久遠の神話
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第二話 銀髪の美女その六
「ほら、髪の毛の色が」
「そうね。あの人ね」
見ればだ。まさに彼女だった。
見事な銀髪を後ろで束ねている。そして目は緑色だ。
モデルの様な長身ではっきりした顔立ちだ。その彼女を見てだ。彼は樹里に言うのだ。
「銀髪でしかも」
「目が緑色で」
「モデルさんみたいな美人なんだよね」
「しかも弓道部にいて」
「全部当てはまるじゃない」
こう彼女に話す。
「そうだよね」
「ええ、間違いないわね」
樹里もだ。確信して言うのだった。
「あの人よ」
「じゃあ今から取材?」
「八条大学弓道部に突如として現れたホープ」
タイトルは今適当に考えたものだ。
「その人に今からね」
「突撃取材だね」
「ええ、行くわよ」
「それじゃあ聞くよ」
その樹里にだ。上城は問うた。
「紙とかレポート用紙は?」
「持ってない筈がないじゃない」
返答は即答だった。
「それは」
「ああ、持ってるんだ」
「当たり前でしょ。新聞部よ」
だからだとだ。樹里はいささか胸を張って言う。小柄な彼女が胸を張るがそれでもだった。背の高い上城からはつむじが見えてしまった。
そのつむじを後ろから見ながらだ。彼は言う。
「持っているんだ」
「だから。持ってない筈ないじゃない」
「てっきり。理由付けだって思ってたよ」
その銀髪の留学生に会う為のだというのだ。
「違ったんだ」
「ま、まあね」
その問いにはだった。樹里は胸を反らすのを止めて。
そのうえで視線を右に流して。後ろの上城に答えた。
「それはないから」
「だったらいいけれど」
「何度も言うけれど私は潔白よ」
「ここで潔白って言葉は使うのかな」
「使うわよ。いいのよ」
用途による言葉だった。ただし己で潔白と言う場合に潔白だった事は少ない。だがそれでもあえて言うのが今の樹里だった。
こう言い張ってからだ。彼女はあらためて彼に告げた。
「じゃあ行きましょう」
「うん、話長くかかったけれどね」
「それは気のせいよ」
「気のせいかな」
「そうよ、気のせいよ」
樹里はここでも強引だった。
「とにかくね」
「うん、あの人に取材だね」
「そういうことよ」
こう話してだった。彼等は。
その銀髪の美女のところに行きだ。声をかけたのだった。
「あの、すいません」
「高等部の者ですけれど」
まずは樹里が、そして上城がだった。
二人でだ。彼女に声をかけた。だが、だった。
樹里は最初に上城を見てだ。こう言ったのだった。
「貴方もなのですね」
「はい?」
そう言われてだった。彼は。
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