戦国異伝
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第七話 位牌その十一
「いざ、清洲へ」
「おおーーーーーーーーーーっ!!」
青い旗と鎧が一斉に動く。平手はその有様をだ。まるで夢を見ているかの様に恍惚として見ていた。そのうえで信長に従い出陣した。
この信秀の葬儀の話は尾張中に広まっていた。やはり織田家で信長と対立する立場にある者は彼のその行動を馬鹿にし嘲笑った。
しかしだ。その中で異変が起きていた。
彼等に仕える者達の何人かが信長のところに向かったのだ。そうして清洲に向かう途中の彼の軍に馳せ参じたのである。
「我等も是非」
「信長様の家臣の末席にお仕え下さい」
「御願いします」
「おお、よいぞ」
信長は本陣で彼等と会いそのうえでこう返すのだった。
「それではじゃ。これから宜しく頼むぞ」
「はい、それでは」
「御願いします」
「そなた等もまたわしの家臣じゃ」
その彼等に告げる信長だった。
「共に武の道を進もうぞ」
「はい」
「では」
こうした者達も出ていた。そうしてである。
朝倉宗滴はだ。その話を聞いてまた言うのであった。
「それで織田信長の家臣で見限った者はおるか」
「あの男から離れた者ですか」
「そうだ。それはいるか」
このことをだ。忍の者に尋ねるのであった。
「どうなのだ」
「いません」
その忍の者は彼が見たものをそのまま主に話した。
「一人もです」
「そうか、一人もか」
「弟の勘十郎信行を筆頭として弟達もです。誰も離れてはおりません」
「そのうえでかえって彼の下に馳せ参じる者がいるのだな」
「そうです。国人にもそれは出ています」
「国人にもか」
「蜂須賀でしたか」
この名前が出て来た。
「そうした者もあの男の下に馳せ参じたそうです」
「離れた者はおらず逆に馳せ参じる者が出て来ておる」
宗滴はこの現実を話した。
「それだけであの男の勝ちだ」
「それだけでなのですか」
「家臣が増えておるのだ。しかも敵の家臣は減っておる」
「そう考えれば確かに」
「それにじゃ」
宗滴の話は続く。
「殆どの者がそれからあの男を侮っておるな」
「それは元からでしたが」
「尚更じゃな。これは大きい」
宗滴は今度はこのことを指摘した。
「相手を侮ればそれだけで首が危うくなるものだからのう」
「では此度のことはそれを狙ってのことなのですか」
「だからこそ元からの家臣や弟達は誰一人として離れなかったのだ」
「わかっていたからですか」
「そうじゃ。主のこともそのすることもじゃ」
そうしたことまでだというのである。
「それでなのじゃ」
「そうだったのですか」
「さて、それでじゃ」
「はい」
「織田信長、間違いなく尾張を統一する」
宗滴は最早それは確信していた。
「そしてそれからじゃ」
「それからですか」
「蛟龍の如く世に出るだろう」
こうも話すのであった。
「尾張の他の国も手中に治め。それを考えると」
「何でしょうか」
「朝倉は幸いにして都に近い」
不意にここで自身の家のことを話すのだった。
「そして北近江の浅井とは盟友だな」
「それが何か」
「南近江の六角を退け都に入るべきか」
こう言うのであった。
「やはり」
「都にですか」
「一向一揆のこともあるがそれでも都を目指すべきではなかろうか」
これが今宗滴が考えていることだった。
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