茨の王冠を抱く偽りの王
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05.訓練
俺は.....いや、俺たちは今過酷な訓練を受けている。
なぜ訓練を受けているかというと話は.....少女と出会った時まで遡る。
彼女のヴォイドが俺の右腕に吸い込まれた。その理由はわからないし彼女が目覚める気配もなかった。
俺は彼女を背負って集たちの元へと向かった。
集たちと合流するとガイに連れられどこかに向かっていく。ガイがなぜか俺が背負っている少女のことを見て何も言わないのが気がかりだけど。
ガイに連れられてついたのは地下施設のような場所。
そこは図書館ような場所で壁一面に本が並んでおり天井は吹き抜けになっている。
そこには、葬儀社と思われる人がたくさんいる。
「城戸は」
「まだ眠っています。ヴォイドを使用されたショックか目覚める気配がありません」
ガイの問いかけに四分儀さんが答える。
「そうか」
ガイは少し疲れているのか辛そうだ。
「それでは改めて紹介しよう」
他の葬儀社に届くように大きめの声を出す。
「桜満集、茨壊、ヴォイドゲノムの持ち主だ。今後はこの二人を作戦の中核に連れて行く」
葬儀社のメンバーが少しざわめく。
「この二人と城戸研ニの獲得により我々葬儀社の当面に最大目標であった"ルーカサイト攻略"が可能になった」
ルーカサイト?
ガイは中央にあったモニターのキーボードに何かを打ち込むと四つあったモニター全てに小さな無数のファイルが表示される。
「これが作戦案だ。状況に応じてパターンが145通りに分岐する。全員実行までに全て頭に入れろ」
「時間は」
上の方から金髪と黒髪の混ざった少年?が問う。
「三日だ!それもできないなら参加するな」
再びざわめく。
「隔離施設襲撃のミッションから一日も経っていません。皆の疲労が心配されますが」
「それは違う。お前たちは何をしにここに来た......ゆっくり寝るためではあるまい。目やにでぼやけて視界でのこのこ敵の前に出ていくつもりか!」
ガイは振り返り、車椅子の少女......あの時のエンドレイブを操っていた少女を呼ぶ。
「綾瀬」
「は、はい」
彼女は車椅子でガイに近づく。
「お前の責任であいつらがこの作戦についてこられるだけの基礎訓練施せ」
「私がですか?」
「今のままではあいつらは足でまといにしかならん。自分の命が可愛ければやれ」
ガイはそう言い残し、この場から立ち去って行った。
「別にほっといてもらっていいですよ。そんな車椅子の女の子にまで迷惑をかけちゃ悪いです」
集の発言に少し空気が重くなった気がするが......気のせいか?
「あら、随分優しいのね....桜満君」
綾瀬はそう言って集に手を出す。
「あっ、シュウでいいですけど.....」
その瞬間、一瞬のうちに集が地面に倒された。
「車椅子は私の個性みたいなものよ。遠慮なんかいらないわ。お分かり」
「集!!大丈夫か!!」
集はそのまま気絶してしまったようだ。
その代わりずっと俺の背中で寝ていた少女が目を覚ました。
「うっ、う.......ここは?」
「あっ、やっと気がついた。どこかケガとかしてない?」
「大丈夫だよ、王様」
「イバラ、あなたが背負っていた少女は誰なのですか?ガイからは、気にするな、と言われましたが」
四分儀さんがたずねてくる。
「それが俺もよくわかんないんです。ただ......」
「ただ......?」
「この子は、俺が触れてもキャンサー化しないって事だけはわかります」
「キャンサー化!?」
その言葉に周りにいた全ての葬儀社が静まり返る。
「言ってませんでしたっけ。俺のこの右腕に触れた生命は......キャンサー化する。これが俺の力の代償です」
「まさか、あなたの右腕にそんな力があったとは」
これが俺の抱く罪。
「王様、もう下ろしていいよ」
俺の背中にいる少女が俺の背中から降りる。
「そう言えば、君は何で俺を王様って呼ぶの?」
「君だなんてヒドイよ、王様。私には椎名紫苑(シイナ シオン)って名前があるんだよ、王様」
俺の回答は無視なのか?
「それより、こいつ運ぶの手伝ってもらえる?」
綾瀬が集の事を指、指していう。
「俺が運びますよ」
「ありがとう。あと.....訓練は20分後に始めるからね、おくれないように来なさいよ」
20分後、綾瀬の悲鳴が施設内に響き渡った。
何があったかは知らないが今は訓練に集中するだけ。
葬儀社にふさわしいかのテストが一週間後にある。それまでにいろいろとしておかないと。
「竜泉高校二年、月島(つきしま)アルゴ......名前は」
さっき、ガイに話していた金髪と黒髪が混ざった少年だ。
「桜満集です」
「茨壊です」
「知ってるよ」
アルゴは集にナイフを渡す。
「本気で殺しにかかってこい」
集は戸惑う。てか俺も戸惑う。
「これ本物ですよね?」
「ああ、だから」
集は綾瀬の方を見ているのか......綾瀬はペンを口と鼻の間に挟んで終わるのを待っている。
何をしているんだろう、綾瀬は?
