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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第一章 無印編
  第八話        『金色の魔導師』

 
前書き
月村家に突入の回。
そしてフェイトさん登場。 

 





Side シホ・E・シュバインオーグ


つい最近の新聞にも大きく載っていたあの大樹の事件から少しが経った頃、なのはと私はすずかに家に招待された。
アリサも来るらしい。
そしてすずかの姉の『月村忍』という人物は恭也さんの彼女という話である。
それで私、なのは、恭也さんの三人で月村邸にお茶会に出かけることになったのだけど…。

「シホちゃん。ほんとうに先に行ってていい?」
「大丈夫よ。地図ももらったから後から月村邸に向かうわ」

そう。私はなのはと恭也さんとは別に遅れて向かう手筈になっている。
理由は桃子さん直伝レシピのお菓子がまだ出来上がっていないから。
それで出来上がったらすぐに向かうと二人を説得した。

二人が出て行った後、美由希さんは家でお留守番らしくフィアと遊んでいた。

「美由希さーん。もう少しで出来ますから味見してもらえますか?」
「うん、わかった。それじゃいこっか、フィア?」
「キュッ!」

美由希さんはフィアを肩に乗せてやってきた。
私はテーブルの上に今出来上がったばかりの数種類のクッキーを美由希さんに味見してもらうと、

「うわー…シホちゃん、すごいね。なんか最近お母さんの作るクッキーと味が似てきたよ」
「お褒めいただきありがとうございます」

なんとなく従者の態度で一礼して応じてみた。
それに美由希さんはとてもいい笑顔を浮かべた。
どうやら受けはよかったらしい。

「なんかシホちゃんってそういう仕草をするとメイドさんみたいだね。月村邸にもメイドさんがいるけどいい勝負だよ?」
「ファリンさんとかですか?」
「あれ? シホちゃんってファリンさんの事知っていたの…?」
「はい。まぁ…」

それで美由希さんに出会いの話をしたら「やっぱり…」という表情をしていた。
ファリンさん…あなたはやっぱりドジっ子メイドなんですね。
それからクッキーだけじゃ…と思い紅茶を出して淹れてみた。
少しの間、私と美由希さんはこの静かな雰囲気を楽しんでいた。

「…ふぅ、シホちゃんってやっぱり料理も家事もできるし器量もいい。なによりとっても可愛いから将来付き合う人が羨ましいね…」
「(コクコク…)」

美由希さんはそんな事を突然言い出しフィアもなぜか首を縦に振っていた。
そうはいうが私としては元・男性なので付き合う事は恐らくないだろう。
なので支障の無い程度に受け応えをしてみた。
でも、と…美由希さんは少し意味深に低い声を出しながら、

「おそらく、ね? 私やなのはもそうだけどお父さんと恭ちゃんがきっと…『娘はやらん! 欲しければまず私達を倒すことだな!』とか言って襲い掛かりそうだよね。二人とも妙に過保護だから…」
「あ、あはは…」

そんな事は無い、とは言い切れない…。
翠屋でなのはに言い寄ってくる同年代の輩にガンを飛ばしているのが時々窺えるから。
そういえば、この間のサッカーチームの時も私が接客をしていた時に同じ目をしていたっけ?
目は笑っているのに雰囲気が逆に怖かったのが印象的だった。
物思いに耽っているところに、美由希さんの「ご馳走様。美味しかったよ、シホちゃん」という言葉でこの場はお開きになった。
それから持っていく分のクッキーをリュックに詰めてフィアを肩に乗せて出かけようとしたところ、

「シホちゃん。月村邸にいくなら気をつけた方がいいよ? あそこは初めての人にとってはある意味人外魔境だから…恭ちゃんも破壊の選択取ったし…」

と、いう不吉な言葉を残して道場に向かっていった。
私は不安を拭い去りながらも今度こそ家を出る。

《お姉様…先程の美由希さんの言葉、どう取ります?》
《なにかの例えか比喩じゃないかしら? ほら、恭也さんが破壊を選択したっていうのも、もしかしたら冗談かもしれないし…》
《だといいのですけど…》

