対決!!天本博士対クラウン
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第二百十二話
第二百十二話 シャンパンかビールか
博士にシャンパンを勧められた小田切君。しかしであった。
「嬉しいですけれど」
「嬉しければ飲むといい」
「いえ、それでもですね」
小田切君は言葉をくぐもったものにさせていた。声がくぐもったものになるのにはそれなりの理由がある。それが何かというと。
「僕今ビール飲んでいますし」
「ビールか」
「ええ。これがありますから」
それを飲まないといけないというのである。小田切君はビールを全部飲まないといけないと思っているのであった。
「飲み残しはやっぱりよくないですから」
「そうじゃな。それではビールを飲むのじゃな」
「いえ、ですが」
それでもという小田切君だった。
「シャンパンも飲みたいですし。どうしたものですかね」
「ではまずビールを飲むことじゃ」
簡単だと言わんばかりの博士の返答だった。
「ビールを全部な」
「全部ですか」
「それからシャンパンを飲めばいいじゃろう」
こう勧めるのであった。
「ビールを全部飲んでからのう」
「そうですか。それからビールをですか」
「どっちにしろ空けているのはまだ缶一本ではないか」
「ええ」
まだ飲みはじめである。だから最初の一本目であったのだ。
「では充分飲めるぞ」
「僕二本はいけますけれどね、ワインなら」
「では問題ない」
博士は太鼓判すら押すのであった。
「さっとそれを飲んでのう」
「ええ」
「シャンパンじゃ。楽しくやろうぞ」
「わかりました。しかしシャンパンに枝豆っていうのも」
「いい組み合わせじゃろう」
博士は笑っていた。この博士が笑うとどんな笑みでも邪悪なものになってしまうのだが。それでも笑っていることは確かであった。
「これも」
「合わないような気もしないではないですけれどね。けれど何か」
もうビールは飲み干してシャンパンを飲みはじめている小田切君だった。彼も何だかんだといってその酒への動きはかなり速いものがある。
「この組み合わせも悪くないですね」
「では今日は心ゆくまで酒じゃな」
「そうですね。ライゾウにタロも入れてですか」
「当然じゃ。ちゃんと飲めるように改造してある」
まさに何時の間にか、であった。
「あの連中も呼んでのう」
「楽しくですね」
「そうすればまた新たな発明のインスピレーションも湧く」
「いえ、それはいいですから」
このことについてはすぐに突っ込みを入れて止める小田切君だった。何はともあれシャンパンと枝豆の宴は今はじまったばかりであった。
第二百十二話 完
2009・8・17
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