スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百四十話 人の見た夢
第百四十話 人の見た夢
シーゲルが暗殺されたという話はすぐにパトリックの元にも届いた。彼はそれを聞いて落胆の色を隠さなかった。隠せなかったと言うべきか。
「そうなのか」
「はい」
あらためて部下に問う。しかし真実は変わらない。
「シーゲルがか」
「閣下の周りの者達も皆」
「殺されたというのだな」
「はい、全員」
彼の前にいる部下達は答える。
「残念ですが。皆即死でした」
「何ということだ」
パトリックはそこまで聞いて呻いた。
「これで連邦との講和は難しくなってしまった」
「はい。これで敵は一つ減ると思ったのですが」
「そうだ、敵はあくまでティターンズなのだ」
彼は言う。
「だからこそシーゲルには向かってもらう筈だったのだ」
「しかしですね」
部下のうちの一人が述べてきた。
「どうした?」
「どうして閣下の居場所がわかったのでしょうか」
疑問はそこであった。
「そういえばそうです」
別の部下も言う。
「何故閣下の居場所が。あれは我々だけが知っている筈だったのに」
「わからん」
シーゲルも首を横に振る。
「はっきり言おう。私ではない」
「はい」
「それはわかっています」
皆それに頷く。
「そして我々にも」
「我々にとってはシーゲルが死なれては困る。そうだな」
「その通りです」
これは穏健派と強硬派の政治バランスを維持する為だけではない。シーゲルにはプラントと連邦の講和の為に是非ともいてもらわなくてはならなかったからだ。三輪がいなくなった今こそだ。だからこそ彼の死は彼等にとっては取り返しのつかないい痛手なのであった。
「誰なのでしょうか、一体」
「わからん」
パトリックも首を横に振るしかなかった。
「しかしだ」
「はい」
「これで連邦との講和は難しくなった」
「ええ」
皆それに頷く。
「アイリーン=カナーバに頼むか」
「カナーバ閣下も今はプラント内での御自身の職務にお忙しいです」
「すぐには地球には向かえないか」
「とても。それに今閣下が動けば怪しまれます」
「ティターンズやネオ=ジオンをかえって刺激するな」
「はい。特にティターンズを」
部下達は言う。
「只でさえジブリールはレクイエムをこちらに向けようとしているというのに」
「少なくとも連邦とは戦うな」
彼は言った。
「今はな。それにあの血のバレンタインの事件も」
「そうですな」
これは多くの者が気付いていることであった。
「ブルーコスモスの強硬派、今ティターンズにいる者達の行動のようだしな」
「何処までもやってくれます」
「奴等は」
「我々の敵はティターンズだ」
パトリックははっきりと述べた。
「わかったな。まずは彼等だ」
「はい」
「だからこそ」
彼等も言う。
「連邦との講和、そしてティターンズとの決着を」
「したい。しかし」
パトリックはまた呻いた。
「大変なことになってしまったな」
「全くです」
彼等は今は頭を抱えるしかなかった。どうすればよいのかわからなかった。
だがそのプラントの深刻な事態にほくそ笑む者達もいた。それはティターンズでもネオ=ジオンでもなかった。彼等は他ならぬプラントの中にいた。
「そうか、上手くったか」
「はい」
一人のザフトの白服の女が同じく白服の仮面の男に語っていた。彼等は今暗い密室の中にいた。
「いいことだ。これでプラントと連邦の講和は難しくなった」
「このまま無制限に戦い合うと」
「そうだ。それにより両者は滅ぶ」
「人類もまた」
「その通りだ」
仮面の男はその言葉を聞いて笑った。邪悪な笑みであった。
「しかしまだ我々にとって邪魔な存在はある」
「ロンド=ベルですか」
「そうだ。彼等にも何かしらの手を打っておこう」
彼は言った。
「すぐにな。いいな」
「わかりました。では」
「まずは普通に動く」
「普通にですか」
「我々の存在は誰にも知られてはいないのだしな」
彼はそう思っていた。ラクスの動きは知らなかったのだ。
「いいな」
「了解」
こうして彼等は姿を消した。後には暗闇しかなかった。
ティターンズの迎撃をまずは撃退したロンド=ベル。しかしすぐに次の攻撃に取り掛かっていた。
「さて、と」
ジュドーがダブルゼータの中で声をあげる。
