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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第10話 妹の魔法と招待状?

 こんにちは。ギルバートです。楽して儲けよう等と考えた私は甘かった様です。タルブ村の醤油と味噌は、塩が原因で大量生産不可能な上に高くて美味しくない。手押しポンプは売れる要素皆無。《錬金》は努力しないと儲けられないし、結果が出ても目立てないので大きな儲けは期待出来ません。うん。甘かったです。

 そうこうしている内に、時間ばかりが過ぎて行きます。アナスタシアも5歳になりました。私も魔法を始めて、1年と8カ月になります。残念ながら、未だにドットメイジですが……。

 おっと、話が逸れてしまいました。アナスタシアは以前から、家族内で自分だけ魔法の訓練に参加できない事を、不満に思っている様でした。私が魔法の訓練を始めてから、しきりに「わたしもやりたい」と母上にお願いしていたのです。

 しかし、帰ってきた答えは「5歳になるまで待て」でした。

 当然です。私があれだけ説得したのに駄目だったのです。アナスタシアだけ例外とか、あり得ません。

 ……待てよ。そう言う事ですか。兄弟間で例外を認めれば、他の兄弟が黙っていないのです。だから私の時も、あれほど納得していたのに返事はダメだったのですね。アナスタシアとディーネに、私だけ特別と認識させない為、兄弟間の優劣をつけない為、私の話を納得しながらも魔法の訓練を許可してくれなかったのです。理由を言わなかったのは、私の反感がディーネとアナスタシアに行かないようにする為ですか……。

 相変わらず私は、浅はかだった様です。それなのに食らい下がれば、母上も怒って当然……しつこければ切れもします。ここは猛省せねばなりません。

 とりあえずその事は反省するとして、アナスタシアの誕生日に私達と同じ様に小さな(ワンド)が送られました。誕生会は慎ましく終了し、次の日よりアナスタシアは杖との契約に挑みます。

 私やディーネの例から、契約には最短でも3~4日かかると思っていました。そうでなくとも、始めての杖契約は1週間くらいかかるのが一般的だそうです。それなのにアナスタシアは、たったの2日で杖との契約を終えました。これには母上もビックリです。そしてその才能の高さに、周りの期待は高まります。

 そして母上の指導の下に、アナスタシアの魔法訓練を開始する事になりました。最初は怪我や事故を防ぐ為“心構えや注意事項の確認”から始まりますが、家の方針はその確認を徹底的に行うのです。子供を心配しての方針ですが、如何(いかん)せん時間がかかるのです。その空いた時間がもったいないので、私とディーネは軽くランニングに行く事にしました。しかし私達が戻って来ると、既に魔法発動訓練と系統属性確認が終わっていたのです。

((……速い))

 それが私とディーネの正直な感想でした。母上も何処か複雑さが見えますが、アナスタシアの才能を喜んでいる様です。

 私の時もディーネの訓練を見ていたので、早くスムーズに訓練を消化出来たと言う自負がありました。しかしアナスタシアは、私よりも遥かに早く訓練を消化したのです。正直に言わせてもらえば、この事実を私は直ぐに信じられませんでした。

 後になってアナスタシアから聞き出して分かった事ですが、彼女は以前から入念に魔法訓練の準備を進めていたそうです。

 書庫の鍵を母上にねだり入室を認めさせた事から始まり、必死に文字を覚え私が読んでいた本を調べて読み込み理解したそうです。ルーン文字も「全部じゃないけど覚えた」と言われた時は、流石にちょっと凹みました。

 ディーネや私の例から、魔法は力の流れが大切と知っていたので、その対策も講じていました。ディーネに椅子の上で抱っこされている時に、ねだって《念力》を使わせ力の流れを感じる訓練をしていました。(当時、私生活で杖を持つ事を許され浮かれていたディーネは、妹にねだられるままに《念力》を使ってしまった)

 もう一つ大切なのはイメージですが、こちらもキッチリ対策を講じていました。イメージ的に優れているのは、いきなり全ての属性を成功させた私のイメージと判断したアナスタシアは、私からイメージの内容を聞き出していました。(しかも私は言葉だけでは不十分と思い、で〇じろう先生の様に遊びながら面白おかしく教えてしまった)

 結果として碌に母上の説明も聞かずに、全ての魔法を一発成功させたのです。そしてアナスタシアの属性基準は、母と全く同じ風>水>火>土であると判明しました。

 何故こんな幼子が、ここまでの事が出来たのでしょうか?

