FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-
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第十七話 原作開始
ERA(エラ)と呼ばれる魔法評議会会場。そこには円卓を中心に幾人かの評議員が座していた。年老いた人からまだ二十前後の若い人まで幅広い年齢層の人達で議論がなされている。
といっても、評議員になるにはあまりにも若く態度も勤勉とは言えない青い髪をした男と艶のある綺麗な黒髪をした女性は周囲からは煙たがられている。本人達はあまり気にしていないようだが。
「まったく、前回フェアリーテイルのギルドマスターにはきちんと注意を促したはずだ。地方ギルドマスター連盟にはちきんと注意報告をしたのかと疑ってしまうよ」
「うむ。一応今回も報告会で前回とそして今回の分もあわせて注意事項を資料にして提出した。が、いつもの如く無駄に終わるじゃろうな。あの妖精の尻尾には」
「やれやれじゃ、相変わらず扱いづらいギルドじゃよ。損害だけを見ればすぐに切ってもいいのじゃが、如何せん功績もかなりのモノであることも確かじゃ。それに実力者も多い」
「だからと言ってこのままで済む話ではなかろうっ!このまま奴らをのさばらせていたら私たちの権威まで危ぶまれるぞ!」
「それはそうじゃが……」
永遠と解決策が見つからないであろう議論を年若き青年ジェラールは嘲笑しながらその無駄とも言える光景を見つめている。いや、無駄な題材で議論をしているわけでは決してない。
しかしその議論している者達が到底そのことを解決できるとはジェラールは思っていなかった。その意見に同意するかのように傍らにいた黒髪の女性ウルティアも手持ち無沙汰で水晶らしきもので遊んでいた。
「これ、止さぬかウルティア。ここは厳粛なる評議会の議論場じゃぞ」
「あら、それはごめんなさい。あまりにも退屈な議論でしたので」
その場にいる老人達に臆すことなく飄々とした態度でさらりと述べた。そのため視線はより厳しいものを集めたのだが、それをさえぎる様にジェラールが続けて意見した。
「あぁ、それに最近あったシロツメのエバルー事件も忘れたわけじゃないだろう? フェアリーテイルが動いたおかげでエバルーの野郎も潰せたんだ」
「だが、正規の手続きを取ってなかったであろう! フェアリーテイルはいつも暴れてから報告してきおる!」
「だが所詮そんなものは机上の空論だ。正しい手続きがなかったからこそいち早く公爵のエバルーを摘発できたわけだ。政府からも汚職まみれで証拠もバッチリ残っているエバルーじゃ強くでれねぇしな。何よりそういう問題児ギルドが一つぐらいあったほうが面白い」
「まったく、貴様というやつは。何故評議員になれたんじゃ」
「魔力が高いからじゃねぇか?」
睨み合う両者に議長が宥めるように間の手を入れる。
「これやめんか! 今我々がやることは内輪揉めではあるまい。フェアリーテイルについてはすぐに解決できるようなことでもなかろう。それに金髪の悪魔に関することもまだ議論できていないのだ」
そう、前々から問題となっていたフェアリーテイル所属の金髪の悪魔ルシア・レアグローブ。フェアリーテイル所属にしては建造物、器物破損など少なく、あったとしても事情を聴けばやむを得ない事ばかりであるため通り名とは違い良心的存在ではある。
勿論、過去魔導裁判で堂々と評議員に対して検束魔導士の違法書類で脅しとも取れる行動をとったことから油断できる相手ではないが、それを小出しにせず両成敗という形に持っていったことで関係悪化にはそれ程にはならなかった。
ただルシアは闇ギルドに対しては相変わらずの対応を取っているが、それは評議院としては様々な理由から黙認と言う形をとっている。
ルシアは闇ギルドと対峙する際必ず隠蔽工作をするようにしている。勿論評議院も無能ではないので薄々ルシアが事を起こしたとは分かっているが明確な証拠が出てこないので黙認している。評議院からして見ても闇ギルドは疎ましい存在でもあるが数多くある闇ギルドを一々相手にもしていられない。よってお互い利用しあい、一定の利益がある以上無理に調査はせずにいる。
一見すると差し当たり問題点はそれ程なさそうに見えるのだが。
「そう、ルシア・レアグローブの能力についてじゃ」
数年前から議題には上がっているルシアの魔法らしきモノについて。ルシアの実態調査つまりどの程度の実力を持っているかを調べるため優秀な調査員を派遣した結果、その調査員から驚くべき報告が上がった。それは魔法を使用する時魔力を使っている形跡が見られないことだった。
