とある完全模写の物語
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イマジンブレイカー
(あれがステイルの言っていた力か?…だがどうやって防いだ?あの右手に関係がありそうだが…)
神堂は自分の力が防がれた事に驚きと喜びを感じながらもその力の出処を考える。
まだどう言った力かわ分からないが、魔術を使ってる訳でも、超能力を使ってる訳でもないのには気づくことが出来た。今あの少年が使った力はどちらにも当てはまらない力だと。
一方神堂の攻撃を何らかの方法で防いだ少年は考える。どうすればこの場を切り抜けられるのかと。
(不味い…こいつ全然本気をだしてねぇのに、それでも勝てる気がしねえ…どうすればいい?)
神堂は少年の力について考えながらも少年はこの場を切り抜ける方法を考える。
少年の目的はあくまでもインデックスを助ける事であり、目の前にいる神堂と火織を倒す事ではない。目標を見失ってはならない。
だが、目の前にいる二人が少年をそう簡単に見過ごすわけがない事を少年自身理解している。だからこそ何かしろの手段を用いてこの場を切り抜けないといけない。
「休んでいる暇は与えないぞ!」
少年が頭を必死に回転させている所に畳み掛けるように飛来してくる風の弾丸。
先程とは形態の異なる小さな風の塊が幾つも飛んでくる。
「っく!」
自分めがけて飛んでくる風の弾丸の幾つかを少年はうまく避けるが、それでも多少の被弾を許してしまう。
(くそっ!捌ききれない!)
その内の幾つかは先程と動揺、右腕を突き出す形で無力化している。
そして、そんな少年を見ていて神堂は気付く。この少年が魔術を打ち消せる範囲は右腕のみだと。そして打ち消せる魔術の範囲はかなり広い。今放っている風の力は先程よりも小さいが、一番最初に放った力は中々に巨大な力だ。それも打ち消した所を考えると、打ち消せる範囲は結構広いと言う事だろう。
厄介な力。
それが神堂が感じた少年の力に対する感想。
だが結局はその程度なのだ。魔術を打ち消せようが、超能力を打ち消せようが、結局の所、それは右腕で触れなければならない。それがいかにハンデを背負い、いかに使いづらいか、少年の力の長所と短所を一瞬で理解してしまう神堂。
「終わりだ」
隙間なく撃っていた風の弾を一旦止め、今度は風と違う別の力を行使する。
神堂が次に使う力は氷の力。
風がやんだと思えば、瞬時にして少年を取り囲むかのようにして氷の杭が無数に現れる。
「行け」
神堂がそう呟いた瞬間、少年を囲んでいた氷の杭は一斉に少年に襲い掛かる。
当然周りを囲まれた少年に避ける術などなく、無残にも氷の杭は体に突き刺さってい待った。
「ぐああああああああああああああああっ!!」
大きな叫び声と同時に少年は体から血を吹き出し、地に倒れる。
段々と広がる血だまりを神堂は呆然と眺める。
(俺は…何を期待していたんだろうか)
先程まで感じていた気分の高揚は一気に覚め、途端に冷静になったようだ。
「火織。行こう」
恐らくはステイルの方も終わっているだろう、そう神堂は考えながら後ろで控えさせていた火織の元に踵を向ける。
「…よ」
と、風の音にかき消されそうな程に小さな声が神堂の耳に届いた。
「待てって…言ってん…だよ」
「まだ息があるのか」
少年が死んでいない事に少しの驚きを感じながらも神堂は振り返る。振り返った神堂の視界に映ったのは体中に氷の杭が刺さった血まみれの少年の姿。しかし、肝心の急所の部分には刺さっていない。恐らくはあの一瞬の間に急所に刺さる杭を避けるか右手で防ぐかしたのだろう、と神堂は察する。
本当にそれをしたのならば神堂の目の前にいる少年は普通ではない。敢えて言うなら情報処理が恐ろしく早い。あの一瞬で氷の杭の射線を判断し、急所を避けるようにしらのだから。
「でだよ…!」
「?」
「何で!お前らはそんな力を持ちながらあいつを傷つけた!あんたらの力があればあいつを傷つける必要はなかっただろうが!何であいつに傷つけるような真似をしたんだ!」
自分は今すぐ死んでも可笑しくない傷を負っているのに、そんな時に吐いた言葉は他人を心配する言葉。
何故そこまでして、今日出会ったばかりのインデックスの事を思えるのだろうか。何故そうまでして他人の事を思えるのだろうか。それが不思議でしょうがない神堂は少年の言葉に返事をする事が出来なかった。
「あなたは一つ勘違いしているようですが…私達だってあの子を傷つけたくなかった」
「ならどうして…!「私だって!…私だって彼女を傷つけるような事はしたくなかったに決まってるでしょう…!ですが、あれは彼女の歩く教会の結界が生きていると思ったから…」
