| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六話 上城の初戦その九


 何メートルも吹き飛ばされアスファルトを壊してだ。それからだ。
 立ち上がりだ。こう言うのだった。
「これで死なないなんて」
「まだ死にません」
 聡美は驚きを隠せない彼にも話した。
「貴方はこの程ではまだ」
「そうですか。死なないんですね」
「はい、ですから」
「わかりました。それなら」
 刀を両手に構えてだ。そうしてだった。
 再びだ。竜に向かいだ。
 今度はだ。跳んだ。そのうえで。
 上から下に一気に振り下ろす。それで。
 竜を切った。だが。
 頭部をだ。幾分か切っただけだった。竜はまだ健在だった。
 そしてだ。竜は。
 逆にだ。その口からだ。
 炎を吹いてきた。それに対して。
 上城は空中で刀を前に一閃させてだ。水の壁を出してだ。
 炎を防いで。そして着地した。それからだ。
 首をもたげさせる竜を見上げてだ。言うのだった。
「何て硬いんだ」
「竜の骨は尋常な硬さではありません」
 聡美はその彼にまた言った。
「ですから」
「そう簡単には真っ二つにはできませんか」
「はい、そうです」
 まさにだ。そうだというのだ。
「ですから。戦い方はです」
「考えなければいけませんね」
「どうされますか、ここは」
「真っ二つにできないのなら」
 少なくともだ。頭からはだ。
 それがわかった。しかしだった。
 彼は諦めてはいなかった。それでだ。
 首をもたげさせ見下ろす竜にだ。こう言ったのだった。
「閃きました」
「閃かれたのですね」
「はい、それなら」
 こう言ってだ。刀の構えをだ。
「こうします」
「一体何をされるのですか?」
 聡美に答えるより前にだった。彼は。
 刀を右に構えなおしてだ。その刀を。
 一気にだ。投げたのだった。
「刀を?」
「投げた?」
 これにはだ。聡美だけでなくだ。樹里も驚いた。
 それは剣道ではなかった。しかしだった。
 彼はあえてそれをやった。しかもだ。
 それだけではなくだ。彼は。
 刀を投げてからだ。前に、竜のいる方にダッシュしてだ。
 竜の腹に突き刺さった刀を再び持ってだ。それから。
 刀を上から下にだ。一気に引いた。それによってだ。
 竜の腹は大きく引き裂かれた。そうしてだ。
 この世のものとは思えぬ絶叫を出してだ。竜はその巨体を。
 ゆっくりと地面に崩れ落ちさせた。まるで糸の切れた人形の様に。
 鈍く重い音が響き。竜は倒れた。そして。
 巨体がゆっくりと消えてだ。後に残ったのは。
 黄金の棒が数本。それだけが残っていた。戦場には。
 何もなかった。全てだ。
 壊れた筈のアスファルトもだ。元に戻っていた。それを見てだ。
 樹里はだ。首を捻って聡美に尋ねた。
「何時の間になおったんでしょうか」
「戦いが終わればです」
「それで元に戻るんですか」
「はい、そうです」
 そうなればというのだ。
「戻るのです」
「それはどうしてなんですか?」
「文献には書かれていないので」
 ここではだ。聡美は文献の存在を巧みに出せた。
「それは」
「わからないですか」
「そうです」
 その通りだとだ。聡美は樹里に話した。
「わからないことも多いのです」
「そうですか。この戦いには」
「文献の解読は進めていますので」
 聡美はそういうことにした。今回は成功した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