「また派手にやりますか」
「調子いいみたいだな、そっちは」
「ああ、まあな」
ディアッカにそう返す。
「やってやるぜ!」
「ちょっと、それは忍さんの台詞でしょ」
ルーがそれに突っ込みを入れる。
「駄目よ、他の人のを真似したら」
「まあジュドーはいいかなっても思うけれどね」
エルは意外とそれには寛容であった。
「忍さんは何て言ってるの?」
モンドがジュドーに問う。
「やってやるぜは」
「ああ、いいって言ってくれてるぜ」
ジュドーはそれに答える。
「それどころか御前だけは思う存分使っていいってな。忍さんと俺は気が合うんだよな」
「いいことじゃねえか、それって」
ビーチャが頷いてきた。
「やってやるぜがいいってよ」
「ああ。だから俺も言うぜ」
「いいなあ。僕も一応ケーンに言われてるけれど」
イーノは少しぼやき気味であった。
「当たると痛えぞなんてちょっと言えないなあ」
「そうなんですか」
ニコルがそれを聞いて言う。
「キャラクターじゃないからね。それは」
「それわかります」
フィリスはそれに頷く。
「キャラクターが違うとやっぱり」
「そうなりますよね」
エルフィも同意してきた。
「レイさんもそうですよね」
「そうだな」
何故かレイはそれに頷く。
「俺が最初からクライマックスだって言ってもな」
「今凄い違和感だったんだけれど」
ルナマリアが驚いている。
「何、今の」
「確かに。電車に乗ってる気分だったよ」
ジャックも頷く。
「不自然っていうか」
「やっぱりキャラクターだよな」
ジュドーはあらためて言う。
「声が似ていても似合う奴と似合わない奴がいる」
「確かにな」
ミゲルがそれに頷く。
「それはわかる」
「俺とミゲルは似てるとは言われるがな」
「ていうかあれ?」
エルが二人に対して言う。
「一緒にいたらわからないわよ」
「同感」
それにモンドが頷く。
「何かあんた達の声もキャラも被ってるよな」
「否定はしない」
ハイネがビーチャに返す。
「まあ色で区別してくれ。あと顔で」
「了解」
ルーが応えてきた。
「まあかなりわかってきたよ、それは」
「済まない」
「意外とメイリンとクスハの区別はつくんだけれどね」
イーノはメイリンに話を振ってきた。
「それはね」
「あたし達もアムさんや美久さんの声真似するけれど」
「誰もわからないな」
プルとプルツーが述べてきた。
「不思議なことだ」
「そういえばよ」
ディアッカが言う。
「ステラってミスマル艦長の真似上手いよな」
「そういえばそうだな」
スティングがそれに応えてきた。
「意外とな」
「あれは俺も驚いたぜ」
アウルも話に入ってきた。
「全然キャラ違うのにな」
「あれで意外と」
「私が艦長で~~~~~す!ぶいっ☆」
急にユリカの声がした。
「おっ」
「噂をすれば」
「似てる?」
それはステラの声であった。ステラは実際に真似をしてみたのだ。
「似てるっていうか本人にしか思えなかったわ」
ルナマリアがそれに応える。
「あとナタル副長もできそうだな」
ムウが言ってきた。
「うちの坊主やシンはそういうの苦手だからな」
「ムウさんは得意ですよね」
そのキラが言う。
「そういうのって」
「まあな」
本人もそれは認める。
「伊達にライトニングカウントの二つ名で呼ばれているわけではない!どうだ?」
「本人みたいです」
レイが答える。
「まるで」
「最近あんた色々言われてるしね、鬼がどうとか桃太郎がどうとかで」
ルナマリアがまたレイに言う。
「何でなの?」
「俺が知りたい」
レイにとってもそれが不思議であった。
「そう言えばシンも光の巨人に似ているとか言われていたな」
「そういえばそうね」
ルナマリアは言われて気付いた。
(アズラエルさんも妙にそっち意識してるわよね」
「不思議なことだ。コスモスという言葉にな」
「あたしは別に関係ないけれどね。にしても」
「どうした?」
「正直あんたが羨ましいわよ」
あらためてレイに言う。
「電車のことはね」
「悪い気はしない」
レイもそれを認める。
「少なくとも同じ仮面でもな」
「あんたずっとあの変態仮面と一緒だったわよね、ザフトじゃ」
「ああ」
何気に恐ろしいまでに核心をついているのだがミリアリアはそれに気付いていない。レイも冷静にとぼけてみせている。この辺りは流石であった。