フィアと思念通話でお互い冗談だという事で自己保管することになった。
それから少しして月村邸が見えてきた…のだけれど。

「でかいわね…」
「でかいですね…」

そう。とても広いのだ。左右どちらを向いても曲がり角や家が見えない。
いや、別に私の目にかかれば見えないことも無いけどそれでも普通の人には到底見えない距離までいかないと見えない。
彼のエーデルフェルト邸もこのくらい広かったっけ?
とりあえずメモ書きを広げてそれに従い正門までたどり着きインターホンを鳴らした。

『いらっしゃいませ。どちら様でしょうか?』

インターホンから電子音の言葉で話しかけられてきた。
正直に私は驚いた。
まさか正門に音声ロックがかけられているなんて。

「私はシホ・E・シュバインオーグというものです」
『声紋確認中………確認いたしました。どうぞお入りください』

そして正門がゆっくりと開いた。

「すごいわね。声紋まで確認するなんて…すずかが事前に私の声を登録しておいてくれたのかしら?」

私が暢気にそんな事を言っていた矢先に突如正門が凄い勢いで閉まり一般人では飛び越えるのも不可能なほどに塀や門が高くなった。

「ちょっ!?」
「な、なんですか!?」

『侵入者! 侵入者! 迎撃体勢レベル5!』
「なんでよ!?」

不条理の叫びを上げた次の瞬間に足元に何かが撃ち込まれた。
…はい?
私の目がおかしくなければ今のはまさしく銃弾! 銃弾!?
そして銃弾が飛んできた方を見ると二足歩行のロボットが何体もこちらに迫ってきていた。
その手には…剣? 銃? 他にもたくさん持っている。
ここは某死神が居座る魔窟と同じか!?
割烹着の悪魔ーーーッ!

「あの、お姉様…!」

私がかなりテンパっているところでフィアの言葉に現実に戻された。

「と、とりあえずフィアはリュックの中に入っていなさい! 私がなんとかするから!」
「は、はいです!」

フィアがリュックに入ったのを確認後、

「まったく…声紋の登録無しだけで襲いかけられるなんてたまったものではないわね?
とりあえずそちらの不手際という事で防衛行動を取らせてもらうわよ?――投影開始(トレース・オン)。是、物干し竿…!」

私はアサシン――佐々木小次郎――の物干し竿を投影した。
以前の私ならアサシンと同じくらいに構えられたが、今では二倍かそこらの長さがあるので私が持つには少しつらいが投影した。
実は言うと私は物干し竿と相性はいい方なのだ。
なぜかっていうと多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)を技として起こせるから。
宝石剣の一所有者としては是非ともとアサシンに師事したのはいい思い出である。
もちろん四日間の間の話であるが…
何度も繰り返す事でアヴェンジャーを通して私の技量も上がっていったらしい。
それは他のサーヴァントにも通じることだからこれだけはアヴェンジャーに感謝している。


閑話休題


私は物干し竿を構えて迫ってくるロボットを撃退しようと試みる。


◆◇―――――――――◇◆


Side 高町恭也


…なぜだろう?
もう二度と聞きたくない防衛装置が作動しているような気がするぞ。
しかも俺の時と同じくらいの騒音が聞こえてくる。

「…なぁ忍。俺が以前に味わったレベル5の防衛装置がまた作動していないか?」
「おかしいわね? 恭也級の使い手なんてそうそうお目にかからないのに…。士郎さんと美由希さんももう登録してあるし…」
「そういえばシホちゃん、まだ来ていないよな?」
「その子って確か恭也の家の子になったっていう女の子の事? なに? そんなに強いの?」
「ああ。おそらくなんでもありなら俺より強いかもしれない…。やばい! きっとシホちゃんが襲われているんだ!」

