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戦国異伝

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第七十八話 播磨糾合その二


「それをしてです」
「そしてそれがしが猿まわし師に扮してです」
 秀長も出て来て話す。
「二人一組になってです」
「芸をするか」
「左様です。それで路銀を稼ぎます」
「成程のう。そして飛騨者達もか」
 信行は羽柴兄弟の話を聞いたうえでだ。あらためてだ。
 飛騨者達にも顔を向けた。彼等についてはだった。
「この者達については心配はいらぬな」
「実際に芸人に化けてあちこちを回っていたでやんすよ」
「そうですよ。これでも色々な芸ができますよ」
 煙がにこにことして右手を自分の頭の後ろにやって、風は右目を瞑ってみせて応える。
「だからでやんす」
「何も問題ありませんよ」
「あとわしもです」
 蜂須賀もだ。笑顔で名乗り出て来た。
「蝦蟇の油、それをやりますか」
「小六、御主もか」
「はい、忍の者の端くれとしてそうした芸ができます」
 そうだと言うのだった。
「ですからお任せ下さい」
「これで路銀は稼げるか。しかしじゃ」
 信行は彼等の話も聞いたうえでだ。そのうえでだ。
 自分もだと。言うのだった。
「わしも芸をせねばな。他の者がしているのにそれはなかろう」
「あれっ、勘十郎様もですか」
「何か芸を持っておられるのですか」
「一応はな」
 あるとだ。信行は蜂須賀と秀長に述べた。
「あるにはある」
「といいますと一体」
「どうした芸でございましょうか」
「うむ、それはじゃ」
 ここで信行が言う芸はだ。これだった。
「論語をはじめとした四書五経の暗誦じゃ。それができるぞ」
「いえ、それはどうも」
「芸には芸ですが」
 信行のその真面目そのものの話を聞いてだ。一行は。
 まずはその目を点にさせそのうえでだ。こう信行に言ったのだった。
「しかしそれはどうも」
「人に見世物にする芸ではありませぬ」
「ですから勘十郎様はです」
「どうか御覧になられるだけでお願いします」
 こうだ。真面目に言う彼等だった。そのうえでだった。
 信行の芸については止めたのだった。それを受けた彼はというと。
 難しい、そして残念そうな顔になってだ。そうして言うのだった。
「それではわしの面目が立たんが」
「いえ、ここは一軍の将としてです」
「どっしりと構えておいて下さい」
「そうして頂いていいですから」
「お茶でも飲まれて」
「そこまで言うのなら仕方がないか」 
 とにかく周りからくどくどと言われてだ。それでだった。
 信行もようやく頷いた。まだ納得していない感じにしてもだ。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「では路銀を稼ぎながら姫路まで向かうとしよう」
「ただしです。急ぎましょう」
 羽柴はそれを言うのを忘れなかった。
「姫路には」
「そうじゃな。急がねばな」
 そのことはだ。信行にもわかっていた。それでだった。
 彼等は姫路まで急ぐことにした。その間路銀等は順調に稼いだ。そしてだ。
 その別所氏、三木城を本拠地とする彼等の下に着いた。そのうえですぐにだ。彼等は城に入りだ。主である別所長治の前に来た。別所はまだ若いが何処か歳を感じさせる顔だった。
 その彼にだ。羽柴はまずはだ。
 彼が持っていたその砂金を全て渡した。それからだ。
 こうだ。別所に対して言ったのである。
「これはほんの挨拶代わりでござる」
「何と、これだけの砂金が」
「はい」
 ほんのだとだ。彼は言うのだった。 
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