久遠の神話
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第三十話 二対一その四
「それに対してどうするのか」
「答えは一つだけです」
その闇が迫る中でもだ。広瀬はだ。
落ち着きそしてだ。悠然とさえして言うのだった。
そのうえで己のその七支刀を掲げ。そこに全ての力を込めた。
それからだた。刀を思いきり周囲に振り回した。するとだ。
無数の木の枝が刃となり出てだ。それからだ。
周囲に乱舞する。それで権藤を襲うのだった。
それを放ちながらだ。彼は言うのだった。
「こうするだけです」
「その枝の刃で私を狙うか」
「いえ、違います」
「違う?」
「俺はこうして闇を払うだけです」
「払うことなぞできないが」
「力を弱めることはできます」
全てを覆いその中に取り込むだ。闇はだというのだ。
「そしてそれと共に」
「私がいます」
広瀬に応える様にだ。高代が言ってきた。
「光を使う私がです」
「そうか。だからか」
「俺はこうして枝を出すだけでいいです」
まただ。広瀬は権藤に対して答える。
「後は高代さんが果たしてくれます」
「そしてそれが終わればです」
「俺達はまた晴れて敵同士です」
「それまでの間ですが」
連携して戦うというのだ。その二人の言葉を聞いてだ。権藤はこう言った。
「見事だな。初対面かも知れないし敵同士であってもだ」
「こうして連携できていることがですか」
「見事だというのですね」
「そうだ。君達もまた優れた剣士なのだな」
闇の中でだ。権藤は言っていく。
「面白いことだ。さらに倒したくなった」
「しかし倒れるのは貴方です」
高代はその権藤に再び告げる。
「私達の手によって」
「そういうことです。ではいいでしょうか」
「ふむ。ではだ」
権藤はその剣に渾身の力を込めた。だが、だった。
そのうえで構えたところでだ。彼はこう二人に言った。
「そういきたかったがだ」
「?といいますと」
「一体」
「怪物が出て来たな」
周囲の気配を探りながらの言葉だった。そのうえでだ。権藤は一旦その闇の力を解いた。すると世界は急に元の世界に戻った。闇の黒から夕刻の赤の世界になったのだ。
その赤い弱くなっている日差しを窓から浴びながらだ。広瀬は目の前にいる権藤に対して問うた。
「怪物。何処にでしょうか」
「君の後ろにいる」
「俺の?」
「振り向いてみるといい」
こう広瀬に言う。そして高代にも言うのだった。
「君は見たな」
「ええ、今」
「俺もです」
広瀬は権藤の言葉に従う形で振り向いていた。そこにはだ。
美女がいた。黒く奇麗な長い髪とサファイアの目を持っている。目鼻立ちが整った美女である。だが美しいのは顔と上半身だけであった。
露わになった杯を思わせる二つの胸にくびれた腰の下はだ。蛇だった。巨大な大蛇の下半身がそこにある。権藤はその怪物を見て言った。
「ラミアだな」
「ギリシア神話における血を吸う女怪」
「それですね」
「君達も知っているな」
「ええ、名前だけは」
「そして姿も」
広瀬はラミアの方に振り向いた姿勢から正対するものになっていた。そうしてだ。
その姿勢になってからだ。こう言うのだった。
「この怪物は確かかなりの強さでしたね」
「オリジナルではない様だがかつては女神だった」
権藤はラミアのそのルーツについてもだ。二人に話した。
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