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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第一章 無印編
  第四話        『シホの転校初日』

 
前書き
今回から本編第一話の部分に入ります。それと最後らへんに一人オリキャラが登場します。 

 



Side 高町なのは



今日からシホちゃんが私達の学校に一緒に通うことになりました。
それで昨晩はあまり寝れなかったけど今朝はとても早起きができました。
…なにかよく分からない夢を見たけど、よく思い出せないからたいした事じゃないのかな…?
それよりシホちゃんは起きてるかな? と思い一回ノックをした後に返事がなかったので、一言「シホちゃん、入るね?」と言って中に入りました。
でも、シホちゃんは既に起きていたらしく布団は畳まれていました。
お母さんがベッドを買ってあげるわ、と提案してたけど、どうしてかシホちゃんはお布団の方がいいらしくて結局お布団を購入したそうです。
後、部屋を見回してみたけど最初の頃は殺風景だったんだけど、今では勉強机やなにに使うのかわからないけど棚に綺麗な宝石がいくつか並んでいた。
その中でも一番目立つのがなにか銀の宝石が棒状になっていて剣の柄がついている見ているだけでも不思議な形を取っている宝石(?)…。
シホちゃんはこれが一番大切なものだと言っていた。
…そういえば、シホちゃんってこれ以外にも首飾りにいつも赤いルビーの宝石のペンダントをかけているっけ?
なんでも大切な友達から貰ったお守りだそうなの…。
シホちゃんは「今はもう会えないけどね」と言っていたけど、その時は嬉しい顔をしていたので多分心配はないと私は感じた。
そしてなによりライオンのお人形が部屋の片隅に置いてあるのがなんとなくシホちゃんらしいなぁ…って思った。
…とっとと、そうだ。シホちゃんの部屋を観察しに来たんじゃなくてどこにいるのか探さなくちゃ。
でも、大体目星はついているんだけどね。
シホちゃんは大人しそうに見えて意外に武芸に長けている。
それでよくお兄ちゃん達と朝の稽古をしている事は知っていた。
だからすぐに道場に向かった。
それで道場の玄関をあけて中に入ろうとしたけど…。
中がとても静かでどうしたんだろう?と思ってそっと扉を開けて覗いてみた。
そしたら道場の中では審判をしているらしいお姉ちゃんが見守る中、お兄ちゃんとシホちゃんがお互いに二本の竹刀を持って向き合っていました。

「…それでは、稽古の最後にお手合わせお願いします。恭也さん?」
「いいだろう。毎回引き分けだったから俺もそろそろ勝ち星をもらいたいところだからな」

知らずのうちに私も手に汗を掻いているのを自覚しながらもシホちゃん達の事を見守っていた。
そして緊張が渦巻く中でお姉ちゃんの「始め!」という言葉に先に動いたのはお兄ちゃん。
シホちゃんはお兄ちゃんの振り下ろしからの攻撃を片方の竹刀で受け止め、でもあえて反撃はせずにもう片方から迫ってくる竹刀をまた受け止めた。
そして今度はシホちゃんがカウンターとして一本でお兄ちゃんの両方の竹刀をまとめながらもう片方で打ち込む。
その攻防はとてもすごいものだった。
…私にはたったそれだけだったのにまるでほんの一瞬の出来事のように思えた。
それから少ししてシホちゃんの態勢が崩れてきたように見えて、お兄ちゃんはそこに付け入り打ち込んできて…。
それでお仕舞いかなと思った矢先、シホちゃんはなんなくそれを受け止めて反撃をした。

「やはり、いつもながらシホちゃんは隙の作り方がうまいな。俺の攻撃の先の先をも計算して自然に誘導して限定して打ち込ませられる手際は頭では分かっていても止める事が出来ない」
「ですが攻撃を一度も当てさせてくれない恭也さんの技量も凄いものだと思います。ずいぶん昔から鍛錬を続けてきた証ですね。ハッ!」
「それはシホちゃんにも言える事だよ! ヤッ!」

