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久遠の神話

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第二十五話 使い捨ての駒その七


 そこから西洋風の部屋が出て来た。白い壁に紅い絨毯の部屋だ。天井には見事な金色のシャングリラがある。
 その中にある見事な、宮殿にある様な椅子にだ。黒いベストにシャツにズボン、ネクタイや靴まで黒にしている男がいた。黒髪を後ろに撫でつけている。
 見れば長身で引き締まった身体つきだ。顔は彫が深くやや日本人離れしている。鼻が高い。
 そして鷲の様に鋭い黒い目を持っている。その男にだ。
 後ろに控える年老いたタキシードの者がだ。こう問うてきたのだった。
「あの者ですが」
「駒か」
「はい、あの壬本という男ですが」
「言ったな。只の駒だ」 
 こう男に言ったのである。
「それに過ぎないのだ」
「では」
「あの男はただの実験だ」
「剣が剣士以外にも使えるかどうか」
「それを見るだけだ。そしてだ」
「剣士以外にも使えるならばですね」
「剣の使い方が拡がる」
 黒い男は執事に対して述べた。
「だからだ。言うならばだ」
「実験ですね」
 執事は男の言葉に応えて述べた。
「旦那様の」
「そうだ。まさにその通りだ」
「ではあの男はやはり」
「実験動物という意味での駒だ」
 実に素っ気無くだ。彼は執事に述べた。
「それ以外の何者でもない」
「あの男はそうは思っていない様ですが」
「だから手駒に使えるのだ」
 思ってもなければ気付いてもいない、全くの無知だからだというのだ。
「ああした者は手駒に最適だ」
「もっと言えば手駒にするしか使い道がありませんか」
「無能で卑怯でだ」
 完全に見下し愚弄する言葉でだ。男は先程のその猿に似た男を評した。
「しかも反省もせず学びもせずだ」
「そしてですね」
「ことも善悪もつかない。そういう輩はだ」
「実験動物にするしかありませんか」
「役に立たない」
 そうした存在でしかないというのだ。
「普通に使ってもな。ましてやああした輩は自分では気付かないからな」
「そうですね。実際に全く気付いていません」
「自分は手駒ではないと思っている」
「確信していますね」
「そして自分で動いていると思っている」
「事実は全く違うというのに」
「そうした輩こそ使いやすいのだ」
 手駒としてだ。そうしやすいというのだ。
「そして切り捨ててもな」
「何も問題はありませんね」
「使い捨ての駒だ。ただそれだけだ」
「では暫くはその駒を使って」
「実験をするとしよう。見ていくぞ」
「畏まりました」
「ではだ。後はだ」
 そうした話をしてからだ。そのうえでだった。
 男は執事にその日本人離れした彫の深い顔を向けてだ。そのうえで言うのだった。
「明日のことだが」
「はい、明日ですね」
「八条グループの総帥殿との話があったな」
「そうです。今度の共同開発の件で」
「伊勢のリゾート地開発だったな」
「旦那様はですね」
「自然はそのままにしておきたい」
 彼は己の考えをそのまま執事に述べた。 
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