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対決!!天本博士対クラウン

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第百七十一話


第百七十一話  泳いだ後は
 流水プールで泳いだ華奈子と美奈子。驚いていたのは美奈子だった。
「本当に二キロ泳げるなんて」
「なんては何よ、何ては」
 しかし華奈子は美奈子の今の言葉に突っ込みを入れた。
「こんなの当たり前じゃない」
「二キロ泳ぐのが当たり前なの?」
「だって流水プールよ」
 華奈子が最初に言うのはこのことだった。
「水が流れるからかなり泳ぎ易いじゃない」
「それはそうだけれど」
「もっとも流れに逆らったら辛いけれどね」
 このことは華奈子もよくわかっていた。少し考えればすぐにわかる理屈である。
「けれど流れに従ってたし」
「それは私もわかってるけれど」
「しかも浮き輪もあるじゃない」
 華奈子が次に言ったのはこのことだった。
「浮き輪も。楽だったでしょ」
「ええ、まあ」
 楽でない筈がない。何しろ浮き輪は泳げない人が浮かぶ為にあるのだから。まさに美奈子の為にあるようなものである。とりあえず今は。
「そうだけれど」
「それで二キロ泳げるのは当たり前よ」
 華奈子はまた美奈子に対して言った。
「それだったらね」
「そういうものなの」
「美奈子は運動神経なさ過ぎよ」
 ここで少しだけうんざりとしたような顔になったのだった。
「全く。泳げないっていっても」
「仕方ないじゃない。泳げないのは」
「まあダンスだけはいけてるけれどね」
 これは音感も大きく関係する。だから音感のある彼女がダンスが上手くてもそれは不思議ではないのだ。実際華奈子もダンスはかなり上手い。
「だからバンドでは困ってないけれど」
「有り難う」
「けれど泳ぐもね」
 褒めてもまだ言うことは言う華奈子だった。
「ちゃんとしないと。せめて浮き輪なしでね」
「だからそれは無理よ」
「なせばなる」
 華奈子は古典にさえなっている言葉を口にしだした。
「なさねばならぬ何事もよ」
「つまり努力しろってことね」
「あたしだって一応勉強してるし」
「そうね」
 双子だからそれはわかるのだった。実際華奈子は華奈子なりに学校の勉強も努力はしている。しかしそちらはどうにもあまり上がらないのである。
「だから美奈子もね」
「やれってことね」
「泳ぐの。とにかく」
 華奈子はとにかく双子の相方を泳がせようとする。美奈子はオフでも疲れることをする破目になっていた。彼女にとっては不幸なことに。


第百七十一話   完


                  2009・2・23 
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