その時、なのは達とファリンさん、ノエルさんが急いで部屋に入ってきた。

「お兄ちゃん!」
「ああ、分かっている!…忍、帰ったら少しおしおきな?」

俺はそういい残しすぐに庭に向かおうと…「ドーーーーンッ!!」…した矢先に爆発音が響いた。
それで全員顔を青くした。
なのは達なんて涙を浮かべている。

「すぐに向かう! ノエルさんはすぐに防衛装置の解除を!」
「畏まりました、恭也様!」



俺は爆発音のした場所に全力で向かい、だがそこで目にした光景に目を見開いた。
服装は爆発の影響であちこちボロボロだが、それでも無傷でシホちゃんは自身の身長以上の長さはある刀を持ち、

「秘剣―――――………」

シホちゃんが鋭い眼差しをして刀を水平に構えた途端、殺気がたち込めだし周囲の温度が一気に下がり、しかしまだ生き残っているロボット達はシホちゃんに向かったが。

「燕返し…!!」

その必殺の言葉とともに異なる軌跡を描く三つの斬撃が全く同時にロボット達に襲い掛かり回避行動も出せずにすべてのロボットは見事に切断された。
そして警戒を緩める気配を見せないでシホちゃんはゆっくりとこちらに振り向いた。






―――視線が交差したその瞬間、俺は、シホちゃんの握っている刀に、斬り殺される光景を、幻視した。






思わず俺はシホちゃんのその目に恐怖を覚えた。
…あれがシホちゃんの裏の顔の一端だというのか。
どれだけ過酷な人生を送ってきたのだろうか…。
だけどすぐにシホちゃんはいつもの表情に戻り、

「きょ、恭也さん!?」

先程までの雰囲気が一気に霧散して慌てて刀を消したようだ。

「無事だったんだな…」
「…はい。途中何度も爆発や襲撃を受けてこんな有様ですけど…」

なんとか心に余裕が出てきてゆっくりと観察してみるとシホちゃんの髪は少し煤汚れていた。
他にもあるけど、とりあえず一回洗い流した方がいいな。

「シホちゃん。一回お風呂を貸してもらえ。その姿じゃ恥ずかしいだろ?」
「そ、そうですね。それじゃお願いします…」

頬を赤くしながらシホちゃんは承諾してくれた。

「ところで、さっきの技は…」
「あ…もしかして見てました?」

それから先程の技はやはり『燕返し』というものらしく屋敷に戻る道中で説明してもらった。
内容はとんでもないものだったが…。
三方向からの攻撃がまったく同時に発生するというもの。
一の太刀はまず頭上から断つ縦軸。
二の太刀は一の太刀を避けられない為に逃げ道を塞ぐ円の軌跡。
そして三の太刀は左右への離脱を阻む払い。
…つまり逃げ場はほぼないに等しいという恐ろしい剣技だという事。
これでは神速込みでの『薙旋』でも打ち合えるか怪しいところだ。

「シホちゃんはその歳ですごいな。そんなものまで使えるなんて…」
「ある知人の模倣をしただけですよ。本物はあんな物じゃありませんから」
「是非その人物に会いたいものだな」

俺は不謹慎とも思うが心が高揚としていた。
シホちゃんは剣の才能は確かにないけど様々な引き出しをたくさん隠し持っている。
それがシホちゃんの強さの一つだ。


◆◇―――――――――◇◆


シホが服はボロボロで疲れた表情をして恭也と一緒にやってきた。
それで全員ホッとしたのかなのはは思わずシホに泣きついてしまった。
そしてシホはノエルに連れられてお風呂場に向かっていった。

「…恭也。シホちゃんって…」
「忍、心配するな。少し訳ありだけどとてもいい子だよ。むしろ可哀想な子とも言える」
「後で教えてね…?」
「なのは達はこの事を一切知らないから内密に頼むぞ?」
「ええ…」

そして恭也と忍は静かに会話を終了した。
しばらくしてシホは、なぜかメイド服姿になって皆のもとに帰ってきた。
それで一同は言葉を失う。
なぜかというと、似合いすぎていたのだ。

(…普通の服でもよかったのに…。やっぱり世界の意思は私に転職しろと言っているのかしら?)

