スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百十話 宇宙に降る星
第百十話 宇宙に降る星
オービットに戻ったロンド=ベル。次の作戦が早速決定していた。
「アフリカにですか」
「うむ、頼めるか」
モニターにはミスマルがいた。そこからブライト達に話をしていた。
「実は今アフリカは厄介な状況になっているのだ」
「ザフトですか」
「そうだ。バルトフェルド将軍がな。頑張っている」
「そうらしいですね」
ミサトがそれに応えた。
「噂によると名将だとか」
「そうだ。少なくとも安易な相手ではない」
「やはり」
「こちらはニュートロンジャマーのせいで完全な対応が取れていない。見つけ次第除去して対応しているがそれにも兵を取られてしまっていてな」
「それで北アフリカを押さえられたのですか」
「他にはオーストラリアにジブラルタルも押さえられている」
「そこもですか」
「そうだ。ジブラルタルは北アフリカを押さえればどうにかなるが」
「オーストラリアは、ですか」
「カーペンタリアに大規模な基地を建造中らしい」
「三輪長官は何をしておられるのですか?」
大河がそれに問う。
「太平洋には地球の連邦軍の主力がいる筈ですが」
「北極のティターンズと散発的にやって来る火星の後継者達への対応に追われている」
「そうだったのですか」
「そしてミケーネにもな。敵はまだまだいるのだ」
「残念なことです」
「北アフリカは今のところダカールの前にまで迫られている」
「ダカールまで」
「キングビアルも奮戦してくれているし何とか持ち堪えているが状況は決して楽観視出来るものではない」
「それでは」
「うむ、君達にはまた地球に来てもらいたい」
ミスマルは述べた。
「そしてザフトとティターンズ、ミケーネをな」
「わかりました」
ブライトとアムロがそれに応えた。
「それではすぐに」
「宇宙の防衛は今のところハルバートン提督の第八艦隊がやってくれる。彼等に任せてくれ」
「了解です」
「済まないな、君達にばかり厄介事を押し付けて」
「いえ、それは」
ブライトはそれに応えた。
「これが我々の任務ですから」
「御気になさらずに」
「そう言ってもらえると助かる。そうだ」
「何か?」
「プラントの攻撃の件だがな」
「はい」
「あれはどうやらブルーコスモスの中でも急進派が行ったらしい」
「そうだったのですか」
「今ブルーコスモスの状況は知っているか?」
「いえ」
これは彼等も知らなかった。政治のことには疎いせいであった。
「ブルーコスモスの中でも穏健派と強硬派があってな。それで意見対立があるらしい」
「そうなのですか」
「穏健派というか中道派はムルタ=アズラエル理事や軍だとサザーランド大佐だ」
「ああ、太平洋軍の参謀の」
彼のことはブライトも知っていた。切れ者として知られている。ただ司令官の三輪があまりにも過激な人物である為目立っていないのである。
「彼等だ。だが過激派がいてな」
「その彼等が問題なのですか」
「彼等は言うならば原理主義者だ」
非常にわかり易い言葉であった。
「ロード=ジブリール副理事を代表してな。宇宙人やニュータイプ、コーディネイターに対して強い偏見を持っている」
「だからティターンズと組んだのですか」
「そういうことだ。厄介なことにな」
「その彼等のせいでティターンズは勢力を回復したと」
「そうだ。そして今北極に展開している」
「そういう事情だったのですか」
「彼等の考えはティターンズと同じだ」
ミスマルはこうも言った。
「だからこそ危険だ。注意してくれ」
「はい」
ブライトは頷いた。だがミスマルはさらに言った。
「だが不思議なことがあるという」
「それは一体」
「これはアズラエル理事から聞いたのだが。ブルーコスモスは核は取り扱ってはいないらしい」
「そうなのですか」
これは非常に興味深い話であった。
「そして連邦軍でも厳重に保管されている。持ち出されたものは一発もなかった」
「ではティターンズが」
「ティターンズもそれは使っていないようだ。無論ネオ=ジオンもな」
「では一体誰が」
「それはわからない。しかし大きな陰謀があるようだ」
ミスマルの顔が曇ってきていた。
「何者かのな」
「得体の知れない話ですね」
「詳しいことは調査中だ。また何かわかれば伝えさせてもらう」
「お願いします」
「あとオービットにいる民間人だが」
「はい」
そちらにも話は及んだ。
「地球に降下を希望しているのだったな」
「ええ、そうですが」
「わかった、では手配をしておこう」
「それでは」
「彼等の護衛も兼ねて来てくれ」
ミスマルは述べた。
「それでいいな」
「わかりました。では彼等の降下先は」
「南アフリカ辺りがいいだろう」
ミスマルは述べた。
「あの辺りはこれといって戦乱もないしな」
「ではそのように」
「うむ、頼むぞ。そしてだ」
「まだ何か」
「ユリカは、元気かな」
「え、ええまあ」
シナプスはとりあえずその場にユリカがいないことにほっとした。
「元気にやっております」
「そうか、ならばよいが」
「はあ」
「それでミスマル司令」
「何だ、エリカいるのか」
「えっ!?」
突然こう言ったのにそこにいた全ての者が顔を見合わせた。
「あの、司令」
ブライトが戸惑いながら述べる。
「ナデシコは今哨戒活動で出ておりますが」
「しかし今声が」
「いえ、今話したのは」
「私ですが」
名乗り出たのはナタルであった。
「バジルール中尉だったのか」
「は、はい」
ナタルも戸惑いを見せていた。
「あの、何か」
「いや、声がそっくりだったものでな。つい」
「左様ですか」
「声が似ているというのもいささか驚かされるな」
「まあ確かに」
ブライトがそれに頷いた。
「私も今数人声が似ている者がいますから」
「私達もね」
「似てるってね。言われてばかりよね」
マリューとミサトが顔を見せて言い合う。
「まあ似ている人間は世界に三人いると言われますから」
アムロが述べた。
「司令が間違われるのも無理はありません」
「それもそうか。実はアズラエル理事もな」
「はい」
「獅子王凱君のことをやけに気にかけておられる」
「そうなのですか」
「実はアズラエル理事は最初ティターンズに接近を図っていた」
「はあ」
「しかしグループのタイヤ工場がゾンダーに襲われたのを助けてもらってな。それから色々と学ばれたらしいのだ」
「そうだったのですか」
「凱君とも衝突したらしいがな」
「その考えを巡ってですか」
「それだけでなく何か自分と似ているとのことでな。凱君も言っていた」
「また変な話ですね、彼と似ているなんて」
「いや、これが実際に凄く似ているのだよ」
ミスマルは謹厳な顔でこう述べた。
「雰囲気もな。そっくりだ」
「何と」
「同じ人間が二人いるのかと思える程な。私も実際に見て本当に驚いたものだ」
「そこまでですか」
「といってもユリカとバジルール中尉にしろ。そうした例は最近実に多い」
「ですね」
「驚くことはないか」
「ただ、ガオガイガーがブルーコスモスに関わっていたのは意外です」
「そうだろうな。何でもアメリカに言った時らしい」
「アメリカですか」
「アズラエル財閥の本拠地はアメリカにあるのだ。それに対してジブリール家はヨーロッパだ」
「だからジブリールはティターンズに近付いたと」
「そういう一面もあるだろう。実は地球至上主義でありながらギレン=ザビにも共感している一面があるそうだしな」
「そこまで言われると何かティターンズそのものですな」
グローバルがそれを聞いて述べた。
「似ているという以上に」
「彼は生真面目なのだ」
これがミスマルのジブリールへの評価だった。
「生真面目で一つのことしか見えない。だから地球を愛するあまり」
「そうなったと」
「三輪長官もそうだろう」
「あの人はちょっと」
ミサトがそれを聞いて顔を顰めさせた。
「また別では」
「いや、大筋は変わらないだろう」
