IX+V=....
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4th 家族、そして幼馴染
《サンタローズ 教会横〜家》
リュカSide
ナインと言う、異世界からきた男の子が今日から家族になる。
僕はずっと、旅で行った先でもここサンタローズでも兄弟というものに憧れていた。
その兄弟ができるのだ。
嬉しいったらありゃしない!
ナインは前の世界で悪の元凶を倒したこともあるらしく、戦闘経験が豊富なのは間違いない!
剣術教えてもらおーっと。
僕がナインとお父さんの前を歩いていると後ろから話し声が聞こえてきた。
「ナインよ、お前は今日から私達の家族となり、私はお前の父親となる。私が父親となったからには叱る時は叱るし、怒る時は怒る。よいな?」
「わかった。」
「だが、前の世界では16、7歳ほどだったらしいな。ということはだ。ナインのほうがリュカより精神面でも技術面でも勝っているだろう。だから、リュカにいろいろ教えてやってくれないか?」
「ああ、わかった。」
「お前は今は一応子供なのだ。言葉遣いをもっと丁寧にした方が良いぞ。」
「う... はい...」
やったー! お父さんナイス!これで剣術が教われる。もっと強くなれる!精神面は余計だけど...
サンタローズは村とはいえ結構大きい。お隣さんの家に行く分にはそうでもないが、教会までとなると結構遠い。とはいっても歩いて10分ほどだけど。
やがて家が見えてきた。
僕は一目散に走る!
そして一番乗りでドアを開けた。
《サンタローズ リュカ、パパス邸》
僕はドアを開けると、サンチョを呼ぶ。
「サンチョー、ただいまー!今日はいいことがあるよー!」
「おかえりなさいませ、坊ちゃん。ずいぶん遅くになりましたね。あれ、旦那様はどちらに?」
「まあ見ててねー。お父さん、ナイン、入ってきて。」
ナインはためらっていたが、お父さんに促され入ってきた。
驚いた顔をするサンチョ。
「坊ちゃん、この子は一体...?」
「ナインっていうの今日から僕の家族になったんだ。
「か、家族!?旦那様、どういうことでしょうか?」
お父さんはサンチョに事情を説明した。
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「にわかに信じがたいですが、旦那様がいうなら信じましょう。彼の事情を。」
「そう言ってくれると助かる。」
「ではこれからよろしくお願いしますね、ナイン君。」
「よ、よろしく... お願いします。」
サンチョも理解してくれたようだ。
これでもう僕たちは家族だ!
みんなでナインについて話しているとドアがノックされ、聞き覚えのある可愛い声が聞こえてきた。
コンコンッ
「リュカーいる?遊びにきたわよー!」
あ、ビアンカだ、やった!
ガチャ(ドアを開けた)
「こんにちはー。お邪魔します。リュカ、これお土産。お母さんが持って行きなさいって。」
と言って、手作りであろうマフィンの入ったかごをくれた。とても美味しそうだ。
「ありがとうビアンカ!とっても美味しそうだね。あとでみんなで食べようよ。」
「いいわね、そうしましょう。あら、そういえばこの子は一体誰?」
あ、ナインのことどう説明しよう...