お兄ちゃんとシホちゃんはまるでダンスでも踊っているかのようにお互いの竹刀をぶつけあっている。
しかしそこでお姉ちゃんの「はい、そこまで!」というタイムアップの言葉で二人は竹刀を納めてお互いに挨拶をして今日の稽古は終了した。
そこでようやくみんなは私に気づいたらしく、

「なのは、おはよう」
「ああ。なのは、おはよー」
「おはよう、なのは。今日は早かったのね」

三者三様で朝の挨拶をしてきてくれたので私も「おはよー」と言ってタオルを用意しておいたので三人に渡した。
先をお兄ちゃんとお姉ちゃんが歩いていく中、私はシホちゃんと一緒に話をしていた。

「シホちゃん、すごいね。お兄ちゃんってかなり強いのに互角に打ち合えているなんて」
「そんな事はないわ。恭也さんはあれでも手加減していてくれるのよ? 本気を出されたら私も手を出し尽くさなきゃ勝てないと思うし…」

最近シホちゃんはお兄ちゃんの事を「あの人はきっと人以上の存在ね…」と呟いている節があるけど、本当にそうかもしれないと私も思いはじめてきた。
それはともかく、シホちゃんもお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るそうだからきっとお母さんとお父さんはリビングで待っているので制服に着替えてからその旨をお母さん達に伝えた。

(※ もうシホは美由希と一緒にお風呂に入ることは日課になってしまっているので動じていない。
   女性としての意識・喋り・仕草などは既にイリヤに近いものがある。
   シホ自身も“男性体である衛宮士郎”としての自分は既に過ぎ去りし前世のようなものとして、
   今はもう“女性体であるシホ・E・シュバインオーグ”が現在の自分を形成する一つの要因として割り切っている。
   自身はもう男性ではなく女性であるという自己暗示も完璧に施した。
   だがまだ根本的に衛宮士郎としての男性のプライドは残っているらしく、入浴時に美由希の体はあまり見ないようにしている。
   たまに桃子も乱入してくるので尚更である。
   そして見るのも恥ずかしいが、同時に見られるのにも抵抗があるらしくお風呂に浸かる以外はタオルを巻いているのが基本であったりする。
   シホ自身は気づいていないが美由希視点では、いつもお風呂入浴時には普段の凛々しい態度はなりを潜めて顔を赤くし小声にもなっている。
   よってシホの普段見せない可愛らしい反応を見るのは美由希にとって唯一の楽しみというのは公然の秘密となっている。)



◆◇―――――――――◇◆



Side シホ・E・シュバインオーグ



今日は転入初日だということで、なのは達はバスで先に学校に向かっていった。
その際、見送りをしたんだけど…なんていうか、なのは、アリサ、すずか以外の生徒は私が聖祥の制服を来ている事に気になったのか質問が殺到していた。
バス内から「にゃああああー!!?」と、なんとも間抜けな悲鳴が聞こえてきたのは聞かなかったことにしようと思う。
それでまた桃子さんの車に乗って聖祥まで送ってもらった。
送ってもらって桃子さんが帰り際に、

「それじゃシホちゃん、頑張ってきてね。学校に通った事がないっていうシホちゃんは分からないかもしれないけど、学校ってとっても楽しいところなんだから。
だから無理に緊張しないで自然に慣れて行けばいいのよ?
なにかあったらすぐになのはに相談するのよ。きっと助けになってくれるから…」

桃子さんのその心遣いが嬉しいと同時に、やっぱり嘘の内容は結構心に響くなと思い、でも感謝の気持ちを込めて、

「はい。頑張ってきます」



◆◇―――――――――◇◆



シホはその後、待っていたらしい先生に職員室に案内され、校舎内を案内されながらも目的の教室の前までやってきた。

「それじゃ呼ばれるまでここで待っていてね。高町さん達も同じクラスだから安心していいわよ」
「はい、ありがとうございます」

それだけ伝えて先生は教室に入っていった。
実質シホ――士郎――は一度冬木の大火災で通う学校を無くした身なので転校というのは初めてではないのだが、だが少しばかり緊張してしまうのはやはりしかたがないことである。
昔の事を思い出して心を落ち着かせている間に教室内から、