ミスマルは彼女にそう返した。
「彼も最初は正義感溢れる人物だったのだ」
「はあ」
「それがな。一連の戦争で変わってしまった」
「そうだったのですか」
皆それを聞いて少し意外そうでかつ残念な顔になった。
「今はああだが。かっては立派だったのだ」
「人は時として狂うのですね」
「そういうことだな。ジブリール副理事もまた」
「ただ、彼に共感する者達がティターンズに集まっているのは見過ごせませんな」
大文字がここで述べた。
「それによりティターンズは勢力を盛り返しております」
「そうだ、北極にいるティターンズに事実上手をこまねいている」
ミスマルもそれを認めた。
「何とかしたいがまずはその為には」
「北アフリカの確保を」
「そうだ、宜しく頼むぞ」
「わかりました」
こうして今後の戦略が決定した。北アフリカのザフト軍を討つ。ロンド=ベルは地球へ降下する準備に入ったのであった。
「なあ凱さん」
甲児が彼に声をかけていた。
「何だ?」
「あんたブルーコスモスの理事と知り合いなんだって?」
「ああ、一応な」
凱はそれに答えた。
「アメリカでちょっとな」
「ふうん、そうだったのか」
「そこでゾンダーが現われた時にな。知り合ったんだ」
「あの時はゾンダーに勝った後が大変だったのよ」
命が言った。
「大変って?」
「その後ね。タイヤ工場が壊れててアズラエルさんカンカンで」
さやかに応えて言う。
「凱とアズラエルさん大喧嘩したのよ」
「あれは仕方なかったんだ」
凱がそれに応えて言う。
「工場を取るか人を取るかだったからな」
「それで人は助かったってわけだな」
「そうさ。工場の中の人達を優先させたんだ」
「だったらいい話じゃねえか」
「ところがね、工場が全壊しちゃって」
命はさらに言った。
「ゴルディマーグが派手に砲撃して炎龍と雷龍も当たるを幸いだったから。それで」
「そのアズラエルさんが怒ったんだな」
「そういうこと。で、隊長の凱と」
「工場なんか幾らでも替わりがあるが人間はそうはいかないんだ」
凱は強い声で言った。
「それをやっただけだ。俺は間違ってはいない」
「まああの人はああした人だから」
ここで万丈が出て来た。
「万丈さん」
「彼は財界の中でも吝嗇で有名なんだ」
「吝嗇って何だわさ」
「ボス、ケチってことですよ」
「そうそう」
ヌケとムチャがボスに囁く。
「何だ、ケチンボなのね」
「まあ簡単に言うとそうなるね。彼はとにかく損失とかを嫌うんだ。極端な商業主義でね」
「へえ」
「それに前はかなり強硬に地球至上主義を唱えていたけれど。これは変わったね」
「またどうして」
「さあ。凱君と会ったせいかな」
「凱とか」
鉄也がそれを聞いて目を見張った。
「それってやっぱり喧嘩の後なのね」
ジュンが続いて万丈に問うた。
「そうだね。それから人間以外にもある程度の理解を身につけるようになった。まあここでも商業主義なんだけど」
「つまりは全部お金ってことね」
「何か嫌な奴っぽい」
「変人で悪人なのは事実だけどね。道理はわきまえているよ」
「はあ」
「あれで話はわかるんだ。凱と喧嘩した後でもね」
「しかしよく生身で凱と喧嘩する気になったな」
鉄也にとってはそれも恐るべきことであった。
「あの時大変だったのよ。このライオンロボがって」
「ライオンロボか、それはまた」
大介がそれを聞いて苦笑いを浮かべる。
「そんなことを言われても俺はどうってことはないんだがな」
そんなことで動じる凱ではない。
「ただな、人の命を軽く見るのは許せないんだ」
「実は彼はそれも意識しているよ」
「そうなのか?」
「企業のイメージダウンになるからね。そういうことさ」
「はあ」
「まあ彼の場合は使いようってことさ。連邦についているのもそちらの方が儲けになるしね」
「世の中悪人でも使いようがあるってことだよ」
「悪人にも種類があるってことさ。メガノイドみたいな連中は別だけれどね」
「ザフトはどうかな」
大介が当面の敵に言及してきた。
「彼等もかなり危険な思想を持っているが」
「まずは彼等の意見が全部そうなのか確かめないといけないな」
万丈は真剣な顔になった。
「全部が全部ああしたコーディネイター至上主義を考えているのなら問題だけれど」
「そうでないならば」
「理解出来る相手ならば努力しなければならない」
万丈は言った。
「それが人間としてのあるべき姿だと僕は思っているけれどね」
「で、そのアズラエルさんだけれど」
ひかるが凱に尋ねた。
「その後どうなったの?」
「とりあえず喧嘩は収まったけれどな」
凱はそれに答えた。
「それからも色々あって何度か喧嘩した」
「それでも向こうは何か妙に凱さんのことが気に入っちゃったらしくてGGGにも資金援助をしてくれたりしているの」
「へえ、何かいいじゃない」
マリアがそれを聞いて声をあげた。
「いいかどうかは別にしてそれで助かってるわ」
「俺達だけが戦ってるわけじゃないからな」
「何はともあれアズラエル財団はこっちにいるのね」
「そういうこと」
「じゃあ今はよしってところかしら」
「ただ、彼はコーディネイターは嫌いだからね」
万丈は釘を差すようにして言った。
「それは気をつけてね」
「了解」
「何かサイボーグや他の星の人がいるのに今更って気がするけれど」
「そういえば彼はそれはいいみたいだな。何かそこがわからないけれど」
人には矛盾がつきものだということだろうか。少なくともロンド=ベルの面々はアズラエルという男に対して認識を持ったのであった。
暫くして出撃の時が来た。アークエンジェルの中もモビルスーツ等のチェックにあたっていた。
「おい坊主」
マードックが格納庫の中でキラに声をかける。
「そっちのチェックが済んだら次は電装系だ、いいな」
「そちらはやっておきました」
「おっつ、気が利くな」
マードックはそれを聞いて頬を緩ませる。
「御前いいパイロットになれるぞ」
「そうなのか?」
「ええ、俺にはわかるんですよ」
ムウに応える。
「こいつは何か違いますよ。コーディネイターとかそういう問題じゃなくてね」
「へえ」
「上手くいったらどんどん凄くなりますよ。そう」
「俺みたいにか?」
「いえ、アムロ=レイ中佐みたいにね」
「おい、その人出すのは反則だぞ」
ムウは笑って抗議した。
「あの人に勝てるパイロットなんていやしないぞ」
「じゃあクワトロ=バジーナ大尉でどうですか?」
「一緒じゃねえか。あの人にも勝てはしないよ」
「まあ普通はそうですよね」
「あの坊主でもそれはやっぱり無理だろうな」
「コーディネイターでもですか」
「結局そんなもんだろ」
ムウは言った。4
「コーディネイターっていってもやっぱり元は人間さ。ニュータイプや強化人間と同じものさ」
「ですね。やっぱり」
「あえて言うとあれだろ。強化人間と同じだ」
「はい」
「差別化することもないけれどな。特別視することもない」
「普通のパイロットと考えろってことですね」
「エースにはなれるだろうがな。俺はそう考えてるぜ」
「了解。まあここの連中は皆そうみたいですけれどね」
「中には素手でモビルスーツ破壊する奴だっているしな」
「ははは、確かに」
そんな話をしていると一人の男がそこにやってきた。
「少しいいか?」
「ブ、ブライト大佐!」
突然の訪問者、しかもそれがラー=カイラムの艦長とあってはムウもマードックも驚かずにはいられなかった。慌てて敬礼をする。
「敬礼はいい」
だが彼はそれを下ろさせた。
「ラミアス艦長との打ち合わせの後に立ち寄っただけだからな」
「そうなんですか」
「ああ。それでだ」
ブライトは二人に対して言った。
「大尉、すまないが席を外してくれ」
「はあ」
「マードック曹長もだ」
「俺もですか」
「そうだ。頼めるか」
「では坊主・・・・・・じゃなくてヤマト少尉に用が?」
「そんなところだ」
「えっ」
格納庫の端にいたキラはそれを聞いて顔をブライトに向けた。
(ブライト大佐が僕に?)