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結論からいうと、ビアンカにはうちに養子として今日からきた男の子、という風に説明し納得してもらった。
お父さんがいうには養子というように解釈するといろいろ矛盾が起きるけれど、そこは子供だからまだわからないよね、という最終兵器で納得してもらった(らしい)。
僕にも良くわかなんないなあ。まだ子供ってことなのかなあ。
まあなにはともあれ、僕たち、つまり僕リュカと、ナイン、ビアンカの三人は一緒の朝ごはん兼昼ごはんを食べると、お父さんは用事があるというので外に遊びに行くことにした。
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もう空も黄色く染まり、ナインとビアンカもお互いに慣れてきたみたいだ。
するとビアンカがもう帰るらしいので、ナインと宿屋まで送ることにする。
《サンタローズ、宿屋》
ナインSide
俺は今、リュカの幼馴染のビアンカという女の子を宿屋まで送りにきている。
ビアンカ... ちゃん。いや、やっぱり名前だけでいい。ビアンカは可愛い、それに優しい。リュカが惚れてるのもよくわかる。リュカはとてもわかりやすい。俺が一度リュカとビアンカをからかったら、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。頑張れ、この恋協力させてもらうぞ、リュカ。これも一種の恩返しだ。
とりあえずそれはおいといて、今リュカとビアンカが彼女のお母さんと話している。俺は少し離れたところからそれを見ている。まだどうしても、リュカの知り合いをみると緊張してしまう。そうならないのは命の恩人でありこの世界での父親でもあるパパスさんか、サンチョさんか、俺の治療をしてくれたシスター・ミラ、そしてビアンカくらいだろう。
俺のことはリュカがうまくごまかしてくれたらしい。
ん?俺が物思いにふけっていると、リュカとビアンカのお母さん、ミランダさんとの会話から気になることが聞こえてきた。
「ミランダさん、いつアルカパに帰っちゃうの?」
ちなみにアルカパとは、サンタローズの隣にある小さい街で、ビアンカが住んでいる。だけど隣とは言っても結構距離があって、いつでも遊びにいけるわけではないと、サンチョさんから聞いた。
「それがねぇ、いつになるかわからないんだよ...」
「お父さんが体調を崩しちゃったから、ここの薬師さんのトルティーヤさんに薬を作ってもらいにきたんだけど、材料を取りにいくって洞窟に入ったきり帰ってこないの。」
帰ってないだって!?まさか魔物にやられたんじゃ...
「薬がないと帰りたくても帰れないし、様子を見に行きたくても魔物が出るし、私たちは待つことしかできないんだよ。パパスも忙しいみたいだしね。」
リュカをみると、覚悟を決めたような顔をしている。リュカは本当にわかりやすい。この目は絶対洞窟まで行く気だな。
「そうなんだ。えっと... きっと戻ってくるよ。だからおちこまないでね。僕そろそろ帰るね。ミランダさん、さようなら。ビアンカ、またねー!」
別れを告げると同時に俺を小突き走り出すリュカ。
「じゃあ、ミランダさんと、ビアンカ、さようなら。」
「またね、パパスによろしくね。」
「ばいばーい。」
俺はビアンカたちと分かれると、リュカの元に向かう。
リュカは家の前にいた。
俺は口を開こうとするが、リュカに先を越された。
「ナイン、明日僕はトルティーヤさんを探しに洞窟へ行こうと思うんだけど... 一緒にきてくれる?知り合って一日目なのになれなれしすぎた?」
俺の返事はもちろん...
「リュカならそう言うと思ってたよ。知り合った期間なんて関係ない。俺たちはもう家族なんだ。そうだろ?もちろん、一緒にいくよ。」
やばい、さすがに引かれたかな...?
そりゃそうだよな... 助けてやったやつが偉そうに家族とか言ってるんだもんな...。俺がたまらず謝ろうとすると、リュカに遮られた。
「ありがとう、ナイン!そうだよね、僕たちもう家族なんだよね!いくとしたらお父さんとかにばれないようにしないといけないね!」
「そうだな。」
「どうしたらいいと思う?」
「うーん...」
リュカは優しい。けれど、優しすぎる気がする。この性格が裏目に出ないように俺にできることを探そう。これも一種の恩返しだ!
外の会話が中に聞こえたのか、サンチョが出てきて俺たちを呼んだ。(幸い中身は聞かれていないようだった。)
「坊ちゃん達、もうご飯できますよ。ずいぶん長いこと遊んできましたね。」
「えへへ。サンチョ、今日はね.....」
リュカが今日あったことを話す。
サンチョさんはそれを楽しそうに、嬉しそうに聞いている。
夜の帳が降りた外から、俺たちは光あふれる家へ足を踏み入れた。
家族のいる家へ...
後書き
トルティーヤさんの名前は料理から頂きました。
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