この世界で異能力とは魔法であるということは常識であり、それを使い個人から国に至るまで様々な依頼を魔法を使うことで解決し一大組織として魔法評議院ができた。
しかし、ここでルシアが魔法とは違う能力を使っている可能性が出てきた。これは評議院の存在を揺るがしかねない。
「うむ……しかし可能性の問題であろう。正直ワシは今だ信じられん。もしかしたら魔力を使っていることを知られんようオリジナルの魔導具を使っているだけかもしれん」
「同感じゃな。仮に魔法以外の異能力であったとしても、無理に奴からそれを聞き出そうとすれば対立することになりかねん。聖十魔導士に匹敵する実力者をそのような可能性だけの話で関係が悪化するよりは利用したほうが利益は大きかろう。本人も魔導士だと言っておるからには第二の評議院を設立しようとは思っておらんだろう」
「あら、でももしかしたら彼以外の異能力者が我々と同様に権威を握るための画策をしようとするかもしれないでしょう?」
「だとしたら、何故今だ表舞台に出てこないのじゃ。出てこようものなら少しぐらいは情報は出回るじゃろう。情報がまったく出てこない以上信憑性は薄い。それに奴は尾行している調査員の存在にすでに気がついておる。調査員に対して我々に遠まわしに忠告もしてきておる。これ以上の調査は無意味だと思うの」
「だが、可能性は残っているだろう。俺は調査の続行を薦めるね。評議院の存在が危ぶまれる可能性だ。徹底してその可能性を潰すべきだ」
保守派と調査続行派がいつもの如く議論しているが、その内容は数年前からさほど変わりばえのない内容だった。
ジェラールとウルティアは最初から一貫して調査をし続けるべきと考えている。それは評議院のためではないのだが……。
「そこまで! 時間じゃな。ルシア・レアグローブに対しては引き続き調査を続行はするが可能性や信憑性、そして彼が調査員を通して忠告してきたことから調査回数を減らすこととする。彼自身魔力自体もあり、魔導士である証拠もある。我々からの難解な依頼もこなせる実力者の彼にあまり不信感を持たれてもまずいからの。では解散!」
ジェラールは苦虫を噛み潰した様な表情を一瞬浮かべるが、すぐに普段通りの顔に戻す。彼自身、評議院の調査程度にさほど期待はしていなかった。あわよくば情報が手に入ればラッキーという程度だったのだ。
しかし、ルシアを長期間尾行調査できるのは恐らくジェラールクラスの人間でないといけないためルシアの能力については半ば諦めていた。
そう、彼にはやらなければならないことがあるのだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今俺はクローバーの定例会場の屋根の上に立っている。そこからは辺り一面を眺めることができ、監視場所としては絶好のポジションだ。ただ、逆に俺自身も目立ちやすいがそこは透明の上級DBトランスペアラントで自身を透明化させているので問題ない。
風によって靡(なび)いているファー付きのマントと新品の漆黒の甲冑の具合を確かめる。さすがハートクロイツ製だけあって不備はない……エルザのおかげだな。
定例会場内では評議院からの決定事項の伝達とその確認が終わりギルドマスター同士で交流を深めている最中だろう。本来であれば、ギルドマスターのみが訪れる場だが俺は無理を言って(と言っても二つ返事で了承を貰えた)マカロフに連れて来てもらった。勿論それには理由がある。
鉄の森(アイゼンヴァルト)と呼ばれる闇ギルドが存在する。元々は闇ギルドではなく魔導ギルドだったのだが、ギルド解散命令を受けそれを逆恨みし闇ギルドへと落ちていった。
そのアイゼンヴァルトがキナ臭い動きを見せているらしいという情報を手に入れた。どうやら解散命令を受けたのを逆恨みしギルドマスターたちの暗殺を目論んでいるらしい。
正直なところそれだけならば俺はここには来ていない。アイゼンヴァルト程度の奴らがギルドマスターを殺せるとは思えない。ただ、その情報の中に気になる点があった。
―――呪歌(ララバイ)
黒魔導士ゼレフが作り出した魔笛を使った生きた魔法。
魔笛の音を聴いた者全てを呪殺する集団呪殺魔法。その魔笛の封印を解き、ララバイをもってしてギルドマスター達を暗殺しようとしているとらしい。
だが、俺にはそれをもってしてもマスター達がやられるとは思っていない。理由はいくつかあるが一番の理由はまずそれを扱えるだけの実力者がアイゼンヴァルトにはいない。