「葬儀社の看板は重ぇぞ。この程度でビビんなよ。オラァァ!!」
アルゴは声をあげ、ナイフを集に向かい振り、集髪の毛がきれる。
集はふらつく。
次の訓練銃を持ったまま、野外を走る。
「「はぁはぁはぁ」」
俺たちの前をふゅーねるみたいなロボットが走る。
『心拍数、互いに急激に上昇。君たち普段どれだけ運動してないの?』
「文化系なもので」
「俺は基本面倒なので」
次は、大雲さんの元へ行きとても大きな銃を渡される。
「重いか」
「「う、うっ、わぁぁぁ」」
銃を持ったまま俺らは倒れる。
「どうなの大雲、こいつらは」
「.....ダメかも」
次は、拳銃の特訓
まず、いのりが見本を見せてくれる。
.......すごすぎる。
「こういうのに関しては流石ね。あんたらにもこのくらいは目指してもらうから」
すごすぎる。全ての弾が人型の的の心臓部と頭を正確に狙っている。
「まぁ、やってみますか」
隣で集がいのりに教えてもらっている中俺は一人で的を狙う。
拳銃を右手で持ち的に向かい連続で放つ。
銃弾は全て頭を正確に狙い撃った。
「意外と当たるものだな」
今日の訓練も終わり自分の部屋(仮)に戻ろうとする時に廊下の方から誰かの歌声がした。
そっちの方へと向かってみるとそこにはいのりと集がいた。
何かを話しているようだったので俺はすぐにその場から立ち去った。
すると後ろから聞いたことのある声がした。
「あっ!王様だ!昼間ぶりだね」
そこにいたのは椎名だった。
「椎名か。そう言えば椎名は今日をしてたんだ?」
「椎名じゃなくて.....シオンって呼んでよね、王様」
そう言って椎名.....じゃなくてシオンは顔を近づけてくる。
「シオンは.....何をしてたんだ」
「私は......健康診断みたいなことかな?いろいろと調べられちゃって.....でも異常は何もなかったから大丈夫だよ、王様」
シオンはそう笑いながら言う。
その笑顔は周りまで笑顔にしそうなほどだった。
「そう言えば、昼間ちゃんと返事してくれなかったけど.....何で俺の事を王様って呼ぶんだ?」
シオンは少し困ったような顔をして答えを出す。
「う〜ん。それはね......王様は王様だから」
答えになっていない。
「まぁ、いいじゃんか.....それじゃあ、明日のテスト頑張ってね、王様」
そうだ、明日はテストの日だった。
そしてテスト当日となった。
「それじゃあ、模擬戦を始めるわ。ルーカサイト攻略作戦シナリオD-14を下敷きにあなたたち二人がエンドレイブと対峙しなければならなくなった場合の想定よ。シュタイナーを抜いて私の後ろの車両に二人とも駆け込めたらあんた達の勝ち。ペイント弾でも当たれば気絶くらいはするわ。集中して.....いいわね」
「「了解」」
俺と集は銃をセットする。
「始めましょうか」
前にも見た小さなロボットからツグミ声がした。
『それじゃあ、レディー.......GO!!!』
その声と同時に集はシュタイナーの方に前進.....するのを辞めて柱の陰に隠れる。
俺は違う柱の陰に隠れる。
『背を向けるのみっともないわよ。その逃げっぷり』
逃げる集にペイント弾が容赦なく打たれる。
俺のことはほっといて綾瀬は集を追いかける。
『ほらほら、ボヤボヤしてると死ぬわよ』
集がとある柱の陰に隠れたすると.....その瞬間俺の右腕がうずく。
集はいきなり出てきたと思うとその手に持っているライトから暗闇を作り出しそれがシュタイナーを覆い尽くす。
それと同時に集はゴールの車両に駆け込む。
「ゴールだ!!」
周りで見ていた葬儀社のメンバーがざわめく。
暗闇が解け、シュタイナーが姿を現す。
『えっ!?』
すごいぞ。綾瀬のエンドレイブを抜いたーーあれが王の力かーーでも、まだ一人が車両に入ってないーー
葬儀社のメンバーガヤを飛ばす。
『シュウみたいに抜かせたりしないわよ、イバラ!!』
俺の前にシュタイナーが立ちはだかる。
ゴールまではそう遠くはない。だが、その前にシュタイナーが立ちはだかる。
「集が使ったなら、俺もありだよな」
俺は右腕に巻かれている包帯を外す。
『させないわよ!!』
シュタイナーがペイント弾を無数に俺に放つ。そこにいた誰もがダメだと思っている。
右腕が光を放ちそこから........赤子の鳴き声が泣き出した。
オギャー!
前にも見たことのあるヴォイドだ。前に無数のレーザーを喰らい止めた双頭の赤子オルガンが姿を現す。
『何よ、そのヴォイドは!!』
「気にしないで......さぁ赤子、ご飯の時間だ」
オギャー!と再び泣き出した。赤子がシュタイナーのいる地面を喰らう。
シュタイナーはバランスを崩しその場に倒れる。
今のうちに全力疾走で車両に駆け込んだ。
「ゴメン、ズルしちゃったかな」
「俺もゴメン」
「いいわよ、あんたはあんたの個性を使っただけだもん」
「歓迎します。シュウ、イバラ、君たちは今日から私たちの仲間です」
俺たちの事を葬儀社のみんなは暖かく迎えてくれた。
「はい、ご褒美。大事なものなら今度はなくしたりしないで大事に持ってなさいよ」
綾瀬はシュウにそう言ってペンを渡した。
この空気をブチ壊すのは簡単なことだった。
「仲間ごっこ?楽しそうだね」
その一言ですべてが崩れた。
「目が覚めましたか、研ニ」
「研ニって....」
「まさか....」
「城戸研ニ、あなたが第四隔離施設から助け出した人物ですよ、シュウ」
「仲間ごっこってどういう意味ですか?」
綾瀬も少し怒っている。
「なんかヌルいねいろいろと、ガイのやつがなにやってんの?」
「ちょっと.....!?」
「大変よ、みんな!!」
ツグミが緊急事態を知らせる。
「ルーカサイトが今、ポイントδに発射されたわ」
ポイントδって確かガイいる場所
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