「今どうしてるんだろ、あの人」
「真っ裸であの仮面でどっか歩いてるじゃねえのか?」
ディアッカが言う。
「そんなのやっていても全然違和感ねえしな」
「否定できないわね」
タリアがそれに頷く。
「ちょっと艦長」
「あってアーサー」
嗜めるアーサーに対して言う。
「幾ら何でもあれは。妖しいなんてものじゃないでしょ」
「確かに。仮面だけじゃないですからね」
「何か変態っぽいのよ、あの人」
実に人望のないクルーゼであった。
「どういうわけかね」
「言われてみればそうですが」
「デュランダル博士とは仲良かったけれどね」
「そういえば艦長博士と交際していたんですよね」
「昔のことよ」
メイリンの言葉に昔を懐かしむ顔ですっと笑ってきた。
「もう何十年もね。昔ね」
「おいおい、艦長はまだ若いじゃないか」
そんな彼女にアムロが声をかけてきた。
「それでその台詞はないんじゃないか」
「女の内面は複雑ですのよ、アムロ中佐」
タリアはにこりと微笑んでアムロに返す。
「何でしたら今度二人でそれについてお話してみます?」
「二人はちょっとな」
アムロも笑ってそれに返す。そして言う。
「俺と宙君の二人でどうかな」
「では私はミドリちゃんとレミー達と一緒に」
「面白そうだな。じゃあその顔触れで今度」
「ええ」
「前から思っていたけれどタリア艦長ってアムロ中佐や宙さんと仲いいですね」
ニコルがアスランに囁く。
「そうだな、それもかなり」
「縁ですかね、何かの」
「ミドリさんやレミーさんと仲いいのもあれだよな」
「はい。何か不思議と言えば不思議ですね」
「艦長声変えるの上手いしな」
「意外と器用ですし」
「はい、そこ」
タリアが二人に声をかけてきた。
「聞こえてるわよ」
「あっ、すいません」
「失礼しました」
「アスランも最近髪の毛多くなってきたんじゃないの?」
「そうですか?」
それを言われるとほっとする。
「やっぱりロンド=ベルが合ってるのかしら」
「居心地いいのは事実ですね」
「そうね。私もここの雰囲気好きよ」
タリアは言う。
「落ち着くわね。何時でも」
「そうですね。何か」
ニコルもそれに頷く。
「気の合う仲間ばかりで」
「仲には喧嘩ばかりしてるのもいるけれどな」
「アスカとかカガリとかシンとかだよなあ、それって」
ジャックがディアッカに突っ込みを入れる。
「困ったことに」
「連中はどうしようもねえか」
「そうだな。これでイザークが入ったら」
「ああ、思い出したぜ」
ディアッカはまた言う。
「あいつとアスカ大喧嘩したんだよ」
「よく覚えてますね」
「忘れるかよ、あいつ河童とか言われて切れてたからな」
ニコルにそう返す。
「全く。傍迷惑なこった」
「そのイザークですけれど」
「ああ」
「今もザフトで頑張ってるそうですよ。シホと一緒に」
「そうなのか。あいつ等とは戦いたくないな」
「ですね」
話はしんみりとしだしたところで都合よくレーダーに反応があった。
「レーダーに反応です」
ルリが言う。
「前方にティターンズ、多いです」
「よしっ」
アスランがそれを聞いて声をあげる。
「来たか」
「そして後方から戦艦が一隻」
「戦艦!?」
「ティターンズのものではありません。これはザフトのものです」
ルリはそう報告する。
「モビルスーツの反応はありません」
「何なんだ、そりゃ」
キースがそれを聞いて声をあげる。
「変な話だな」
「敵の可能性は高いでしょうけれどね」
「はい、私もそう思います」
ルリはボーマンの言葉に応えて言う。
「警戒が必要だと思います・・・・・・いえ」
「どうした?嬢ちゃん」
「識別信号を出しています。どうやら我々への攻撃の意図はないようです」
「そうなのか」
アルフレッドはそれを聞いて言う。
「はい。ですからそちらへの戦力の振り分けはいいと思います」
「わかった、じゃあ前に専念するぜ」
「はい、そうして下さい」
「じゃあいいか小僧共」
アルフレットはあらためて指示を出す。
「一気に防衛ラインを突破だ!そしてレクイエムを潰すぞ!」
「了解!」
皆それに頷き総攻撃に入る。既に前ではティターンズが守りを固めていた。
「やはりな。動きが速い」
ジブリールはドミニオンの艦橋で彼等を見て言う。
「艦長」
「はい」
