戦国異伝
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第七十九話 人たらしの才その十一
「奴等が三好につけば。止むを得んかもな」
「左様ですか。ではその時は」
「織田家も」
「覚悟はしておくことじゃ」
それはもうだ。絶対だというのだ。
「よいな。それではな」
「この三好攻めもまた」
「そうした意味では賭けですな」
「さて、本願寺がどう出るかのう」
笑っていなかった。今度は。
「石山の傍も通る。目の前を通られて笑っていられるか」
「降りかかる火の粉と。我等をみなすかそうでないか」
「それ次第ですな」
池田と森も信長の言葉に応える。そしてだ。
二人に護られる信長のところにだ。岡本が来て報告した。
「殿、先陣の蒲生殿から報告です」
「忠三郎からか」
「はい、只今摂津に入りました」
「そうか。ではいよいよじゃな」
「三好の軍が来ますか」
「外で一戦交えるつもりならそろそろじゃな」
来るというのだ。その彼等がだ。
「それで摂津、河内、それに和泉が決まるわ」
「我等の手中に収まるかどうかがですか」
「その戦で決まる」
つまりだ。近畿の覇権がだというのだ。
「では近畿を我等のものとしようぞ」
「それでは」
「うむ。しかし忠三郎め、順調に先陣を務めておるな」
その蒲生についてだ。信長は満足した面持ちで述べた。普段彼は柴田や滝川を先陣に命じるが今彼等は他の国に送っている。だから蒲生にしたのだ。
それが彼に見所があるからでもある。その読みはだった。
「よいことじゃ」
「それでは先陣は」
「このまま忠三郎に任せる」
蒲生にだ。そうするというのだ。
「思う存分やらせてみるか」
「そして第二陣の美濃四人衆の方々もですか」
「あの者達も同じじゃ」
信長は彼等についてもこう述べた。
「任せる」
「そうされますか」
「うむ。それに左右じゃが」
今度は軍の左右の陣についてだった。
「右の菊千代、左の九郎じゃが」
「堀殿と原田殿ですな」
「二人はそのままじゃ」
このまま進めというのだ。
「この中軍と共に進めと伝えよ」
「畏まりました」
「三好は今かなり焦っておる」
既にだ。信長はそれを見ていた。
「それに対して我等は焦らず進む」
「そしてですか」
「焦る相手には焦らないことじゃ」
対比してだ。そうしろというのだ。
「それが一番だからのう」
「では、ですな」
「このまま進めればいい。順調にな」
こんな話をしてだった。信長は焦らず進撃を続けさせる。確かに本願寺の動向は気にしていた。しかしだった。
「焦ってもどうにもならんわ。予定通り進むことじゃ」
「そうすべきですか」
「そうじゃ。ではよいな」
「わかりました」
岡本も信長に応える。こうしてであった。
信長が直率する山城から攻め込む主力は落ち着き順調に進んでいた。そのことを聞いてだ。安芸の毛利元就はだ。家臣達にこう言ったのだった。
「織田家は勝つのう」
「勝ちますか」
「三好殿に」
「うむ、勝つ」
信長の勝ちをだ。己の家臣達に断言したのである。
「間違いなくな」
「その根拠は」
「既に三好は囲まれておる」
そこからだった。答えるのは。
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