戦国異伝
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第八話 清洲攻めその二
「全く。織田家といっても色々あるのに」
「伊勢守家とかならともかく」
「一番訳のわからない場所に入るとは」
「酔狂なことだ」
「酔狂で結構」
蜂須賀はまた笑いながら言った。
「それでこそ戦国よ」
「まあとにかくですね」
「その織田信長様の軍ですね」
「何処に行く気なんだか」
「おおい、そこの一行」
ここでだ。彼等に声がかかってきた。
「何処に行くつもりだ?」
「んっ、何だあれは」
「随分小さな奴が出て来たな」
「猿か?あれは」
「うむ、そっくりだな」
そのやたら小さく猿に似た男が来てだ。彼等に声をかけてきたのだ。
「悪いが少し道を開けてくれ。今から軍が通るからな」
「開けるわけにはいかぬわ」
蜂須賀がその男に返した。
「悪いがのう」
「何故じゃ?それは」
「御主等織田信長殿の軍勢だな」
「如何にも」
男はこう蜂須賀の言葉に返した。
「その通りじゃ」
「わし等はその信長殿の軍勢に入りに来たのだ」
「おお、ではわし等と共に先に進むというのか」
「その通りじゃ。だからどく訳にはいかぬ」
こう男に告げる。
「わかったな」
「うむ、よくわかった」
男は蜂須賀の言葉にまずは腕を組んだ。そうしてそのうえでしきりに頷いてみせる。随分とひょうきんな姿をそこに見せていた。
「御主等それではじゃ」
「信長殿のところに案内してくれるか」
「よいぞ、では来てくれ」
「うむ。しかし軍の数はこれだけか」
蜂須賀はその青い軍勢を見た。数百人程度だ。
「随分と少ないのう」
「当たり前だ。わし等は只の斥候だ」
「何っ、斥候か」
「先に出て調べているだけだ。それで多い筈がなかろう」
「そうだったのか」
「後で柴田様や滝川殿の軍勢が来られる」
男は身振り手振りを交えながら蜂須賀達に話す。
「そうだな、軍は全部で五千か」
「五千とな」
蜂須賀はその数を聞いて大いに驚いた。
「多いな、それはまた」
「多いか?」
「多いぞ。あのうつけ殿そこまでの兵を持っていたか」
「ははは、御主も殿をうつけと言うか」
男は蜂須賀の今の言葉に笑いながら述べた。
「そう言うか」
「しかしそれが五千か」
「そうじゃ。こんな数ではないぞ」
「その兵で攻めるというのか」
「その通りじゃ。それで信長様のところじゃが」
「うむ、はよう案内せい」
こう男に言う。
「わしはせっかちじゃ。早いうちにな」
「わかっておる。それで御主の名前じゃが」
男はここで蜂須賀の名前を問うのであった。
「何というのじゃ?一体」
「蜂須賀じゃ」
彼はまずはその姓を名乗った。
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