戦国異伝
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第八話 清洲攻めその五
「守る兵も多い。大丈夫なのか」
「そうだな。敵は強いがじゃ」
「では危ないであろう」
「しかし我等は勝つぞ」
木下は明るい声で話した。
「何があろうともじゃ」
「勝てるか」
「うむ、勝てる」
意気揚々とした足取りで話す。
「まあそこで殿の戦を見るがよかろう」
「ではそうさせてもらうぞ」
蜂須賀も木下のその言葉に返した。
「わしとても見たいしな、信長様の戦」
「そうであろう。そして勝ってだな」
「そういうことじゃ。しかし」
ここでだ。蜂須賀は自分達が持っている槍を見た。そして周りもだ。
「この槍じゃが」
「何じゃ?」
「随分と長いのう」
見上げてみる。見上げれば見上げる程わかるその長さだった。
「わしの身体の二倍以上はあるぞ」
「そうじゃな」
「御前なぞ三倍はあるではないか」
「わし等の槍は長いのじゃよ」
「それに鉄砲も多いな」
次に目についたのはこのことだった。
「かなりあるのう」
「全部で五百はあるらしいな」
「五百か」
「軍勢全体でじゃぞ」
「多いな、そこまであるのか」
「そうじゃ。槍と鉄砲はそうしたところじゃ」
このことも蜂須賀に話した。
「弓もあるがのう」
「刀は然程か」
「うむ、殆ど使わん」
また述べたのであった。
「それはな」
「そうか。まあ槍は戦の基本じゃからな」
蜂須賀は一旦は納得した言葉を出した。しかしであった。あらためてその長い槍を見上げてだ。また言わずにはいられなかった。
「しかし。本当に長いのう」
「その長い槍をこれから使うのじゃ」
「ここまで長くて使えるのか?」
「それが使えるらしい。まあ戦になればわかることじゃ」
「生きていられればよいがのう」
蜂須賀は木下の言葉を受けていぶかしむようにして述べた。そうしてそのうえで先に進む。するとであった。
やがて目の前にだ。その織田信友の兵が来たのだった。
「来たな」
「うむ、数にしてじゃ」
木下は兜越しに目を凝らした。そこに上から右手を添えて見ている。
「四千じゃな」
「流石に多いのう」
「何、それでもじゃ」
「勝てるというのか」
「そうじゃ。では下がろうぞ」
木下はこう蜂須賀に述べた。
「ではな」
「待て、下がるのか」
「そうじゃがそれがどうかしたのか?」
「敵を見て戦わぬのか」
蜂須賀はその前にいる敵を指差す。見れば騎馬はいない。足軽ばかりの兵が四千ばかりだ。彼等から少し離れた場所にいるのである。
その彼等を指差してだ。蜂須賀は木下に問う。
「あの敵とじゃ」
「この数で勝てるというのか?」
しかし木下は目をぱちくりとさせて蜂須賀に返す。
「わし等は全部で二百しかおらんのだぞ。相手は四千じゃ」
「それで下がるというのか」
「わし等は斥候じゃ」
木下がここで言うことはこのことだった。
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