ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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買い物と壁男
あの後、一旦家に帰り(両親はいなかった)俺は駅前に行った。すると、詩乃はすでに来ていた。というわけで観察することにする。詩乃は持っている文庫本を読みつつ、しきりに時計に目をやる。服装は……作者が服のことは全く分からないので勘弁してくれ……まあ、行くか
「やあ、詩乃。待ったか?」
後ろから近づき肩を叩くと、驚いた様子で文庫本を閉じ、ついで嬉しそうに笑顔を見せ、最後に恥ずかしそうに顔を赤らめた
「ううん。私も今来たとこ。じゃあ、行こ」
詩乃は顔を見られたくないのか、俺の手を握ってずんずん歩いていく
「……」
「……」
電車内では、話題がないのでどちらも沈黙していた。これではいけないと思って、とりあえず話しかけようとすると
「「ねぇ」」
……ギャルゲのイベントだろうか?見事に重なった
「詩乃からでいいよ」
「うん……」
気合いを入れるためか、一度うなずくと詩乃は口を開いた
「あの時……燐の言葉って……どういう意味?」
あの時……父に向かって言った言葉だよな……
「それについては、明日まで待ってくれ」
すると詩乃は期待と不安の入り交じった顔をした
「もう一つ聞きたいんだけど……」
詩乃は何かを言い掛けるがためらうような素振りを見せた
「SAOについてならいいぞ。でも、何で?」
図星だったらしく、顔を俯ける
「あの世界で何をしてたか、燐のことをもっと知りたいから……」
「……わかった。まず、閉じ込められたときに思ったのは、解放感だったよ。これで、親の重圧から逃れられるってね」
「あんな人だからね……」
詩乃は苦笑まじりに言った
「しばらくは、そんな気持ちのまま戦ってたんだが、ある日あったプレイヤーと話しててな。まあ、その時初めて現実に帰りたいと思ったな」
……詩乃のことが心残りだったからな、と続けると顔を真っ赤にした
そんなことを話しているとどうやら目的の駅についたようだ
詩乃の希望で服屋へ。選んで欲しいらしいが、俺は服についてはわからんからな……
「これはどう?」
というわけで詩乃が選んで俺が評価するという形をとった
「いいんじゃないかな」
どんな服かって?……まあ、似合ってたよ
服の説明なんて俺には無理!by作者
「じゃあ、これを買おうかな……」
レジに持っていこうとした詩乃からその服を取り上げ、俺が持っていく。俺が財布を取り出すと
「私のだから、お金は私が……」
「詩乃は家計がヤバイんじゃないのか?」
少なくとも最後に会ったときはそうだった
「そうだけど……」
「看護のお礼だと思って、今日、明日は俺に奢らせてくれ。そうでなくても、女性に払わせるようなことはできないしな」
「……ありがとう」
赤面……可愛いな……軽く変態になってないか、俺?
「次はどこに行きたい?どこでもいいぞ?」
しばらく、考え込む詩乃。やがてニヤニヤしながら口を開いた
「じゃあ、ラン……」
「却下」
「……どこでもいいって言ったじゃん」
ニ文字目で内容を察し、却下する。わかるだろ?男子諸君。ラブコメで有りがちなあそこだよ
「あそこは男は入れない場所だ」
「……じゃあ、喫茶店でも」
「了解。ならいい場所がある」
ちょっとむくれている詩乃を馴染みの喫茶店に連れて行った
以前小さい時、両親に反抗して家を飛び出したとき偶然見つけた喫茶店に入る。もちろん、その家出のときは入らなかった。中学生になってから、改めて行ってそれから常連になっただけである。カランカランと扉に付けられた鐘が鳴る
「いらっしゃい」
……あれ?マスターが変わってるし、見間違いかな……エギルがいるように見えるんだが……というわけで一旦外に出る
「どうしたの?」
「知り合いがいたような気がしたんだが……」
「常連ならマスターとは知り合いなんじゃないの?」
「いや……マスターが変わってた。のにも関わらず……」
言い掛けたその時、扉が開いた
「よう、リン。久しぶりだなぁ」
ハゲの頭。巨大な体躯。SAO内となんら変わらないその顔は間違いなくエギルだった
「よう、エギル。久しぶりだな」
……笑顔でこたえる俺
「笑顔、引きつってるぞ」
「当たり前だろ?いきなり会いたくないやつに会ったんだから」
「……相変わらずだな、リン……」
ちょっと肩を落とすエギル
「えっと、この人は?燐」
詩乃が訊ねてくるが……顔が引きつってるぞ詩乃
「……The 壁」
「おいおい、俺は壁かよ!?俺にはアンドリュー・ギルバート・ミルズって言うママにもらった名前が……」
「それは、俺に言うなよ……」
「おっと、そうだった。アンドリュー・ギルバート・ミルズです。以後お見知りおきを」
「そういえば、俺も名乗ってなかったな……鈴木 燐だ。はじめまして、エギル。んで、こっちは朝田 詩乃だ」
「朝田 詩乃です。よろしくお願いします」
はじめましてって何か変だな……リアルで会うのは初めてだからあながち間違いではないが
「燐よ……彼女はコレか?」
エギルは俺の肩に腕を回すと反対側の手の小指を上げて聞いてきた
「友達以上、彼女未満ってところかな……」
「お前にも春が来たか……いや、めでたい。今日は客として来たのか?」
「ああ……」
「じゃあ、ゆっくりしていってくれや」
エギルはカウンターに戻る。俺らはカウンターのスツールに並んで座る
「エギル、俺はブラックで。詩乃はどうする?」
「私もブラックで」
「あいよ」
エギルがコーヒーを淹れてくれる
「そういや、燐。おまえの連絡先を教えてくれんか?」
「了解」
携帯の番号を交換する。コーヒーを飲みおわり
「ご馳走さま。いくらだ?」
「ここは、俺の奢りにしといてやるよ」
詩乃を見てニヤリと笑うエギル
「サンキュー……じゃあな」
「おう」
手を振ると詩乃を連れて店を出る
「何か……顔と言葉のギャップが……」
「それはわかる……」
外に出ると空が赤く染まっていた
「じゃあ、また明日な」
「うん、楽しみにしてる」
今日はもうそろそろ帰らないと行けないので、帰ることに。……明日が楽しみだ
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