ナタルに声をかけると彼女が応えてきた。
「守り抜くのだ。いいな」
「わかりました」
ナタルはその言葉に返礼する。そして今戦いがはじまった。
まずは両軍まともに正面からぶつかった。アークエンジェルとドミニオンがその中心にいた。
「うわっ!」
「くっ!」
互いのゴッドフリートを受けお互いかなり揺れる。だが艦自体のダメージはそれ程ではなかった。
「皆大丈夫!?」
「は、はい」
「何とか」
アークエンジェルのクルーはマリューの言葉に応える。皆何とか怪我はしていなかった。
「無事です。けれど」
「ええ、来たわね」
三機のガンダムが出て来ていた。こちらにゆっくりと向かって来る。
「迎撃用意。いい?」
「ああ、行くぜ」
「はい」
ディアッカとニコルがまず出て来ていた。
「ニコル、御前はあの鉄球振り回すのか鎌持ったのを頼む。俺はあの砲台みてえなのやるぜ」
「わかりました」
「おらおらぁっ!」
彼等の前ではもうオルガが暴れ回っていた。
「どいつもこいつも叩き落してやるぜ!」
「きゃっ!」
「何て滅茶苦茶な攻撃!」
オーブ三人娘がその攻撃をかわしながら言う。
「気をつけろ!こいつは尋常じゃねえぞ!」
アルフレットは三人に声をかけた。
「おめえ等じゃ荷が重い!ディアッカ、やっぱり奴の相手は御前だ!」
「わかってるぜ!」
「ニコル、御前はあの鎌持ったのに行け!」
「はい!」
ニコルがそれに頷く。
「俺はあの青い指揮官機に向かう!鉄球振り回すのはハイネだ!」
「わかりました」
「変形するのには変形するのだ。後のザフトの連中は三人の援護をやれ」
「はい」
「了解」
ザフトの面々がそれに頷く。
「後は雑魚をだが・・・・・・相変わらずの多さだな」
目の前のティターンズの大軍を見て言う。
「これが面白いんだがな。それにしてもって奴だ」
「俺達はどうすればいいんですか?」
シンがここで聞いてきた。
「やっぱりあの金色ですか?」
「そうだな。キラ、シン」
二人に声をかける。
「おめえ等はあいつの相手をしろ。いいな」
「わかりました」
「またあいつか。今度こそ」
「フレイ・・・・・・」
血気はやるシンに対してキラは浮かない顔を見せていた。しかしそれには誰も気付かない。
「今は皆洒落にならねえ位に大変だ。気合入れろよ」
「わかりました」
二人はフレイのアカツキに向かう。まずはキラが攻撃を仕掛ける。
「いけっ!」
ビームライフルを放つ。だがフレイは左右に舞いそれをかわす。
「くっ、やっぱり」
「キラ、落ち着け!」
シンが彼に声をかけてきた。
「焦ったらかえって危険だ。いいな」
「う、うん」
キラはそれに頷く。確かに彼の言う通りであった。
「そうだね」
「あの金色のパイロットは御前の知り合いか?」
「うん。フレイ=アルスターっていうんだけれど」
「確かオーブで行方不明になったアークエンジェルのクルーか」
「覚えてるの?」
「ほんのちょっとだけ一緒にいたしな。紅い髪の女の子か」
「うん」
「アルスターっていうのか」
その名を聞いてシンの記憶に思い出されたものがあった。
「あれか。アルスター事務官の」
「わかったの?」
「ああ。・・・・・・そうか」
それがわかったシンは複雑な顔をヘルメットの中で見せてきた。
「あいつの親父さんを俺が殺したんだな」
「戦争だから」
「ああ、あいつにも言ったさ」
シンは答える。
「けれど。気分がいいものじゃないな」
「そう」
「今はな。あの時は違ったが」
「フレイは君を狙ってるよ」
キラはあらためて言う。
「だから今も」
「わかってるさ。それも受ける」
だがシンは逃げるつもりはなかった。はっきりと言った。
「絶対にな」
「そう、シンは強いだね」
「俺だって強くはないさ。ただな」
「ただ?」
「逃げたくないだけさ。全部からな」
そう言ってフレイに向かう。すぐにビームサーベルを抜く。
「うおおおおおおおおっ!」
「来たわね、シン=アスカ!」
「ああ!来てやった!」
フレイにもそう応える。
「俺はここだ!逃げも隠れもしない!」
「なら!覚悟しなさい!」
フレイもビームサーベルを抜く。そしてシンに斬り掛かる。
「これでっ!」
横薙ぎに払ってきた。やはり勘のいい動きであった。
「速い・・・・・・だが!」
シンも負けてはいない。それを受け止める。
「これ位じゃまだ!」
