも見事な連携を見せている。
「マジンガーチームの力」
「今ここでも!」
「よし、頼むぜ鉄也さん大介さん!」
甲児は二人の声を受けてさらに前に突き進む。
「シャピロの大馬鹿野郎を粉砕してやるぜ!」
「その通りだ!」
「では!」
三人は一気に突っ込み遮二無二周りの敵を粉砕していく。やはり接近戦において彼等マジンガーチームは圧倒的な強さを誇っていた。
マジンガーチームだけでなくほかのマシンもいる。彼等もまた派手に暴れ回っていた。
その中には当然ながらダンクーガもいる。ダンクーガはアランのブラックウィングのフォローを受けて縦横無尽に暴れ回っていたのであった。
「何処だシャピロ!」
忍は断空剣を振り回しながらシャピロを探し回っていた。
「今度こそここで手前を!」
「藤原よ」
ここでそのシャピロの声がした。
「探さずとも私はここにいる」
「そこか」
忍は声がした方を見た。見ればそこにはシャピロの乗るバルマーの母艦がいた。
「戦艦でふんぞり返っているっていうのかよ。お高く止まりやがって」
「何度でも言おう」
シャピロはその忍に対して告げた。
「私は御前達とは根本から違うのだ。それを覚えておくのだな」
「つまり選民思想ってわけ?」
雅人は彼の言葉をそう捉えた。
「何か凄く嫌な話なんだけれど」
「式部、御前にもわかりはしない」
シャピロは彼に対しても傲慢であった。
「私は選ばれたのではない。選ぶ者なのだ」
「そうだったな」
亮はその言葉に納得したように頷いた。
「神ならばな」
「司馬。御前にもそれはわかるか」
シャピロは亮のその言葉に余裕の笑みを見せてきた。
「少しは物事がわかるようだな」
「それでその神様がこれからどうするのさ」
沙羅が忌々しげな口調でシャピロに尋ねた。
「決まっている、結城よ」
今度は沙羅に対して告げた。
「神に歯向かおうとする御前達に裁きを下す。それだけだ」
「ふん、相変わらずだね」
シャピロは当然ながらその言葉に対してすぐに吐き捨てた。
「全然変わらないね、本当に」
「手前の言いたいことは全部聞いてやった」
忍はこれ以上彼の言葉を聞こうとはしなかった。
「じゃあ。用意はいいな」
「来るというのだな、藤原よ」
「そうさ、覚悟しやがれ」
ダンクーガをシャピロの母艦に向けてきた。
「死んでもらうぜ、いいな」
「では私も神の裁きを見せてやろう」
シャピロもまた母艦をダンクーガに向けた。
「御前達にな」
「いいか」
忍は仲間達に対して告げた。
「誰も手出しすることはねえからな。こいつは俺達が」
「やるのだな」
「そうだ」
アランにも答える。
「何があってもな。やってやるぜ」
「わかった」
アランは彼のその言葉を受けて頷いた。
「では。倒すがいい」
「ああ。神様だか何だか知らねえけれどよ」
断空剣を抜いて構え、そして。
「ダンクーガだって機神だ。それを見せてやるぜ!」
「神はこの世で一人」
シャピロは艦橋からダンクーガを見据えて述べる。
「私だけだ。それを見せてやろう、死ね!」
フーレの主砲を放つ。それでダンクーガを一撃で消し去るつもりだったのだ。
ビームがそのままダンクーガに迫る。しかし忍はそれをかわそうとはしない。
「忍!」
そんな彼に沙羅が叫ぶ。
「何してるのよ!このままじゃ!」
「黙って見てろ」
だが彼は沙羅にこう言葉を返した。
「すぐにわかるからよ」
「すぐにかい?」
「そうだ」
そう沙羅に述べる。
「こんなのよ。こうやって!」
「!!」
紙一重でかわした。ダンクーガの巨体で。
「かわしゃいいんだよ!それでだ!」
「今度はどうするの?」
雅人が忍に問う。
「攻撃をかわして」
「亮!」
忍は亮に声をかけた。
「あれを仕掛ける!いいな!」
「あれか」
「そうだ、あれだ!」
忍はまた叫ぶ。
「あれなら一撃で終わらせられる。だから」
