久遠の神話
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第四話 中田の告白その十二
「それはな」
「難しいですね」
「世の中はどれもこれも難しいさ」
シニカルにだ。こんなことも言う彼だった。
「それもわかってるさ」
「それなら」
「さて、それならな」
ここでだ。中田は言葉を一旦止めてだ。それからだった。
そのうえでだ。周りに言うのだった。
「今日は本当にこれで終わりでな」
「お家に帰ってですね」
「風呂に入って寝るさ」
そうすると言ってであった。それでだ。
彼は実際に家に帰り休むのだった。そうしたのだ。
そしてだ。上城は。
家に帰るとだ。すぐに母親にこう言われた。
「今日も遅かったわね」
「あっ、御免」
「部活だから仕方ないけれど」
それでもだとだ。母は彼に言うのである。
「それでも。夜は色々と危ないから」
「うん、そうだね」
「気をつけてね」
言うのはこのことだった。
「せめて帰る前に電話入れてね」
「そうするよ」
「ましてあんたには樹里ちゃんもいるし」
彼女とのことは既に両親も知っているのだった。
「だからよ」
「そうだよね。あの娘のこともね」
「気をつけてね」
「そうするよ」
「だからね」
また話してだ。そのうえでだった。
彼はテーブルに着いた。その息子にだ。
母親はあるものを出してきた。それは。
「あれっ、これって」
「そう。スパゲティよ」
それだというのだ。見ればナポリタンだった。トマトソースの中にマッシュルームや大蒜、スライスされたそれが見える。
「今晩はこれよ」
「スパゲティって」
そのことにだ。上城は言うのだった。
「今茹でたんだよね」
「そうよ。今ね」
「有り難う」
彼は心からだ。母のその気遣いに感謝の言葉を述べた。
「待っていてくれてそれで」
「当然じゃないの?」
「当然って?」
「だから。美味しいもの食べたいでしょ」
「うん」
それはその通りだった。彼にとっても。
それで答える。その彼にだった。
まただ。母が話す。
「だから。スパゲティは待っていて」
「それでソースは」
「それは温めなおしてね」
それでだというのだ。
「今こうして出したのよ」
「本当に有り難う」
「いいのよ、当然のことだから」
だからだと答える母だった。そしてだ。
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