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戦国異伝

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第六十四話 焼きものその三


「あまりよいものでは」
「ははは、そんなことはよい」
 家の粗末さにはこだわらないとだ。信長は言ってだ。
 そのうえでだ。また長老に告げた。
「話をするだけじゃからな」
「だからですか」
「そうじゃ。それではよいな」
「はい。信長様がそう仰るのなら」
「御主等もよいな」
 信長は後ろを振り向いた。そこには乗ってきた馬、そしてその前に池田や慶次がいる。その彼等に対してだ。信長は問うたのである。
「この長老の家でよいな」
「はい、それがしもそれで構いません」
「わしにとってみれば天下は何処も同じです」
 池田と慶次がこう答える。それぞれの言葉で。
「それでは今よりですか」
「その御老人の家で」
「そうするぞ」
 こう話してだった。信長は池田と慶次を連れて長老の家に入った。そしてそこで長老、村長と対してだ。まずは長老のその話を聞くのだった。
 確かに粗末だ。しかししっかりとした造りの家だった。その家の畳の部屋の中でだ。彼等は座布団の上に座りだ。そのうえで話をはじめた。
「先程の話の続きですが」
「うむ、流石に知っておったか」
「この村に生まれ育ちました故」
 その為だとだ。長老は答えた。自分の前にいる信長に対して。
「土のことも含めまして」
「そうじゃな。ここの土はよい土じゃな」
「はい」
「して焼きものも作っておる」
 ここでだ。信長の目が鋭くなった。そのうえで言うのだった。
「しかし今はその数は少ない」
「確かに。尾張では多少は回っていますが」
「より作ってもらいたい」
 信長は言った。
「金も出すし年貢も免除する」
「そうしてですか」
「そうじゃ。焼きものをもっと作るのじゃ」
 信長はさらに言う。
「よいな。そして売るのじゃ」
「今よりさらに作りそして売る」
「さすればそれがそのまま金になる」
 信長の顔が笑みになった。そのうえでの話だった。
「わかったな。これから焼きものはどんどん出回る」
「漆塗りの木のものと共に」
「無論漆も流行らせる」
 しかしそれと共にだというのだ。焼きものもだというのだ。
「しかし瀬戸ではじゃ」
「ううむ、しかしです」
 長老と代わる形でだ。村長が唸る様にして言ってきた。
「年貢を免除して頂けるというのは」
「まことじゃ」
 本当だとだ。信長ははっきりと答えた。
「わしは民百姓には絶対に嘘は吐かぬ」
「さすればまことに」
「御主等は焼きものを作れ」
 それに専念せよというのである。
「わかったな。そうせよ」
「畏まりました」
 驚きを隠せない顔で応える長老だった。
「さすれば」
「ははは、ものを作らされさらに年貢もと思うたか」
「それはその」
「隠さずともよい」
 信長は長老にも村長にもだった。あえて本音を喋らせた。 
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