久遠の神話
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第二十六話 壬本という駒その四
「だからだ。チョコレートはだ」
「食べ過ぎると毒ですね」
「歯によくないがそれは」
「ちゃんとしてますよ」
高橋はにこりと笑った。そしてだ。
その白い歯を見せてきた。そのうえでの言葉だった。
「毎日磨いていますから」
「それは大丈夫か」
「朝御飯の後と寝る前に」
「絶対にか」
「はい、磨く様にしています」
「歯にも気をつけているんだな」
「そうしています。ちゃんと」
高橋は確かな笑顔で工藤に答えた。
「俺も虫歯なんて勘弁して欲しいですから」
「そうだな。あれはな」
「一回なると結構厄介らしいですね」
「俺は一回なってすぐに治療したがそれだけでだ」
「それだけで?」
「自衛隊ではパイロットになれない」
このことをだ。高橋に話したのである。
「俺は元々パイロットに興味がないからそれでもなれないと言われるとな」
「それだけで嫌になりますよね」
「実際になった」
そのだ。嫌な気持ちにだというのだ。
「自衛隊に入って最初の身体検査で歯を調べられてな」
「で、言われたんですか」
「そうだ。気付いたらなっていた初期の虫歯でだ」
パイロットにはもうなれない、そう言われたというのだ。
「そうなっていた。それで歯を治療した」
「で、今に至るんですね」
「海上自衛隊ではパイロットと潜水艦の審査は厳しい」
「ああ、潜水艦も」
「何か少しあれば乗れなくなる」
その二つについては実際にそうなっている。どちらもかなり重要であるがそのどちらもだ。身体検査はかなり厳格に行われているというのである。
「特にパイロットはだ」
「本当に厳しいみたいですね」
「俺は本当に虫歯はすぐに終わったがな」
「でも厄介ですか」
「一生そうしてついて回る場合もある。歯は怖い」
工藤はそのチョコレートを食べながら真顔で話す。
「それもかなりな」
「ですよね。だから俺も歯はです」
「いつも磨いているのか」
「そうしています。ちゃんと」
高橋は白い歯で話す。
「そうしています。それは今日もです」
「磨くか」
「寝る前にそうします」
「いいことだな。歯はな」
「まさに命ですよね」
「歯が駄目なら何かとよくない」
健康面からだ。工藤は言った。
「力も出ないからな」
「ですよね。踏ん張れないですよね」
「剣士としてもだ。虫歯も歯槽膿漏もだ」
「どっちもですから」
「俺も歯は磨いている」
工藤とて例外ではないというのだ。それはだ。
「やはり一日二回磨いている」
「ああ、工藤さんもですか」
「夜寝る前は絶対だ」
工藤もだ。この時は忘れていなかった。
「そして朝起きてすぐだ」
「あれっ、朝御飯の時じゃないんですか」
「そうだ。これまではそうしていたが
「磨くんなら食べた後の方がいいですよ」
その時にだとだ。高橋は真面目に話した。
「特に甘いものを食べた後は」
「その時は特にか」
「はい、それが一番いいです」
「歯磨きも考えないといけないか」
「時と場合。それに磨き方ですね」
「考えてよく磨くことか」
「そういうことで。では」
高橋はここまで話してだ。そうしてだった。
あらためてだ。そのコーヒーやケーキを楽しんだ。工藤もそうした。
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