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戦国異伝

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第六十八話 足利義昭その七


「今度の為にのう」
「政の為ですか」
「その為に」
「先程枝と言ったが御主等も枝なのじゃ」
 人としての枝だった。城とはまた別のだ。
「その御主等がしっかりすればまた違うからのう」
「だからこそ都で政をさらに知る為に」
「その為にもですか」
「うむ、共に来るのじゃ」
 上洛に加われてというのである。
「わかったな。御主等はわしと共に来い」
「はい、さすれば」
「御供させてもらいます」
「これでよい。手は打っていく」
 信長はさらに言う。
「人についてもじゃ」
「では先陣等は」
「これからですな」
「それは出陣の時に決める」
 そのことについては今ではないというのだ。
「それからでよい」
「わかりました。ではそのことは」
「その時に」
「今決めるべきこととそうでないことがある」
 そうしたこともわかっている信長だった。
「先陣等はその時でよい」
「しかし大筋は、でございますか」
「それは」
「そういうことじゃ。まあ大体それでよい」
 観音寺と箕作、その二つの城を攻めてだというのだ。
 その話からだ。信長はさらに話す。
「まずは近江の南じゃ」
「そこを手に入れていよいよですな」
「都に」
「そこで三好、そして松永と戦になる」
 そのことは最早決まっていることだった。
 信長は三好。松永との戦についてはだ。こう話するのだった。
「都の東での戦になるであろう」
「その都ですか」
「東で」
「我等から見て都の東が入り口になる」
 京の都に入るのは向かって来るその方によって違う。信長は美濃にいる。その美濃から近江を経て都に入るならばだというのだ。
「だからこそじゃ」
「都の東。鴨川の方ですか」
「あの場所で」
「殿、さすればです」
 ここで言ったのは生駒だった。彼は考える顔になり信長に話すのだった。
「三好、松永は鴨川を使い我等を阻むやも知れません」
「そうじゃな。そうすれば確かに守りやすい」
「その場合は如何致しますか」
「三好、松永の兵はどの位になる」
 信長はその生駒に問うた。その彼にだ。
「果たしてどの程度じゃ」
「まず三好ですが本拠の讃岐や阿波の兵はあまりこちらに送れません」
 まずは四国の兵から話する生駒だった。
「伊予はともかく土佐の長宗我部がおりまする」
「姫若子じゃな」
「近頃噂になっているあの者が讃岐や阿波を狙っております」
 だからだというのだ。
「そちらへ備えなければなりませぬ」
「大体一万が備えじゃな」
 信長はその備えに置かれるであろう兵はその程度だと述べた。
「その辺りじゃな」
「長宗我部の兵も一万程ですし」
「まず一万がそれで使えぬ」
 一口で言えるが一万は大きい。それも実にだ。
 信長にしてもその一万の兵を持つまでには尾張の三分の二を手中に収めてからだった。それだけ一万の兵を揃えるのは力が必要なのだ。
 それでだ。信長は言うのだった。
「大きいのう、実に」
「はい、確かに」
「淡路や畿内の兵は使えるがじゃ」
 信長からの言葉だった。
「しかしこれもじゃな」
「あの辺りは様々な国人が入り乱れておりまする。それも入れての数ですし」
 生駒は今度は国人達について話した。摂津、河内、和泉のだ。 
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