「了解しました」
ムウはそれに頷いた。
「では失礼します」
「じゃあ俺も」
「うむ、済まないな」
二人は去った。そしてブライトとキラだけになった。
「キラ=ヤマト少尉」
「は、はい」
キラは緊張した様子で応える。
「こうして顔を合わせるのははじめてだな」
「え、ええ」
「緊張する必要はない」
ブライトはにこりと笑って緊張を隠せないキラに言った。
「ロンド=ベルは普通の軍隊とは少しわけが違うのでな」
「それ、わかるような気がします」
「そうか」
「はい、何となくですけどここは」
「そうだな。それでだ」
「はい」
「君の詳しい経歴及び戦歴を見せてもらった」
そう断ったうえで言う。
「あらためて驚かされるよ。民間人上がりの君がこのストライクで戦ってきたことに」
そう言いながらストライクを見やる。
「コーディネイターの力がこれ程のものとはな」
「それだけで生き残ってきたわけじゃありませんから」
キラは俯いて答えた。
「他の皆がいてくれなければ」
「皆がか」
「はい、サイ達やヒイロさんがいてくれて。そしてエイジさんが来てくれて」
「それもあるがな。だが凄いことに変わりはない」
彼はここではあえてアムロやニュータイプ達を出さなかった。そのうえで話を続ける。
「戦うことを拒否するか、ヤマト少尉」
ブライトは穏やかな調子で問うた。
「えっ?」
「正直に答えればいい。今なら君をまだ普通の生活に戻すことも出来る」
「僕は」
キラは返事に戸惑った。だがブライトはその返事を待っていた。
「わかりません」
それが今のキラの返事であった。
「このままザフトと戦うこととみんなを守るという気持ち。どちらが重要なことなのか」
「そうなのか」
「はい、今は」
「わかった。では君に紹介したい男がいる」
「それは誰ですか?」
「私の古い知り合いでな」
ブライトは言う。
「かって君と同じように戦いの中で自分の居場所を見失いかけた男がいる」
「えっ」
キラはそれだけで誰か勘付いた。
「そして彼は自身の力によって他者と区別・・・・・・時には差別されてきた。ニュータイプの名の下にな」
「それってもしかして」
それだけではっきりとわかった。誰のことなのか。そこにその彼がやって来た。
「君がキラ=ヤマト少尉か?」
「アムロ=レイ中佐」
そう、それはアムロだった。ロンド=ベル、いや連邦軍が誇る最強のエースにもそうした過去があったのだ。キラは今それを知ったのであった。
「来たのか、アムロ」
「ああ、何か御前が呼んでいるような気がしてな」
アムロはブライトに笑ってこう返した。
「そうか、相変わらず勘がいいな」
「ははは、それだけだからな俺は」
「それだけ」
その言葉が妙にキラの心に残った。
「それでだ」
「ああ」
ブライトはさらにアムロに話し掛ける。アムロもそれに応える。
「本日付けで彼もロンド=ベルに合流した」
「そうか」
「アムロ、後は任せるぞ」
「おいおい、こういう役はブライトの方が適任じゃないか?」
「修正が必要な程ひねてはいないようだ」
ブライトはアムロに言う。
「昔の御前と違ってな」
そしてここで笑った。心を通じ合わせる仲間同士の笑みであった。
「じゃあな」
「ああ」
ブライトは去る。そしてアムロとキラの二人だけとなった。
「全く」
アムロは最初苦笑いを浮かべた。
「ブライトの奴、古い話を」
キラ「あの」
「ああ済まないな。話に割り込んでしまって」
「いえ」
キラはそれは気にはしていなかった。だが気にかかることが一つあった。
「ブライト大佐は僕に何が言いたかったんでしょうか」
「今の君の立場が昔の俺と似ているということだろうな」
「戦記物で呼んだことがあります」
キラはアムロに言った。
「アムロ中佐も偶然ガンダムに乗ってニュータイプとしての力を発揮したと」
「望んでいたことじゃないけれどな」
「そうだったんですか」
「ああ、けれどな」
アムロはさらに言う。
「けれど俺の、いやホワイトベースの皆の力が当時の連邦軍で必要とされていたのは事実だ」
「ブライト艦長だけじゃなくカイさんやハヤトさん」
「そうさ。あいつ等も凄かったからな」
「それはわかります」
丁度原種やホラー軍団との戦いでそれを見た。だからこそ頷けるものがあった。
「そうか、それでだ」
「はい」
「今の軍にとって君の力は魅力的であると言える」
「そうなんですか。やっぱり」
それを聞いて諦めようとする。だがアムロはここで言った。
「だが君がいれば戦争に勝てるというわけじゃない」
「えっ!?」
驚いて顔を上げるキラにさらに言う。
「プラントとの戦いに限って言えば力は何の意味も持たないだろうしな」
「それじゃあ」
何の意味もないのではないのか、そう言おうとしたキラにアムロはさらに言った。
「けれど俺達は戦わなくちゃいけないんだ。何故だかわかるか?」
「守りたい人がいるから」
「そうだ。わかっていたのか」
「はい、何となくですけれど」
そしてシンのことを言う。
「ザフトのパイロットが僕に言ったんです。家族を守る為に戦うって」
「それも同じさ。守りたい人がいる」
「僕はサイやトールを、皆を守りたいです」
「その想いと力がある」
「想いと力・・・・・・」
「想いがなければ何もやりぬくことは出来ない」
アムロは言う。
「逆に強い想いがあれば自分の居場所を見失うこともない。だから」
続きをキラに言おうとする。しかしここでフレイが格納庫にやって来た。連邦軍の仮の軍服を着ていた。
「キラ、ここにいたのね」
「フレイ」
「もう、探したのよ」
フレイは少しきつい調子で言う。
「整備が終わったらこっちも手伝って」
「こっちって」
「避難民の人達の世話で大忙しなんだから」
「けどアムロ中佐が」
「俺の方は構わないさ」
アムロはにこりと笑って言った。
「続きは次の機会でもいいしな」
「そうなんですか」
「ああ、俺達は軍人だ。だから民間人をまず優先させてくれ」
「わかりました。では失礼します」
「ああ、またな」
キラはフレイに連れられてアークエンジェルの食堂まで来た。そこにはあの避難民達が集っていた。
「この人達がアークエンジェルで地球に降りる人達かなんだね」
「そうよ。皆ザフトにコロニーを壊されてオービットベースに避難してきたのよ」
「それでここに」
「ええ」
「お兄ちゃん」
「!?」
キラがその声に顔を向けるとそこにはエルがいた。
「君は確か」
「うん、御礼言いたくて」
「御礼って」
「お兄ちゃんはこの船の人なんだよね?」
「そうだけど」
エル「今まで守ってくれてありがとう」
「えっ・・・・・・」
「この子ね、ヘリオポリスに住んでいたのよ」
