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久遠の神話

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第二十八話 使い捨ての駒その五


「さっきまでそこにあったのに」
「ああ。けれどな」
「けれどな?」
「ここで一つわかったことがあるな」
 こうだ。中田は軽い調子で上城に言った。
「剣が消えたってことはな」
「それに何かあるんですか?」
「あるよ。いるよな」
 中田はその目を鋭くさせた。そのうえでだ。こう言ったのである。
「本当の闇の剣士さん。ここにいるよな」
「えっ、まさか」
「剣ってのは主あってこそなんだよ」
 驚く上城にだ。中田はまた告げた。
「そうじゃないと。例えそれが持ってるだけの奴でもな」
「持つ人間、主がいないとですか」
「動いたりしないんだよ。だからな」
「闇の剣士がここにいるのですか」
「いるさ。絶対にな」
「じゃあ」
 中田のその言葉を受けてだ。上城は構えた。そしてだ。
 そのうえで周囲を見回す。見れば中田もそれぞれの手にその炎の刀を持ったままだ。
 その二人のところにだ。彼が出て来たのだった。
 左手に闇の剣、その黒い大振りの日本刀を持っている。そのうえで出て来た。その彼を見てだ。中田はその目を鋭くさせてだ。こう言ったのである。
「あんたか」
「私を知っているのか」
「有名人だからな」
 それで知っていると答える中田だった。
「よく知ってるさ」
「そうか。では話が早いな」
「権藤竜司さんだよな」
 中田は彼の名前を言った。
「それがあんたの名前だな」
「その通り。そしてだ」
「権藤コーポレーションの総帥だよな」
「如何にも」
 その通りだとだ。権藤も答える。
「それが私の社会的な立場だ」
「で、それでか」
「剣士でもある」
 不敵な、圧倒的に上から見ている笑みでだ。権藤は二人に告げた。
「力は闇だ」
「ああ、そこまではわかるぜ」
「わかっていたか」
「だからここまではわかるんだよ」
 中田は二刀流の刀でだ。すぐに構えられる様に気を引き締めながら述べた。
「けれどわからないのはな」
「剣士としての目的だな」
「あんた選挙にも出るよな」
「国会議員、衆議院の議員になるつもりだ」
「だよな。ってことはだ」
「権力だ」
 その上からの視点からだ。権藤は答えた。
「それが為だ」
「剣士になって。生き残るんだな」
「そう考えている。私は政治家になりだ」
 そしてさらにだというのだ。その野心家の笑みでの言葉を続けていく。
「首相になる」
「でかいね。野心家ってやつだな」
「そのうえで日本を。我が国を今よりも遥かに素晴らしい国にするのだ」
「ただ野心があるだけじゃないんだな」
「ただの野心家程下らないものはない」
 権藤はそうした凡百の輩はこう言って切り捨てた。
「だが私は違う」
「運動家あがりのあの元首相とは違うんだな」
「あれはただのゴミだ」
 それに過ぎないというのだ。愚劣なパフォーマンスから原子力発電所を爆発させそのことを隠蔽する為に首相の座に居座り続けた男とはだ。 
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