「やられないっていうのね!」
「その通りだ!」
またフレイに言い返す。
「俺だって死ぬわけにはいかない!何があってもな!」
「あんただけは私がこの手で!」
その顔が憎悪で歪む。かつてキラに抱かれた時に見せた邪悪な笑みとは違った、感情を剥き出しにした憎悪の顔であった。今それをシンに向けてきていた。
「倒してやる!」
そう言ってまたビームサーベルを振るう。今度は縦であった。
「くっ、この速さ!」
「逃がさないわよ!」
フレイはまた叫ぶ。
「絶対に!」
「何の!」
ビームサーベルを一閃させてそれを払う。今度はデスティニーで体当たりを浴びせた。
「きゃっ!」
ショルダーチャージを受けアカツキは態勢を崩した。そこにキラのビームライフルが迫る。
「動きさえ止めれば!」
キラは言う。
「それで!終わりだ!」
だがフレイはその動きを察していた。頭の中にキラの動きが浮かんでいたのだ。
「来る・・・・・・右!」
吹き飛ばされながらも必死に上に飛ぶ。それでキラのビームをかわしたのであった。
「なっ、今のを」
「キラ、忘れたのか!」
シンが驚くキラに叫ぶ。
「フレイはニュータイプだ!だから!」
「そ、そうだったね」
言われてそれを思い出す。
「フレイは」
「そうだ。だから今のを避けられるのは当然だ」
彼は言う。
「しかし今ので終わったと思ったがな」
「うん」
これは二人共同じことを考えていた。
「まさかな」
「けれど今度は」
「やらせはしない。いいな」
「わかってるよ」
「手加減をしていい相手じゃない」
シンはそうも言った。
「さもないとこっちがやられる」
種が弾けた。彼はSEEDを発動させる。それでフレイに向かう。
「これならどうだ!」
赤い目でフレイを見る。動きは今までよりも遥かによくなっていた。
「ニュータイプとSEED、どちらでもいい!」
腕を構えながら叫ぶ。
「俺はマユを、父さんと母さんを守る、だから!」
「あんたにそれを言う資格はないわよ!」
フレイもシンに向かいながら叫ぶ。
「パパの仇!ここで!」
今二人が再び激突した。そのまま激しい一騎打ちになる。それは他の誰をも寄せ付けぬものであった。
横ではアークエンジェルがドミニオンと戦っている。こちらも一歩も引かない。
「う、うわっ!」
トールが反射的に取り舵を思い切り取る。それでドミニオンのバリアントをかわした。
「ナイス、トール」
「あ、ああ」
サイの言葉にもまだ息を荒くさせ額から汗を流している。
「危なかった・・・・・・今のは」
「艦橋直撃だったよね」
カズイもほう、と安堵の息を漏らしていた。
「何とかってところね」
「そうね」
マリューはミリアリアの言葉に応える。彼女も安堵の息を漏らしていた。
「よくやったわ、トール君」
「は、はい」
「しかしナタル艦長」
ミリアリアはあらためて述べた。
「凄い腕ですね」
「そうね」
マリューは素直にそれに頷く。
「流石ね。私より上かもね」
「まさか」
「だって私元々は技術士官だから」
今度はサイに返した。
「艦艇士官の彼女とは元が違うのよ」
「そうなんですか」
「そうよ。彼女は士官学校でも有名な秀才だったし」
カズイにも述べる。
「それと比べるとね。やっぱり」
苦笑いが入った。
「負けるわ」
「ううん」
「それは」
「だから貴方達の力を借りたいの」
ここでサイ達に言う。
「いいわね。勝つ為に」
「はい」
「そういうことなら」
彼等はその言葉に頷く。
「やりましょう」
「よし、今度は面舵よ」
マリューはあらためて指示を出した。
「いいわね」
「了解!」
そして右に回ってバリアントを放つ。戦いは激しさを増していく。
その頃後ろからそのザフトの艦艇が接近していた。そこには陣羽織の様な丈の短い衣を着た少女と片目の男がいた。
「もうすぐ戦闘地点です」
「はい」
少女は男の言葉に頷いた。
「いよいよですね」
「そうですね。そして」
「ええ。運命の時です」
少女は言った。
「遂に」
「しかし信じてくれるでしょうか」
男はこうぼやいてきた。
「何分かなり突拍子もない話ですし」
「しかし言うしかありません」
少女の言葉は強かった。
「それが真実なのですから」
「わかりました。ではそれは」
「はい。そして」
少女はまた言った。
「二人は何処に」
