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久遠の神話

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第三話 見てしまったものその九


「今からね」
「出すって何を」
「剣よ」
 ここでも一方的に話すスフィンクスだった。
「それを出して。闘うのよ」
「刀なんてないし」
 上城は剣と刀を同じものと解釈して話した。
「あるのは木刀だけれど」
「何かしら、それは」
「って木刀知らないんだ」
 スフィンクスの言葉に少し戸惑って返した。
「じゃあ竹刀も」
「知らないわよ、そんなのは」
 やはりこう言うのだった。
「全くね」
「けれど刀なんて」
 背中の竹刀袋を見て言う彼だった。
「持ってないし」
「持ってないというのね」
「そうだよ。真剣だよね」
 スフィンクスに対して問うた。
「そんなのは」
「そう。まだなのね」
「今度はまだって」
「まだなら早く言うのね」
 今度はこんなことを言うスフィンクスだった。
「呆れたわ」
「呆れたって言われても」
「剣を持たない相手とは闘わない」
 スフィンクスはまた言った。
「それが決まりだから」
「だから。決まりって何なのさ」
「神の定めた決まりよ」
「神様!?」
「そう。夜を輝かせる神」
 その神が定めたことだというのだ。
「その神との約束だから」
「神様っていったら」
 樹里はまた首を傾げさせながら話した。
「ええと。このスフィンクスはギリシアのだから」
「ギリシアを知ってるのね」
「一応はね」
 そうだとだ。樹里もスフィンクスに話す。
「その神様になるけれど」
「とにかく。剣を持っていないのなら」
 どうかと。また話すスフィンクスだった。
「帰りなさい」
「何もしないんだ」
「私はね」
 彼女、スフィンクスはそうだというのだ。
「決まり。守る魔物も少ないけれど」
「魔物って?」
「私達の呼び名よ。怪物だの妖怪だのもあるわね」
「それがなんだ」
「何とでも呼ぶといいわ。とにかくね」
「今はなんだ」
「そうよ。帰りなさい」
 また言うその怪物だった。
「剣を持った時にまた会いましょう。ただね」
「ただ?」
「他言は無用よ」
 このことは釘を刺すのだった。
「わかっているわね。それに」
「貴女みたいな存在に会ったなんて」
 ここで言ったのはまた樹里だった。 
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