「うん、それは知ってるよ」
キラはフレイに答えた。
「私達がアステロイドに行っている間にも色々な手続きがあって。やっと地球に降りられるの」
「そうだったの」
「これ、あげる」
「これは花?」
エルが差し出したのは一輪の花だった。
「うん、あたしが折り紙で作ったの」
エルは言う。
「お兄ちゃんにあげるね」
「これを僕に」
「今まで守ってくれた御礼だから」
「そう・・・・・・」
「有り難う」
「じゃあね。これからシャトルに乗るから」
「うん、また」
エルはそのまま母親と共に食堂を後にした。フレイはその後姿を見送りながらキラに言う。
「あの子これから先に何が待っているか知らないから笑っていられるのね」
「これから・・・・・・」
「そうよ。地球に降り立って戦いから逃げられるわけじゃないのに」
「・・・・・・・・・」
キラはそれを黙って聞いている。答えることは出来なかった。
「それでもああやって懸命に生きて。でも私はあの子に何もしてあげられない」
「僕が戦うよ」
「キラ・・・・・・」
「フレイの想いの分も戦うから」
キラは言った。
「もう逃げない、決めたんだ」
「いいのね、それで」
「ああ、しょうがないよ」
その言葉にはまだ迷いがあった。それでもキラはそれを振り切るようにして言った。
「この戦争終わらせなきゃ僕達だってさ」
「そう、それなら」
フレイもそれを受けて言う。
「私も想いはあなたを守るわ」
「フレイ・・・・・・」
それは本心の言葉ではなかった。だがキラにはそれがわからない。フレイは今邪悪な女になろうとしていた。それに気付くのは今は誰もいなかった。
ロンド=ベルはアフリカへの降下に入った。その前にシャトルを発射させた。
「まずは彼等をな」
「はい」
ブライトはまず民間人を逃がしたのであった。6
「行く先は何処でしょうか」
「南アフリカだ。これで彼等も一安心だ」
「ですね。下手に日本とかだったら」
日本は相変わらず激戦地であったのだ。三輪がそこでとんでもない命令を連発して周辺を困惑させ続けていた。
「碌なことにならないからな」
「ええ」
「それでだ」
ブライトはトーレスとサエグサにあらためて言った。
「総員警戒態勢だ、こういう時に来るからな」
「ですね」
それにミサトが頷く。
「ある意味お約束ですから」
「レーダーに反応!」
サイが報告する。
「ネオ=ジオンにザフトです!」
「やはりな」
ブライトはそれを聞いても驚いてはいなかった。
「来るとは思っていたが」
「ネオ=ジオンはその数三百」
「ふむ」
「ザフトは例の戦艦二隻を中心とした部隊です」
「数ではネオ=ジオンか」
「ですがザフトは」
「ああ、わかっている」
ブライトはトーレスの言葉に頷いた。
「すぐにマシンを出撃させろ」
「はい」
「六分だ」
そのうえで言った。
「六分ですか」
「そうだ、それ以上の戦闘は降下地点に支障が出る。わかったな」
「はい」
「じゃあ六分を」
マシンが次々に出撃していく。その中にはキラもいた。
「彼も出撃したか」
ブライトはストライクの姿を認めて呟いた。
「さて、どうなるか」
「やれるか坊主」
ムウがキラに声をかける。
「相手はザフトだけじゃなくてネオ=ジオンもいるぞ」
「大丈夫です」
キラはそれに応えて言った。
「やれます!」
「そうか、ならいいがな」
(気負うなよキラ)
ムウはそれで納得したがアムロは別のものを見ていた。
(戦うのはお前独りだけじゃないんだ)
ネオ=ジオンはグレミーの部隊であった。そこにはラカンやアリアス、オウギュスト達がいた。
「彼等は何処に行くと思う?」
グレミーは赤いバウから隣のドーベンウルフに乗るラカンに問うた。アリアス、オウギュストはバウに乗っていた。ガザDやズサ、エンドラで構成された部隊であった。
「おそらくアフリカでしょう」
「そこか」
「はい、今アフリカではザフト軍が勢力を拡大しております。彼等を叩く為かと」
「ではそのまま行かせてもいいが」
「いえ、そうもいきますまい」
ラカンがそれに忠告をした。
「彼等をこのまま行かせてはそれはそれで今後の我々の行動に支障が出ます」
「言われてみればそうだな。では」
「はい、ここは攻撃を仕掛けるべきです」
「わかった、では全軍攻撃だ」
グレミーは指示を下した。
「ロンド=ベルに少しでもダメージを与える、いいな」
「隊長、ザフトはどうしますか」
オウギュストがグレミーに問うた。
「彼等も来ておりますが」
「構うことはない、彼等にも攻撃を加える」
グレミーはそう判断した。
「ザフトもどのみち敵だ。いいな」
「了解」
「わかりました」
アリアスもそれに頷く。こうしてネオ=ジオンは前に出て来た。
「ネオ=ジオンが動きはじめました」
「ロンド=ベルに向かっているのか」
「いえ、こちらにも向かって来ているようです」
タリアはクルーゼにそう報告をしていた。
「我々にもか」
「彼等にとっては我々もまた敵ですから」
「ふん」
「どうされますか、ここは」
「構うことはない、では両方共相手にする」
「では」
「総員戦闘用意」
クルーゼもまた指示を下した。
「ロンド=ベル及びネオ=ジオンに攻撃を仕掛ける。いいな」
「わかりました」
それを受けてザフトのモビルスーツが出撃する。当然ながらヴェサリウス、ミネルバの部隊も出撃していた。
「キラ・・・・・・」
アスランはイージスにいた。彼はキラのことを考えていた。
「どうしたアスラン」
そんな彼にオレンジのジンに乗る金髪の男が声をかけてきた。
「何かあるのか」
「あっ、いや」
アスランはそれに応えて彼に顔を向けた。
「何でもない」
「そうか、だといいがな」
彼はそれを聞いてまずは頷いた。この男の名をミゲル=アイマンという。緑服ながらザフトのエースとして知られモビルスーツ操縦には定評がある。
「それよりも今は」
「わかっている」
アスランはミゲルの言葉に頷く。
「目の前の敵を」
「そうだ、攻撃は五機のガンダムで頼むぞ」
イージス、デュエル、バスター、ブリッツ、そしてインパルスの五機のガンダムのことである。
「後ろは俺達が受け持つからな」
「ああ、頼むぞ」
「ミゲル、怪我はもういいのか?」
白いザクに乗るレイがオレンジのグフに声をかけていた。
「ああ、大丈夫だ」
その中にはハイネがいた。彼も戦線に復帰していたのだ。
「俺はよかったがな」
「シホはまだなのね」
それを聞いたルナマリアが言う。
「もう少し先だな、あいつは」
「そうか、思ったより傷が深いのだな」
「だが戦線には復帰出来るらしい。心配無用とのことだ」
「そのかわりに俺が来た」
ミゲルがここで言った。