 私はそれが理解出来ずに、頭を抱えてしまいました。



注 その原因は、家族の中でアナスタシアと最も長い時間を過ごしたギルバートだ。(シルフィアは政務があるので、割ける時間に限界がある)

 このハルケギニアでギルバートは、自身の存在を異物と考えている。それが原因で「この滅びゆく世界に、運命を変える一つの因子たれ」の言葉を実践する事に、必死になっていた。その感情は他人と接触する時も無意識に現れ、他人にあと一歩を踏みこませない雰囲気が僅かにあった。それをアナスタシアは、敏感に感じ取ってしまったのだ。

 そしてその事に、マギの分の精神年齢の高さが拍車をかけた。ディーネは、ギルバートに姉上と呼ばれる事に居心地の悪さを感じていたが、それ以上に“ギルバートの姉で居たい”と言う感情があった。だから姉として、自分の方が上である事を証明する為に必死に努力をしたのだ。その努力が、アナスタシアと関わる時間を削ってしまったのだから皮肉な話だ。また実母との死別が年相応な甘えを消し去り、普通では考えられない程に精神年齢が上がってしまった。

 母であるシルフィアは、そんなギルバートとディーネが原因で、子供の成長が早すぎる事に鈍感になってしまった。領地経営で忙しい事もあり、子育てに関しては放任主義なってしまう。それなのに“せめて身を守る為の訓練は……”と、愛情をこめて地獄にするのだから性質(たち)が悪いが、訓練を受けられないアナスタシアは“自分は構ってもらえない”と感じたのも仕方が無いだろう。一方で父親のアズロックは、仕事で家になかなか帰れない所為で、その事に気付けなかった。

 そしてこの環境は、アナスタシアに孤独を感じさせるのに十分だった。家族は笑いかけてくれるのに、ふと気付くと自分だけ何時も蚊帳の外。……だから、家族が何をしているか観察したのだ。そしてその結論は、何時も(シルフィアだけが)楽しそうにやって居る訓練だった。

 だから、母にねだって剣の稽古を始めたのだが、兄の魔法訓練が始まると館裏の森に訓練場所を移されてしまう。

 それをアナスタシアが“……また、置いて行かれてしまった”と感じたのは、仕方が無い事なのだろう。だから“自分も魔法訓練を始めたい”と、ねだったのだ。

 しかし特例を認めない母が、それを許すはずが無かった。やがてそれは焦りへと繋がり“如何にかしなければ、自分は見向きもされなくなるかもしれない”と言う不安を感じる様になったアナスタシアは、やがて“自分だけが一人残され、皆は何処かへ行ってしまうかもしれない”と言う強迫観念に囚われる様になった。

 まだ幼子であるアナスタシアにとって、その心理ストレスは耐えられる様な物では無い。

 如何すれば良いのか幼い頭で考え、アナスタシアが出した結論は“……置いて行かれない様に、追い付いてもう離れ無ければ良い”だった。

 ドリュアス家の人間は、例外無く何処か歪んでいるのだった。



 魔法訓練は、アナスタシアも加わり順調に進んでいます。アナスタシアが母上の格好のターゲットになってくれたおかげで、私とディーネは自分の属性訓練をする余裕が出来ました。生贄になってくれたアナスタシアには、いくら感謝してもしきれません。

 訓練後にアナスタシアが、何かブツブツ呟いているのは気のせいだと思いたいです。……なんか黒いオーラ出てませんか? 止めて!! その年でヤンデレとかあり得ませんから。

 私が現実逃避している間に、心配したディーネがアナスタシアに話しかけました。すると途端に、年相応の笑顔に戻ってくれます。アナスタシアの雰囲気が戻ったのを確認すると、私も側に行き話しかけました。

「如何したのですか?」

「……立てない」

 どうやら母上のやり過ぎで、足腰が立たないらしいです。

「……ギル」

 ディーネが私の横に来て、苦笑いをしながら私の名を呼びました。

「分かってますよ」

 ディーネが言いたい事を理解した私は、アナスタシアを屋敷までおぶってあげる事にしました。アナスタシアは私の背中で、何故か物凄く上機嫌でした。

 ……館裏の森を抜けると、何故か館の入口で母上が待ち構えていました。私達に緊張が走ります。

(母上。嬲り足りなかったのでしょうか?)byギルバート

(でもギル、あれだけやって流石にそれは……)byディーネ

(うそ……いや……)byアナスタシア

 私達はアイコンタクトと僅かな所作で、ここまでのコミュニケーションが出来るようになっていました。母上はやたら勘が良くて、少しでも不満そうな顔をすると、訓練量がやたらと増やすからです。と言っても、今は距離があるから気付かれませんが、これも母上の目の前でやると一発でばれます。

