戦国異伝

「最早死ぬのだからな」
「左様ですな。それではです」
　一呼吸置いてからだった。松永は話をはじめた。義輝に問われたそのことを。
「それがし達は魔界衆」
「それが御主等の名か」
「公方様の仰る通りまつろわぬ者達です」
　かつて大和朝廷に敗れ封じられた者達である。
　その彼等がだというのだ。
「しかしこの戦乱に甦りです」
「そしてか」
「はい、この戦乱をさらに煽り」
　そしてなのだった。
「さらに大きくしていきます」
「そしてそのうえでか」
「我等の世を築く。それが目的です」
「だからこそこうしてか」
「天下を乱してもおります」
　松永は話したのだった。
「そういう事情でございます」
「わかった。御主等のことは」
「さすれば。もうこれで宜しいでしょうか」
「聞かせてもらった。それならよい」
　義輝の返事はこうしたものだった。全てを知ってだ。安心して述べたのだった。
「わしはこれで死ぬしのう。しかしじゃ」
「しかしですか」
「わしが死んでもそれでもじゃ」
　どうかとだ。義輝はその松永に返す。
「御主等の企みは潰えるだろうな」
「それは何故でしょうか」
「まつろわぬ者達でもそれでもじゃ」
「無法は許されぬというのですか」
「左様、何故人の世に溶け込まぬ。闇の中におる」
「闇が心地よくなりました故」
　それでだと言うのだった。
「我等は」
「それでだと申すか」
「そしてこの天下を闇で覆いたい故」
「それならばじゃ」
　ここまで聞いてだ。義輝は一呼吸置いてからだ。
　最後の力を振り絞ってだ。こう松永に告げた。
「御主等は敗れる」
「我が敗れるというのですか」
「その通りじゃ。闇は光に払われる」　
　これが義輝の見立てだった。
「そういうことじゃ」
「光ですか」
「左様、御主等は光によってけされる」
　そしてだ。その光こそがだった、
「織田信長にのう」
「あの尾張の蛟龍ですか」
「その信長に敗れる」
　また言う、このことを。
「それを言っておこう」
「ははは、織田信長ですな」
　義輝のその言葉も受けてだった。松永は話す。
「あの御仁は中々面白い御仁だそうで」
「その者に御主等は敗れる。そのことを言っておこう」
「一度会ってみますか」
　不意にだ。興味を持ちだ。
　そのうえでだ。松永はこう義輝に話した。
「そうしてそのうえで」
「まだ企むと申すか」
「はい、そのお通りです
「御主等は負ける」
「勝つのは我等です」
　彼等の言葉は交錯していた。しかしだ。
　義輝はこうまで言い終えるとだった。
　こと切れた。そして燃え盛る城の中に消えてだった。
　後には骨一本残っていなった。しかしだった。
　松永はこのことを三人に告げてだ。彼等の返答を待った。
　三人衆はだ。松永の話を聞いてからだ。