ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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最終決戦と未来へ……
前書き
SAO編の最後です
短い呼気とともに飛び出した俺は、挨拶代わりの右手からの突きを放った。<<ドッペルマン>>は左手の盾でガードすると、右手の剣で袈裟斬りを仕掛けてくる。俺はそれを左手の剣で弾くと右手の剣を叩きつけようとした。それに反応した<<ドッペルマン>>は盾で弾こうとするが、当たる直前、右手の剣を引き二本の剣で斬りつけた。<<ドッペルマン>>は完全にはかわせなかったようで、ダメージが入ったが本当に少しだ。お返しとばかりに<<ドッペルマン>>は猛然とラッシュを仕掛けてきた。二本の剣で弾く。そして隙をみて反撃するが、全て弾かれる。どうやらユイのようなAIを持っているようで、先ほどのフェイントはもう効かない。それならば茅場の記憶も持っているだろう。全てのソードスキルは読まれると見ていい……たからこそ、勝機はある!
俺は右手の剣で水平四連撃<<バーチカル・スクエア>>を放った。<<ドッペルマン>>がにやりと笑った気がした。しかし、にやりと笑い返してやった。すると<<ドッペルマン>>は戸惑ったような表情を見せた。もちろん、この間も手は止まっていない。そして、<<バーチカル・スクエア>>の最後の一撃。それから意識を外し、左手に意識を集中させる。相手も動きだす。<<バーチカル・スクエア>>後の硬直時間を狙った完璧な一撃。普通のプレイヤーならば不可避だろう。普通ならば。必殺だった一撃は俺の右手の剣にあたり、右手の剣を砕いた。だが俺は止まらない。左手の剣で単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>をソードスキルを放って硬直中だった<<ドッペルマン>>に叩きこんだ。<<ドッペルマン>>は無数のポリゴンになり爆散したときには俺はもう駆け出していた。キリトはその時二刀流最上位剣技<<ジ・イクリプス>>を放っていた。連続二十七回攻撃だが……
「それはダメだ!」
剣技をデザインしたのは全てやつだ。ならばどこに来るのかも全て読める。読めるということは、防げるということだ。俺の言葉にキリトは、はっ、としたような表情をした。茅場は勝利の笑みを浮かべていた
「さらばだ……キリト君」
やつが放ったソードスキルは盾と剣のニ連撃、神聖剣上位剣技<<ホーリー・ティアー>>。その時キリトと茅場の間に割り込む影……アスナか……全く、俺もアスナも損な役割だよな
「アスナ、リン……何で……」
簡単に言うと茅場の放ったソードスキルを俺とアスナが体で受けた。もちろん、HPは吹っ飛び、倒れこむ
「約束……守れなかった……すまない」
それを言って、俺の意識は暗転した
.
.