 何時までもこうしている訳には行かないので、私は母上に近づき訳を聞く事にしました。ディーネは微妙に私を盾にする位置に付き、アナスタシアは先程から反応が無いのですが気にしません。(こういう時は、男って損です)

「母上。何かあったのですか?」

「話があるから、着替えたら居間に来なさい」

 私が代表して聞くと、母上は笑顔でそう答え、そのまま居間へ行ってしまいました。どうやら私達の心配は杞憂だったようです。

「……助かりました。ディーネ。アナスタシア。早く着替えて居間へ行きましょう」

「分かりました。しかし、話とは何でしょうか?」

「…………(無言)」

 あまり良い予感がしないのか、ディーネの顔が不安で歪んでいます。それは私の顔も同様でしょう。アナスタシアは母上の待ち伏せのショックが抜けないのか、無表情レイプ目状態です。その年でそんな顔されると、世の中に絶望してしまいそうなので止めてください。気持は良く分かりますが。

「聞けば分かる事です。行きますよ」

「そうですね。しかし……」

「母上を待たせない方が良いでしょう。……アナスタシアは私が連れて行きます」

「お願いします。急ぎましょう」

 ディーネは、そのまま自分の部屋へ行ってしまいました。私はメイドにアナスタシアを預け、着替えさせるように指示します。こんな状態のアナスタシアを見ても、全く動じない家のメイドは優秀なのでしょうか? それとも、慣れただけでしょうか? まあ、気にしても仕方が無いです。

 私は自分の着替えを済ませると、アナスタシアを迎えに行き母上が居る居間へと移動しました。アナスタシアが再起動したのは、居間へ到着する少し前でした。お願いだから、もう少し早く復活してください。

「母上。お待たせしました」

「2人とも早く席に着いて、お茶にしましょう」

 居間では母上とディーネが、一緒に紅茶を飲んでいました。その雰囲気から察するに、深刻な話では無さそうです。その事に安心しながら、私達は席に着きました。そして紅茶を少し飲みホッとした所で、母上が話し始めます。

「ヴァリエール公爵家の三女ルイズに友達を作る為に、同い年の子を呼ぶ事になったのよ」

「たしか、アナスタシアが同い年でしたね」

 私が返事を返すと、母上は頷きました。

「そうなの。それでアナスタシアとモンモランシ伯の子供に、招待状が届いたのよ」

 家だけでなく、モンモランシ伯の子供もですか?

「今は“情勢が不安定だから自重する”と言う話になっていたのだけど……。王都で公爵とモンモランシ伯爵が、アズロックと話をして、私が護衛に付けば安心って事になってしまって……」

(いくら魔の森拡大阻止の為、この三家が仲が良いからって。……それよりアナスタシアの安全は、本当に大丈夫なのでしょうか?)

 私はその話に、思わず溜息を吐いてしまいました。

「もちろん、ディーネちゃんとギルバートちゃんも一緒よ」

「「私も?」」

 思わず出た言葉が、ディーネとハモってしまいました。

「明後日の朝、アズロックが帰って来るから。帰って来次第出発よ。一度モンモランシ伯の家によって、伯爵令嬢の……えーと」

「モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ?」

 母上が名前らしき所で言い淀んだので、モンモランシーのフルネームを言ってみました。しかも図星だった様です。母上が少しだけ渋い顔になり、睨まれてしまいました。まあ、この手の指摘なら訓練が激化する心配は無いので、怖がる必要はありません。

「良く知ってたわね。……取りあえず、その子と護衛に合流して、ヴァリエール公爵の屋敷へ向かう事になったわ」

「「はい!!」」「はい」

 私とアナスタシアは元気に返事をしましたが、ディーネの反応が若干鈍く声も小さかったです。ディーネの出自については、養子に取る時に話してあります。その事を気にしているのかもしれません。母上も気付いてる様ですが、後でフォローをしておいた方が良いでしょう。






 いよいよ、原作キャラと初の対面です。情勢が情勢だけに、杖と剣は必須ですね。何事も無ければ良いのですが……。 
 

 
後書き
改訂作業に少し……いえ、かなり手間取りました。
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