シホは心の中で愚痴っていた。
だが周りはシホの心境などお構いなく、

「シホちゃん可愛い!」
「まさかここまで似合うなんて思っていなかったわ…」
「うんうん!」

上からすずか、アリサ、なのはの順に素直な感想を述べた。
シホは少し口を轢きつかせながら、

「あの…ノエルさん。お風呂を貸してもらったのは嬉しいんですけど、なんでメイド服なんですか?」
「すみません、シホお嬢様。現在すずかお嬢様の服はすべて洗濯をしておりまして…」

ノエルは済まなそうにそう言った。なんでも月に一回は一斉に洗いに出してしまうという話である。
シホは運悪くこの日に当たってしまったのだ。

「…そうですか。それじゃ私はなにかした方がいいんですか?」
「別に何もしなくていいわよ? 大切なお客さんなんだから」

忍はそう言っているがシホはある事を思い出した。
急いで持ってきていたリュックを開けた。
中には未だに目を回しているフィアットがお菓子と一緒に入っていた。

「フィア、大丈夫…?」
《は、はいです…》

フィアットはなんとか復活したのかシホの肩に乗ってきた。
それで安心したシホは持ってきたお菓子が崩れていないことを確認して、

「あの、私が作ってきたものですけど良かったら食べてください」
「わぁ…とっても美味しそうだね。これシホちゃんが作ったの?」
「うん、そうよ。独自の作りに桃子さんの技法をミックスしてみて作ってみたの。結構自信作だから食べてくれたら私は嬉しいわ」
「それじゃ頂くわね」

すずかが聞いてきたのでシホは詳細を伝えて、アリサの一言で一同はそれぞれクッキーを食べて美味しいという言葉を送ってくれた。

「それではお飲み物を用意してきますね?」
「ありがとうございます、ファリンさん」
「いえ、それより以前に教えてくれた料理の仕方を試してみたんですけどいつもより美味しくできたんですよ。だからありがとね。シホちゃん」
「そうですか。お役に立てたならよかったです」

またファリンと料理談義を始めかけていたシホだがそこで忍が急に迫ってきた。

「あの料理の作り方、シホちゃんがファリンに教えたの!?」
「は、はい…。スーパーで買い物している時にちょっとした切欠でファリンさんと知り合いましてその時に…」
「へぇ…」

(ちょ…いきなり何か企んでいるような目つきをしないでください。後ろに控えているノエルさんも何故かそういった気配が感じますよ!?)

シホが少し引き気味になっていたところ、すずかがある事を尋ねてきた。

「…ところでシホちゃん。ファリンだけど、その時になにか迷惑かけなかった…?」
「迷惑…? 別になかったけど…せいぜい振り向き様にヘッドバットをくらったくらいかな?」
「シ、シホちゃん!? それは言っちゃダメ!」
「え…?」

ファリンは思わず声を上げたがもう手遅れで全員一斉に『やっぱり…』という表情になった。
シホは「あ、もしかして地雷踏んじゃった…?」と思ってしまった。
それでファリンも「なんですか皆さん! わ、私はそんなにドジじゃありません!」と必死に抵抗したが、全員一字一句間違わず『いや、ドジっ子だし…』と言われてしまった為にファリンはあえなく撃沈した。
シホはばつが悪そうな表情をしながらファリンを慰めていたのが印象的だったと後にすずかが語る。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


それからなんとかファリンさんを立ち直らせて私はメイドの真似事をしていた。
執事なら以前の体で、エーデルフェルト家で仕込まれたので平気なのだけど、メイドに関しては知識が少ない。だがやることは執事とあまり変わりもしないので結構早く馴染んでしまった。

「しっかし…シホって本当にメイド初心者なの?」
「え? うん、そうよ。アリサ」
「…にしては妙に様になっているわよね?」
「そうだね、アリサちゃん」
「今度一日ウチでメイドをやってみない? シホちゃんならすぐに習得できると思うわよ。
恭也に聞いたんだけどシホちゃんって料理に家事洗濯、他にも頭もとてもいいらしいじゃない?
極めつけは恭也との朝の一本勝負でいつも引き分けているって話だし…」

