戦国異伝
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第六十五話 飛騨からの使者その二
信長は話を聞いてだ。馬上から下にいる蜂須賀に尋ねた。
「してどういった者じゃ」
「はい、それがです」
「それが?」
「何とも変わった者達でございます」
こう述べる蜂須賀だった。
「自分達を忍と言っていますが」
「ふむ。忍か」
「はい、飛騨の」
「そういえば久助が言っておったな」
信長は蜂須賀の話から思い出したのだった。そのことをだ。
「飛騨に珍しい忍達がおるとな」
「はい、わしも聞いてました」
「ではその者達じゃろうか」
「かなり風変わりな者達と聞いてますが」
蜂須賀はまた主に述べた。
「その者達とですか」
「無論会う」
信長に迷いはなかった。ここでもだ。
それでだ。笑みさえ浮かべてこう蜂須賀に述べた。
「ではその者達に会おう」
「さすれば」
「して何処じゃ」
信長はまた蜂須賀に問うた。
「その者達は今何処におる」
「間も無く城に来るとのことです」
蜂須賀は信長の問いに答える。
「さすれば主の間で会われますか」
「いや、忍だとするとじゃ」
「別の場所でなのですか」
「そうじゃ。そこで会おう」
信長は笑みを浮かべて蜂須賀に述べる。その目はここでも楽しそうに輝いている。それはまさに悪戯をする子供の目である。
そしてその目でだ。彼はまた述べる。
「では庭に赴くか」
「庭で、ですか」
「そこで会おう。ではじゃ」
こうしてだった。信長は岐阜城の庭に入りだ。そこにおいてだ。
木下兄弟や丹羽に滝川、それに柴田や佐久間も置いてだ。そのうえでだった。
こうだ。己の周りに控える彼等に述べた。
「御主等だけと思うたがのう」
「申し訳ありません、我等もです」
「我等も少し見たいと思いまして」
「その飛騨の忍達を」
「宜しいでしょうか」
前田や佐々といった面々もだ。庭に出る廊下に腰をかける信長の前にだ。障子を開けて出て来た。そのうえで照れ臭そうに言うのだった。
「いえ、宜しければですが」
「殿さえ宜しければ」
「全く。好奇心に負けてか」
信長はやれやれといった笑みを浮かべてだった。
そうしてだ。彼等に言うのだった。
「仕方のない奴等じゃ」
「ははは、皆殿の影響を受けてですな」
ここで楽しく言うのは木下だった。
「実はそれがしもです」
「猿、御主もか」
「はい。一体どうした者達か気になります」
「全く。どういった者でもよいであろうに」
柴田はいつも通り謹厳な面持ちで語る。
「あやかしでもない限りはのう」
「権六、そう言う御主もじゃ」
信長は腰掛けたまま己の後ろに立つその柴田に笑って述べた。
「何気に楽しそうじゃな」
「むっ、そうでしょうか」
「小鼻がぴくぴくと動いておるわ」
こうだ。信長はその柴田に話す。
そうしてだ。彼自身楽しそうにだ。柴田にさらに言うのだった。
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