対決!!天本博士対クラウン
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第百八十七話
第百八十七話 風なら
最後の一人が誰なのか、もう言うまでもなかった。
「さて、春奈ちゃんだけれどね」
「ええ」
その春奈だけなのであった。
「何処かしら」
「そうね。大体何処にいるのかは見当がついたけれど」
華奈子に美奈子が答える。やはりその手には笛がある。
「ちゃんとね。ここにね」
「あっ、もうわかったの」
「ええ。おおよそね」
おおよそであるがわかったというのである。
「わかったわ。この広いプールを出てね」
「ええ」
まだ皆のボートは美樹がいたその広い池の様なプールにいるのであった。そこにおいてこれから何処に行くのかを考えているところだったのだ。
「それでそのまままた川を進んでいって」
「それで?」
「滝があるわ」
今度は滝なのだった。
「そこにいるみたいよ」
「そう。そこになのね」
「そういうこと」
華奈子だけでなく皆にも話す美奈子であった。
「先に滝があるけれど」
「そこにいるのはわかったけれど」
赤音は漕ぎながら美奈子の言葉に述べた。
「滝じゃあボートは無理よね」
「そうね」
リーダーの梨花もそのことについて考えて難しい顔になるのだった。
「ボートじゃね。どうしようもないわ」
「どうしようかしら」
華奈子にもいい考えは思い浮かばなかった。
「ここは一体どうやって」
「ああ、それならよ」
しかしここで美樹が言うのだった。明るい声で。
「私にいい考えがあるわ」
「いい考えって?」
「そうよ。風よ」
彼女は言うのだった。
「風を使えばいいのよ」
「風?」
「そう、風よ」
また言う美樹だった。
「それを使えば例え滝でもボートはね」
「どうするのよ、美樹ちゃん」
華奈子はそれを聞いても全くわからなかった。
「風を使うって言われても何が何だか」
「そこは任せておいて」
美樹の顔はいぶかしみそれで眉も顰めさせている華奈子とは全くの正反対に明るいものであった。
「ちゃんとね。できるから」
「できるの?」
「要は落下傘よ」
こう言うのである。
「それでいくからね」
「何かよくわからないけれどここは任せたわ」
腹を括っただけでなく美樹も信じているからこその言葉であった。こうして華奈子だけでなく皆も美樹の言葉を信じてその滝にボートのまま進むのだった。
第百八十七話 完
2009・4・27
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