私は別にすごくありませんよ…と言おうとしたが、

「「えええええええーーーッ!!?」」

すずかとアリサが盛大に声を上げて驚いた。

「ど、どうしたの…?」
「だって、さっきシホが味わったセキュリティーを全部破壊したのよ!? 恭也さんは!」
「他にもたくさんの銀行強盗を音も無く退治した恭也さんにだよ!?」
「え、っと…そうなの? なのは?」
「…う、うん」

私は思わず無言の恭也さんの方を見るが気まずそうに顔を逸らされた。
…私が魔術を使ってやっと破壊したものを小太刀二本だけで…?
あなたは人外の類の人なんですか?
…私の疑問は絶えなかった。

…と、思いを巡らせていたら数匹の猫が私に近寄ってきた。
それで子猫に手を伸ばそうとしてふと、自身の体に異常が出ているのが分かった。
なんだろうと思い、しかし別に大丈夫だろうと子猫を触った。
だがそれと同時になぜか知らないが涙や鼻水、くしゃみの症状が起こった。

「シホちゃん、どうしたの!?」
「わ、わからないわ…いきなり…」
「もしかして、シホちゃんって猫アレルギー…?」

あ、そうかもしれない。
考えてみればイリヤって猫嫌いだったわね。
もしかして、これも一つの原因?
とりあえず私はお手洗いを貸してもらいにまた屋敷に入っていった。
そして帰ってくるとなぜかなのは、ユーノの姿がなかった。

「あれ? なのはとユーノはどこにいったの…?」
「なのはちゃん? なんかユーノ君を追っかけて森の中にいっちゃったよ」

すずかがそう教えてくれたので私は思念通話でフィアに話しかけた。

《フィア…なのは達は?》
《ジュエルシードの反応がしたらしいので兄さんがどっかにいく振りをして森の中に入っていきました》
《そう…こんなところにもあったのね。フィア、追うわよ!》
《はい、お姉様!》

フィアが肩に乗ってきたのを確認して、

「それじゃちょっとなのは達を探してくるわね。すぐに帰ってこれると思うから待っててね」
「うん。わかったわ」

二人の了解をとって私は森に駆けていった。
駆けている途中で私はこの格好ではあまり派手な動きは出来ないと判断し柄だけの黒鍵を投影して木の枝を足場代わりに魔力反応のある方へと向かった。
途中で結界があったがそんなものは関係なく通過するとそこには巨大な猫…そして白いバリアジャケットのなのはとは対照的に、黒い服装とマントを纏った金髪の少女がまるで斧のような杖を構えてなのは達を見下ろしていた。

《…他の魔導師かしら? 見たところ仲間内には見えないわね》
《なのはさんと兄さんはどうやらあの子と交戦中みたいです》

そしてその少女はジュエルシードによって巨大化している猫に注意が逸れていて集中できていないなのはの姿に好機と見たのか、

「ごめんね…」

そう呟き金色の集束魔法らしきをなのはに放ったけど私はさせまいと縮地法を使いなのはの前に立ち、

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

あまり投影する時間が無かった為に花弁の数は七枚ではなく四枚になったが、それでも少女の放った収束魔法を受け止めるには十分だった。
無駄とはいわないけど神秘が籠もっていないあの程度の魔法にこの一枚一枚が古の城壁に匹敵する無敵の盾を突破することなど不可能。
案の定、予想通り一枚にほんのちょびっとだけ皹が入ったが投影時間を考えれば許容範囲内だ。

「なのは、ユーノ、無事?」
「シホちゃん!」
「シホ!」

なのは達が驚いている中、私は金髪の少女に目を向けたまま、

「あなたは何者…?」
「あなたこそ何者ですか…? メイドさん」

少女も同じく驚いていたようだがすぐに体勢を立て直して逆に私に問いかけてきた。
…ふむ、どうやら素人…というわけではないみたいね。
無表情だがその瞳には強い意志が感じられる。
ただ、孤独そうな瞳でもあるけど…。
でも、確かに今の格好はメイドだけどそのまま口に出されるとくるものがある。
少し落ち込みながらもすぐに表情を引き締めて、

