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戦国異伝

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第六十九話 岐阜での会見その三


 細川がだ。そっと彼に囁いた。
「今の織田殿のお言葉は」
「治めることを考えてですな」
「おそらくは」
 こうだ。細川に囁きそのうえで話をするのだった。
「治めるには移動に難がありどうしても町や田畑から離れがちになる山城よりです」
「平城の方がいいですな」
「はい、そうです」
 まさにその通りだと答える明智だった。
 しかしだ。明智は平城についてはこうも言うのだった。
「ですが守りが弱いので」
「だから山城ですな」
「そこをどうするかです」
 平城と山城の弱点をそれぞれ考えて話すのである。
「ですが織田殿はそのことについて考えておられますな」
「そこまでなのですか」
「はい、どうやら深い方です」
 信長のそうしたところまでだ。明智は見た。しかしここで義昭は言うのだった。
「二度は来たくない」
 こう言うだけだった。深く考えていないことは明らかだった。
「まことにそう思うわ」
「左様ですか」
「全く。難儀な城じゃ」
 うんざりとした顔での言葉だった。
「わしは二度と登らぬぞ」
「わかりました。それでは」
「都に入ればそこから動きたくはないわ」
 やはりだ。辛いからである。
「全く。こんな城ばかりじゃな」
「わかりました。都に入られましたら」
「もう動かぬぞ」
 口を尖らせてだ。言う義昭だった。
「よいな、そこは」
「畏まりました」
 信長は義昭のその言葉にこう応えただけだった。そのうえでだ。
 義昭にだ。こうも言ったのである。
「ではそれがしは暫くすれば」
「何じゃ?都に入ればか」
「いえ、それはまだはっきりとはしませぬな」
 こう言ってだ。己の言葉を止めたのである。
 そうしてだった。義昭に述べたのだった。
「では。これからは何なりとです」
「言ってよいのじゃな」
「はい、それがしは必ず」
 強い言葉でだ。信長は義昭に述べた。
「義昭様を必ずや将軍にさせて頂きます」
「兄上は亡くなられた」
 それならばだというのだ。
「さすれば次の将軍は余がなるのは道理じゃ」
「その通りです。その為に我が織田家は」
「助けてくれるな」
「まさに公方様の手足となりましょう」
「うむ、それではじゃ」
 こうしてだった。義昭は信長のところに入ったのだった。しかしだ。
 二人の会談の後でだ。明智と細川はだ。
 二人で話をしていた。その中でだ。
 明智はだ。鋭い目になって話した。
「織田殿ですが」
「この岐阜では満足されていませんな」
「はい、間違いなく」
「では居城をまた動かされます」
 細川もそのことはわかった。明智の話を聞いてだ。
 そしてだ。明智に対してこう問うたのである。
「それは何処になるでしょうか」
「何処に築くかですか」
「はい、それは一体」
「それがそれがしにもわかりませぬ。しかしです」
「しかしですか」
「都とは距離を置くでしょう」
 明智はそれを知っていた。そうしてだった。 
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