久遠の神話
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第三話 見てしまったものその十三
「因果な話だよ。あの高校生嫌いじゃないんだけれどな」
「ですがそれが運命ですから」
「剣士の運命だっていうんだな」
「その通りです。最後の一人になるまで戦い」
「願いを手に入れるか」
「中田さんは家族を救いたいのですね」
「だからそれは手術の金さえあればいいんだよ」
これが彼の考えだった。
「まあ。金になるな」
「それですね」
「俺は金が欲しい」
それで戦うというのだ。
「そうするからな」
「では。そういうことで」
こうした話をするのだった。そして彼もまた去った。
だがその彼の後姿を見る女がいた。彼女は。
聡美だった。聡美は彼を見てその緑の目を曇らせていた。そのうえでだ。
こうだ。何も、誰もいないそこに問うたのだった。
「お姉様」
「貴女ね」
「はい、この時代でもですか」
「そうよ」
あの声がだ。聡美にも答えるのだった。
「私は。そうして」
「剣士達をこの時代でも弄ぶのですか」
「弄んではいないわ」
それはきっぱりと否定するのだった。声も。
「私は。ただ」
「共にいたいだけというのですね」
「ええ」
そうだとだ。声は苦い色で聡美に答えた。
「それだけです」
「しかしそれで」
「彼は私の全て」
声は聡美に対して。こう返してきた。
「その彼がいないと」
「ですが。彼等は」
「彼等は罪人でした」
拒む言葉はここでもだった。形こそ変えてもだ。
あくまでだ。聡美の言葉を否定してだった。
「それでどうして同情することなぞ」8
「そうして何千年もですか」
聡美はその声にだ。すがる様にして問い返す。
「彼等を互いに争わせ。命を奪っていくのですか」
「そうです。そしてその命の力こそが」
「だからです。私は」
「貴女はどうしてもですか」
「はい、彼の為に」
どうしてもという言葉でだった。声は言うのだった。
「彼が再び私に笑顔を向けてくれる為に」
「では私は」
聡美はだ。顔を上げてだった。
夜空にいる筈のその姿を見てだ。そのうえでの言葉は。
「その貴女を必ず」
「止めるというのですね」
「彼が貴女にとって大事な人なら」
それならばだというのだ。
「貴女は私にとって大切な人だから」
「そう想ってくれているのですね」
「ですから」
そこにある姿を見てだ。聡美はさらに話す。
「私は必ず貴女を止めます」
「そうしますか」
「必ずです」
こうしたやり取りのうえでだった。聡美は今は声の主と別れたのだった。
そして一人夜の中に消えた。深い憂いと共に。
第三話 完
2011・7・22
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