「宜しく頼むぞ」
「ああ、こちらこそな」
ハイネがそれに応える。
「ザフトの黄昏の魔弾の力見せてもらうぞ」
「コーディネイターの力をな」
「ナチュラル共、今度こそ」
イザークは闘争心を露わにして前を見据えていた。
「一人残らず撃墜してやる、覚悟しろ」
「!?待って下さい」
だがここでニコルが声をあげた。
「どうしたんだ?」
「難民船が一隻地球に降下しています」
「このタイミングでかよ」
ディアッカはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「何か妙だな」
「隊長」
アスランはそれを受けてクルーゼに通信を入れた。
「どうします?停船させますか?」
「いや、それには及ばん」
クルーゼはそれに応えてこう言った。
「作戦行動中だ、構うな」
「はい」
「この期に及んで奇策もあるまい。それに民間人に手を出すと後々厄介だからな」
「わかりました。じゃあ」
「うむ、総員無視しろ。いいな」
「了解」
「フン、まあいい」
イザークは側を通り過ぎるシャトルを横目で見て言った。
「俺が相手にするのは武器を持った敵だけだ。民間人なぞどうでもいい」
彼は少なくとも民間人に銃を向けるような男ではなかった。むしろ軍律には極めて厳しい。だから策を警戒はしたが彼等を行かせたのであった。今のところは。
「両方共来たな」
ヘンケンはラーディッシュの艦橋で両軍の動きを見ていた。
「こちらは防戦でいくぞ、いいな」
「防戦ですか」
「そうだ、六分持てばいいだけだからな」
モニターから問うてきたナタルに答える。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「敵が射程内に入りました」
すぐに報告が入る。
「よし!」
ヘンケンはすぐに動いた。
「主砲、撃てーーーーーーーーーーっ!」
まずはラーディッシュの主砲がネオ=ジオンのモビルスーツ隊を撃った。それが戦闘開始の合図となった。三つの軍が地球を下にして戦いに入った。
「ストライクゥゥゥゥゥーーーーーーーッ!」
イザークがいきなり突出する。
「何処だ、何処にいる!」
「おいイザーク、あまり前に出過ぎるなよ!」
「五月蝿い!今は敵を倒すだけだ!」
ディアッカの言葉よりも敵を探す。その前にはシローがいた。
「こいつ!」
「どけっ、ナチュラル!」
シローに対して剣を振り下ろす。だがそれは受け止められてしまった。
「ぬぅあにいーーーーーーーーっ!」
「クッ、何て速さだ!」
シローはそれを受け止めてから言った。
「これがコーディネイターの捌きか!」
「どけっ!貴様に用はない!」
イザークはもう一撃放ってシローを退けようとする。だが彼もそうはいかない。
「やらせるか!」
彼もビームサーベルを振るう。それでイザークの相手をする。
「ナチュラルだってな、同じ人間なんだよ!」
「何だと!」
「人間なら大差ない!それを見せてやる!」
「ぬううううううーーーーーーーーーーっ!」
イザークとシローが斬り合う。その間ジュドー達はネオ=ジオンの主力と対していた。
「来るっ!」
プルは直感でそれを悟った。すぐにキュベレイを翻えさせる。
それでメガ粒子砲をかわした。直感でそれを避けていた。
「クッ、素早い!」
「いや、素早いのではない」
グレミーは後方で悔しがるエンドラ級の艦長に対して言った。
「事前にわかっているのだ」
「事前に。では」
「そうだ、こちらにはニュータイプが多く来ているな。感じる」
グレミーもまた彼等を感じていたのだ。
「こちらも強化人間部隊を前に出せ、いいな」
「はっ」
「ロンド=ベルのニュータイプは手強い者が揃っている」
彼はこれまでの戦闘でそれを嫌になる程わかっていた。
「ならばこちらも」
キュベレイの部隊が前に出る。ジュドー、プル達と彼等の戦いがはじまった。
それは数に勝る強化人間達をジュドー達が迎え撃つという形であった。見ればロンド=ベルの主力がネオ=ジオンに向かっていた。
「おいおい、こっちには精鋭部隊ってやつかよ!」
ジュドーはダブルゼータのコクピットで不満を口に出した。
「ったくよお、勘弁してくれよ。ン!?」
ビーチャはあることを感じた。
「ビーチャ、あんたもかい?」
「エル、あんたも?」
エルとルーもまたそれに気付いた。
「モンド、これって」
「わかってるよ」
そしてイーノとモンドも。彼等は感じていた。
「似てるな」
「似てるってもんじゃないわよ」
「そっくりそのままじゃない」
「けれどそれが何人もって」
「どういうことなんだ!?」
「プルツー、あたし達が向こうに一杯いるよ」
「ああ、そうだな」
プルとプルツーもまた。同じものを感じていた。
「こいつ等、只の強化人間じゃねえ」
ジュドーが呟いた。
「まさかとは思うけどよ」
「いや、多分それだ」
カミーユがジュドーに応えた。
「カミーユさん」
「プルとプルツーのクローンだ、これは」
「二人の」
「そうだ、ネオ=ジオンが開発したものだろう」
「そんな、じゃああたしが一杯いるっていうの!?」
「あたしも向こうに何人もいるのか」
「そういうことになる。前からそうした噂はあった」
「チッ、よりによってこんなところでかよ」
「何か自分と戦うのって」
「いい気分はしないわ。プルと戦った時のことを思い出しちまうよ」
「じゃあ下がる?」
ファが二人を気遣って問う。
「ここは私達が受け持つけれど」
「ううん、いい」
だがプルはそれに首を横に振った。
「やれるから」
「そうなの」
「どっちみちネオ=ジオンがあるなら何時か戦わなくちゃいけなかったんだ」
プルツーも言う。
「それなら」
「どっちみち撃墜されてもまず死ぬことはねえ。なら」
「やるよ、ジュドー!」
「あたしだって!」
二人が先頭に出て自分達に向かう。二人は幼いながらもう覚悟はできていた。だからこそ前に出ることが出来た。
「それじゃあ私達も!」
エマがフォローに続く。
「カミーユ、行くわよ!」
「エマさん」
「何かいつもはカミーユが先に出るのにね」
フォウはそんなエマを見て笑っていた。
「出番奪われちゃったわね」
「また何でだろ」
「リィナと声が似てるからじゃねえよな」
ジュドーが首を傾げて言う。
「あいつ等とリィナ仲がいいからな」
「ジュドー、それは関係ないわよ」
「あっ、そうでして」
当のエマから返事が返ってきてそれに応える。
「あの二人が頑張ってるんだから私もね」
「そういうことなら俺も」
「俺も行くか」
「カミーユさん、派手なの頼むぜ」
「わかってる。これで!」
メガランチャーを構える。それで敵を薙ぎ倒していく。
