対決!!天本博士対クラウン
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第百六十二話
第百六十二話 戦後間も無くは
そして戦争が終わってから。博士は何をしていたかというと。
「まず食べ物がなかった」
「そうらしいね」
「その時のことは知らないけれど」
二匹の生まれる遥か前の話である。
「食べるものじゃが」
ここでまたとんでもないことをしたことは二匹にもわかった。
「で、どうしたんだよ」
「今度は」
「作った」
「作ったんだ」
「ふうん」
「空気からのう」
いきなりオーパーツ並の技術を展開したのである。
「それでパエリアにワインを楽しんでのう」
「第二次世界大戦直後にパエリア!?」
「よくそんなのあったね」
「スペインには建国当時、いやハンニバルが子供の頃にカルタゴノヴァにおった頃からの馴染みの場所じゃ。よくローマ帝国のレギオンを怪獣に貪り喰わせてやったわ」
またこんなことを言う。やはり何千年も生きているようである。
「他にもそいじょそこいらで暴れておった不貞の輩をのう」
博士の暴虐は終戦直後においても健在であった。
「殺人ロボットの餌食にしてやったりしてやったわ」
「殺人ロボットって?」
「何かやたら物騒な名前のロボットだけれど」
そもそも殺人という言葉がついていること自体が異常である。普通は間違ってもこんな名前はつけない。その辺りは流石に博士だった。
「それってどんなんだよ」
「どうやって人を殺すの?」
「まずはいきなり捕まえ」
まずはこれであった。
「おもむろに鋸で切り刻んでのう」
「鋸で」
「切り刻むって」
「それもゆっくりとやるのじゃよ」
やはりこんな代物であった。
「他にも毒薬で苦しませ抜いて殺したり穴だらけにしてのう」
「惨殺するんだな、やっぱり」
「そんなことだろうと思ったけれど」
ライゾウにしろタロにしろ予想していたことなのでこれには驚かなかった。ただやはり終戦直後にそうしたロボットを作るのは凄かった。
「しかし。それにしても」
「で、何人殺したの?」
「さて」
殺した人間の数も覚えていなかった。
「どれだけじゃったかのう。まあ一万人はおったかのう」
「一万人って」
「それだけ?」
「食料危機が叫ばれた時に不要な奴をそれだけ始末した」
平然とこんなことを言ってそのことは終わらせてしまった。やはりこの博士にモラルや常識といったものは全く無縁のものであった。悲しいことに。
第百六十二話 完
2009・1・6
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