「最前線です」
男は答える。
「どうしますか?やっぱりそこまで」
「当然です」
やはり少女の言葉に迷いはない。
「レクイエムを破るにはそれが一番でしょうから」
「わかりました。では」
「ようこそ」
ここで通信が入ってきた。
「お待ちしていましたよ」
「シラカワ博士」
少女はモニターに映る紫の男の姿を見て言った。
「貴方も今はそちらにおられたのですか」
「そうです、私がいる時ですから」
彼は答える。
「貴女をお迎えする為に。そして」
その紫の目が光った。そして言う。
「SEEDの秘密の為に」
「はい。ではお願いします」
少女はこくりと頷いて彼に述べた。
「前線までの道を」
戦艦はそのまま前線へ向かう。そして今最前線に姿を現わしたのであった。
「あれは」
タリアはその艦に記憶があった。それで声をあげる。
「エターナル」
「エターナル!?もう就航していたんですか」
「いえ、それは聞いていないわ」
そうアーサーに返す。
「早いわね。それにどうしてここに」
「ロンド=ベルの皆さん」
「何っ!?」
「この声は」
ザフトの面々は少女の声を聞いて声をあげた。
「私はラクス=クラインです。貴方達に加えて頂きたく参りました」
「そう、遂になのね」
タリアはそれを聞いて頷く。
「ラクス嬢も」
「そうですね」
アーサーが彼女の言葉に応える。
「いよいよ全てがわかる時が」
「ええ」
「何かおかしなことになってきましたね」
クサナギの艦橋でアズラエルが首を傾げさせていた。
「何でまたプラントの歌姫がここに」
「我々に入りたいと言っていますが」
キサカも言う。
「どういうことなのでしょうか」
「どういうことだろうね」
ユウナもどうにも話を掴めないでいた。
「大物って言えば大物だけれど」
「戦いには、ですね」
アズラエルがここで述べる。
「およそ場違いではないかと」
「いえ、それは違います」
しかしここでタリアが言ってきた。
「タリア艦長」
「我々はこの時を待っていたのです。ラクス嬢は私達の同志です」
「同志!?」
「はい、むしろあの方が私達のリーダーなのです」
「どういうことですか、それは」
ブライトがタリアに問う。
「ラクス=クライン嬢が同志だとは」
「私達がロンド=ベルに加わったのはあの方のお考えだからです」
「ラクス=クラインの」
「はい、全てはプラントを、人類を救う為」
タリアは言う。
「ザルクの魔の手から」
「ザルク」
また聞き慣れない言葉が出て来た。
「それは一体」
「この世を滅ぼそうとする勢力です。謀略によって」
少女が言う。
「プラントを、地球を、コロニーを。ですから私は」
「私達と共に」
「そうです」
その少女、ラクス=クラインは今ブライトの言葉に応えた。
「バルトフェルド艦長」
「はい」
艦橋にはバルトフェルドもいた。アイシャ、ダコスタもいる。
「そのままフリーダムとジャスティスのところへ向かって下さい」
「了解」
バルトフェルドはそれに頷く。
「そして彼等にあれを届けます」
エターナルは今前に大きく出た。そしてラクスの言葉通りフリーダムとジャスティスのところへと向かうのであった。
「むっ」
ジブリールはそのエターナルに気付いた。そしてその危険性にも。
「まずいな、あの戦艦は」
「どうされますか?」
「三人を向かわせろ」
幕僚達に応える。
「念には念を入れる。木っ端微塵にしろ、いいな」
「わかりました」
幕僚達はそれを受けて劾に通信を入れる。彼はすぐにそれに出た。
「あのピンク色の戦艦にか」
「そうだ、すぐに向かわせろ」
ティターンズの幕僚達が彼に言う。
「わかったな」
「わかった。だが俺は向かえない」
「どうしてだ?」
「今厄介な相手を前にしているからだ」
アルフレッドのことであるのは言うまでもない。
「三人だけでいいか」
アルフレッドの激しい銃撃をかわしながら問う。
「ああ、構わない。だから」
「わかった。おい」
その言葉を受けて三人に通信を入れる。
「すぐにあの戦艦に向かえ」
「ん!?何かあるのか?」
オルガがそれに問う。
「あるらしい。獲物だ」
「それを倒せばボーナスステージってわけか。じゃあ」
クロトはすぐにそれに乗ってきた。
「抹殺してやる!」
「・・・・・・潰す」
シャニも応える。三人はディアッカ達を振り切ってすぐにエターナルに向かった。