少年の言葉に挟むようにして火織の叫び声がこだまする。
いつも冷静な彼女が此処まで取り乱しているのだ。それ程までにインデックスは火織達にとって大切な存在であり、それと同時に今回の仕事をなんとしてでも実行しなければならないのだ。彼女のためにも。
「他に手立てがなかったのです。彼女はこうでもしないとこの世界で生きていくことが出来ない」
「お前…何を言って」
「私とこの人が所属する組織名はあの子と同じネセサリウス。インデックスは私達にとって同僚でもあり、大切な…親友なのですよ」
――――――――――
必要悪の教会―ネセサリウス―
それが神堂や火織、ステイルの所属する組織であり、今回の仕事はネセサリウスから直接くだされた仕事でもある。
「なっ…何言ってんだよ今更!インデックスが俺を騙したって言うのかよ!」
「彼女は嘘をついてはいませんよ。…覚えていないだけです。私達が同じネセサリウスの人間だと言う事も、自分が追われている本当の理由も。禁書目録を追う魔術師は10万3000冊を狙う魔術結社の人間。そう思うのが妥当だ。自分の中の知識から彼女はそう判断したのでしょう」
「信じられねぇ。じゃあ何でインデックスはあんた達の事を覚えてないんだ?あいつには完全記憶能力があるんだろ!?」
そう叫んだ少年に答えようとして火織は口を開こうとするが、その火織の肩に神堂の手が置かれ、火織は咄嗟に口を閉ざした。
「俺達が彼女の記憶を消した。…自分自身の意思でな」
そう小さな声で呟いた神堂の表情には悲痛の色が浮かんでいる。先程まで少年とやり取りしていた火織さえも、神堂が呟いた記憶を消した、と言う言葉に顔を歪めている。
そんな神堂の言葉と、二人の様子を見て、少年は戸惑うしかない。
少年は先程まで二人の事を完全な悪の存在と思っていたが、どうやら少し違うようだ、と認識し始める。
「聞かせてくれないか…あんた達とインデックスの過去の話を…」
少年の提案に神堂は少し考える素振りを見せ、そして小さく頷いた。
「いいだろう。お前がこの話を聞いてどう動くか見せてもらうぞ」
――――――――――
「それからあいつがどうなったのか…何となく察しはつくだろう?」
「…もしその話が本当だとして、インデックスの限界ってのはあとどのくらいなんだ?」
神堂が少年に話したのはインデックスを蝕む力の話。インデックスが持つ完全記憶能力と、10万3000冊の魔道書の関係。そして定期的に記憶を消さなければ彼女は死ぬと言う事。
恐らく神堂は過去のインデックスとの事を全て話しただろう。その必要はどこにもないのだが、なぜか神堂は話してしまった。
今目の前にいる少年がこの話を聞き、どう考え、どう動くかに興味があったからだ。そしてこの現状をどうにか出来ないか、という事に少しの希望を抱いてしまった。
神堂が真っ直ぐ見ている少年は今まで見たことのないタイプの人間だ。言葉にするのは難しいが、何か真っ直ぐな信念を少年から神堂は感じ取った。神堂はその信念を間近で見て、少しの希望を抱くことにしたのだ。
この長い苦しみの連鎖にこいつが終止符を打ってくれる事を。見ず知らずの少年に少しだけ託す事にしたのだ。だからこそ話してしまった。話す必要もない事まで。
「持ってあと三日…って所だろうな」
「なら…!」
少年が神堂に向かい、何か言おうとするが、神堂はその言葉を聞かず少年に背を向ける。
「一日だけ…お前に時間をくれてやる。インデックスに関する情報は教えた。お前が何か出来ると言うなら…インデックスを救って見せろ。だが、お前が一日でなにも出来なかった場合は…インデックスの記憶は消さしてもらう」
「光輝!」
神堂の言葉を聞き、火織が声を上げる。流石にこの言葉を火織は予想していなかったのだろう。
「…一日だけだから…頼む。あいつに賭けさせてくれ」
「…分かりました」
神堂な悲痛な表情を見て、火織は後ろに下がる。火織も火織でインデックスが苦しむ姿は見たくないのだ。だからこそ彼女はこうも簡単に食い下がったのだろう。
それに、火織が心から信頼している神堂が目の前にいる少年に賭けてみたいと言ったのだ。人を余り信用しない神堂が、だ。
「もう一度だけ言うぞ。一日、足掻いてみせろ」
「…いいぜ…やってやるよ!てめぇらに出来なかった事を俺がやってやる!」
最後に少年はそう叫ぶと緊張の糸が切れたのか、地面に倒れた。
「いい結果を期待している」
地に倒れた少年を神堂は見る事なく、神堂達はその場を後にした。
後書き
自分でもびっくりするカット具合。序盤だからいいですよね?結構バッサリカットしてしまいましたが…。
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