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久遠の神話

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第二十七話 愚劣な駒その六


「仲が悪い」
「悪いんですか」
「そうだ、いない」
 また言う工藤だった。
「そうした自衛官はな」
「そうなんですか」
「御互いに仕事が似ているしな」
「ああ、海の警護だから」
「それでだ。どうしてもだ」
 仲が悪くなるというのだ。そしてだ。
 工藤はだ。こんなことも言ったのだった。
「仲が悪いからな」
「何か。難しいですね」
「そうだ。まあ保安庁の話はこれ位にしてだ」
 カレーを見てだ。工藤は言った。
「このカレーだが」
「ああ、このカレーって何か」
「面白い味だな」
「そうですね。何か中に」
 そのカレーを食べながらだ。高橋は言った。
「林檎が入っていますね」
「隠し味だな」
「よくありますけれど」
 カレーの隠し味としてだ。よくあるというのだ。
「ただ。このカレーは」
「林檎だけじゃないですね」
「蜂蜜も入っているな」
「中々考えていますね」
「だから面白い味になっている」
 そうなっているとだ。工藤もそのカレーを食べながら言う。
「いいカレーだ」
「そうですね。これが海上自衛隊のカレーですか」
「いや、この船のカレーだ」
「この船の、ですか」
「そうだ。カレーは船によって、部隊によって違う」
「これだってカレーないんですね」
「そうだ。この船のカレーはこうでだ」
 林檎に蜂蜜が入っていてだというのだ。
「そして別の船ではだ」
「別のカレーですね」
「例えば隠し味にコーヒーを入れている船もある」
「へえ、コーヒーもですか」
「ある。本当に色々だ」
 こう話す工藤の横でだ。聡美はというと。
 カレーを黙々と食べていた。そして言うのだった。
「カレーにゆで卵の組み合わせは」
「どうかな、それは」
「いいですね」
 にこりと笑ってだ。工藤にこう答えたのである。
「美味しいです」
「カレーと卵は合う」
「この組み合わせは考えていませんでした」
「ギリシアにはないか」
「カレー自体が。日本の様に食べませんから」
 カレーは日本では国民食になっているのだ。だから和食と言われることもあるのだ。
「ですから。この組み合わせもです」
「ないか」
「はい、ゆで卵はありますが」
 これはどの国もある。最も簡単な料理の一つだ。
「それでもです」
「カレーはないからか」
「そうです。あっ、サラダはあります」
 聡美は今はそれを食べていた。
「ですが」
「それでもカレーはか」
「それがないからな」
「そうだな。それでカレーはどうだ」
「美味しいですね」
「カレーは海軍からはじまったからな」
 それ故にだというのだ。
「歴史もある」
「歴史ですか」
「歴史もまた料理を作る」
 そうなるというのだ。
「しかしだ」
「しかし?」
「どうもイギリスは違う様だな」
 そのカレーを海軍に教えてくれただ。その国はだというのだ。
「あの国だけはな」
「イギリス。あの国は」
「知っているか。あの国のことは」
「あの国の料理は私も駄目です」
 聡美もだった。イギリス料理は駄目出しだった。
「どうしても」
「まずいか」
「とても」
 そうだというのだ。 
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