「何っ、あいつ等」
ハイネがそれを見て言う。
「エターナルに向かう気か」
「危ないですよ。近くにいるのは」
「おい、レイ!」
ディアッカがレイのレジェンドに声をかける。
「エターナルに向かってくれ。あの三機のガンダムがそっちに行った!」
「わかった」
レイはそれに頷く。そしてすぐに現場に向かう。
「レイの穴には俺が入る」
ディアッカは自分から志願してきた。
「それでいいな」
「はい」
ニコルがそれに頷く。
「そしてだ」
ハイネはさらに言う。彼はキラとアスラン、そしてシンを見た。
「シンも向かわせられれば万全だったが」
「仕方ないですね」
ニコルはフレイのアカツキと戦うシンを見て残念そうに述べた。
「今のシンは手が離せません」
「じゃあ本人達かよ。おい!」
ディアッカがキラとアスランに声をかける。
「御前等自身でやりな。いいな!」
「う、うん」
「わかった」
キラとアスランはそれぞれ頷く。そしてエターナルに急行する。
ニコルとハイネは彼等と入れ替わりにその穴に入る。そうしてカバーし合いながら戦いを進めていた。
三機のガンダムはレイのレジェンドのドラグーンによる猛攻で動きを止められていた。しかしそれは僅かな間だけであった。
「邪魔なんだよ!」
クロトのレイダーが変形してから至近で元に戻る。そこからアフラマツダを放つ。
「必殺!」
「くっ!」
接近戦の弱いレジェンドにはそれはかわすだけで精一杯であった。何とかかわしたそこに今度はミョッルニルが来た。
「御前からまずはスクラップにしてやる!」
「させん」
だがレイは踏ん張る。そして言う。
「エターナルは守る。何があってもな」
「その心、受け取りました」
ラクスの種が弾けた。その澄んだ目で言う。
「レイ=ザ=バレル。貴方を失ってはなりません。ですから」
今急行してきたキラとアスランを見る。
「キラ=ヤマト、アスラン=ザラ。今こそこれを!」
エターナルから何かを出した。フリーダムとジャスティスはそれと合体した。
それは巨大な武装であった。二機のガンダムが全くの別物になった。
「これは一体」
「ミーティアです」
ラクスはそうキラに言う。
「その力で今こそレクイエムを」
「わかりました」
「行くぞキラ」
アスランが彼に声をかける。
「このミーティアなら!」
「二人共」
コウが彼等に声をかけてきた。
「そのミーティアはデンドロビウムと同じもののようだ。その要領で使えばいいと思う」
「はい」
「一気に突っ込め、いいな」
「わかりました」
「おい、キラ!」
カガリから通信が入った。
「私もそこの三馬鹿のところに行く!だからその間に御前等は!」
「わかった、カガリ」
キラがそれに頷く。
「任せて。このミーティアで!」
「やってやる!」
キラとアスランの種も弾けた。そして今敵中を突破しレクイエムの発射台に向かう。
「何っ!?」
ジブリールは自軍を次々に薙ぎ倒しながらレクイエムに向かうその二機に気付いた。
「何だあれは、すぐに止めろ」
「無理です、三機のガンダムもアカツキも足止めされ」
「くっ」
「そしてこのドミニオンも。今退くとアークエンジェルに狙い撃ちです」
ナタルがそう言ってきた。
「まずいな」
ジブリールは戦局が自分にとって望ましくない方向に向かっているのを感じた。しかしだからといって離れることはできない。その苦い状況に歯噛みしていた。
「このままでは」
「最後の防衛ラインに迫っています!」
また報告があがった。
「このままでは」
「戦力はどれだけ残っているか」
「修理可能なもの、収容したものを含めて七割です」
「そうか、限界だな」
苦渋の選択を下すしかなかった。そして彼はそれを下した。
「全軍撤退だ。レクイエムを放棄する」
「はい」
「艦長」
そのうえでナタルに言う。
「弾幕を張れ。全ての艦艇、モビルスーツが撤退してから我々も下がるぞ」
「殿軍ですか」
「そうだ」
彼は言った。
「ドミニオンが一番頑強だ。ならば」
「わかりました。では」
「あのアカツキと戦っていたガンダムに注意しろ」
ジブリールもデスティニーを見ていた。だからすぐに判断を下した。
「あれは戦艦一隻沈めるなぞ造作もないことだからな」
「了解です」