「あたれぇーーーーーーーーっ!」
「くらえーーーーーーーーーっ!」
ジュドーもまたハイメガキャノンを放つ。それで敵の軍勢に大穴が開く。
「凄いわね、何時見ても」
フォウがそんな二人の活躍を見て言う。
「その破壊力」
「けれどこれでも戦死したパイロットいないみたいよ」
ファがレーダーを確認しながら言う。
「やっぱり人間ってのは中々死なないのね」
「何かここじゃそうよね」
「ここって?」
「あっ、何でもないらしいわ。ただね」
「ふうん」
フォウの言葉は何か引っ掛かるものがあったが今は気にしないことにした。その間にも戦いは続く。
「クッ、感じるぜ」
ムウはメビウスで戦場を駆け巡りながら呟く。
「あいつの気配、ここでも」
「やはりいるか」
同じ頃クルーゼもまた呟いていた。
「我々はどうあっても戦う宿命のようだな」
「何時かあいつとは決着をつける時が来るかな」
「だが今はその時ではないか。楽しみにしておくことにしよう」
「あの、隊長」
クルーゼが何やら呟いているのを見てアデスが声をかけてきた。
「何か」
「あっ、いや」
クルーゼは彼に気付き彼に顔を向けた。
「何でもない。気にしないでくれ」
「左様ですか」
「ところで艦長」
「はい」
「今敵のストライクはどうなっているかな」
「はっ、只今インパルスとイージスが向かっています」
「そうか、あの二人がか」
「他の者も行かせますか?」
「いや、あの二人なら大丈夫だろう」
クルーゼはそれを退けた。
「ガンダムが二機だ。まず勝てはしないだろうしな」
「はい」
「それより他のガンダムのパイロットには敵がいる。彼等には彼等の任務を果たしてもらう」
「わかりました。では」
「うむ、そのようにな」
この時キラは二機のガンダムと戦っていた。一機はアスランのイージス、そしてもう一機はシンのインパルスであった。
「ストライク、今度こそ!」
シンは鬼の様な形相でキラに向かう。
「叩き落してやる!覚悟しろ!」
「シン、あまり前に出過ぎるな!」
アスランが感情を表に出すシンにそう言う。
「相手もコーディネイターだぞ!油断するな!」
「相手がコーディネイターだろうと関係あるか!」
だがシンはアスランの言葉を聞き入れない。
「俺にとってこいつは敵だ!それだけだ!」
「シン!」
「黙れよ、アスラン!」
シンはさらに叫ぶ。
「そんなに友達と戦いたくないのなら帰れ!そして一人でプラントに閉じ篭もってろ!」
「何だと!」
「こいつを倒さないと連邦軍はまたプラントに攻撃を仕掛けてくるんだぞ!そして俺達の家族が殺されるんだ!」
「俺達の家族が・・・・・・」
アスランの脳裏に血のバレンタインのことが思い出される。母を奪われたあの惨劇のことが。
「俺は二度とあんなことはさせない!だからこいつを!」
「クッ・・・・・・」
「だから死ねストライク!」
シンはビームサーベルでストライクを両断しようとする。
「俺の家族の為に!」
「僕だって!」
キラも敗れるわけにはいかない。そのビームサーベルを己のビームサーベルで受け止める。
「ここで死ぬわけにはいかない!」
「俺の受け売りか!」
「違う!皆の為だ!」
キラは言う。
「皆を守る為に僕は戦うんだ!だからここでやられるわけには!」
「黙れよ、そんな戯言!」
シンはまた攻撃を仕掛けてきた。
「御前等のせいで戦争になったんだ!それでよくそんなことが言えるな!」
「僕だって戦いたくなかったんだ!」
「キラ・・・・・・」
「けれど・・・・・・仕方ないだろう!」
キラの言葉に動きを止めるアスラン。だがシンはまだ攻撃を続ける。
「仕方ないだと!そのせいでどれだけの人が死んだんだ!」
遮二無二ビームサーベルを振り回してきた。
「その償い、させてもらう!」
「僕がやったんじゃない!」
「御前がやらなかったとしっても御前達がやった!」
シンの心の中に怒りが満ちていく。
「その怨み、貴様等に殺された人達の怨み、思い知れ!」
そしてアスランに声をかけた。
「アスラン!」
「あ、ああ!」
「フォローしろ!イージスだったらいける筈だ!」
「いいのか?」
「どんな攻撃でもかわしてみせる!だからいい!」
「わかった、それじゃあやるぞ!」
「アスラン!」
イージスはスキュラに変形した。そして巨大なビーム砲を放つ。
「キラ、恨むな!」
「クッ!」
「これで最後だストライク!」
シンはスキュラが来ても構わずストライクに攻撃を浴びせてくる。
「死ね!ナチュラルを守れなくて!」
「守れない・・・・・・」
その言葉にキラは何かを感じた。
「いや、僕は守る!」
その時彼の中で何かが変わった。
「僕は守ってみせる!その為にも!」
「ヌウッ!」
「ここで死ぬわけにはいかないんだ!」
「シン、よけろ!」
「わかってる!」
アスランの言葉に応えて後ろに下がる。それは一瞬のことであり彼でなくてはかわせない筈であった。だが。彼もまたかわしていたのであった。
「何っ!」
「何だとっ!」
シンもアスランも同時に驚きの声をあげていた。
「まさかスキュラをかわしたというのか」
「どういうことだ、俺の攻撃をかわすなんて」
「言った筈だよ、僕はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ!」
キラはまた言う。
「だから!生きてやる!」
「ほざけ!貴様がいるだけで俺達は!」
攻撃がかわされて闘志を弱めるシンではなかった。むしろそれは危険なレベルにまで高まっていた。
「家族を脅かされるんだ!マユの為に」
ビームライフルの照準を合わせる。
「死ねーーーーーーーーーーっ!」
「何のっ!」
「チッ、また!」
キラはシンの攻撃もかわした。戦いはそのまま時間を経過していっていた。
「五分か」
「はい」
未沙はグローバルの言葉に頷いた。
「もうそろそろです」
「敵の数は?」
「ネオ=ジオンは半分にまで減りました」
「そうか。そしてザフトは」
「あらかた退けましたが敵のガンダムはまだ健在です」
「敵のガンダムは五機だったな」
「はい」
「流石はコーディネイターといったところか。それかガンダムがいいのか」
グローバルは報告を聞いて呟く。
「どちらなのかな」
「艦長、そんな悠長なことを言っている場合では」
「どうしたのかね、クローディア君」
「そのうちの一機がアークエンジェルに向かっています」
「アークエンジェルに」
「はい、迎撃機が間に合いません」
「まずいな、そろそろ降下だというのに」
既に多くのマシンが艦に戻ろうとしていた。もうすぐ六分であった。見ればネオ=ジオンもザフトも徐々に退こうとしていた。
