戦国異伝
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第七十四話 都の東でその四
その川を細い棒で指し示しながらだ。彼は信長に話すのだった。他の家臣達もそれを見ている。
「敵は都を出ました」
「そしてじゃな」
「はい、鴨川の東岸に向かっております」
「ではここでじゃな」
「はい、まずは川を渡らせないことです」
まずはそこからだというのだ。そしてだ。
そのうえでだ。また言うのだった。
「今はです」
「今はじゃな」
「はい、今はです」
信長に対してもだ。彼は言ったのである。
「渡らせてはなりません」
「今はじゃな」
「我等は川の東側に布陣します」
続いてだ。織田家の陣を何処に置くかというのだった。
それはそこだというのだ。川の東側だというのだ。
「そこに布陣すれば敵は迂闊に川を渡れません」
「しかしじゃな」
「はい、我等はです」
どうかとだ。織田軍はだというのだ。
「兵の一部を渡らせます」
「ふむ。そうしてじゃな」
「陽動を仕掛けます」
その為に川を渡らせるというのだ。軍の一部をだ。
このことを渡らせてだった。そしてなのだった。
生駒は次の策としてだ。こう信長に述べた。
「そうして敵に川を渡らせてです」
「ほほう、そのうえでか」
「はい、川を渡るとなると」
それによってだともだ。生駒は話す。
「身体が冷えますが」
「それも狙いか」
「左様です」
まさにそうだというのだった。
「敵の身体を冷えさせます」
「そこまで考えておるか」
「万全を期して攻めるべきですから」
それ故にだと述べてだ。生駒はその目を光らせた。
そしてだった。また言う彼だった。
「ただ、大事なのはです」
「こちらの川を渡らせる兵達にじゃな」
「はい、川の東側に置く兵達の装備ですが」
「川を渡らせる兵達は騎馬じゃな」
信長から言った。このことをだ。
「そしてじゃな」
「はい、そして東側の兵達は鉄砲に弓です」
その二つを備えてだというのだ。生駒もこのことを述べる。そしてなのだった。
生駒はここまで話してからだ。また言うのだった。
「それで戦いましょう」
「では今よりじゃな」
こうしてだった。彼等はだ。
鴨川の東側に向かう。そしてだった。
三好の軍勢を待つ。彼等より先に来たのだった。
その誰もいない鴨川の西側を見る。そのうえで言うのは可児だった。
こうだ。拍子抜けした様に言ったのだった。
「何じゃ、まだ来ておらぬのか」
「ははは、これもじゃな」
信長もその西側を見る。そうしてだ。
今は己の傍らにいる生駒にだ。こう問うたのである。
「読み通りじゃな」
「はい、そうです」
その通りだと答える生駒だった。彼も川の向こう側を見ている。
そのうえでだ。信長に言うのである。
「我等が咲きに来ていることは既に敵も知っています」
「そして大急ぎで来ておるな」
「間違いなくです」
そうなっているとだ。生駒は断言する。
「そしてそこをです」
「そうじゃな。そしてじゃ」
信長はここで楽しげな笑みになった。そのうえでだ。
生駒にだ。こんなことを言ったのだった。
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