| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十九話 岐阜での会見その一


                     第六十九話  岐阜での会見
 遂にだ。美濃、そして岐阜にだ。
 義昭一行が入った。岐阜の町中でだ。義昭は馬に乗りつつ明智に問うた。その見事に栄えている活気に満ちた町を見ながらだ。
「のうこれが織田の国だというのか」
「はい、これまで御覧になられた通りです」
「ううむ、見事じゃ」
 明智に言われてからだ。義昭はだ。
 唸る様にだ。こう言うのだった。
「田畑も町も。とりわけこの岐阜はじゃ」
「栄えていますな」
「美濃は以前からこうだったのか」
「ここまでは栄えていませんでした」
 かつて己がいた頃を思い出して話す明智だった。
「そしてこれまでとはです」
「予想しておらんかったか」
「話には聞いていてもです」
 百聞は一見にしかずだ。実際に見れば違うものだ。
 それでだ。明智はさらに言うのだった。
「実際に見るとよくわかります」
「これでは都の様じゃ」
 そこまで栄えているというのだ。
「越前にも近江にもこれだけの町はないぞ」
「一乗谷の城下町も中々のものでしたが」
「近江の浅井の領地もよかった。しかしじゃ」
「織田殿のところはさらに上です」
「どの町も栄えており」
 そしてだ。この岐阜はどうかというのだ。
「ここは殊更にじゃな」
「稲葉山だった頃とは比べものにもなりませぬ」
 そこまでだと言う。そして明智はだ。
 岐阜の中を行き交う者達を見てだった。
「表情も晴れやかですな」
「戦がないからか」
「それに加えて賊の類も少ないかと」
 信長は罪には厳しい。徹底的に追い処罰する。その罪に対して過酷なところがかえって領民の治安を護りだ。国をよくしているのだ。
 そして必然的にだ。彼等のその表情もだった。
「だから余計にです」
「よくなっておるのか」
「その様です」
「信長は政が得意なのか」
 義昭はふとだ。こう言った。
 そして明智はその彼にだ。こう答えたのである。
「これは才かと」
「そこまでじゃというか」
「はい、それがしこれまで多くの国を巡ってきましたが」
 明智も苦労をしてきている。その苦労の中で見てきたものを話すのである。
「それでもここまでの国はございませんでした」
「ううむ、織田信長はうつけとは聞いておったが」
「それは噂、いえ」
 違うと。明智は言うのだった。
「織田殿がわかっていなかったのでしょう」
「どういった者か理解しておらなかったというのか」
「義昭様はどうなのでしょうか」
 ひいてはだ。義昭はどうかというのだ。
「そのことにつきましては」
「わしはわかっておった」
 虚勢を張りだ。言う義昭だった。
「そのこともな」
「左様ですか」
「う、うむ」
 答えてもだ。目が泳いでいた。
 明智も、そして細川もその虚勢には気付いてはいた。しかしだった。
 二人共その虚勢にはあえて気付かないふりをして義昭に応え続ける。そうしてだった。
 今度は細川がだ。こう彼に問うたのである。
「それではですが」
「うむ、信長のことじゃな」
「織田殿は鉄砲を多く持っておられることは御存知でしょうか」
「鉄砲というとあれか」
「はい、南蛮から伝わったあれです」
「あれを多く持っておるのか」
 それを聞いてだ。義昭は今度はだ。
 どうにもこうにも怪訝という顔になってだ。こう言ったのである。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