魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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後日談8 クリスマス(加奈)
「やって来たわね、ミッドに………」
初めて来た時は兄さんの事で頭一杯だったり、シャイデ先生の事で慌ただしかったせいであんまり覚えていなかったけど………
「やっぱり近代都市ね………」
改めて見て、そう呟く加奈。
以前は戦闘や零治の事でほとんど印象に残っていなかった。
「さてと、あのバカは自分で呼び出したんだから迎えに来る位の気遣いは無いのかしら………?」
クリスマスの3日前………
「加奈、頼む!!」
放課後、私の所にやって来ていきなり土下座する大悟。
「な、何よいきなり………」
「今年のクリスマスは俺にくれ加奈!!」
いつもと違うしっかり、ハッキリと私に言う大悟。
そんないつもと違う大悟に少しキュンとしてしまった。
結構私は押しに弱かったり………
「い、いいわよ………」
「本当に!?本当に助かるよ加奈!!」
助かる………?
「思えば大悟があんな風に言うわけ無いのに………」
待ち合わせの噴水前で大悟を待って10分。
女の子を待たせるなんて………
もう帰ろうかしら………?
「ご、ごめん加奈!!」
そんなことを思っているとこっちに慌てて走ってくる大悟が。
管理局の制服を着て、汗だくになりながらやって来た。
「遅い!!」
「ご、ごめん、仕事で遅くなって………」
「遅れるなら連絡くらい入れなさいよね、常識よ常識!!」
「お、仰る通りで………」
「全く………」
怒られた飼い犬の様にしゅんとする大悟。
全く、少しキツく言われた位でそんな風にならないでよ。
「………で、用って何なの?」
「実は………俺と一緒に管理局の高官達が参加するクリスマスパーティに参加してほしいんだ!!」
……………は?
「何でドレスなんか………」
「いえいえ、お似合いですよお客様!!」
私は白と黄色のドレスを試着室の中で着ていた。
何故試着しているのかと言うと、さっきの大悟の話による。
大悟の話はこうだ。
本日管理局の高官達が参加するクリスマスパーティにエース・オブ・エースとして参加するように上司から言われたらしい。
だけどその裏では大悟を手に入れる為にお見合いをさせて婚約させようと考える高官達がいるらしい。
ちょっと情けないけど、ランクSSSの魔導師で現管理局で最強の魔導師。
確かにその大悟を手に入れたいと思う人は多いでしょう。
「ちょうど良いじゃない、あんたってハーレムが欲しかったんじゃないの?」
と冗談交じりで言ったら、
「俺は加奈1人で十分だから………」
と小さい声で言った。
これが堂々と言えたらかっこいいんだけどな………
本当、惜しいわね大悟。
「………」
「どう?私のドレス姿は?」
「………凄く綺麗だ」
驚いた顔でそう呟いた大悟。
大悟もタキシードに着替えていて、外見だけならかなりの美男子だ。
現に店の女の子達は頬を赤らめながら見ている。
「私はこういう高価な感じはそんなに好きじゃないんだけどね………」
「いや勿体ないよ!!こんなに似合ってるのに………」
まあそうまで言われて嬉しくない奴はいないわよね。
「………ありがとう、大悟もかっこいいわよ」
「ほ、本当!?」
「もう少しシャキっとしてればね」
「………手厳しい」
「くすっ、精進なさい大悟。それじゃ行きましょ?」
「そうだね」
こうして私は大悟の案内の元、パーティ会場へと向かった………
「凄いわね………」
大きなホールで、皆貴族のような振る舞い………とはいかないけど淑女の様な振る舞いをする女の子が多かった。
彼女達は管理局員じゃない。恐らくお偉いさんの娘さんでしょう。
みんな大悟狙いか?と思ったけど、実際はそうでもなく、普通にパーティを楽しんでいる。
因みに私はこんな豪華なパーティなんて初めてなので、誘ってくる男達を躱しながら大悟を待っていた。
「ふう、疲れる………」
「お帰り。どうだった接待は?」
「接待なんかしてないよ。婚約の件をすっぱり断ってきたんだ」
そう言って帰る途中にもらってきたのか、シャンパンの入ったグラスを持ってきてくれた。
「………まあこの中には媚売ってる人もいるけど、俺は別にお偉いさんになりたいわけじゃないから」
「当然ね」
今の管理局の内情を知っており、なおかつ原作を知っている大悟には管理局で上に行きたいとは思わないでしょう。
大悟に、管理局を変えたいなんて思いも無いでしょうし。
「失礼、君がエース・オブ・エースの神崎大悟一等空尉かな?」
そんな私達に声をかけてきた人が1人。
年齢は30歳位の男の人で、明らかに雰囲気が周りとは違う。
この人は凄く偉い人だ………
「そうです。………初めましてヴェリエ・マーセナル元帥」
元帥って………えっ!?
