Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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無印編
第二十六話 束の間の平穏
side リンディ
難しい状況ね。
プレシア女史の行方は未だ知れず、私達が所有していないジュエルシードは全て相手の手にある。
さらに、ここにきてプレシア女史によるフェイトちゃんへの虐待の可能性。
フェイトさんについては逮捕というよりも保護という方が正しいのかもしれないと考えながらこれからの事を考える。
士郎君が言っていた予想、プレシア女史がまだジュエルシードを求めているというのは恐らく間違っていない。
間違ってはいないのでしょうけど
「ジュエルシードを賭けるとなるとね」
賭けて戦うなら、負けたとしてもフェイトさんを確実に追跡できなければならない。
もし仮にジュエルシードを賭けて、フェイトさんを誘き出したとしても問題はある。
その戦いでフェイトさんが勝ち、ジュエルシードを手に入れるとアルフさんという使い魔もおり、追跡を振り切られる可能性がある。
勿論、プレシア女史が次元跳躍攻撃などで横やりを入れてくれれば追跡も可能ではある。
だけどフェイトさんが勝ってわざわざそんな事をしたりはするとは思えない。
つまり現在の状況で賭け試合をするならフェイトさんに勝つことが前提になってしまう。
クロノならこれまでの執務官としての戦闘経験も豊富だから、圧勝とはいかなくても勝てるとは我が子ながら思う。
でもクロノの力はプレシア女史を逮捕するのに絶対必要になる。
他の武装局員では勝ち目はない。
フェイトさんに勝てる可能性があるのは、なのはさんだけど絶対勝てるかといわれるとわからない。
そして、士郎君は
「勝てるでしょうけど、根本的に難しいわね」
非殺傷設定を持ち、魔力ダメージのみでほとんど遠慮することなく試合が出来る魔導師。
対称的に非殺傷設定を持たず、本気の戦いが命の奪い合いとなる魔術師。
フェイトさん程の実力だと無事捕縛するというよりは、運が良ければ命があると言った方が正しいのでしょうね。
「どれも確実性に欠けるわね」
ため息を吐きながら現状に頭を悩ませていた。
side アルフ
時の庭園にフェイトを抱えてなんとか戻ってきた。
管理局からの追跡もない。
だけどボロボロのフェイトの姿に自然と涙がこぼれた。
許せない。
あのババア、フェイトを狙っていた。
あれだけの仕打ちをされてきても一生懸命やってきたフェイトに攻撃をしようとした。
フェイトを横たわらせてマントをかける。
「ごめん、士郎」
フェイトを守るために預かった剣を持って、プレシアがいる奥に向かう。
剣を叩きつけドアを斬り裂き、邪魔になったドアを蹴り飛ばす。
「はああっ!」
そして一気にプレシアに飛びかかる。
シールドが張られるがこの剣の前では関係ない。
シールドを叩き斬り、プレシアの首に剣を突きつける。
するとようやくゆっくりとプレシアがこちらを向いた。
「なんで、攻撃した!!
あの子はあんたの娘で、あんたはあの子の母親だろ!
