久遠の神話
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第三十三話 八人目の剣士その六
「しかし問題はそこではない」
「味はですか」
「高くともまずいものは多い」
「そしてその逆に」
「安くとも美味いものは美味い」
「値段の問題ではないですか」
「何でもそうだ」
そしてそれはだ。食べ物に限らないというのだ。
「安くともいいものはいいのだ。そしてそれを見極めてだ」
「そのうえで」
「どうするかが大事だ」
「それが貴方ですか」
「私は経営者だ。そして政治家になる」
その果てには首相がある。それならだった。
「ならそうしたことを見極めなければならない」
「そうですか」
「それでだ。君のことだが」
「剣士のことですね」
「その数はもうわかっている」
「十三人いるということは」
「そしてそれぞれ異なる力を持っていることもな」
そのことも既にわかっているとだ。権藤はそのロビーを思わせる広い階で安いが美味いコーヒーを飲みながらだ。聡美に対して言ったのだった。
「私の力は闇だ。しかし闇は最強ではないな」
「相性は存在しますが」
「それぞれの力のだな」
「例えば水は火に強いです」
「そして闇は本来は光に弱いか」
「そうです。そうした相性はありますが」
だがそれでもだというのだ。
「力の優劣はありません」
「そうなのだな。それぞれの力に優劣はないか」
「あるのは強弱です」
それぞれの力のだ。それがあるというのだ。
「力が強ければ。相性が悪い力でもです」
「倒すことができるか」
「貴方は実際に光の力を持たれているあの先生を圧倒されていましたね」
「彼も確かに強いが私程ではなかった」
権藤は地獄の様に熱く絶望の様に黒いコーヒーを飲みながら述べた。
「だからだ。私は彼を押せた」
「そういうことです。力自体の強弱が問題なのです」
「では私はこのまま強くなる。それでいいな」
「私としては戦いは」
「君の考えは聞いているが受け入れない」
聡美が言いたいことはわかった。その頼み込む様な目でだ。だが、だというのだ。
「私は既に決めたのだからな」
「そうですか」
「それでだ。それぞれの力はどういったものかででだ」
聡美に応えながらだ。権藤はさらに問うた。
「どういった剣士がいるのだ」
「私もそこまではわかりません。この時代の剣士のことは」
「知らない剣士もいるのか」
「そうです」
こう答える。だが、だった。
聡美はその目は微かにだが泳がせた。そして権藤はその目の動きを見逃さなかった。
それでだ。聡美にすぐにこう言ったのだった。
「いや、全員知ってるな」
「いえ、それは」
「しかし言えない様だな」
「それはその」
「言えないか。だが言えるものもある」
聡美のその心を見透かした上でだ。権藤は言っていく。
「十三人の剣士のそれぞれの力は何だ」
「このことは私は言えるというのですね」
「その程度は言えると思うが」
「確かに。それは」
「では言ってみてくれ」
聡美に対してだ。権藤はさらに言っていく。
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