再び、周囲が色づいて行く……あれ?俺は死んだはずじゃ?足元には分厚い水晶の板があった
「……リン」
「……リン君」
呼ばれたのでそちらを向くとキリトとアスナがいた
「ここはどこだ?死後の世界か?SSSに勧誘しに来たのか?」
滅多にしないボケをかましている時点でかなり混乱しているのはわかるだろう
「アインクラッド……」
キリトとアスナの視線の先にあったのは巨大浮遊城だった。それを見ているとアスナが抱きついてきた。キリトに目を向けると苦笑いだった
「あ……」
城が崩れ始めていた。赤い雲海に城の全てが崩れ、落ちてい。懐かしい場所や、死にかけた場所など、といった場所も差別なく崩れ落ちていく。アスナは、俺から離れキリトと俺の腕を脇に抱え無言で崩壊する様子を見始めた
「なかなかに絶景だな」
傍らから声がしたので俺らは視線をそちらに向けると白衣姿の茅場晶彦がいた。怒りや憎しみは不思議と感じなかった。それはキリトとアスナも同じだったようで、茅場から視線を外すと再び巨城に目を向けた。やがてキリトが口を開いた
「あれは、どうなってるんだ?」
「比喩的表現……と言うべきかな。現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去作業を行っている。あと十分ほどでこの世界の何もかもが消滅するだろう」
「あそこにいた人たちは……どうなったの?」
「心配には及ばない。先程……」
茅場はウインドウを開き眺めて言った
「生き残った全プレイヤー、6147人のログアウトが完了した」
キリトは一度強く目をつむると、口を開いた。目には光るものがあった
「……死んだ連中は?一度死んだ俺たちがここにこうしているからには、今までに死んだ四千人だって元の世界に戻してやることができるんじゃないのか?」
「命は、そんなに軽々しく扱うべきものではないよ。彼らの意識は帰ってこない。死者が消え去るのはどこの世界でも一緒さ。君たちとは、最後に少しだけ話をしたくて、この時間を作らせてもらった」
それが四千人を殺した人間の台詞か?と思ったが、俺は別の質問をした
「なんで、こんなことをしたんだ?」
茅場は苦笑を洩らすとしばらく考えて言った
「なぜ……、か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時……いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創りだすことだけを欲して生きてきた。そして私は……私の世界の法則をも越えるものを見ることができた……」
某全身剣さんが聞いたら、それは心意だと言いそうだ……某全身剣さんって誰だろう?
「子供は次から次へといろいろな夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな……。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。年を経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、キリト君、リン君。まだ信じているのだよ……どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」
「ああ……そうだといいな」
アスナに続いて、俺もうなずく。あの城は俺にとっての自由の象徴。あの城は俺を変えてくれた……
「……言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君、アスナ君、リン君」
茅場は穏やかな表情で俺たちを見下ろす
「……さて、私はそろそろ行くよ」
その言葉を残し、茅場は消えていった
「……お別れだな」
そう言ったキリトの頭をはたく。キリトは、え?って顔をしている。アスナは小さく首を振った
「ううん、お別れじゃないよ。私たちは一つになって消えていく。だから、いつまでも一緒」
「さて……俺は一人寂しく……」
キリトとアスナに頭をはたかれた
「何言ってんだ。リンも一緒だろ?」
「新婚気分の夫婦の間に入る勇気はねぇよ……まあ、それも悪くない」
俺たちはほほえみあう
「ね、最後に名前を教えて。キリト君とリン君の、本当の名前」
キリトが思い出そうとしているので、それに苦笑しつつ口を開いた
「鈴木燐。それが俺の本当の名前だ。多分今は十七歳」
「桐ケ谷……桐ケ谷和人。多分先月で十六歳」
「すずき……りん君ときりがや……かずと君……」
口調がゆっくりになった。まるで魂にでも刻み付けているように
「キリト君、年下だったのかー。……わたしはね、結城……明日奈。十七歳です」
……結城?聞いたことあるがどこだったか……。そんな思考をしていると明日奈が俺とキリトに抱きついてきた
「わたし、幸せだった。和人君と会えて、燐君と会えて……ありがとう……和人君……愛してます……。燐君……大好きだよ……」
俺には明日奈に返す言葉が見つけられなかった
俺たちは抱き合ったまま光の粒子となり消えていく……
.
.
目が覚めるとそこは病院だった。俺は死んだはずじゃ……と思ったが、次の時には、そうか、茅場は生かしてくれたか……に変わった。俺が生きているということは、キリトもアスナも生きているということだ。長い間寝たきりだった影響か、体に全く力が入らなかった。それでも、一歩を踏み出そう。新たに始める人生。全てを取り戻し、夢に向かって歩きだすために。その時、病室の扉が開き、黒髪の眼鏡の女の子が目に涙をためながら飛び込んできた
後書き
蕾姫「完結!!とは行きません。次は日常編です」
リン「生き残れたんだな……」
蕾姫「番外編をやろうかな?」
リン「えっ……」
蕾姫「一つ前のあとがきのアンケートに答えてねー。よろしくお願いします!」
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