「それではシュバインオーグさん。入ってきてください」
「はい」

シホが教室に入ってきた瞬間、さっきまで多少騒がしかった生徒達は一斉に静かになった。
それは当然かもしれない。
顔立ちは明らかに日系ではないし、肌もイリヤ譲りでとても白く、髪に関しては日の当たり具合で銀にも朱色にも輝き煌めく緋色。
そして腰まで伸ばされているロングヘアーで、名前からしても如何にもどこかのお嬢様といった雰囲気がある。
このクラスには同じような容姿のアリサ・バニングスもいるがそれとはまた違った印象を抱かせる。
さらに琥珀色の瞳がより一層神秘的なものを体現している。

「私の名前はシホ・E・シュバインオーグといいます。皆さん、これからよろしくお願いします」

なにより自己紹介をした後にシホはできるだけ笑顔を浮かべたが…それがまずかったのかクラス中の男女問わず虜にしてしまっていた。
初めての生徒達もそうだが、その笑顔をもう既に何度も見ているなのは達でさえ顔を赤らめていたのが印象的だ。
だがやはり、本質は衛宮士郎…某直死の死神ほどではないが、いくども鈍感と言われてきたために今回もその事に気づかず首を傾げて「?」の顔をしていた。
その表情にさらに撃沈した生徒多数。


(…ステータスに女性殺しの笑みに加え、男性殺しの笑みが追加更新されました。)


………なにか変な囁きが聞こえてきたがシホは寒気がしたので聞こえなかったことにした。
そして一時の静寂…だがそれは先生の「シュバインオーグさんも困っていますから…」という一言に一同は正気を取り戻し、仕切りなおしとも言うが、みんなして「よろしくー!」と歓迎されてシホは頬を緩ませた。

その後、HRも終わり休み時間になってやはりというべきか色々質問されていた。

「ここに来る前に住んでいたところはどこなの?」
「ドイツよ」
「この髪って地毛なの?」
「ええ。だから目立って仕方がなかったわ」
「趣味はなにかあるの?」
「うーん、そうね?…武道に家事、後は物の修理とかかな」

シホは律儀に受け応えをしていったが止まることのない質問の嵐にさすがに参ってきていた。

「ほらほら! みんな、シュバインオーグさんも質問続けで疲れているみたいだからここらで一旦止めておきましょう」

そこにアリサがシホに助け舟を出してくれた。
シホは助かった…とほっと息をついて、

「アリサ、ありがとう…」
「いいわよシホ、このくらい。あたし達の仲じゃない?」
「…バニングスさんってシュバインオーグさんと知り合いだったの?」
「ええ。っていってもつい最近知り合ったばかりなんだけどね」
「にゃはは。シホちゃんは今はちょっとした事情でウチの家族なんだよ」

アリサに続いてなのはもそう言ったが、その瞬間クラス中が騒ぎ出した。
それで結局昼休みまでその話題が持ちきりとなりシホ、なのは、アリサ、すずかの四人は早々に屋上に避難した。