ティターンズのモビルスーツ、艦艇は次々と下がっていく。そしてドミニオンもアークエンジェルと迫り来るデスティニーに弾幕を張って撤退を開始する。
「くっ、この弾幕じゃ!」
「シン君、無理はしなくていいわ」
マリューが彼に言う。
「レクイエムは破壊したから。だから」
「チッ」
彼は舌打ちした。しかしどうしようもなかった。
ドミニオンも下がっていく。こうして戦いは終わった。レクイエムは破壊された。だがジブリールはそれで終わるつもりは毛頭なかった。
「こうなれば最後の手段だ」
彼は撤退するドミニオンの艦橋で言った。そしてブルーコスモスの時からの同志達に対して言う。
「核だ、いいな」
「核ですか」
「そうだ、ニュートロンジャマーは既に無効化している」
ニュートロンジャマーは実はすぐに無効化されているのだ。様々なエネルギー、技術が集まっている今の人類にはその発明ですらも無力なものになっていたのだ。
これはティターンズも同じであった。彼等は今それを使うつもりだったのだ。
「プラントに核を撃ち込む」
彼はそう述べた。
「そうして敵をまず一つ完全に葬り去る。コーディネイターをな」
彼はまずプラントを、憎んでも有り余るコーディネイターを叩き潰すつもりであった。今その彼にとっての切り札を出す決意を固めたのであった。
何はともあれ戦いは終わった。しかしそれで完全に終わりではなかった。
皆ラクスを迎えていた。同時に彼女の言葉に疑念を持っていたのだ。
「あの」
大文字が彼女に問うた。主なメンバーがエターナルに集まっていた。
「先程の御言葉ですが」
「ザルクですか」
「はい、それは一体」
「何なのですかな」
大河も問う。
「私も聞いたことがありませんが」
「容易く言うならばテロ組織です」
「テロ組織」
「そうです」
ラクスは答える。
「プラントの裏で暗躍しているのです。私は彼等と戦う為にこうして」
「今ここに来たと」
「そして私達も」
タリア達が前に出て来た。
「プラントを、人類の為にロンド=ベルへ」
「そうだったのですか」
「今まで黙っていて申し訳ありません」
タリアはシナプスに謝罪する。
「お話する機会を待っていましたが」
「いえ」
だがシナプスはそれに怒ったりなぞはしなかった。
「何か訳がおありだとは思っていましたから」
「左様ですか」
「はい、そういうことでしたら」
「我々も是非協力させて下さい」
大文字が彼等に言う。
「プラントの為に。そして人類の為に」
「力を貸して頂けるのですね」
「はい。ですが」
大文字はさらに言う。
「教えて頂けませんか、そのザルクというのは」
「どういう組織で誰が中心人物かを」
「ザルクはプラントの奥深く入り込んでいます」
ラクスは言う。
「そして決して見つかることはありません」
「決してですか」
「私が見つけ出したのです」
シュウがここで出て来た。
「シュウ、御前がか」
「はい。探し出すのには随分苦労しました」
彼は言う。
「ですがこれにより大きなことがわかりました」
「血のバレンタインがありましたね」
「ええ」
ロンド=ベルの面々はそれに答える。彼等がプラントを守ろうとしたのだからはっきりと覚えている。
「あの時ブルーコスモスの過激派が核を放ち起こった悲劇でした」
「はい、それは覚えています」
ブライトが答える。
「それにより連邦とプラントの戦いがはじまったことを」
「あの時ザフト軍は守りに穴がありました」
ラクスはまた言う。
「それにより起こったのですが実はそれは意図的なものだったのです」
「意図的!?」
「そうです。そしてその時の指揮官は」
「ラウ=ル=クルーゼだ」
バルトフェルドが言ってきた。
「あの男がザルクの首魁なんだ」
「まさか」
「いえ、その通りよ」
タリアがここで言う。
「彼をこのままにしておくと大変なことになるわ。だから」
「既に彼等は動いています」
ラクスが語る。
「ですから今は彼等を討ちに」
「そうですな。では」
大河が決断を下した。
「次はザルクを倒す、いいな」
「了解」
レクイエムを撃破してすぐに彼等は次の戦いに向かった。それはプラントとの最後の戦いのはじまりでもあった。また一つ戦いが終わろうとしていた。
人の見た夢完
2007・2・2
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