「そうね。私はこの子…高町なのはを守護する者よ」
「そう…。でも、今みたいな強力なシールドは見たことない。あなたはただの魔導師とは思えない」
「教えるとでも思っているのかしら?」
「それなら力ずくで…! フォトンランサー、ファイア!」

少女が金色で槍状のスフィアを放ってきたが間髪いれずに私はその手に持っていた黒鍵の柄から刃を出現させフォトンランサーと呼ばれる魔法の数分を投擲。
双方衝突して魔法は掻き消した。よし、黒鍵程度でも対処は可能と判断。
少女もすぐに中距離は不利と察したのか、

「バルディッシュ!」
《Scythe form.》

私が介入する前に見せた鎌状の形態にデバイスを変化させてそこから魔力刃が出現した。
それで私も干将・莫耶を投影して、同時に思念通話でフィアにある伝言を伝える。
フィアは了解しなのは達の方へと向かっていった。
そして私は少女に向かって駆けた。
だが相手も素人ではないため隙をあまり見せていない。
次の瞬間、凄いスピードで突撃してきたため夫婦剣を交差させて魔力刃を受け止める。
スピードを重さに変えてそのまま叩きつけてきたか。
なるほど、この歳にして確かに強い…。
少女は受け止められると即座に後退し鎌を横に構えて、

「アーク!」
《Arc Saber.》
「セイバー!」

魔力刃が杖から回転するように射出され私に迫る。
それを双剣を投擲することによって粉砕する。そのまま双剣は霧散と化したが気にしない。
私はその時、フィアとの会話を思い出してある事を実践してみることにした。
今度はこちらから徒手空拳で迫り、少女も追撃しようとするが…
魔力の制御が完全に出来ていないらしくスピードは速くても一直線気味でとても読みやすい。
木の幹を足場に縮地を使い少女の背後を取った。
少女はすぐに杖を構えるが、遅い。
胸に手を添えて足の踏み込みとともに掌を押し付けた。
そう…『浸透勁』を少女に叩き込んだのだ。

「カッ!?」

少女は胸を押さえて苦しみだした。
どうやらバリアジャケット越しでも通用するみたいだ。
そして少女に近寄ろうとした時に突如頭上から殺気にも近い気配を感じたので即座にその場から離れた。

「やっと出てきたようね。さっきから気配は感じていたからいつ来るか待っていたのよ」
「グルルルル…ッ!」

私が目を向けた先には額に赤い水晶が埋め込まれているオレンジ色の狼が少女を守るように私を威嚇していた。
どうやらこの少女の使い魔のようだ。


◆◇―――――――――◇◆


Side 謎の魔導師の少女


《フェイト、大丈夫かい!?》
《うん…なんとか。でもあの子、強い…。私の攻撃がすべて見切られている。そして今の攻撃…バリアジャケットの保護がまったく通用していなかった》
《なんだって!?》
《でも、ジュエルシードは封印しなくちゃ…!》
《そうだね!》

私達が思念通話で会話をしていた。
でもそれもあの少女にはお見通しだったようで、

「なのは! 今のうちにジュエルシードを封印しなさい!」
「「!?」」

思わず私達は戦慄した。
気づいてみれば白い子はシーリングモードで封印体勢に入っていた。
彼女はこれも想定して私と勝負をしていた!?
すぐにいかなくちゃ…!