マスター達レベルの実力者を呪殺となると相応の魔力が必要のはずだ。ラクリマを使い長年魔力を溜め込んだとしてもアイゼンヴァルトがララバイを見つけたのが比較的最近の話だ。時間が足りないだろう。闇市場から高魔力ラクリマを購入したのなら話は別だが……。
だがそれにしてもだ。すでにこの情報はマカロフに伝えてあるし、その時の返答からも自信に満ちていたので問題はないはず。
ならば何故ここに俺がいるのかというと、それは好奇心。
ララバイがどうにも引っかかる。呪い殺す魔笛であるのに何故生きた魔法と言われているのかだ。正直ある程度の予想はついている。それはゼレフに関する事柄を調べていけば容易に想像がついた。
それは文字道理あの魔法は生きているということだ。
その昔、同じく黒魔導士ゼレフによって生み出されたデリオラという大型の魔物がいたそうだ。突如として現れたソレは街を破壊しつくす魔物だったらしい。ただそれが現れたのは十年以上前のこと。ゼレフはそれ以上前に死んでいるためデリオラを作り出すことなど不可能なのだ。
つまり何かしらの媒体にデリオラが封印されていたのではないかと予想ができる。そして今回の呪歌(ララバイ)も魔笛の中に魔物がいるのではないかと俺は思っている。
そんな極上の強者を見す見すマスター達に取られるわけには……そんな危険な魔物をマカロフに近づかせるわけにはいかない。
「これこれ、そんな物騒な気配を出すでない」
「……よく気がついたな」
振り返るとそこには腰に手を当てながら透明化している俺に迷いなく近づいてくるマカロフがいた。いつの間にか歪んでいた口元を戻し対面する。
「全盛期からいくらか衰えたとはいえ、小童にはまだまだ負けんぞ」
「さすが俺が所属するギルドのマスターだ。そうでないと困る」
「相変わらず口の減らぬ奴じゃの……そうそう、実はミラから連絡が来ての。ナツとグレイとエルザ、そしてルシアはまだ会ったことないと思うが新人のルーシィの計四人でパーティを組み、例の闇ギルドと事を起こすかもしれんと連絡してきたわい」
「……何とも胃が痛くなりそうなメンバーだな」
「うっ!言わんでくれ。またぶっ倒れそうじゃ。まぁとにかくナツ達か奴らのどっちかが来たらワシに連絡してくれ」
「あぁ了解した。ならこれを持っていてくれ」
俺は首元にあるDBから分裂するようにもう一つの黒紫のDBを取り出しマカロフに放った。
「何じゃこれは?」
「通信のDBだ。それを持っていれば俺と連絡を交わすことができる」
「ふむ、やはりラクリマとは違うようじゃな。便利なもんじゃ。さてワシは会場に戻るわい。じゃあの!」
老人とは思えないような身軽さで屋根から飛び降りていった。スーパーじじいだな。前世では考えられない光景だ。そんなギャップに悩んでいたころが懐かしい。そんなことを感慨深く思っていると前方から肉眼では見えにくいが煙が上がっているのを見つけ、透視のDBで確認する。
するとそこにはアイゼンヴァルトのエースであるエリゴールとフェアリーテイルの火竜(サラマンダー)ナツ・ドラグニルの両者が対峙していた。
「ナツVSエリゴールか。こりゃあ、見物だな。ナツがどのくらい強くなったか……見せてもらおうか」
俺は煙草を咥えながら両者の戦いを観戦することにした。さて、俺を楽しませてくれよ?ナツ。
後書き
今回の話の補足説明
評議員が言っていたルシアは損害はあまり出していないという話ですが、基本ルシア君は人が住まないような辺境の地で魔物を狩ることが多いからというのもあります。人がいなきゃ建物もないので損害は出ません。戦闘の余波で森林破壊もありますが、S級クラスの魔物相手なだけあってやむを得ないという判断になりますね。
『さすがハートクロイツ製だけあって不備はない……エルザのおかげだな』
別にハートクロイツは元々武器防具を作るのに得意というわけではありません。ただエルザがいろいろと注文してくるため技術を上げざる得なかったのです。勿論原作にもあるとおり不備があることもありますが、エルザと違いルシアはそんなに調整をする機会はないので、まだ不具合が出たことはないです。
エルザのおかげ、これはエルザにハートクロイツを紹介してもらったおかげとエルザがハートクロイツにいろいろと注文したため技術が向上したおかげという二重の意味。
ララバイを使って呪殺するのに多くの魔力が必要という設定は完全にルシア君の経験から裏打ちされた予想なので本当はどうか知りません。デリオラの封印の件も同様ですね。この世界に長くいる戦闘者のルシア君の勝手な予想です。
こういう補足説明をさりげなく本文に組み込めない自分はまだまだですね。頑張ります。
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