「この人トッ「加奈!!」」
私がびっくりしてつい叫ぼうとした所を大悟が塞いでくれた。
あのまま叫んでたらかなり失礼だった所だった………
「済みません………」
「いや、いいよ。彼女は確か管理局員じゃなかった筈だね?」
「はい、自分の学友です」
「彼女かい?」
「自分の一方通行です」
「ふふ、青春してるね………」
と大悟と握手をしながら言うヴェリエさん。
「あの………」
「お嬢さん、名前を聞いても良いかな?」
「あっ、はい。佐藤加奈と言います。大……神崎君と同じ地球出身です」
「随分綺麗なお嬢さんだ。神崎一等空尉、彼女を大事にしなさい」
「はい」
「すまないが、他にも挨拶をしなくてはならないのでこれで失礼するよ。最後まで楽しんで行ってくれ」
そう言ってヴェリエさんは行ってしまった。
「あの人が現管理局のトップなんだ………結構若い人ね………」
「………」
「大悟………」
じっとヴェリエさんを見る大悟。
その顔は真剣そのもので、さっきまでの落ち着いた雰囲気とは違う、張り詰めた雰囲気が大悟をまとっていた。
「大悟!」
「!?加奈どうしたの?」
「それはこっちのセリフよ。一体どうしたのよそんな張り詰めた顔して………」
「ああ、ごめんせっかくのクリスマスなのに………取り敢えず、この後違う店に行かない?食事は奢るから」
「う、うんいいけど………」
謝っているけど依然雰囲気が張り詰めたままだ。
そんな大悟に連れられて私達は静かにパーティー会場を後にした………
「で、何であんなに張り詰めてたのよ?」
大悟に連れられて来たお店は日本料理のお店だった。和風の雰囲気は皆無だけど結構お洒落なお店で気に入ったかも。
それでもやはり大悟はさっきと同じままで、いい加減私も気になって仕方がない。
なので聞いてみたんだけど………
「………」
大悟は話すべきか躊躇してるみたいだ。
「話せない内容なの?それなら深入りするつもりは無いけど………」
「………いや、話すよ。どっちにしても零治には話さなくちゃいけない話だし」
そこで兄さんか………
となると関係あるのは………
「原作の話って訳ね………」
「うん、まあ当たらずとも遠からずってところかな?………既にこの世界はリリカルなのはの話とはかけ離れてる。加奈はどれくらい零治から聞いているか分からないけど………」
「ごめん、私何も聞いてないの………」
「そうなの!?じゃあもしかして桐谷も?」
「うん、私達はジェイルさんが原作の人なら敵になる事位しか………」
そう言うと頭を抱える大悟。
「零治のアホ………説明位してくれてもいいのに………」
「そもそも兄さんもリリカルなのはの事は知らない筈よ。だって兄さんはロボット系のアニメは好きだったけど、魔法少女物とかは興味無かったから」
「そうなの!?知らなかった………一度その辺りもちゃんと話しておくべきかもな………」
そう言って飲み物に口をつける大悟。
「まあそれは置いておいて、俺が気になったのはあのヴェリエ・マーセナル元帥についてなんだ」
「あの人?少し厳しそうな人だけど、あの若さで元帥って本当に凄いと思うんだけどな………」
「まあ普通に思えばそうだろうけど………実は管理局に元帥にいる人は居ないんだ」
「………いないの?」
「………まあアニメに現れて無いだけで実際にはいるのかもしれないけど、原作にはヴェリエ・マーセナルも元帥についている人も居なかった筈なんだ。それなのにヴェリエ・マーセナルは今の管理局の実権を事実上握っている」
「ただの考えすぎなんじゃない?」
「………俺もそう思いたいけど、それだけじゃないんだ」
「それだけじゃない………?」