「わかった、忍」
亮もそれに頷く。
「いいか、皆!」
忍はその後で沙羅と雅人にも声をかける。
「あれで一気に決めるからな!」
「あれかい!」
「そうだ!」
沙羅に答える。
「雅人、いいな!」
「わかったよ!」
雅人も彼に答えた。
「俺も何時だって!」
「よし!じゃあ行くぜ!」
「オーケー、忍!」
他の三人が忍の言葉に応えた。獣戦機隊の言葉が一つになった。
ダンクーガが炎の如き気に包まれた。そして放つのは。
「いっけええええええええええ!!」
忍は叫ぶ。そのまま攻撃に入る。
「断空砲フォーメーションだ!」
ダンクーガから三本の光が放たれる。それは一本の光となりフーレに向かう。その速さはシャピロとて見切れるものではなかった。
「なっ・・・・・・!」
断空砲がフーレを撃ち抜いた。撃ち抜かれたフーレは忽ちのうちにあちこちから火を噴きあげていく。致命傷なのは明らかであった。
「司令!」
傷ついた参謀達がシャピロに声をかける。
「最早この艦は!」
「脱出を!」
「馬鹿な・・・・・・」
だがシャピロは彼等の声を聞いてはいない。呆然として立ち尽くすだけであった。
「私が敗れるというのか。またしても」
「総員退艦!」
「急げ!」
彼の後ろで指示が下される。皆慌てて沈みいく船から逃れようとしている。
「神である私が。またしても」
「司令!」
「駄目だ、ここももう!」
彼等はシャピロを見捨てて逃げ出した。もうそれどころではなかったのだ。
「敗れるのか。そして」
「沈むぞ!」
「これで全員か!」
最後の声であった。フーレは沈み生きている者達は命からがら逃げ出した。しかしそこにはシャピロの姿はなかったのであった。
「死んだみてえだな」
忍は沈みゆく船を見て言った。
「これでよ。遂に」
「そうだね」
沙羅が彼のその言葉に頷く。
「そう思いたいね」
「ああ。吹っ切れているんだな」
「もうね」
沙羅はすっきりとした調子で答えた。
「終わった話さ。それだけだよ」
「そうか。じゃあ帰るか」
「ああ」
沙羅は彼の言葉に頷いた。
「これでバルマーの大きなダメージをまた受けたしね」
「といってもすぐに来るだろうけれどな」
「その時はその時さ」
沙羅はそう忍に答えた。
「またぶっ潰してやるよ」
「へっ、御前らしいぜ」
忍は彼女のそんな言葉に笑った。
「そういう言葉がよ」
「そうかい?じゃあこのまま行くよ」
「ってもう行ってるし」
雅人が突っ込みを入れる。
「まあこれでとりあえずはシャピロは終わりかな」
「普通に考えればな」
だが亮はこう言う。
「死んだ筈だがな」
「往生際の悪い奴だしね」
沙羅の言葉は醒めていた。
「また出て来るかもね」
「さっき言ったじゃねえか、御前が」
忍はその沙羅にまた声をかける。
「その時はその時でぶっ潰すってな」
「ああ、その通りさ」
沙羅は改めてその言葉に頷く。
「何度来ても。引導を渡してやるさ」
沙羅は強い声でそう述べた。シャピロの戦死と共にバルマーは兵を退きロンド=ベルは勝利を収めた。戦いはまたしてもロンド=ベルの勝利に終わったのであった。
「そうか、シャピロがか」
「はい」
ロゼは部下からの戦争結果に関する報告をヘルモーズにおいて聞いていた。話を聞いても特に感情は見せない。
「わかった」
「それでシャピロ司令は」
「死んだのか?」
「左様です」
部下はそうロゼに告げた。
「脱出されずに。そのまま」
「そうか。ならばよい」
「宜しいのですか?」
部下はシャピロが死んだという話を聞いても表情を変えないロゼに問うた。
「シャピロ司令が戦死されたというのに」
「厄介者が消えただけだ」
ロゼは冷たくそう言い捨てた。
「マーグ様の後ろを狙う男がな。それだけだ」
「それだけですか」
「そうだ。特に悲しむことはない」