「降下して振り切るか」
「そうしますか」
「よし、アークエンジェルに伝えてくれ」
グローバルはすぐに決断を下した。
「迎撃はそこそこでいい、すぐに降下するようにとな」
「了解」
こうしてアークエンジェルに指示が伝えられる。それを受けたマリューとナタルがすぐに動いた。
「ヤマト少尉」
ナタルがキラに通信を入れた。
「はい」
「もう戻れ、時間だ」
「けど」
「目の前の敵は振り切れ、ストライクならいける筈だ」
「しかし」
シンの攻撃は熾烈さを増していく。それをかわすのさえ容易ではなかったのだ。
「一応ストライクは大気圏突入も可能だ」
「ですよね」
「だが今の状態では無茶だ、早く戻れ」
「無茶って」
「降下態勢が整っていない、このままでは死ぬぞ」
「死ぬ・・・・・・」
「そうだ、わかったらすぐに戻れ。いいな」
「副長、こっちも」
アークエンジェルはアークエンジェルで問題を抱えていた。バスターが近付いてきていたのである。
「かなり重くなってきやがったな」
ディアッカはそのバスターに乗っていた。その中で困った顔をしていたのである。
「しかし足つきまでもう少しだ」
彼はアークエンジェルを狙っていた。重力に苦労しながらも何とか狙いを定めようとする。
「これで・・・・・・!」
「おっと、そうはさせるか!」
「何っ!」
アークエンジェルに帰艦しようとするメビウスがそこにいた。咄嗟のことでバスターの動きが遅れた。
「うわっ!」
そこで攻撃を浴びた。有線式ガンバレルがバスターを襲う。
普段のディアッカならばそれを避けることができた。だが重力によりそれは適わなかったのであった。
「クッ!」
「アークエンジェル、敵機は退けた!」
ムウはバスターを退けたのを確認してから通信を入れる。
「今から帰投する!」
「有り難うございます、大尉ですが」
「どうした!?」
「ヤマト少尉がまだ」
「坊主、まだ戦っているのか」
だがもうムウは戻ることは出来なかった。大気圏でのこれ以上の戦闘はメビウスでは不可能であったのだ。止むを得なく帰艦した。その間もキラは戦っていた。
「アスラン!シン!」
ニコルがそのキラと戦うアスランとシンに通信を入れる。
「もう戻らないと!」
「わかった!シン!」
アスランはそれに頷き下がろうとする。その時シンにも声をかける。
「これ以上の戦闘は無意味だ!下がるぞ!」
「まだだ!」
だが頭に血が上ったシンはそれに従おうとしない。
「インパルスは大気圏でもやれる!この程度で!」
「しかし!」
「ストライク!ここで消してやる!」
派手にライフルを乱射する。キラは重力に苦しみながらもそれをかわす。
「こんなもので!」
「クッ、また俺の攻撃を!」
「シン、いい加減にしろ!」
「俺に命令するな!」
シンの目が真っ赤に光っているように見えた。
「俺はこいつを殺す!そう決めたんだ!」
「それは何時でもできる!」
「今だ!今やってやる!」
「まだそんなことを!」
「シン、本当に下がらないと!」
「地球で会う!それでいいだろう!」
「駄目だ、完全に頭に血が上っている」
こうなってはもうお手上げだった。アスランもニコルも諦めるしかなかった。
「隊長」
「わかってるわ、こうなっては仕方ありません」
タリアが二人に応えた。
「シン、、地球でね」
「ストライクーーーーーーーーーーーッ!」
もうタリアの言葉は耳に入っていなかった。タリアといえどお手上げだった。
「こんなに逆上するなんて」
「ふふふ、いいではないか」
しかしクルーゼはそんなシンを咎めるどころか庇うようにこう言った。
「彼らしいといえば彼らしい」
「ですが」
「ああでなくてはな。新たなガンダムのパイロットに相応しくない」
「あれのですか」
「そうだ、少なくとも一人は決まったな」
クルーゼは阿修羅の様にキラのストライクと戦うシンを見ながらほくそ笑んでいた。
「彼は。まずはデスティニーだ」
「デスティニーに」
「面白い話になるぞ、ザフトのエースとしてな」
「だといいのですが」
タリアはシンの戦う姿に何か恐怖さえ感じていた。そこには怒りと憎しみだけがあった。彼がそこに飲み込まれるのではないかと危惧を覚えたのであった。
最早戦いはキラとシンの戦いのみになっていた。だがそこにもう一機やって来た。
「あれは・・・・・・デュエル!」
「イザーク、手を出すな!」
「やかましい!それは俺の獲物だあっ!」
イザークはシンに言い返す。今度はデュエルが突進してきたのだ。
「ストライク!今度こそ!」
ビームサーベルを振りかざして襲い掛かる。だがキラはその動きを冷静に見ていた。
「これならっ!」
すっと前に出てまずは体当たりを浴びせる。そして蹴りを入れた。
「グハッ!」
コクピットにまでダメージが及んだ。イザークの全身が叩きつけられる。
「イザーク!」
「ウググググ・・・・・・」
イザークは無事だった。だが。
「痛い・・・・・・痛い・・・・・・痛いぃ!」
「どうしたんだ、一体!」
顔に傷を受けていた。それでイザークの動きが止まったのであった。
しかしそれは一瞬だった。すぐにイザークは激昂してキラを見据えた。
「ストライク、許さん!」
キラを撃とうとする。しかしその前に大気圏に降下しようとするシャトルが姿を現わした。
「なっ!」
それを見て攻撃を止めようとする。だがそれは間に合わない。デュエルのビームライフルが避難民達を乗せたライフルに向かう。もうキラにもそれは止められなかった。
「ああ・・・・・・」
これで終わったと思った。あの鶴をくれた少女も何もかも。しかし。そこに思わぬ助っ人が現われた。
「そんなビームなぞ」
「わし等の艦には!」
何とそこにいきなり妙なシルエットの戦艦が姿を現わした。そしてイザークのビームを受け止めたのであった。
「シャトルの側面に突如訳のわからない艦艇が現われました!」
ミリアリアが報告する。
「訳のわからないって」
マリューはその報告を聞いて眉を顰めさせていた。
「ミリィちゃん、もっといい報告が」
「けどあれ、本当に訳がわかりませんよ」
トールも言う。見れば何か得体の知れない戦艦がそこにいた。
「ガハハハハハハハハハハ!」
「真打ち登場よ!」
「この声ってまさか」
グランガランに入っていたカナンが言う。
「多分連中だな」
それにラッセが応える。
「何かいつも通り派手な登場だが」
ナンガも。
「だがどういう風の吹き回しなんだ?連中がこんなところで出て来るなんて」
「しかもあの戦艦、本当に変だよ」
勇もヒメも言った。そこには実に奇妙な艦艇がいたのであった。
「武器を持たぬ者の為に我が身を楯とする。その自己犠牲こそが」