「あの人は………恐い感じがした………バルトマンみたいな………」
「大悟?」
「………何でもない」
そう言って難しい顔をする大悟。
どうしても腑に落ちないらしい。
「………まあ取り敢えず今はハッキリしないんだし、今日はクリスマスなんだから楽しみましょう!!」
ちょっと私のキャラには合わないかもしれないけど、無理矢理テンションを上げてそう言った。
「………くすっ、そうだね」
と最初は驚いた顔した後にクスリと笑った大悟。
どうやら見透かされたみたいだ。
「………生意気」
「ん?何?」
「何でも無いわよ!!それより今日………」
その後、私達はゆっくり食事を楽しんだ………
「うわぁ………」
食事の後に案内されたのはミッドにある大きなタワーの展望台。
そこから綺麗な夜景が見れた。
「地球以上に文明が発達して結構建物ばかりなミッドだけどこういう夜景は結構綺麗でしょ?」
建物から漏れた光に照らされた街並みをとても幻想的に綺麗で、感動してしまった。
「ええ、本当に綺麗だわ………」
大悟にしては粋な計らいね。
二つの月も地球じゃ絶対に見れないから嬉しいわ。
「………加奈」
「何?」
「俺さ、この綺麗な景色が好きだしこのミッドの街が好きだ。俺もさ、まだ零治程でも無いけど守りたいものが見つかったんだ」
「そう………」
「俺の部隊の隊長、部隊の仲間達、ミッドのこの景色、そして何より加奈。君は絶対に守り通したい」
そう言って見つめる大悟は真剣そのものだった。
「だからこそ俺は強くなる。もうバルトマンにも負けないように、あの時みたい零治達の戦いをただ見てるだけにならないように。………えっと、だから………その………」
「大悟………?」
「えっと………」
その後はもごもごしながら何かを言おうとしている大悟。
何で最後の締めでそうなるのよ………
「だから……その………」
「分かったわよ、私が大悟をしっかり見ていてあげるわよ!だけど、私も守られてばかりなんて嫌よ。それに守るのは私の得意分野じゃない!」
「えっ!?ま、まあそうだけど………」
「お互いがお互いをね。独り善がりなんてまっぴらごめんよ!」
「………加奈らしい」
「何か文句でも………?」
「ううん、ないよ。しっかり見ていてね加奈」
「ええ。だからしっかりやりなさいよねエース・オブ・エース、神崎大悟!!」
そして今度はもっと男らしく………ね。
「彼女が佐藤加奈、あの結界魔導師か………」
『あのフィールド使いですか?』
「ああ。フォースフィールド………バルトマンの攻撃を完全に消し去る防御結界。黒の亡霊のフィールド以上の強度。とても興味がある………」
『ですがあれはミッドにもベルカにも見たことが無い魔法。彼女を捕えるか、デバイスを回収し調べなければ分かりませんが………』
「分かってる。彼女については暫く置いておく。神崎大悟も今のミッドでは必要な存在だ。変に刺激するのは良くないだろう」
『分かりました、そうします』
そう言うとディスプレイが消える。
クレインとの話が終わったヴェリエは近くの小さい冷蔵庫から飲み物を取り出し、口をつけた。
「黒の亡霊のフィールドよりも強固なフィールド、それさえ完成すれば魔導師など対抗出来ない最強の………」
そう呟きながら展開したディスプレイにはこのように書かれていた。
“対魔導師対応アンドロイド、ブラックサレナ”
「これが完璧に完成すれば管理局は完全に………」
ヴェリエは二つの月を窓越しに眺めながらそう呟いた………
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