なんであんな一生懸命になってる子に攻撃したんだ!!」
怒りで手が震える。
でもその時ようやく気がついた。
プレシアの目に私が映ってないことに。
そんなプレシアの目に本能が危険を知らせるが遅すぎた。
「がっ!!!」
距離をとろうとした瞬間、衝撃が体を走り、吹き飛ばされる。
まずいね。
剣を落としちまった。
「あの子は使い魔を作るのが下手ね。
余分な感情が多すぎるわ」
私を物みたいに見下ろす眼。
なんで気がつかなかったんだろう。
私なんかがこいつに何を言っても無駄だったんだ。
フェイトが嫌がっても逃げ出すべきだったんだ。
「消えなさい」
杖が握られ、魔力が集束する。
私は我武者羅に転位魔法を発動させた。
「ごめん、フェイト。少しだけ待ってて」
私はゆっくりと意識を失った。
side 士郎
アースラから転送され、地上に降り立った俺となのは、ユーノ。
そして、リンディ提督
なぜリンディ提督がいるかというとなのはの保護者である士郎さん達へのこの十日間の説明のためだ。
それに今回の休日は二日間だが今からだと夕飯を食べて一泊、学校に行って帰ってきてもう一泊し、早朝には発つことになるので実質的には自由な日は一日だけだ。
「じゃあ、ここで」
「うん。明日は士郎君も学校に行くでしょ?」
なのは達と別れようとした時、なのはがそんな事を聞いてきた。
残念ながら
「いや、俺は明日も休む。
今日の戦闘があまりに激しかったからな、霊脈の状況を少し見ておきたい。
それに同じ日から休み始めた二人が同じように一日だけ学校に戻ってきて、また休んだりしたらな」
「あ、そうだよね」
なのはやアリサ、すずかと仲が良くて学内鬼ごっこが起きているのだ。
一緒になのはと戻って来ようものならまた一騒ぎ起きる。
それはもう間違いなく起きる。
捕まる気は毛頭ないが、あの人数に追われるのはさすがに勘弁してもらいたいのだ。
「なら、はい」
なのはが差しだすのは携帯。
「何かあったら連絡するから」
「たびたび悪いな。ありがたくお借りするよ」
少しお金をためて携帯を購入した方がいいな。
なのはから携帯を受け取りながらそんな事を考えているとなのはとの分かれ道に近づいてきた。
その時
「そういえば士郎君、あの武器は預けたままでいいの?」
リンディさんがどこか心配そうに尋ねてきた。
「はい。たった二日ですし、使う事もないでしょうから」
リンディさんが心配しているのは管理局に預けている俺の拳銃である。
わずか二日のためにいちいち保管庫から取り出す手間をかけさせるのも申し訳ない。
ということでアースラに置いてきたのだ。
「わかりました。
しっかりとお預かりいたします。
それではまた二日後に」
「はい。
なのはとユーノもまた」
「うん」
「またね」
三人と別れて帰路につき、軽く夕食を済ませて、久々の我が家での休息となった。
そして、翌日
朝はまず家の結界と鍛冶場の陣がちゃんと動作しているか調べてみるが、こちらは問題がなかった。
それにしても、この件が終わったら結界は強化する必要はあるだろうな。
リンディ提督達を信用していない訳ではないが、管理局を通して魔術師の情報が出る可能性がゼロではないのだ。
続いて昼前から歩き霊脈を調べてみる。
すると
「やはり多少なり弊害は起きてるか」
感知用の結界で感知しにくい個所があったのでそこを中心に調べてみたのだが、多少霊脈に影響はあったようだ。
場所は大きく分けて二か所。
昨日の戦闘の舞台となった海辺付近の流れが少し乱れている。
そして
「もっと早く調べておくべきだったか。
まあ、バタバタしていたのは事実だが」
ジュエルシードを破壊した街中である。
これはジュエルシードというよりもゲイ・ボルクの方が原因かもな。
元々街中という事もあり太い流れの個所がなかったからよかったものの流れが淀んでいる。
「どこかで霊脈が詰まっているのか?」
地上でジュエルシードと宝具のぶつかり合いがあった弊害だな。
この件にキリが付いたら細かく調べて、ちゃんと流れを整える必要があるな。
どちらにしろ今回の一日では無理だ。
そんなとき、ポケットの中の携帯が鳴った。
なのはから? と思ったら表示されているのはアリサの名前。
……これはどうすべきだろう?
この時間なら、なのはは学校だからアリサとすずかと一緒のはず。
つまりは俺がなのはの携帯を持っていると知っているはずだ。
「……取るか」
若干ためらいつつ、通話ボタンを押した。
side なのは
昼休み、アリサちゃんとすずかちゃんとお昼を食べる。
「また行かないといけないんだ」
「うん」
「大変だね」
ようやく戻ってきたけどまた明日には行かないといけないと話すと残念そうにするアリサちゃんとすずかちゃん。
だけどちゃんと最後までやり通したいもんね。
「ところで士郎も一緒に行ってるんでしょ?
あいつは戻ってきてないの?」
そういえばまだ話してなかったっけ。
「ううん。戻ってきてるんだけどこっちでもやることがあるから、っておやすみみたい」
「こっちに戻ってきてもやることが有るって、どんだけ忙しいのよ」
私の言葉にアリサちゃんは呆れているけど、すずかちゃんはどこか納得している。
士郎君が家で執事さんしてるし、魔術師ってことを知ってるのかな?