「シホちゃんも当分は大変そうだね」
「そうね。シホったら猫被りする性格じゃないからきっとモテルわね」
「うん。私もシホちゃんはとっても綺麗だと思うし」

すずかは本当に心配そうに、アリサはいいライバル感覚的に、なのはは素直な言葉をそれぞれシホに言った。
だがとうのシホは少し悩む仕草をして、

「うーん…でもやっぱり私としてはあまり目立ちたくなかったのよね…」
「諦めなさい。人当たりのいいシホが嫌われることなんてないと思うし…。
それより、今日の授業で将来の夢って言うものがあったじゃない? シホって将来はなにになろうと思っているのよ?」
「将来の夢、ね…。今は特に決まっていないわ。それに私の過去は色々とごたごただからまだゆっくりと考えていこうと思っている。
でも…しいていうなら、また人助けの仕事につきたいかな?
ほら、私って物心ついた時から今は亡くなった育ての父親の手伝いをしていたって話をしたでしょ?
でも昔の私は向こう見ずで前に進むことだけしか考えてなくて、それに他人のことばかりを優先して自身の事はほとんど蔑ろにしていた。
それでよく周りの皆に迷惑をかけてばっかだった。
そしてそれを本当の意味で気づかされた時には後悔ばかり…。
それでここ海鳴に来る前に、今はもう会えるか分からない私の保護者みたいな人達に『人助けもいいけどまずは自分の幸せも考えなさい』と言われたのよ。
だから今は自身にとっての幸せとはなにか?
…っていうのを明確にしたいってところね。
………ごめんね、なんか辛気臭い話になっちゃって…」

シホは先ほどまでの雰囲気を笑顔で振り払ってみたけど、どうやら三人にはとても重要な話に聞こえたらしく、なのはとすずかには優しく抱きつかれ、アリサも目に涙を溜めながら、

「そっか。それじゃせっかく友達になったんだしあたし達もシホの“幸せ”って奴を探してあげようじゃないの」

といって手を差し出してきたので、シホも嬉しくなって、「ありがとう、アリサ」といって握手をした。
なのはとすずかも便乗して握手をしてくれたのでシホは、それはとても極上の笑顔をした為に、なのは達以外にも屋上で食事を取っていた生徒達がちらちらとこちらを伺っていたのは、まぁ些細なことである。

…ちなみにこの聖祥にはなのは達のファンクラブが密かに存在しているらしいが、シホのファンクラブもたった一日で立ち上がったことをシホはもちろん、なのは達も知らなかった。
そしてシホはもうほぼ完全に女性として振舞いだしていた。

その後、今度はアリサはなのはの将来のことを聞いたが「自分には特に取り得もない」という発言に小さい喧嘩(一方的?)が起きたが些細なことなので割愛する。




午後の授業もとどこおりなく消化してその帰り道、アリサの提案で一同は裏道を通って帰ろうと言うことになった。
しかし…シホはこの裏道にはなにかあると直感した。

(この感じは…魔力の気配? でも、どこか弱々しい…)

シホはこの体になったことで魔力探知も敏感になっていたのですぐに気づいた。
でも手がかりがつかめない以上、下手に行動してもいい事はないので静観することにした。
そしてなのはも魔力を持っているためになにかを感じ取ったのか立ち止まった。

《…助けて…》
《私達を…》
「!?(頭に直接の語りかけ! 思念通話!?)」

シホがそう判断した時には、なのはにも聞こえてしまっていた為に先に走り出してしまっていた。

「なのは!?」
「なのはちゃん!?」

アリサとすずかの呼び止めの声にも反応せずになのははどこかへと走り去っていった。

(くっ! まさかなのはも持ち前の勘で気づいてしまったの!?)

焦りを浮かべながらシホは魔術回路を密かに開き、そして魔術師としての顔を表に出してなのはの後を追った。
後ろからアリサの「はやっ!? ちょ、シホも!?」という声が聞こえたが今は無視。
もし、この何者か達の声が囮か何かなのだとしたらなのはの身に危険が迫るかもしれない。
いざという時には投影で撃退した後、三人には悪いがこの場の記憶を消させてもらう事をシホは最悪の場合考えていた。
しかし、なのはが立ち止まった場所には確かに魔力の痕跡は残っているが、そこには二匹のフェレットが傷だらけで横たわっていた。

(魔力を持っている動物…? 使い魔かなにかの類?)

シホはその二匹のフェレットに念話で話しかけようとしたが、なにもわかっていない三人によって遮られてしまい二匹も力尽きたのか気絶してしまった。
とりあえずなのは達は動物病院に連れて行くことにしたが、シホはなにか良くないことが起きる前兆かもしれないと…そう感じた。


 
 

 
後書き
どうでしたでしょうか? オリキャラの性格については色々と考えています。 
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