私とアルフはすぐに駆け出そうとしたが、

「…出でよ、天の鎖」
「「!?」」

またしても驚愕を禁じえなかった。
私達は地面から魔法陣もなしに突如として現れた無数の鎖によって手足を拘束されてしまったから。
その間にも白い子はジュエルシードを封印してしまった。
悔しさが滲み出てきたが今はもうそれどころではない。
私は体を無理やり動かしてサイスフォームで鎖を切断。
アルフも力ずくで引きちぎった。

「っ! 逃がさないわよ!」

少女が走ってきたが渾身の力で放ったアークセイバーで足止めをした。
そして転送魔法を展開して私達はかろうじて離脱する事に成功した。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


…せっかくの別の魔導師に接触したので捕まえようと思っていたがまだ読みが甘かったらしく天の鎖は引きちぎられてしまった。
その際、私は別思考で「…ああ。あれでもバーサーカーをも拘束した鎖なのに。なんて罰当たりな…」と考えていたがすぐに振り払った。
だがこれで敵勢力は大体分かった。あの少女にオレンジの狼。
戦ってみて分かったけど他に気配は感じなかったため現状は彼女等だけでジュエルシード集めをしていると判断。
背後関係は後ほど分かってくるだろう。
そしてかなり時間がかかった為、なのはには気絶している猫を任せて皆のところに戻った。
なぜかなのはは浮かない顔をしていたが今は聞かないことにした。

そしてお茶会は終了し、恭也さんはまだ月村邸に残るといっていたので私となのは達だけで帰ることになった。
メイド姿だが仕方がない…。
その帰り道、

「…シホちゃん」
「ん? なに、なのは?」
「あの、ね…私に戦い方を教えて欲しいの!」

その驚きの発言に私はもちろんユーノとフィアも驚いた。

「どうして…? やっぱり今日のあの子の事が気になったの?」
「うん。それもあるけど…私はあの子の事………ううん、なんでもない。でもシホちゃん達だけに戦わせて足手まといになるのは嫌なの…」
「別になのはの事は足手まといなんて思っていないわよ。ね、二人とも?」

私の言葉に二人は素直に頷いてくれた。
でも、と…私は一時言葉を切り、

「ねぇ、なのは。戦うっていうのはどういうことかわかる?
場合によっては相手を傷つけてしまうかもしれないのよ。そしてこちらも傷つくこともある。
私もなるべく傷つけないように穏便に今日は済ませたけどきっとあの子は傷ついた。それに次はそううまくいくか分からない。
あなたにその覚悟があって…?」


◆◇―――――――――◇◆


Side 高町なのは


「あなたにその覚悟があって…?」

シホちゃんのその真剣な言葉と眼差しに少し黙り込んでしまった。
でも、あの子はとても悲しい目をしていた。
…そう、初めてシホちゃんが目を覚ました時に見せた、孤独を知っている目。
シホちゃんはきっと私以上に孤独というものを知っていると思う。
そして今日のあの子も同じ目をしていた。
シホちゃんとはお話をして友達に、家族になれた。
だから、きっとまた戦うことになっちゃうかもしれないけど、あの子ともお話をしたい!

「覚悟っていうのは曖昧だし…戦う理由も明確にはまだない。
だけどあの子はとても悲しい目をしていた。どう言えばいいのか分からないけどあの子にいつまでもあんな表情は似合わない。
私は放っておけない。だから今は力が欲しいの。あの子を救えるだけの力が…」
「………」

私は伝えるだけの言葉をシホちゃんに言った。
それでシホちゃんは少し顎に手を添えて黙り込んでしまった。
その少しの沈黙が私にはとても長いものに感じたけど、やがてシホちゃんは口を開いて。

「…わかったわ。なのはにそこまでの覚悟があるなら私はもう止めない。
明日からあの子に対抗できるように強化プランを作ってみるわ。ユーノにフィア、それにレイジングハート。協力してくれるかしら?」
「…うん。もとは僕達が招いた事だから全力で協力するよ」
「お姉様のお願いならなんでも聞きます!」
《わかりました》

するとシホちゃんだけでなくみんなも協力の意を示してくれたので私は嬉しくなった。
だから私もただ強くなるだけじゃなくて、心も強くなろうとその日に誓った。


 
 

 
後書き
これから少しですが原作よりなのはを強化していきます。
 
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