「だけどこのまま顔を見せないでまた行くのは気に食わないわね」
「気に食わないって、でも会えないのは残念だよね」
「なら呼び出しましょう」
なんだかアリサちゃんがノリノリだ。
だけど
「でも士郎君、携帯持ってなかったよね」
「それなら大丈夫だよ。
私の携帯貸してるから」
「ナイス! なのは」
携帯を取り出して電話をかけるアリサちゃん。
すずかちゃんもうれしそうだ。
士郎君忙しくないといいんだけど……
内心、そんな心配もしてた。
side 士郎
「もしもし」
若干躊躇いながらも電話に出ると
「士郎、放課後に私の家に集まるから学校が終わる頃校門に来なさい。
いいわね」
「……アリサ、俺に何か用があるとかは考えないのか?」
いくらなんでもいきなりだろ。
だが
「すずかも、なのはも来てほしいって言ってるのに来ないつもり?
へえ~、士郎は女の子のお願いを無下にするの?」
「ぐっ! 了解した。行けばよいのだろう」
「行けばよい?」
「……行かせていただきます」
アリサのやつ、初めて会った時も思ったことだがどことなく凛に似ている。
将来、赤いじゃなくて金の悪魔になるのだろうか……
「そうそう、それでいいのよ。じゃあ放課後にね」
「心得た」
項垂れながら電話を切る。
まあ、霊脈の事が保留になると他に急ぎでする事はないからかまわないか。
学校が終わるのは後二時間半。
「ふむ、二時間半あればできるか」
財布は持っている。
踵を返し、スーパーの果物コーナーに直行して確認する。
これを使おう。
材料を買い。
家に戻る。
さて始めよう!
校門の近くでなのは達を待つ。
ちなみに恰好は普段の私服で、右手には白い箱を持っている。
学校を休んだのにアリサの呼び出しで来ている事に内心苦笑してしまう。
待つこと数分
なのは達はまだこちらに気が付いていないようだが、出てきた。
まず、すずかがこちらに気がついたようなので軽く手を振ると振り返してきた。
「よろしい。ちゃんと待ってたわね」
アリサ、その言葉はどうかと思うぞ。
なのはとすずかも苦笑している。
「とりあえずお疲れ様」
「うん。士郎君は大丈夫だった?」
「だね。結構急に呼んじゃったし」
なのはとすずかの優しさが染み渡る。
「大丈夫だよ。どちらにしろ時間をかけないと如何しようもない事だから一日じゃ無理だったし」
俺の言葉にほっと一安心している二人。
「ほら、迎えの車が来たから乗りなさい」
と俺達が話している間にアリサの迎えが来たらしい。
車から降りてくる一人の男性がいる。
「ご無沙汰してます。鮫島さん」
「お元気そうでなによりです。衛宮さん」
知り合いなので軽く挨拶をかわす。
その様子に驚いている三人。
「士郎って鮫島に会ったことあったけ?」
そんなに不思議な事か?
「あるに決まっているだろう。
すずかの家の執事をしてんだぞ。
アリサの迎えに来た鮫島さんと会わない方が不思議だろ」
「「「ああ~、なるほど」」」
俺の言葉に納得している三人。
まあ、それはともかく
「これ手作りで申し訳ないですが」
「ありがとうございます。お茶の時に出させていただきます」
手に持つ箱を受け取りながら
「衛宮さんのお作りになられたものはお嬢様もお気に入りのようで」
「ちょっ! 鮫島!」
鮫島さんの言葉に顔を真っ赤にするアリサ
「それは光栄です。ほらアリサ」
「う、わかったわよ」
鮫島さんの代わりに車のドアを開ける。
鮫島さんはその間にケーキを車に乗せ、運転席に戻っていく。
信用されているというのはうれしいものだ。
アリサの次にすずか、なのはと乗り込み、最後に俺自身も乗りドアを閉める。
そして、ゆっくりと走りだす車。
その車の中でなのは達には昼休みに話したという犬の話になったのだが
「なあ、その犬って」
「うん。たぶんアルフさんだと思う」
こそっとなのはに耳打ちすると頷いた。
なんでアルフがフェイトから離れてアリサの家にいるんだ?
わからないことも多いが
「どうにも状況が複雑になってきたな」
それだけは確信できた。
後書き
本日は連休という事で少し遅くなりましたが、無事更新出来ました。
今回ももう一話更新いきます。
では
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