ロゼはこうも言う。
「いずれは私の手で粛清するつもりだった」
「まさか。それは」
「本気だ」
ロゼは表情を変えずにまた述べた。
「司令を脅かすのならば。それは当然のことだ」
「マーグ司令を」
「マーグ司令には私から伝えておく」
ロゼはそう部下に述べた。
「御苦労だった。休むがいい」
「それで副司令」
部下はまたロゼに問うてきた。
「何だ?」
「次の出撃はどうされるのでしょうか」
「次か」
「はい。我が軍の損害は二回の敗戦で無視出来ないものになっていますが」
「暫く後だ」
ロゼはそう彼に告げた。
「今は損害を回復させることに務める」
「左様ですか」
「それにしても。シャピロめ」
ロゼはその戦死したシャピロに対して冷酷に言い放った。
「口程にもない。所詮はその程度か」
「ですがシャピロ司令のかわりは」
「それについては問題ない」
ロゼはそう部下に述べた。
「私が務める」
「副司令がですか」
「そうだ。それで済むことだ」
簡単なことだと言わんばかりであった。
「それでいいな」
「わかりました。それではそれも」
「司令に申し上げておく」
ロゼはまた言い放った。
「そなた達は休むがいい」
「はっ、有り難き御言葉」
「将兵には休息もまた必要だ。いいな」
「わかりました。それでは」
「しかし。バルマーも」
ロゼはここでふと思うのだった。
「指揮官の質が悪くなっているのかもな」
そこまで言ってその場を後にする。そうして全てをマーグに伝えるのであった。
二人は司令室にいた。マーグはそこでロゼから話を聞いていた。ロゼは彼の前に片膝をついて報告を行っていた。
「そう、シャピロが」
「はい」
ロゼは部下と同じことを彼に告げた。
「戦死したとのことです」
「そうか。可哀想に」
「可哀想?あの男が」
「誰でも。死ぬのには心が痛むよ」
そうロゼに答える。
「ロゼはそうじゃないのかい?」
「戦争ですので」
クールの仮面を被って述べた。
「それは致し方ないかと」
「そうなのか」
「少なくとも私はそう考えます」
こうマーグに述べた。
「ですが司令には司令の」
「有り難う」
自分の意見を尊重してくれたロゼに礼を述べる。
「そう言ってもらうと嬉しいよ」
「いえ、それは」
ロゼは今のマーグの言葉には恐縮した。
「ただ私の考えを述べただけですので」
「けれどそれがいいんだ」
マーグは微笑んでロゼに告げた。
「ロゼのその考えがね。私は嬉しいんだ」
「有り難き御言葉」
今度はロゼが礼を述べた。
「その言葉だけで充分です」
「それでシャピロのかわりだけれど」
マーグはそこについて尋ねた。
「誰がいいかな」
「私が行きます」
ロゼは自ら申し出てきた。
「それで御安心下さい」
「君が?」
「無論今までの責務も果たします」
そうマーグに告げる。
「ですからどうか私に」
「いいのかい?」
マーグはロゼを気遣う目で声をかけた。
「それで」
「はい、喜んで」
だがロゼはこう言葉を返すのであった。
「是非共」
「他にアルフィミリィもいる」
「彼女ですか」
何故かロゼはその名前を聞いて顔を曇らせるのであった。
「何か問題があるのかい?」
「言いにくいのですが」
その曇った顔でマーグに告げる。
「どうも近頃」
「様子がおかしいのか」
「はい、ご注意下さい」
そう忠告するロゼであった。
「彼女のことも」
「少し調べてみるか」
マーグはロゼのその言葉を受けて述べた。
「彼女についても」
「それが宜しいかと」
マーグ達の中でも何かが動きだしていた。それもまた宇宙の中の大きな流れになろうとしていた。ただ誰もそれにまだ気付いていないだけであった。
第十九話完
2007・10・30
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