そしてまたあの声が聴こえてきた。
「美しい・・・・・・」
「やっぱり」
「何かいきなり出て来たな、おい」
レミーとキリーがそれを見て呟いた。
「マドモアゼル=レミー、まずは再会の祝杯を」
「それはいいけれど一体どういう風の吹き回しよ」
「ドクーガはもうなくなった筈だろ」
真吾も彼等に突っ込みを入れてきた。
「それでまたどうしてこんなところに」
「ハハハ、あれから御主等の戦いを見ていてな」
「わし等もそれに助太刀したいと思ったのよ」
カットナルとケルナグールがそれぞれ言う。
「それで私達はアームドを買い入れ改造を施してここに来たのだ」
「かみさんのお小遣いを使ってな」
「名付けてブンドル=カットナル=ケルナグール艦よ!」
「センスって言葉知ってんのかね、あの変なおっさん」
「さあな、あっても普通の人とは全然違うものだろな」
「あれだけ怪しい格好してるからな」
ドラグナーの面々が言う。見ればその艦はブンドル艦とカットナル艦、ケルナグール艦を合せた非常に独特のシルエットをしていた。一度見たら忘れられないシルエットであった。
「まあ普通のセンスじゃ作れないものだな」
「同感」
「ある意味感心するな」
「こら、そこの三人!」
カットナルがドラグナーの三人に噛み付く。
「黙って聞いていれば好き勝手言ってくれるではないか!上院議員に向かって!」
「っておい、上院議員になったのかよ!」
「嘘だわさ!」
甲児とボスがそれを聞いて目を点にさせる。
「おい、嘘はよくないぞ」
「剣鉄也、御主まで!」
「まあ信じられぬとは思うが」
「これは本当のことだ」
「うわ・・・・・・」
「信じられないだわさ」
ケルナグールとブンドルの言葉を聞いて甲児とボスも唖然としながらも納得した。
「世も末だね、こりゃ」
「本当に地球駄目かもね」
「御主等も好き勝手言ってくれるのう」
カットナルは今度は真吾とレミーに言った。
「とにかく上院議員になったのは事実じゃ」
「それで何でこんなとこで遊んでるんだ?」
「だから遊んでいるのではない。助っ人に来たのだ」
「助っ人って」
勝平はあからさまに胡散臭いものを見る目であった。
「何か怪しいなあ」
「信じる信じないのは御主の勝手じゃ」
「わしはかみさんにわざわざ頼んでここまで来ているのじゃぞ」
「私は。己の美学に従って」
「確かに彼等からは悪しきオーラは感じません」
「シーラ様」
ショウはその言葉に耳を止めた。
「彼等は本心からここに来ています」
「じゃあ間違いないんだ」
恵子がそれを聞いて言う。
「はい」
「だから言っておるじゃろう」
「我等三人これからロンド=ベルの末席に加えさせてもらおう」
「美しき戦いへ・・・・・・。今誘われん」
「まあ何はともあれ避難民のシャトルは助かったな」
「え、ええまあ」
ムウの言葉にマリューが頷く。
「もう南アフリカに降下しているわね」
「何か釈然としませんが」
ナタルはまだ三人に首を傾げていたがそれでも彼等が抜けるわけではなかった。
「まあそんなこと言ってもな。ところで」
「ところで?」
「坊主何処行ったんだ?帰艦してねえだろ」
「あっ」
それを聞いてマリューとナタルが顔を見合わせた。
「いけない、忘れてた」
「おいおい、やばいぜそれってよ」
「案ずることはない」
ブンドルがモニターに薔薇を掲げて出て来た。
「誰、この変な人」
「ミリィ、それ言い過ぎだよ」
サイがブンドルを見てまずこう言ったミリアリアを窘める。
「彼は必ず帰って来る」
「あの、帰って来ると言いましても」
ナタルが困った顔でそれに返答する。
「今現実に落ちているのですが」
「大丈夫だ、あのガンダムは大気圏突入が可能なのだろう?」
「ええ、まあ」
「必ず会える。我々はこのまま地上に向かえばいいのだ」
「そうだ!あの坊主とてそうは簡単に死なん!」
「わし等だってあの程度はな!」
カットナルとケルナグールも言う。
「どうということはないわ!」
「だから安心するがいい!」
「そんな怪しい格好と青い肌で言われても」
「説得力全然ないよね」
カズイとトールがそれを聞いて呟く。
「話には聞いていたがまた濃い顔触れだな」
「そうだな。何かジオンにあの声の連中いたように思うんだがな」
リュウとスレッガーがその怪しい三人組を見て言う。
「実際キラとは連絡がとれないです」
ハヤトが報告する。
「生きていればいいのですが」
「わしなら平気だが。かみさんの為なら火の中水の中よ」
「あんたはまた特別でしょ」
レミーがケルナグールに言う。
「そんだけ頑丈な身体してたら」
「それにかみさんへの愛があるしな」
「っていうか結婚してるのかよ、あの旦那」
「どうやらそうらしいな」
サンダースがカイに応える。
「信じられねえな、何か」
「だがはったりではなさそうだ」
「はい、彼は嘘は言っていません」
ノリスが二人に言う。
「美人の奥方がおられます。これは本当です」
「・・・・・・まあ世の中色々あるからな」
「間違いもあるだろう」
えらい言われようのケルナグールであった。だがそんなことを気にするタイプでもない。
「だから安心するのだ!」
「怪我にはわしの製薬があるぞ!」
「単身地球に舞い降りるその勇姿。それこそが」
「まさか」
「・・・・・・美しい」
「やっぱり」
予想していたとはいえそれはマリューを呆れさせるには充分であった。ミサトと同じ顔になった。
「とりあえずアフリカに降下しましょう。この人達が言うにはキラは生きているそうだし」
「何が根拠なのか全然わかりませんがそうですね」
ナタルもそれに頷く。
「じゃあまずはナデシコからいっちゃいま~~~~~す!」
「ナデシコ降下準備完了」
「じゃあいっちゃって下さい」
「了解」
ユリカとルリがやり取りをする。その中でナデシコがまず地球に向かった。
その横にはストライクがある。地球に背を向けて降下していた。
そしてその他にも。三機のガンダムが降りていた。
「ストライクゥゥゥゥーーーーーーーーーーッ!」
シンがインパルスのコクピットの中で叫んでいた。
「地球だ!地球で今度こそ御前を!」
そして後の二機もまた。地球に降りていた。
「隊長」
「致し方あるまい」
もうクルーゼにもどうしようもなかった。
「イザークとディアッカはもう間に合わん。地球で頑張ってもらう」
「はい」
ガデスはそれに頷いた。今ロンド=ベルもザフトも地球に舞い降りていた。その下の砂漠では。虎が彼らを待ち受けていたのであった。
第百十話完
2006・8・21
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